撫子
母親を幼い頃に亡くし、整備士の父親一人に育てられた彼女は、自然とビールとオートバイが好きになった。背が高いせいで気高くクールな人と勘違いされがちだが、本当はとても明るくて熱心である。暇な時はツーリングするのが好き。麻雀を含むすべてのゲームにおいて天才的。
Profile
Skins
撫子の初期衣装
撫子と契約を結んだ時に入手できる着せ替え衣装
「雀魂夏祭り・ビーチパーティ」にて購入できる限定の着せ替え衣装
「冬日祭・西羽流光」にて購入できる新年テーマの限定着せ替え衣装
「イーハンパス・トラベラー」にて購入できる冒険テーマの着せ替え衣装
「でいどり〜む・パラダイス」にて購入できる、パジャマテーマの着せ替え衣装
Emotes
Bond Requirements
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プレゼント・普通
ありがとうな
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プレゼント・好み
え?意外といいセンスしてるなー
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絆レベルアップ5
一緒にどう?…あぁ、いや、一緒にドライブに行かないかって意味。あんたを誘った理由?……そんなの後で考えりゃいい。風を浴びながら、ゆっくりと、な。
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絆レベルアップ1
ちょっと見直したよ、やっぱ見かけで人を判断しちゃいけねーんだな...っぷ、なーんてな
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絆レベルアップ2
んじゃ、お礼に、お前と一対一の麻雀講座をひらいてやろう
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絆レベルアップ3
こんなに優しくされたの...、お袋を亡くして以来、初めてだよ。...ありがとう
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絆レベルアップ4
今日から、あたしのバイクのタンデムシートはあんた専用だ!あたしと一緒に、世界中を旅しような、ダーリン♪
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隐藏语音 - 新年
あけましておめでとう!これから先の相談があれば乗ってあげるよ。人生でも、理想でも、なんでもいいぞ、あるいは……あんたが思い描くこれからの一年だとか?その一年に、あたしがいるのかな?ふふ
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隐藏语音 - 情人节
ほら、手ぇ出しな。いいよ感謝なんて。女の子たちからいっぱいもらっちゃってさ、食べてもらえたらこっちこそ助かるよ。ああ、そうだ。中にはあんたのために用意したものも入ってるよ。どれがあたしからのやつか、当ててみな!
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メイン1
運ってのは、気合で引き寄せるものよ!自分を信じられないようじゃあ、マージャンの神にも見放されるってもんじゃない?
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メイン2
うん?あたしに話しかけてんの?ああ、ごめーん...あんた、影が薄いから、全っ然気づかなかったわ。
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メイン3
敗けて落ち込む時間があるなら、次の対局でかっこよく勝つために努力するってのは、どうだい?
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メイン4
ルールもわかってねーヤツは、あたしと戦う資格はないね!仮に対局したって、この私に勝てるわけないだろ?
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メイン5
ビール飲むかい?...酒のない人生なんて、つまんないよ?......ぷはーんん~~
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メイン6
まさかあんたに負けるとはね...。ま、次の対局も頑張んな、今度は簡単には負けないからね。
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メイン7
あたしの願いは、いつか世界中を旅してまわること...知らない土地にあたしの足跡を残してやるんだ...もちろん、あんたの足跡も...な
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メイン8
ネット麻雀より、リアル麻雀のほうが、相手のカオや仕草が拝めて楽しいよな?...って、あんま緊張すんなよ~、リラックスしてるお前のほうがカワイイぜ?
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ログイン・普通
よぉ、また会ったねぇ!
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ログイン・絆LvMAX
元気そうじゃん、戦いの準備は出来たのかい?
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契約を結ぶ
あんたの名前、あたしの将来設計にしっかり入れといたよ。あたしのバイクも、酒も、麻雀も…そう、あたしの人生も、全部あんたと半分こだ。ん?全然驚かないね。ってことは、タンデムシートに乗ったときから、こうなるって考えてたんじゃないか?なぁ、ダーリン。
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SP-友人戦部屋に入場する時
やってるかい?
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SP-友人戦部屋で準備した時
思いっきり闘おう
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出会い
撫子だ、よろしく!
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北抜き
ペーだ
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チー
チーだ!
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ダブル立直
ダブルリーチ!
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カン
カン!
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ポン
ポンするよ!
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立直
リーチだ!
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ロン
悪いね~、それ当りだよ
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ツモ
ツモだ
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白
ハク
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北
ペー
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純全帯幺九
ジュンちゃん
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純正九蓮宝燈
チューレン9メン待ち
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大三元
ダイサンゲン
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大四喜
大スーシー
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地和
チーホー
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ダブル立直
ダブリー
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東
トン
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ドラ
ドラ
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ドラ10
ドラ10
-
ドラ11
ドラ11
-
ドラ12
ドラ12
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ドラ13以上
ドラ、いっぱいだ
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ドラ2
ドラ2
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ドラ3
ドラ3
-
ドラ4
ドラ4
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ドラ5
ドラ5
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ドラ6
ドラ6
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ドラ7
ドラ7
-
ドラ8
ドラ8
-
ドラ9
ドラ9
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ダブル北
タブペー
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ダブル東
ダブトン
-
ダブル南
ダブナン
-
ダブル西
タブシャー
-
断幺九
タンヤオ
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対々和
トイトイ
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二盃口
リャンペーコー
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発
ハツ
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国士無双十三面待ち
コクシ十三メン待ち
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国士無双
コクシムソウ
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海底摸月
ハイテイ
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河底撈魚
ホウテイ
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混老頭
ホンろーとー
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混全帯幺九
チャンタ
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混一色
ホンイツ
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九蓮宝燈
チューレンポートー
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嶺上開花
リンシャン
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立直
リーチ!
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流し満貫
流しマンガン
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緑一色
リューイーソー
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南
ナン
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平和
ピンフ
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槍槓
チャンカン
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七対子
チートイ
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清老頭
チンロートー
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清一色
チンイツ
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三暗刻
サンアンコー
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三槓子
サンカンツ
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三色同刻
三色ドーコー
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三色同順
三色ドウジュン
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四暗刻
スーアンコウ
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四暗刻単騎
スーアンコウ、タンキ
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四槓子
スーカンツ
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天和
テンホー
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西
シャー
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小三元
ショーサンゲン
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小四喜
小スーシー
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一盃口
イーペーコー
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一発
イッパツ
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一気通貫
イッツー
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中
チュン
-
ツモ
ツモ
-
字一色
ツーイーソー
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清算一位
勝利の果実は、このあたしのモンだ!
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清算一位・高い点数で勝利
これが頂点に君臨する牌捌きってヤツだよ!
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清算一位・ロンで勝利
こんなのまだ序の口だよ!
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倍満
バイマン
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九種九牌
キュウシュキュウハイだな
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数え役満
数えヤクマン
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満貫
マンガン
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ノーテン
くっ...ノーテン
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三倍満
サンバイマン
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四風連打
スーフーレンダだ
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四槓散了
スーカン流れだ
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四家立直
スーチャリーチだ
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跳満
ハネマン
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聴牌
テンパイだ
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役満
ヤクマン
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ダブル役満
ダブルヤクマン
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トリプル役満
トリプルヤクマン
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四倍役満
四倍ヤクマン
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五倍役満
五倍ヤクマン
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六倍役満
六倍ヤクマン
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SP - ドラを捨てた時
ドラでも、捨てる時は捨てるしかない
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SP - 倍満/三倍満聴牌
こいつぁ運ってーよりも、確かな腕で引き寄せる勝利ってやつさ。
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SP - 同じ牌を連続に捨てた時
いらない牌がいくら来てもなぁ。
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SP - 残り牌が10枚以下の時
お、もうそろそろか
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対局開始
あたしの出番だね!
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SP - 役満聴牌
このぐらいは朝飯前さ。
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帯幺九
帯幺九(タイヤオチュウ)
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根
根(ルート)
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将対
将対(ジャントイ)
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金勾釣
金勾釣(キンコウテャオ)
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嶺上放銃
嶺上放銃(リンシャンホウジュウ)
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龍七対
龍七対(ロンチートイ)
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清対
清対(チントイ)
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清金勾釣
清金勾釣(チンキンコウテャオ)
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清龍七対
清龍七対(チンロンチートイ)
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清七対
清七対(チンチートイ)
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清十八羅漢
清十八羅漢(チンジュウハチラカン)
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清幺九
清幺九(チンヤオチュウ)
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十八羅漢
十八羅漢(ジュウハチラカン)
Spot Voices
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Spot Voice 1
惊讶
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Spot Voice 2
肯定
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Spot Voice 3
否定
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Spot Voice 4
打招呼-早晨
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Spot Voice 5
打招呼-白天
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Spot Voice 6
打招呼-夜晚
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Spot Voice 7
告别
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Spot Voice 8
承接
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Spot Voice 9
叹气
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Spot Voice 10
高兴
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Spot Voice 11
生气
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Spot Voice 12
递进
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Spot Voice 13
转折
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Spot Voice 14
疑惑
定義されない風
絆LV1で開放
オイルまみれの作業着を着た父親が、ポケットからカギを一本取り出し、撫子に放って寄越した。 受け取ったカギは、プラスチック製のカバーが所々破れていて、随分古めかしく感じるバイクのカギだった。撫子の記憶では、父はこのカギを数え切れないくらいほどたくさん回して、黒くいかついバイクに彼女を乗せ、家と学校や店の間を行き来していた。 そして今日は、父の相棒が、撫子と父の「決闘」を見届けるためにここに来ていた。 撫子は拳を強く握り込んだ。カギのギザギザが皮膚に食い込んで掌が痛くなるほどに。 撫子の母親は若くして亡くなり、物心ついてからはずっと、整備業を営む父に育てられてきた。金属パーツが地面に落ちる音、辺りに充満するエンジンオイルの匂い、そして整備士たちの大きく張り上げた声が、撫子の幼少期の記憶を形成した。 その強く吹き抜ける風とともにある記憶は、撫子が十六才になり、高校に上がるまでずっと変わらなかった。 その日、入学前の長い休みを散々遊び倒して学校生活に戻った撫子は、校門の前でヘルメットを父に放り、これから始まる新しい学校と新しい生活に胸を躍らせていた。しかし、撫子は周りからの驚きと奇異を含んだ目に気づいた。廊下にある鏡の前に立つと、ようやくその理由がわかった。 ヘルメットの形に押しつぶされたボサボサの髪、制服の上に羽織ったゆるゆるのジャージ、日焼け止めなんて塗ったこともない健康的すぎる色の素肌に、化粧も何もしていない顔。 鏡の中の自分と、周りの花のような女子。比べてみると、その差がより際立った。十六年間何も変わらず生きてきた少女は、逃げるように鏡の前から教室へと走っていった。 十六年間眠っていた「外見」という意識の種が芽吹き、急速に成長していったのはこの時からだった。 行動派で学習能力の高い撫子は、すぐに「ほかの女子と同じように女らしく生きる」という目標を掲げた。 目標を達成する自信満々だった撫子は髪を伸ばし、コスメの勉強を始め、伊達メガネをかけて、顔立ちのきつい印象を和らげようとした。先輩の如月彩音が人気だと知ると、彼女のメイクやコーデも取り入れた。 しかし、高校に入って急成長したのは彼女の意識だけではなかった。彼女の身長もまた、似たような速さで伸びていく。十八歳になった彼女は一部の男子の背を追い抜き、卒業写真を撮る時には男子の列に入れられ、周りに笑われた。 悪意はないとわかっていたが、乙女心は傷ついた。 写真撮影を終え、いつものように店に手伝いにいくと、父は三年越しにようやく娘の変化に気付いた。しかし、その経緯を聞くと親父は大笑いした。 「女らしく、だと? 高校に上がってから学校への送り迎えも無くなって、成長したなと思ってたんだが、まさかそんな理由とは思わなかったぞ、ダハハッ!」 ……それを聞いて、無意識に手に持ったレンチを強く握り締めた。 「こっちは毎日毎日親父の手伝いばかりやってたせいで、彩音先輩みたいな素敵な女性になれなかったんじゃねぇか!」 「フン、本当にそうか? バイクから、修理屋から離れれば女らしくなれると思ってんのか?」 「少なくとも今よりはね!」 「お前はバカだなあ、本当の自分でいればいいってのに」 「何なんだよ、本当のあたしって……」 「そりゃあ、テメェで見つけるんだな!」 父との会話は決着が付かないまま終わり、十八歳の撫子はますます落ち込んでしまった。 それを見た父は、しばらくして、バイクのカギを取り出し撫子に差し出した。 「チャンスをやる。こいつに乗って、コースを無事一周出来たら今後修理屋のことは手伝わなくていい。」 「……わかった。後悔するなよ。」 ムキになったのか、それとも心の中のモヤモヤを吹き飛ばしたいのか、撫子はあっさり親父の話に乗った。 「女らしさ」とはだいぶかけ離れたこのバイクに乗るのは三年ぶりだが、子供の頃から触れ合ってきた撫子にとってこれ以上容易いことはない。 カギを回してエンジンをかけ、ギアを入れてハンドルを回す……バイクが飛び出した。撫子が持つ天性のバランス感覚と反射神経は、とっくの昔から父のお墨付きだ。 初めて一人でバイクに乗った撫子は、全ての雑念を捨てて目の前の車道に集中し、ハンドルを強く握った。すると、自分の心音が聞こえて来た。深い谷底に沈んだ心は、今はなぜか軽々と舞い上がり、空も飛べるような心地がした。 そうだ、風だ。 三年ぶりの風が撫子の頬に当たる。普段の生活を通して溜まったストレスがすっかり吹き飛び、彼女が毎日丁寧に手入れしてきた長い髪も風に乗って乱れる。しかし彼女は今、髪を整えようとは一切思わなかった。 他人の目を気にしたせいで、この爽快感を三年も忘れてしまったのか。撫子はそう思いながらバイクを走らせ、コースを一周しても止めなかった。一周また一周と、今回の目的を思い出すまで走り続けた。 ブレーキをかけ、撫子は親父の前にバイクを停めた。 「いいだろう、今後は好きなことをやっていけ。バイクと修理屋は、もう手伝わんでいい。」父は立ち上がり、膝の上のホコリをはたいて、バイクのカギを受け取ろうと撫子の方に向かう。 しかし撫子は無意識にバイクのカギを握った。これを返したくないという気持ちが確かにあるのだが、どう伝えたらいいかわからない。 その表情から心中を見抜いた父は、スマホの画面を撫子に見せた。 「さっき、お前が乗ってる所を撮ったんだがな……まあ、『女らしさ』なんざ微塵も無いわな。じゃ、お前は要らないだろうし、記念として俺が持っとくか。」 父のいたずらっぽい笑みを見て、撫子はやっと父に嵌められたのだと悟った。 「……いいから送れ。今すぐ!」 しかし、彼女にとっては最早どうでもいいことだった。
初めてのビール
絆LV2で開放
スーパーの駐輪場、夏の陽射しの下。キンキンに冷えたビールをバイクのリアボックスに詰め込み、バイクに乗ろうとしたところで、撫子は足を何かに掴まれた。 下を見ると、無邪気な目をした幼い女の子がいた。 「ん?」 「……う……おかあさんじゃない……おかーさーん! うわ~~ん!」 「っ!」 撫子は、突然泣き出した女の子に慌てふためき、十五分ほどかかってようやく、サービスカウンターで待っていた両親にしゃくり上げる女の子を引き合わせることができた。 その十五分間で、直射日光に晒されたリアボックスと中のビールはすっかりぬるくなっていた。 駐輪場の外、熱気に歪むアスファルトの道路を見て、撫子は頭を悩ませる。 いつも通りの、夕食までに父のために冷えたビールを買って帰るだけのおつかいなのだが、今日はどうもうまくいかない。 近所のコンビニは臨時休業していて、隣の駅の酒屋では品切れ。そこでバイクに乗ってやや遠いスーパーまで来たのだが、さっきの出来事でビールがぬるくなってしまった。 今日は厄日だ。 「はぁ……帰るか。家の冷蔵庫で冷やしても大して時間はかからないだろ。」と自分自身を慰め、撫子はバイクで帰路に就いた。 三十分後、汗にまみれた撫子は、冷蔵庫を前に、ビール缶を持ったまま途方に暮れていた。いつも運転音がうるさい冷蔵庫は今日はやけに静かで、もっと言うと水が漏れている。 父がキッチンから出てきて、暢気に撫子に話しかけた。 「冷蔵庫ってのは長く使ってると壊れるもんだし気にすんな。それより、お前も成人したことだし、父ちゃんと一杯飲まねえか?」 普段から「ちょっと怖い」と評判の撫子の顔がより一層迫力を増した。 「ビールは冷えてる方がうまいって、親父、いつも言ってるだろ?」 「そりゃそうだがよ、壊れたもんは仕方な……っておい?」 そんな話をしつつも、撫子は既に冷蔵庫をトンテンカンテンと分解し始めている。 父はそれを見てははっと笑い、娘の手伝いを始めた。 嫌々やらされる「おつかい」でも、今日のように何度も何度も阻まれると意地でも完璧にこなそうとする。そう、この娘は負けず嫌いなのである。 それから数時間後、撫子は冷蔵庫の電源を入れ、ビール缶を中に入れた。父は既にぬるいビールを飲み干し、ソファで満足そうな顔で寝ている。 撫子も隣のソファで一息ついた。深夜、撫子の携帯のアラームが鳴り出した。疲労で凝り固った肩を揉み、冷蔵庫のドアを開くと、心地よい冷風が頬を撫でる。彼女はキンキンに冷えたビールを開け、得意気に父が飲んだビール空き缶と乾杯してから、一口だけ飲んでみた。 濃密な炭酸の泡が小麦の香りとともに口の中で弾け、清涼感のある喉越しが一日の疲れをすっきりと洗い流し、達成感に昇華させる。 ……なんだ、案外悪くないじゃないか。 と、撫子は唇に付いた泡を舐めた。父がビールを嗜む理由が、少しわかったような気がした。
自由の道標
絆LV3で開放
「もしもし? ……誰か、聞こえるか?……」 撫子の声に対する返答は、無線機の「ジジジ」というノイズ音だけ。その音が、自分が既にツーリングクラブの連絡範囲から外れていることを知らせた。 腕時計は、本来フリーライドを楽しんだ後で、国道の道の駅でクラブのメンバーたちと合流しているはずの時間を示していた。 運悪くGPSの電波が弱まり、どうやら本来走るべきではない道に入ってしまったようだ。 再度連絡を試すも徒労に終わり、撫子は絶望的な気持ちでトランシーバーを手放した。 今、撫子は草生い茂る山道の脇にバイクを停めている。金属色のバイクと周りの景色が鮮明な対比を見せる。別の世界からやってきた彼女も、彼女のバイクも、ここではまるで「招かれざる客」のようだ。 涼しい山の風が草の匂いを乗せて運び、撫子の心に沁み渡る。撫子は目を細めて周りを見渡し、この道はマップにも乗っていないオフロードだろうと推測した。 今回のバイクツーリングの前に、クラブのガイドがミーティングで「遭難」について説明していた。ライダーが何らかの理由で既定のルートから外れ、ナビやマップにない道に入ってしまうことで、ツーリングで最も身近な危険の一つらしい。 マップに乗っていない道は詳しい状況がわからないので、深入りは禁物だと言っていた。 撫子は深く息を吐く。 そう考えれば、今の状況は中々に……エキサイティングじゃないか。 目に光が宿り、撫子は再びエンジンをかけた。 二日間くだらないツーリングを耐えてきた彼女に活力が蘇ってきた。バイクも彼女の期待に答えるように、低い轟音により一層キレがかかる。 「やっと、面白くなってきたじゃないか。」 実は、撫子が多人数で走る「マスツーリング」に参加するのは今回が初めてだった。 一飜市の若いバイク乗りが十名ほど集まり、三日間にわたり一飜市の郊外を一周しようという内容だ。 出発する前は、撫子は今回のツーリングに期待していた。しかし出発から二日間、高速をひたすら走るという何の刺激もない道のりも、今回参加したスピードばかり追い求めるメンバーも、結局くだらないものだった。 「あたしがしたかったのは、こんな旅だったのかな……」 そんな思いが彼女の心の片隅に芽生えていた。 そして今。 先の見えないオフロードをバイクで前へ前へと走っている。この道は走りやすいとは言い難い。未舗装の路面、道路脇の草木がその証左だ。しかし撫子は、そんな道にこそ魅力を見出した。高速道路や町中の一般道と違って、ここでは撫子は自分のスピードで走れる。決まった時間に決まった場所に行く必要も、他人の目を気にする必要もない。 彼女は目まぐるしく変わる自然の景色に酔いしれながら、ナビが無機質な声を発するようになるまで、前へ前へと無心にひた走った。 「ルートから離れました。新しい経路を検索しています……」 ナビのGPSが復活したらしい。 いつの間にか山道を通り抜けており、周りに人工的な建物が徐々に増えていく。自然の中を走っていた撫子は、最終的に人里へと戻ってきた。 トランシーバーの音声と、CatChatの通知音が一斉に鳴り出した。ツーリングのメンバーが、あらゆる手で彼女の位置と状況を確かめようとしている。 メンバーからのメッセージを眺めつつ、この二日間のツーリングとさっきまでのライドを思い返し、撫子は納得した。バイクを好きになったきっかけは人それぞれ違うし、ツーリングに出発する理由も様々だろう。彼女は今、彼女自身の理由を見つけた気がした。 「悪い、心配かけた。もうすぐ戻る」 トランシーバーを置いて、彼女は走ってきた山道に向かってクラクションを鳴らした。 「待ってろよ、また来るからな!」
指導の予行練習
絆LV4で開放
Possible Endings
Scenario Script
Spots 7, Scenes 300, Choices 4, Endings 0
自然に目覚めた週末の朝。私はCatChatを開き、みんなの投稿をチェックすることにした。
{character:player}佳奈ちゃんはニューアルバムの宣伝、二階堂さんはまた変な料理を開発……っと。撫子さんは抽選企画をやってるのか……って、抽選企画?
撫子さんの投稿が目を引いた。「バイクに乗れない、かつ暇のある方限定 リプライした人の中から抽選で一名に、秘密の賞品をプレゼントするよ」
へー。元々抽選って言葉には弱いのもあるけど、バイクに詳しい撫子さんがバイクに関わる抽選をやってるなんて、ますます気になる……!
速攻でリプライを送った。
秘密の賞品が何だか知らないが、バイクに乗れない暇人であることは間違い無いので、一応抽選に応募した。
リプライを送った私は、動画サイトを開き、朝食を摂りながら麻雀名場面集を見始めた。
この手の名場面集は、見てると段々自分にも出来るんじゃないかという気になってきて、麻雀を打ちたくなってしまう。今日は天気もいいし、麻雀会館にでも行こうかと外へ出た。
ブウン……家の鍵をかけた瞬間、背後からバイクのホーンの音がした。振り返ると、大型バイクが走って来て、私の前に止まった。
{character:抚子}良い週末だな、{var:player_nickname}。
バイクのライダーがヘルメットのシールドを上げ、美しく輝く目を見せながら話しかけてきた。
{character:player}……撫子さん?
{character:抚子}そんなに驚くことか? 当選したから、迎えに来てやろうと思ったんだけど。
{character:player}え? 当たったの? 私が!?
急いでスマホを取り出すと、CatChatで撫子さんから「あんたに決まった、待ってな」という個別チャットが来ていた。
{character:player}本当だ!!!
{character:player}ごめんなさい、個別チャット見てなくて……。私が当選するなんてまずないと思ってたから……。
{character:抚子}そんなに運悪い方でもないだろ。どれ……よし。さ、ヘルメットを被って後ろに乗りな。
撫子さんはバイクに乗ったまま、獲物を見定めるような目で私を上から下まで見回すと、ヘルメットを渡してきた。
{character:player}えっと、秘密の賞品ってのは、撫子さんと一緒にツーリングとか……?
撫子さんはツーリングの写真をいつも上げていて、一緒に行けたら絶対面白いよなって毎回思っていた。まさか今日、その夢が叶うのか?
{character:抚子}んー。ま、そんなもんだと思ってくれ、後悔はさせないよ。
それなら迷う理由もないよね! 私はヘルメットを被り、撫子さんの後ろに乗った。
{character:抚子}あたしの腰、しっかり掴んどくんだよ。
{character:player}え、それはちょっと……うわぁ!?
私の言葉も虚しくバイクが動き出し、私は撫子さんの腰に両腕で抱きつく他なかった。
エンジン音を轟かせながら、一飜市の街を縦横無尽に走り抜け、私達はついに目的地に到着した。頭をくらくらさせながらバイクから降り、目の前の景色を見渡すと、そこは想像していた緑豊かな自然ではなく、ありふれたビル街だった。
{character:player}「バイクカレッジ一飜」……って、教習所?
{character:抚子}そうだ。あんたにやる賞品は「あたしの生徒第一号になる資格」だ。おめでとう。
{character:player}……生徒?
ことが予想外の事態に発展し、いまいち呑み込めない私。
撫子さんが詳しい経緯を説明しながら、私を教習所の中へ案内してくれた。
この前、コレクターズアイテムの限定販売ヘルメットを買ったせいで、今月と来月の生活費がピンチの撫子さんは、この教習所で雇われ指導員として働きたいと思っている。
明日が指導員資格の面接で、教習のテストも行われるので、今日のうちに誰かと予行練習をしておきたいと。そして私は、その練習用として選ばれたモルモットだということだ。
{character:抚子}急に思いついたことでさ、千穂理に聞いたら抽選で人を集めろってアドバイスしてくれたんだ。リプライ率を高めろだの、ターゲティングをより正確にだのとよくわからなかったけどね。
{character:player}さすがコミュニケーション学に造詣が深い編集長さんといったところですね……。
{character:抚子}まあな。実際こうやってあんたを捕まえられたし、効果はあったと言える。じゃ、こことここにサインしてくれ。
撫子さんは受付から申込書を持ってきた。
{character:player}ちょっと待ってください。これって、ノーという選択肢はない感じですか?
{character:抚子}へえ、{var:player_nickname}はあたしの誘いを断るんだ?
撫子さんは私の目をみてそう言った。
断るかどうかと言われると……断らないな。せっかくの週末に教習所かぁ……と思ったけど、撫子さんの助けになれるんだったらそれも悪くない。
私はしっかりサインをして、申込書を返した。
{character:player}力になれるかどうかわかりませんが、頑張ってみます。撫子先生。
{character:抚子}フフッ、やる気は十分ってとこだね。では{var:player_nickname}君、ようこそバイクの世界へ。
一飜市では、二輪車の免許を取得するには筆記試験と実技試験の二科目を突破する必要がある。今日はどうやら筆記試験の勉強から始まるようだ。
教習所の広い教室の中、私と撫子さんの二人きり。
撫子さんは用意した指導案を持って教壇に立ち、授業を始める。筆記試験に合格するには、バイクの各パーツについてだけでなく、交通規則も覚える必要がある。
{character:抚子}……安全第一を胸に、二輪車事故は皆でなくそう……。
撫子さんが、今回の教習のためにかなり準備してきたことが伝わってきた。一飜市内の交通安全ルールは指導案を見ずに説明して、その後はバイクのパーツや機能についてノリノリで解説している。
{character:player}せ、先生!
{character:抚子}どうした? 分からない所でもあった?
{character:player}今の「ノッキング」っていうのは何ですか?
{character:抚子}ああ、説明しそびれたね。エンジンが最低回転数を維持した時に、カラカラって感じの異音が響く状態のことさ。
{character:player}えっと、その最低回転数の時っていうのは……?
{character:抚子}ま、簡単に言えばアイドリング状態だな。
{character:player}あ、アイドリング……?
{character:抚子}そこから説明しなきゃいけないのか!?
{character:player}え、しないんですか……?
真のド素人である私に何回も授業を止められ、撫子さんはやっと私との知識量の差に気づいた。それを踏まえ、指導案を見直し始める。
見直しが終わり、撫子さんは改めてバイクの解説を始めた。今回は専門用語の解説もある。わかりやすくなったのもあるけど、撫子さんの熱意にも影響されて、つい聞き入ってしまった。
撫子さんが設定したアラームが鳴り、そこで私たちはやっと一時限目が終わったことに気づいた。
{character:抚子}やっぱ修正が必要だったな。{var:player_nickname}がフィードバックしてくれたお陰だ、助かったよ。
{character:player}あはは……素人が授業を受けてただけですけどね。でも撫子さんの力になれてよかったです。
{character:抚子}もうちょっと授業で使うスライドに手を入れてみるよ。あんたは次にこれをやってみてくれ。
そう言って撫子さんはノートパソコンを持ってきた。
{character:player}これは?
{character:抚子}筆記試験の問題集だ。ちゃんと合格できるよう頑張れよ。
{character:player}あの、今って予行練習ですよね? このテストもこなす必要が……?
{character:抚子}今日は予行練習とは言え、あんたは栄えあるあたしの生徒第一号だ。最後まで責任をもって講習をやっていくつもりだよ。それに、あんたの結果を参考に問題集の内容も調整したいしね。
{character:player}ありがたいですけど……
{character:抚子}なんだ、百問かそこらしかないのに、怖気付いたか?
言ったな~!
撫子さんの授業の成果、とことん確かめてやろうじゃん!
「問題数・正解数共に規定数を達成しました。」とのメッセージを見て、私は内心得意気になった。
{character:player}撫子さん、こっちはおわ……。
頭を上げて撫子さんを呼ぼうとしたら、彼女は教壇の後ろに座って真剣に資料に向き合っている。
その真剣な姿を見て、私は彼女が作業を終えるまで静かに待とうと思った。
撫子さんはエンターキーを叩き、集中していた表情を和らげた。軽く一息ついて、こっちの方を見て、ちょっと意外そうな表情をした。
{character:抚子}悪い、待たせたね。
{character:player}いいえ、そんなことありませんよ。資料、出来ました?
{character:抚子}あんたが解き終わる前に片付けようと思ってたんだけど、つい夢中になっちまった……でもなんでわざと黙ってたんだ?
{character:player}いや、撫子さんがあんまりにも真剣そうだったので、さすがに話しかけられなかったといいますか……。
撫子さんは仕方ないなという表情をした。
{character:抚子}とはいえ……お前って、やはり存在感無いよな。全然視線に気づかなかった。
……そ、それは私に効くからやめてくれ。
{character:player}そ、そんなことより次行きましょうよ次、実技訓練もやるんですよね? 楽しみにしてたんです!
{character:抚子}ああ、やろうか。そうだ、実技のコースは屋外と屋内があるけど、どっちにする?
え、選べるの?どっちにしよう……
既にバイクの免許を持っている私は本来対象外だけど、一応リプライを残しといた。
さて、今日はどっかの麻雀会館で週末を満喫しようか、等と考えていると……
♪♪——スマホが鳴り出した。
{character:抚子}撫子さんからのビデオ通話……? 慌てて出る。
{character:player}こんにちは、撫子さん。
{character:抚子}よっ、こんにちは、{var:player_nickname}。リプを見た、文字で説明するの面倒だから直接話そうと思ってさ。
なるほど、彼女らしいやり方だ。
撫子さんが抽選企画のことを話してくれた。
この前、コレクターズアイテムの限定販売ヘルメットを買ったせいで、今月と来月の生活費がピンチになった撫子さんは、この教習所で雇われ指導員として働きたいと思っている。
で、明日が指導員資格の面接で、教習のテストが行われる日なので、今日は顔見知りの人と予行練習をしておきたいと。
{character:player}つまり、秘密の賞品は、撫子さんの生徒になれるチャンスってことですか?
{character:抚子}そういうこと。ま、急に思いついたことでさ、千穂理に聞いたら抽選で人を集めろってアドバイスしてくれたんだ。リプライ率を高めろだの、ターゲティングをより正確にだのとよくわからなかったけどね。
{character:player}確かにみんな抽選っていう言葉に弱いですしね……。
{character:抚子}でも残念なことに、実は未だにこの賞品を受け取ってくれる奴が現れないんだ。
{character:player}そうなんですか? リプライツリーを見た感じ、結構応募者多かったのに?
{character:抚子}確かにそうなんだけどさ、電話でこのことを話したら来られる奴がいなくなった。次の当選者に譲るって。参っちまうよ。
{character:player}あはは……バイクの免許って、手を出しにくそうだなって思われがちですもんね。
{character:抚子}バイクの楽しさを理解できないなんて、あいつら損してるよ。ま、という訳で、この抽選企画はなかったことにしようと思ってる。他の方法で付き合ってくれる人を見つけられないか考えてみるよ。聞いてくれてありがとね。それじゃ……
{character:player}あ、そうだ。
{character:抚子}ん? どうした?
生徒が見つからなくて困っているのなら、もし出来ればやってみたい……そう思った。
{character:player}予行練習だけなら、その条件を満たさなくてもいいんじゃないですか?
{character:抚子}んー……?
{character:player}ほら、バイクに乗れる人って、絶対教習所に通ったことがあるはずじゃないですか。 そういう人はそういう人なりに、撫子さんの予行練習にも何かしらのフィードバックが出来るはずです。
{character:抚子}確かにそうだけど……完全な素人とは知識の差があるからな。
{character:player}受講する人がちゃんと意識して聞くことさえ出来れば、きっと初心者目線でのフィードバックも出来ますよ。
私なりにではあるけど、なかなか客観的なアドバイスが出来たんじゃないか?
{character:抚子}そうだね……。
画面の向こうの撫子さんはしばらく考え、画面を操作する。数秒後、撫子さんとのチャット欄に位置情報が共有された。
{character:抚子}そこまで言うなら、{var:player_nickname}、あんたが来てくれないか。あんたなら最適だ。
{character:player}はい?
共有された場所に向かうと、ありふれたビル街に到着した。看板には「バイクカレッジ一飜」と書かれている。
撫子は教習所の入口前で、私に向かって手を振っている。
{character:抚子}や、{var:player_nickname}君。
{character:player}どうも、撫子先生。私なら絶対来る……とか思ってました?
ビデオ通話で、この後特に予定はないと話したら、「じゃあ入口前で待ってるから」と一言だけ残して通話が切れた。
{character:抚子}上手く説明できないけど、{var:player_nickname}なら来るって思ったんだ。それとも何、あたしの誘いを断るつもりだったのかい?
それはない。
通話が終わった後、何かに駆り立てられるかのようにすぐさま出発したし。
きっと撫子さんの誘いは断れないんだ、私は。
{character:抚子}フッ、では{var:player_nickname}君、バイクの世界へようこそ。
一飜市では、二輪車の免許を取得するには筆記試験と実技試験の二科目を突破する必要がある。今日はどうやら筆記試験の勉強から始まるようだ。
教習所の広い教室の中、私と撫子さんの二人きり。
撫子さんは用意した指導案を持って教壇に立ち、授業を始める。この授業では、バイクの各パーツについて勉強しつつ交通規則も覚える必要がある。
撫子さんが、今回の教習のためにかなり準備してきたことが伝わってきた。一飜市内の交通安全ルールは指導案を見ずに説明して、その後はバイクのパーツや機能についてノリノリで解説している。私もつい熱くなって、一緒に雑談を……
って、違うだろ。
{character:player}撫子先生、ちょっと待ってください。盛り上がっているとこ悪いんですけど、初心者にこんな話をしてもついて来れないと思いますよ?
{character:抚子}例えばどんな所が?
{character:player}さっき「ノッキング」について話してましたけど、それが何なのかをまず説明してあげないと……。
{character:抚子}最低回転数時でのカラカラ音だって説明したじゃ……
{character:player}ほら、最低回転数も説明してなかったですよね?
{character:抚子}あー。じゃあ、そこも説明することにしよう。アイドリング状態での回転数って説明すればわかってくれるか?
{character:player}「アイドリング」自体についてももっと噛み砕いて話して欲しいかも……。
{character:抚子}そこから!?
{character:player}そこは信用してくださいよ。
{character:抚子}ま、そうだな。あたしは子供の頃からバイクに触ってきたから、こういう用語がどれくらい一般の人に浸透してるのかよくわかってないんだよな…。
{character:player}だから、一般人である私がここにいるんでしょう?
{character:抚子}そいつは頼もしいな。
撫子さんと話し合いながら、指導案を見直す。
窓から教室に差し込む日差しが、徐々に傾いて来た。
一般人代表である私のフィードバックを受け、撫子さんは早々に修正の方向性を決めて、真剣に指導案を直し始めた。
撫子さんが設定したアラームが鳴り、そこで私たちはやっと一時限目が終わったことに気づいた。
頭を上げて撫子さんを呼ぼうとしたら、彼女は教壇の後ろに座って真剣に資料に向き合っている。
その姿を見て、私は彼女が作業を終えるまで静かに待とうと思った。
撫子さんはエンターキーを叩いて、集中した表情を和らげた。一息を軽く吹いて、こっちの方を見て来たら、ちょっと意外そうな表情を見せた。
{character:player}どう? 指導案、出来ました?
{character:抚子}悪い、少しだけ直そうと思ってたんだが、つい夢中になっちまった……でもなんでわざと黙ってたんだ?
{character:player}いや、撫子さんがあんまりにも真剣そうだったので、さすがに話しかけられなかったといいますか……。
撫子さんは仕方ないなという表情をした。
{character:抚子}とはいえ……お前って、やはり存在感無いよな。全然視線に気づかなかった。
……そ、それは私に効くからやめてくれ。
{character:player}そんなことより次行きましょうよ次、実技訓練もやるんですよね? 楽しみにしてたんです!
{character:抚子}ああ、やるぞ。あ、実技のコースは屋外と屋内があるけど、あんたは免許持ってるしやっぱり屋外の方がいいよな?
ちょっと屋外に出て、新鮮な空気でも吸いましょう。
簡単に昼食を済ませて、撫子さんが予約していた屋外のコースに向かった。
ここはバイク専用の屋外サーキットらしく、訓練用の道路の周囲にはよく整備された芝生が生えている。景色が良い上に、他の車両が侵入してくる心配もない。
そして今、猛獣の唸り声のようなエンジンの轟音が鳴り響き、黒光りする金属の獣がフィールド上を疾走している。
その猛獣を熟練の技で乗りこなしているのは、今日私をここに誘った女性ライダー・撫子さんである。
{character:抚子}朝は待たせちまったからな、お返しにあたしの走りを見せてやるよ。
{character:player}いいね!
十分ほど前、撫子さんはそう言ってバイクに乗った。私としてもそれを拒む理由はなかった。
撫子さんが縫うように曲がりくねったルートをバイクで走破し、最後は綺麗なドリフトを決めて私の前に止まった。ヘルメットを取り、長い髪を後ろに流して、撫子さんは私の方に目を向けた。
{character:player}おぉ……!
サーキットの周りにいたバイク好きたちの喝采を聞き、私はワンテンポ遅れて撫子さんに拍手を送った。
{character:抚子}フッ。どうした、ちょっと疲れたか?
{character:player}撫子さんの走りを間近で見て、正直感動したというか、美しかった……です。
自分の貧弱な語彙力が憎い。
{character:player}バイクに関しては、たとえ自分がどれだけ頑張っても、撫子さんほど美しく、強くはなれないな……って思いました。
撫子さんはなぜか笑い出した。
{character:抚子}体を伏せるのは風の抵抗を減らすため、曲がる時傾くのは摩擦を増やして走行を安定させるため。そして綺麗なポーズで乗るのは筋肉を程よくリラックスさせ、長く乗っても疲れないようにするため。どれも美しく見せるためじゃないよ。
{character:抚子}ま、「美しい」と思ったってことは、あたしがバイクをちゃんと乗りこなせてるってことかもね。対象を完全に掌握してるプロって、オーラがすごくて圧倒されるだろ。
{character:player}掌握……確かに、カリスマ性を高める一番の方法だってよく聞きますね。
{character:抚子}あんたはあんたで、雀卓で流れを掴んだ時なんかは周りから注目されてるよ。
{character:player}え、本当ですか……?
{character:抚子}あたしが適当に人を褒めるような奴だと思うかい?
{character:player}……ありがとうございます。そう言えば、午後は実技訓練の基礎をやるんですよね? そろそろ始めましょうよ。
{character:抚子}そうだね。予行練習だけど、ちゃんと意見ちょうだいよ。
{character:player}任せて下さい!
実技訓練が始まり、撫子さんは朝よりも更に生き生きと、バイクについて講習を始めた。
訓練のメニューに沿って、一歩ずつバイクに乗るための知識を分かりやすく教えてもらう。彼女の指導通りにバイクに乗り、自転車並みのスピードで直線を走った。これで、初日の実技訓練の目標を達成した。
横で見ていた撫子さんも、嬉しそうに私に拍手を送ってくれた。
{character:抚子}よく出来たじゃないか、見直したよ。
{character:player}適当に人を褒めないんじゃなかったんですか。
{character:抚子}いちいち突っ込むんじゃないよ。さ、次行くよ。
実技パートの完成度はやはり高い。もう少し言い回しとか専門用語について変えれば完璧だと思う。明日の面接も、これでうまく行くはずだ。
最後は今日出た意見について討論して、楽しい雰囲気の中で実技訓練を終えた。
一飜市の中心部に戻ってきた頃には、辺りはもうすっかり暗くなっていた。
{character:抚子}もうこんな時間か、早いな。せっかくだ、一杯付き合ってくれないか?
{character:player}明日は面接当日でしょうが……どうしようかな。
{character:player}屋外もいいですけど、初心者向けなら室内の方がいいと思います。
{character:抚子}ちゃんと考えてくれてるんだ、ありがとね。じゃあ、ついてきてくれ。ここのコースを使おう。
{character:驾校教练}なるほど、お前が撫子ちゃんの生徒第一号だな。よく来た! ここを自分の家だと思って、なんでも好きに使っていいからな!
{character:player}あはは……ありがとうございます。よろしくお願いします。
ベテランらしき教官と挨拶を交わして、私は撫子さんに目で問いかけた。
{character:抚子}あたしにバイクを教えてくれた教官、大先輩だ。あたしの父さんはここでバイクの修理もやってて、ここの教官はだいたい父さんとは知り合いなのさ。先輩たちのおかげで面接のチャンスも貰えたんだよ。
{character:player}そうなんですか。
{character:驾校教练}ははは、撫子ちゃんも謙虚になったもんだ! ま、この子なら面接なんざちょちょいのちょいだ。でも昔から完璧主義でな、こうやって予行演習もやっちゃったりして、あんたには苦労かけるな。
{character:抚子}おじさん、ちゃん付けはそろそろやめてくれって何度も言ってんのに……。
{character:驾校教练}はははっ! そりゃ今更やめられねぇよ、ちっちゃい頃からずっと見てきたからな! あのタイヤくらいしかなかった娘が、こんなバイクマニアの大人になるとは……高校行ってた頃の撫子ちゃんにも教えてやりたいよ。
{character:驾校教练}そうだ、高校の卒業写真、確かお前の親父から送って貰ったような……どれどれ……。
{character:抚子}ちょ?!
先輩教官がスマホを取り出し、写真を探そうとするが、撫子さんに止められた。
{character:抚子}い、今はそれを見てる暇は無いから! おじさんもまだやる事があるんだろ、そろそろ行きなよ!
{character:驾校教练}お、おう……。じゃ、あんたにはまた今度見せるよ。撫子ちゃん、訓練場を出る時は戸締りよろしくな!
撫子さんは気まずそうに微笑んで返事した。
そんなエピソードも挟みつつ、私たちは本格的に実技訓練を始めた。
撫子さんは明らかに朝の授業より生き生きとしている。
訓練のメニューに沿って、一歩ずつバイクに乗るための知識を分かりやすく教えてもらう。彼女の実演を見れば、初心者でもすぐ出来るようになりそうな気がした。
{character:抚子}続いて、{var:player_nickname}君にも初回教習をこなしてもらおうか。
そんな風に改まって言われると、ついさっきまで自信満々だったこっちもちょっと緊張してくる。
{character:抚子}大丈夫、あたしがついてる。
それなら一安心だ。撫子さんの指示通りにエンジンを起動し、直進とコーナリングをそれぞれこなした。
横で見ていた撫子さんも、嬉しそうに私に拍手を送ってくれた。
{character:抚子}よく出来たじゃないか、見直したよ。
{character:player}初歩的なことだけなのに、大げさですよ。
{character:抚子}初心者は褒めて伸ばした方がいいって聞いたからな。それに、バイクに乗る時に一番大切なものは自信だから。
{character:player}それは確かに。撫子さんはいつもバイクを軽々と乗りこなしてますけど、いざ自分で乗ってみるとやっぱり怖かったです。特に、初めて一人であの風を感じた時は。
{character:抚子}そうだな。その恐怖を克服して初めて一人前のライダーになれる。バイクを自由自在に操って、バイクにしかない楽しみを味わえるようになるんだ。
その話をする間、撫子さんの目はキラキラと輝いていた。
{character:player}撫子さんは、どうやって克服したんですか?
{character:抚子}んー……ひたすら走って慣れるしかないと思うけど。でもバイクには危険が付き物だし、怖がるのも仕方ない。あたしも、下山する時雹に降られて、ぬかるんだ山道でスリップして、脇の森に突っ込んだことがあるし。
{character:player}ええ? それからどうなったんですか?
{character:抚子}それから? えーと。ドライブレコーダーが生きてたから、カバー・メーター・エンジンの修理代、あとタイヤ交換代は全部保険で済んだよ。
{character:player}いやいや、撫子さんはどうなったんですか、バイクじゃなくて。
{character:抚子}あたし? ……確かどっか痛めたけど、忘れたな。
バイクのどこが壊れたのかは覚えてるのに、自分の怪我は覚えてないんだ……。
{character:抚子}何だその変な顔は。そんなに驚くようなことかい?
{character:抚子}負傷する覚悟がなければライダーにはなれないし、そんなの一々覚えてられないよ。でもバイクの故障ははっきり覚えてる。大事な仲間が怪我したら心が痛むからね。
仲間か……。まあ確かに、私も大事にコレクションしている麻雀牌にヒビでも入ったら、自分が怪我するより悲しいかも。気持ちはわかる。
{character:抚子}もちろん、保険が降りない場合の修理費用が強烈なのも理由の一つだ。
急にリアルだな!
{character:抚子}この複雑な気持ち、わからないのも仕方がないよ。気にするな。
{character:player}……はい。仲間か……ああでも、ツーリングはいいですよね。非日常の中で見る景色ってすごく気分をリフレッシュできますし。そんなツーリングに欠かせないバイクだから、仲間と思うのもわからなくはないです。
撫子さんはそれを聞き、またキラキラと輝かせた目をこちらに向けた。
{character:抚子}あんたはそれをわかってくれれば十分だ。さ、引き続き訓練に集中してくれ。
{character:player}わかりました。
実技パートの完成度はやはり高い。もう少し言い回しとか専門用語について変えれば完璧だと思う。明日の面接も、これでうまく行くはずだ。
最後は今日出た意見について討論して、楽しい雰囲気の中で実技訓練を終えた。
一飜市の中心部に戻ってきた頃には、辺りはもうすっかり暗くなっていた。
{character:抚子}もうこんな時間か、早いな。せっかくだ、一杯付き合ってくれないか?
{character:player}明日は面接当日でしょうが……どうしようかな。
{character:player}いいですよ、おすすめのお店とかありますか?
{character:抚子}ついてきな。
{character:抚子}ぷはーっ。仕事終わりのビールより疲れに効くもんはないよな!
{character:player}お疲れ様です。明日の面接、頑張ってください。
{character:抚子}お疲れさん。今日はおかげで助かった。でも……
撫子さんは妙な沈黙に入った。
{character:player}えっと、どうかしました?
{character:抚子}まぁいいか、忘れてくれ。今夜は楽しく飲もう!
{character:player}はい、思い切り羽を伸ばして、明日に備えましょう。
{character:抚子}羽を伸ばすといえば、今度一緒にツーリングに行かないか? 最高にリフレッシュ出来るよ。
{character:player}それは嬉しいです、けど……。
{character:抚子}ん? 嫌かい?
{character:player}もちろん嫌じゃないです。むしろめちゃくちゃ行きたいです。けど、撫子さんについて行けるか心配で……。
{character:抚子}そんなの気にすんな。ツーリングはレースじゃない、楽しんだもん勝ちだからね。楽しみにしとけよ。
{character:player}あはは、そうですよね。じゃあ、楽しみにさせてもらいます。
撫子さんと、旅の約束をした。
{character:player}明日は面接ですし、今日はちゃんと休んだ方がいいんじゃないですか。撫子さんも今日は疲れてるでしょうし。
撫子さんは少し残念そうに笑った。
{character:抚子}そうだな。じゃあ、また今度一緒に飲もう。今日はお疲れ。
{character:player}はい、ぜひ。お疲れ様です。
撫子さんに別れを告げた。
家に帰って横になると、一日分の疲れが一気に襲ってきた。
私は節々の疲労感に耐えて腕を動かし、スマホを操作して寝る前に締めの麻雀をしようとした。
すると、突然撫子さんからビデオ通話の着信があった。
急いで通話に出る。
{character:player}撫子さん?
{character:抚子}うん……あたしだ。
画面向こうの撫子さんは何か言いたそうにしている。
{character:player}こんばんは、何かありましたか?私でよかったら何でも言ってください。
{character:抚子}いや、朝のことを思い出して……
{character:player}朝のこと?
{character:抚子}ああ、夢中になるあまり、あんたの都合を考えるのを完全に忘れちまった。今思うと悪かったなって。こういうとこは、やっぱり直したほうがいいな。
{character:player}そこは撫子さんらしさでもあるし、あまり気にする必要ないと思いますけど……。
サバサバしてる撫子さんだけど、意外と繊細な一面もあるんだなあ。
{character:player}撫子さんの高い集中力は美点だと思ってます。バイクに乗ってる時、即座に状況を判断してコントロール出来ているのも集中力があるからだろうし、私も麻雀で長考する時は周りが見えなくなることありますし。
撫子さんは静かに私の話を聞き、軽く笑った。
{character:抚子}あんた、あたしがわざわざ謝ってんのに、なんでこっちを慰めるんだよ。
{character:抚子}ま、とにかく、次からは絶対あんたの都合とか無視したりしない。信じてくれ。それと、今度は――
撫子さんの音量が急に大きくなってびっくりさせてくれた。どうやらマイクに近づいてきたようだ。
{character:抚子}{var:player_nickname}、一緒にツーリング行こう。二人きりで。
{character:player}それは嬉しいですけど……。
{character:旁白}なるほど、撫子さん、帰ってから一人で飲んだのか。
{character:抚子}けど? けど何? 嫌なのか?
{character:抚子}あー。そうか、あんたやっぱり怖いんだね。あたしの後ろをあんたのために空けといてやる、それなら嫌だなんて言わないよな。
{character:player}あはは、そうですね。じゃあ、楽しみにさせてもらいます。
ほろ酔い気分の撫子さんと、大真面目に旅の約束をした。
九つの夕日を追い求めて
絆LV5で開放
Possible Endings
Scenario Script
Spots 15, Scenes 383, Choices 6, Endings 0
それはまた別の、晴れた週末。予兆も何もなく、私はまたしても、家を出るやいなや撫子さんにバイクの後部座席に乗せられた。
{character:抚子}ヘルメットをきちんと被りなよ、あと私の腰をしっかり掴んでおきな。
{character:player}デジャビュが……今回はどこへ?
{character:抚子}今度こそ後悔させないから。
{character:player}このやり取りも前にしたような……。
ブウウン——。
エンジンが唸りをあげ、私の声を完全にシャットアウトした。
一飜市の環状線を通過し、交差点で信号待ちをする間、撫子さんから今回の目的地について聞き、現地の様子をざっくりとイメージした。
一飜市の郊外にある広い野原で、曲がりくねりながらゆったりと流れる川がいくつか流れていて、夕暮れ時にはいくつもの夕陽が水面に反射する光景が見られる場所らしい。
{character:player}まるで絵に描いたみたいな黄昏なんだ。
{character:抚子}そう、絵のように美しいところさ。ところで、{var:player_nickname}はあの時の約束を憶えてるかい?
{character:player}二人でツーリングだっけ?
{character:抚子}ああ、昔行った場所を昨夜リストアップしたら、そこがぴったりだと思ったんだ。そしたら待ちきれなくなって、今日行っちまおうと思ってね。
{character:player}撫子さんの「思い立ったら即行動」にはもう慣れっこだよ。それで、具体的にはどこにあるの?
{character:抚子}あたしに付いてくればいい。
{character:player}わかった。任せたよ。
しかし、市街地から出てすぐ、道標のない分かれ道で撫子さんはバイクを止めた。
{character:抚子}……。
{character:player}あれ、どうしたの?
{character:抚子}いや、この前来た時は一本道だったはずなんだけど…。
{character:player}そう……?
いかにも真新しい道路を見て、私は違和感に気づく。
{character:player}この前って、どれくらい前?
{character:抚子}多分……五、六年くらい前だな。
{character:player}ご、え?
{character:player}……まあ、それくらい経ってたら道が変わっててもおかしくないね。私が後ろでナビするから、目的地の名前とか住所を教えてくれる?
と、ナビアプリを開いて目的地を検索しようとした私に、撫子さんは頭を横に振りながら答えた。
{character:抚子}適当に走ってったから、大まかなルートしか覚えてない。
{character:抚子}……そうだ。
{character:抚子}今日は思いつくままの道を行こう。
{character:player}んん?
{character:抚子}そうと決まったら、さっさと選ぶとしようか。{var:player_nickname}はどっちへ行きたい?
{character:抚子}……。
撫子さんはこの案で行こうと決めたらしい。こうなったらもう選ぶしかない。
{character:player}そうだな……麻雀だったら左は上家の席だよね。手が一番読み辛く、だからこそ一番ワクワク感がある方向だから……左に行こう。
{character:抚子}OK。あんたらしい面白い考え方だな。あたしもワクワクして来たよ。
左の道は決して走りやすい道ではなかった。舗装されていない路面に不揃いな石ころが露出した砂利道で、私たちのバイクが順調に走っていられるのは、撫子さんの運転技術のおかげだ。
でも路肩で転倒しているバイクは私たちほど幸運ではなかった。撫子さんはそのバイクの前に停まり、隣で困り果てているライダーに話しかけた。
{character:抚子}よ、手伝おうか?
{character:车手}わぁ!? あ、先輩ライダー……! どうか助けてください……!
撫子さんのいかついバイクとオーラに圧倒されたのか、目の前の男性ライダーがサングラスを取って泣いて喜び、「やっと助けが来てくれた」とでもいうような表情をした。
撫子さんは相手のバイクを検分し、すぐ故障した場所を特定した。
時間を節約するため、撫子さんはライダーに予備パーツを掃除させて、自分はリアボックスから工具箱を持ち出してこの場で修理をしようとしている。
そんな手慣れた様子の撫子さんに、自分が出来ることは何かないだろうか。
周囲の人が言う「立入禁止区域」こそ、主人公たちが探している目的地……ロードムービーでよくある展開だ。それに、今諦めるなんてもったいない。
{character:player}もう少し、先へ進みたいな。撫子さんは?
{character:抚子}あたしもだ。危険って聞いて怖気づくのも性に合わないし、この道ならまだあたしのテクでなんとか出来る範囲だから、とりあえず進めるだけ進もう。
そう言って、私達は再び前へ走りだした。
撫子さんの言った通り、その先の道路は、彼女の運転技術のおかげで、平地同然とは言わないまでも無事に進むことが出来た。しかし、空が暗くなるまで進んでも、私たちが探しているような景色には出会えなかった。と同時に、周りの景色がより一層物寂しくなってきた。
{character:player}いや、というか、夏なのに日が暮れるの早すぎない……?
腕時計によれば、日没までまだ時間があるはずなのに。
{character:抚子}まさか……。
ゴロゴロと、大きな音が空に鳴り響く。頭を上げるとさっきまで晴れた夏の空は雨雲に覆われていた。
{character:player}いやいや急すぎないかー!?
{character:抚子}ゲリラ豪雨が来るぞ。しっかり捕まって!
撫子さんはスピードを上げた。振動と突風で、私は撫子さんにしがみつくしかなかったが、サイドミラーに映った空をちらりと見た。
頭上の空は今真っ二つに分かれている。前方は鮮やかな夏の晴れた空、後方は雷鳴轟く真っ黒な雲。もくもくと沸き立つ雲から降り注ぐ雨のカーテンは私たちの来た道を埋め、不幸にもにその境界線はどんどん私達に迫ってきている。
スリリングな光景に私は言葉を失った。
しかし撫子さんは動じる様子もなくスピードを上げた。私の表情をサイドミラー越しに見たのだろうか、風と雷とエンジンの轟音が鳴り響く中、彼女のよく通る声が私の耳に入ってくる。
{character:抚子}よくあるこった。自然とのレースだと思えば気楽で面白いよ!
{character:player}気楽って、そんな余裕どこから来るの!?
そこまで言うってことは、勝てるってことだよな。
{character:抚子}ははっ、絶対に勝てないレースだから気楽に参加出来るってことさ!
{character:player}それってどういうーー。
次の瞬間、私たちはずぶ濡れになった。
なるほど、さすがの撫子さんも自然には勝てないってことだ。気楽に参加出来るレース……そういう前向きな考え方も彼女らしいというべきか。
{character:player}いや、もうわかったわ。
{character:抚子}でも今日はあんたがいるし、いつもよりもっと負けず嫌いで行ってやろう!
撫子さんはさらにスピードを上げ、雨のカーテンを突き破った。
カーブの続くオフロードをバイクが黒い稲妻のように駆け、猛追する豪雨の前線はバイクを今にも飲み込もうと追いかけている。こんなシーン、真上から撮ったら絶対かっこいいよなってつい思ってしまった。
{character:player}はぁ……はぁ……。
振り落とされないように撫子さんの体とバイクにしっかり捕まり、アドレナリンのせいで心拍数はずっと高いまま。撫子さんの体もいつもより緊張で強張っている、今全力を出して逃げているってことだ。
もちろん、雨雲の追跡は止まる気配がまったくない。なんなら私の背後に幾度となく冷たい雨水の気配がした。
{character:抚子}……そうだ。
すると、撫子さんは減速した。前方を見ると、草木に紛れて一軒の建物が姿を現した。
{character:player}撫子さん、あれ……民宿かな?
{character:抚子}ああ、なかなかいい感じだな。
{character:player}こういう大自然に突然出てくる民宿も、ツーリングあるある?
{character:抚子}そんなわけあるか。でもあそこに行けばとりあえず雨には勝てそうだね。入ってみるかい?
私の答えは……
こんな状況で進み続けるのなんて狂人のすること。雨の中、スピードを上げて走るのも危険すぎる。ここは民宿に入って雨をしのいだ方がいい。
{character:player}入っちゃおう!
{character:抚子}よし!
豪雨に完全に飲まれる前に民宿の駐輪場に入り、屋根の下へ避難出来た。
{character:抚子}ふぅ~……。
{character:抚子}ふぅ~……。
撫子さんと同時に深く息を吐いた。お互いの顔にも疲れの色が見える。
{character:抚子}どうだい、面白いレースだっただろ?
{character:player}すごい迫力だったけど、もういいかな……。
{character:抚子}そりゃそうだな。
そんな話をしていると、ドアベルの音と共に民宿の扉が開かれた。
両開きのドアがひとりでに左右へと開き、広々としたロビーが目に飛び込んでくる。早い時間だからか、ロビーに明かりもついておらず、この大雨の中で暗くおどろおどろしい雰囲気が漂う。
{character:player}なんか怖くない……? へ?
しかし撫子さんは迷わず中へと入った。
{character:抚子}雨に濡れて寒いし、ここの人にタオルとドライヤーを借りよう。……それと、{var:player_nickname}。あんたがそこに立っているといつまでもドアが開いたままだ。雨が吹き込んできちまう。
{character:player}……あっ!
先程のレースでショートした頭が、今頃になって頭上のセンサーを認識した。
ロビーの奥のフロントで、この民宿の主人が私たちを待っていた。ドアベルが私達の到着を知らせたらしい。主人は水浸しの私たちを快く迎え、先に衣服と髪の毛を乾かすように、と浴場を案内してくれた。
浴場を出てロビーに戻ると、先に出ていた撫子さんは主人と談笑している。テーブルの上には綺麗なお菓子とお茶が用意されていて、温白色のライトに照らされていい雰囲気だ。
{character:旅店老板}さ、温かいお茶で体を暖めましょう。
{character:player}本当に、ありがとうございます。
{character:旅店老板}いえいえ。では、私はこれで。
主人はソファから立ち上がり、足取りも早く裏に戻っていった。私は撫子さんの隣に座った。
{character:抚子}……あのご主人、すごい。
先程の主人との雑談が、撫子さんの琴線に触れたようだ。彼女にしては珍しく、羨ましそうな表情を見せている。
{character:player}二人は何を話してたの?
{character:抚子}ああ、ここで民宿を開業した経緯を聞いていたんだ。
話によると、ここの主人は撫子さんの学校の先輩で、三年前までは一飜市で働いていたサラリーマンだった。変わり映えしない毎日に飽きて昇進したばかりの仕事をやめ、この古民家を買ってリフォームし、民宿として開業したらしい。
{character:抚子}あたしもそんな風にサクッと仕事辞めたいけど、欲しいヘルメットがまだまだたくさんあると思うとなかなか踏ん切りがつかなくてさ。
{character:player}え、そうなの?
{character:抚子}何だ?
{character:player}な、なんでもない。
撫子さんって、ちゃんと定職に就いてたのか……知らなかった。でも確かに、バイクって結構お金がかかるもんね。
{character:player}でもさ、仕事をやめて民宿を始めたのはいいけど、なんでこんな誰も来なそうな所に……?
{character:抚子}観光名所に開いたら、忙しくて会社に通勤するのと大差ないからじゃないか?
{character:旅店老板}その通りです。
ちょうどこのタイミングで、主人が戻ってきた。
{character:旅店老板}それと、ご存知の通りこの辺りの道は舗装が悪くて、ツーリングやドライブで来る人が危険な目に遭うこともしばしばです。
{character:旅店老板}私が会社員時代にここへ初めてドライブに来た時、ここに休憩出来る施設があったらいいのにと思ったので、ここに決めました。
{character:player}そうだったんですか。
{character:抚子}先輩らしいね。
{character:旅店老板}同じ旅好きとして力になりたいだけですよ。そういえば、撫子さんが探されてる場所、ここではありませんか。
主人は裏から持ってきたスマホを私たちに見せた。スマホの画面には夕日の写真が表示されていて、撫子さんが言ってたロケーションと完全に合致している。
{character:抚子}そう、ここだ! やっぱりこのあたりだったんでしょうか?
{character:旅店老板}はは、それについてですが……お二人とも道を間違えていらっしゃいますね。
主人は笑いながらメモとペンを取り出し、高速道路からここまでのマップを書いてくれた。マップには私たちの現在地と、探している目的地も描かれている。
{character:player}こ、これは……。
最初の分岐点でもう片方に行ったら、今頃そこに着いてたってことだ……。
{character:player}そこから間違っていたのか……。
{character:抚子}ま、勘で走ってればこういうこともあるさ。
{character:旅店老板}そうですね。あそこは観光地としての開発計画が立ち上がってからだいぶ道が変わりましたので、間違えてここに来る観光客も少なくありません。
{character:抚子}観光地?
{character:旅店老板}ええ、最近SNSで一気に話題になったらしいですよ。観光客にも人気ですし、二人とも知らなかったのは逆に珍しいくらいですね。
{character:抚子}バズってるとこは避けがちで、この手のはいつもスルーしてるんです。でも、この夕日は本当に綺麗だったので……友達ともう一度見てみたくて。
{character:旅店老板}そうでしたか。それなら今日はまだ見られるかもしれませんよ。私の経験からすると、この雨は長くてもあと30分くらいあれば止むと思いますし、それから行けば夕日に間に合います。雨が止むまではここで休んでください。
主人はそう言って、あくびを噛み殺した。
{character:旅店老板}私も少し休ませていただきます。お二人ともゆっくりくつろいでください。
主人は再び裏に戻り、広いロビーに私と撫子さん二人きりになった。
窓の外は相変わらず雨がザーザーと降り続けている。お茶の香りを静かに楽しみながら、時間の流れが遅くなったんじゃないかと錯覚する。
……雨が止んだら、あの場所へ行くかどうか。
{character:抚子}{var:player_nickname}、雨が早く止んだらそこに行くか?
それを撫子さんに言おうと思った時、彼女に同じことを言われた。
{character:player}撫子さんおすすめの景色だし、私としては見ないと気が済まないな。
{character:抚子}そうだな。ここで雨の音を楽しむのもいいけど、雨上がりの夕焼けはもっとすごそうだしな。
{character:player}うん。
雨が止み、瑞々しく新鮮な空気でリフレッシュしながら、私達はちょうど夕暮れ時に目的地の観光スポットに到着した。
{character:导游}本日は「最高の夕日」のためにお越しくださり誠にありがとうございまーす!こちらで展望台の入場券をご購入くださーい!
ついさっきまで走っていたオフロードと違って、ここはちゃんと整備されていて、ルート案内がはっきり見えるし道路も走りやすい。今もこうして、スタッフが案内をしているし。バイクを駐輪場に停めて、撫子さんと一緒に展望台に登った。
目の前に広がったのは、赤く染まった広い草原と輝く湾曲した川たち。夕日が水面を照らし、九つあるようにも見える。撫子さんはこの景色を見て、懐かしそうにしていた。
{character:抚子}どうだ、{var:player_nickname}。あたしが何年も忘れなかったこの景色は?
{character:player}本当に、綺麗だね……スマホの波が手前に無ければ、もっと。
と言い終わるが早いか、他の観光客がすぐ側を通り過ぎ、肩にぶつかった。高く持ち上げられたスマホが余計な反射を生み、画面に映った壮麗な夕日にも観光客たちの頭が映り込んだ。
ここは九つの夕日だけでなく、九百を超える観光客も見ることが出来る……と言うよりむしろ、観光客以外何も見えない。
この小高い丘の上に建てられた展望台は、カメラを持った観光客と三脚に満ちていて、中には自撮り棒で夕日と記念写真を撮る人やライブ配信をしている人もいる。
観光客たちの喧騒は、夕日の景色にふさわしいとは言い難い。展望台から溢れ出しそうなほどの人混みから逃げ出して、撫子さんと二人、後ろ側にある近くの階段に座って休む。
{character:抚子}これだから観光スポットは好きになれないんだ。
{character:player}それ、わかる気がする。
{character:游客}あの……すみません……
若い男性が話しかけてきた。
{character:抚子}……そうだ。
{character:游客}申し訳ないのですが、写真を撮ってもらえませんか……? 一枚だけでいいので!
彼の後ろで、いかにもなペアルックの若い女子がこちらを心配そうに見ている。
なるほどそういうことか。
{character:player}じゃあ、ちょっと行ってくるね。
{character:抚子}ああ。
撫子さんは短く同意した。
{character:player}すぐ戻るから。……さっきに言っときますど、私そんなに撮影上手くないですよ。
{character:游客}記念ですから、撮っていただるだけでありがたいです。
彼のカメラを受け取り、レンズを二人に向ける。画面の中には二人と景色の他に、あちこち行き交う観光客の群れも入っている。しかし二人はお互いのことしか見ていない。その美しく甘い瞬間を、シャッターに納められるよう頑張ってみた。
{character:游客}綺麗に撮ってくださりありがとうございました。そうだ、お二人も一枚撮りませんか?僕、こう見えて写真は結構得意なんです。
{character:player}私達ですか? えっと……。
撫子さんの方に振り向くと、彼女は機嫌良さそうに微笑んでこっちを見ている。
撫子さんを呼んでこようか?
{character:player}そうだなあ……麻雀で考えると、右に座るのは下家。ある程度こっちで打牌をコントロール出来るから……右に行こう。
{character:抚子}その考え方、あんたらしいな。じゃあ、期待するとしようか。
この道はアスファルトに舗装されていて、撫子さんはバイクを軽快に走らせていく。
雲空が爽やかな初夏の空気を身体中に染み渡らせ、暑さもバイクが切り裂く風のおかげで吹き飛ばされる。車と違って「外殻」が無いぶん、肌で外の空気を感じられる。バイクにしかない魅力だよね。
そんな魅力的な旅も束の間、予想外の事態が起きた。
いつの間にか車やバイクがどんどんこの道に合流しており、私たちも包囲されてやむを得ず減速……まさかの渋滞だ。
キキーッというブレーキ音と共に、私たちのバイクはとうとう立ち往生した。
{character:抚子}こんなところで渋滞なんて、何があったんだ?
{character:player}さっきの分かれ道で道間違ったかな……? この感じだと、どう考えても撫子さんが言ってた草原の絶景へと続く道じゃなさそうだし。
私の言葉に、周りの車の運転手たちがぱっとこちらを振り向いた。
{character:抚子}何だ?
{character:抚子}何だ?
え、何事?
{character:路人A}おい、姉ちゃんたちは「九つの夕日」を見に行くつもりなんだろ? この道であってるよ。
{character:抚子}!
{character:抚子}!
並走するバイクのライダーが話しかけてきた。
{character:player}どうしてそれを……?
{character:路人A}どうしてもなにも、ここにいる人は大体そこに向かってるからな。今一番人気のあるスポットだし、あんたたちもネットで見て来たんだろ?
{character:抚子}ん?
{character:路人A}あー、なるほど。姉ちゃんはだいぶ昔に来たことがある、とかだろ? でも最近ネットでバズってな、観光地として開発されたんだよ。
{character:路人A}開発される前はだぁれも来ない穴場スポットだったのによ……。でもあんな絶景じゃ、こうなるのも当然の流れだよな。
{character:player}撫子さんのお気に入りスポット、みんなに見つかっちゃったみたいだね。
{character:抚子}ああ。何か悪い予感がする。
道に従ってようやく目的地に着くと、撫子さんの予感が当たってしまった。
撫子さんの記憶の中の絶景スポットは、展望台など様々な人工物が周りを取り囲み、自由にバイクを走らせることもままならなくなった。
日暮れ時までまだ時間があるのに、大勢の観光客で辺り一帯が混み出した。写真撮影やライブ配信用のカメラを支える三脚があちこちに設置されていて、ますます歩きにくい。
それに加えて、雷雨が突然降り始めたせいで状況は混乱を極めた。私達はやむなく展望台から降りて、観光センターで雨が止むのを待つことに。
……そんな訳で、夕日を眺めようという気持ちは、二人の中から完全に消え去った。
{character:player}「安全第一」だし、事故が多発してるならここは一旦引き返したほうが……。
{character:抚子}そうだね。……自分の目で確かめなければ、本当に危ないかどうかわからないけど。
{character:抚子}ただ、安全第一が大事なのは確かだ。あんたがそういうなら引き返そう、もしかしたら違う道を来ちゃったのかもしれないし。
撫子さんと来た道を戻る。しかし、そろそろ最初の分かれ道かという頃合いで、空の色が一瞬で暗くなった。
ゴロゴロという、雷の音とともに。
{character:抚子}ちっ、ゲリラ豪雨か。
{character:player}なんだって?
前方の空から黒く蠢く雲が近づいてくる。
{character:抚子}これは避けようがないな……雨が降る前に一気に抜けるぞ。
と言いつつ撫子さんはハンドルを強く回し、二人を乗せたバイクが急加速した。
{character:player}うわぁああああ!
しかし、大自然は私たちを逃してはくれなかった。
大雨が降り注ぎ、私たちは一瞬でずぶぬれになってしまった。そんなわけで、これ以上未知のルートを探索することは出来なくなったのだった。
ここまで来たんだ、雨くらいで止まってたまるか!
{character:player}夏だし、これくらいの雨は大丈夫でしょ。このまま突き進もう!
{character:抚子}あんたって、あたしよりもぶっ飛んでる時あるよな。でも……
撫子さんは減速した。
{character:抚子}何だ?
{character:抚子}こんな砂利道を雨の中で走るのはあまりにも危険すぎる。これ以上進めない。安全第一って言葉、覚えてる? {var:player_nickname}君。
{character:player}……ごめんなさい、撫子先生。
そんな話をしている間に、ゲリラ豪雨の前線が私たちに追いつき、全身をずぶ濡れにして去っていった。濡れ鼠でこれ以上旅を続けるのは難しいと判断し、私たちは近くの旅館に入った。
旅館の中に入ると、やる気の無さそうな主人が案内してくれた。
主人の話によると、行きたかった絶景スポットは最初の分岐点で右に行った先にあるらしい。でも仮に今から髪と服を乾かして向かったところで、途中で日が沈むだろう。
結局のところ、雨が止むまで私たちはこの旅館でだらだらと過ごした。
{character:抚子}{var:player_nickname}、雨が早く止んだらそこに行くか?
それを撫子さんに言おうと思った時、彼女に同じことを言われた。
あの絶景スポットについて検索し、スマホを撫子さんに見せた。
{character:player}あの場所、「九つの夕日」って謳い文句で最近は人気がすごいらしいんだ。今行ったところで人混みしか見えないと思う。
{character:抚子}行かないのか。
{character:player}うん。撫子さんって、確かそういう人がいっぱいなところ苦手だったよね。私もネットで写真を見れば満足出来るから。
{character:抚子}確かに苦手だけど……。
撫子さんは珍しく迷いを見せた。
{character:player}なんだって?
{character:抚子}いや、忘れてくれ。それじゃ、雨が止んだら帰ろうか。ふぁ……眠くなってきた。
あくびをして、撫子さんはソファの上で目を閉じて仮眠を取り始めた。特に眠くはなかった私は、何を言いたかったんだろうと考えつつ、旅館の壁に貼られたお客さんの寄せ書きやメッセージを見た。
「一人で見た景色より、二人で歩いた道の方が美しかった」、「今度は彼女を連れて来よう。この絶景を大切な人と分かち合いたいな。」
撫子さんの方を見ると、彼女は静かに眠ったまま。そんな彼女に、「もしかして言いたかったことってこれ?」と聴きたい気持ちをぐっと抑えた。しばらくして雨が止み、私たちも旅館を出た。
まずは撫子さんに手伝えることが無いか聞いてみるか。
{character:player}撫子さん、私に何か出来ることはない?
{character:抚子}いや、ちょっと待っててくれればいいよ。
撫子さんは振り返らず答えた。
{character:player}何でもいいから手伝わせてよ。基本の修理なら私だって出来ると思うし。
しばらくして、撫子さんは言った。
{character:抚子}……あんたにしか出来ないこと、確かにあるね……。
{character:player}任せて!
私がリアボックスから取り出した折り畳み式の踏み台に座ると、撫子さんは満足気に私の肩を叩いた。
{character:抚子}ここに座って、作業が完了するまで待っててくれ。あんたにしか出来ない仕事だ。
{character:player}……え? これ、何もしてなくない……?
さすがの私もこれは抗議せざるを得ない。撫子さんは修理に戻り、背中を見せながら私に答えた。
{character:抚子}大事な仕事だぞ。修理って、一人でやるのと誰かに応援してもらいながらやるのとで結構違うからさ。
{character:player}ふーん。そんな出任せが通用すると?
{character:抚子}親父が言ってたんだけど、誰かに見られながらやると修理の神様がご加護を与えてくれて、よりいい仕上がりになるんだってさ。……あ、今適当に言ってるなって思ったでしょ。
{character:player}絶対適当でしょ。
{character:抚子}あたしも小さい頃は信じてなかったけど、親父はあたしがいる時いつも、あたしに修理してるバイクを見させてたんだ。そうして何度もやってるとさ……
{character:player}やってると……?
まさか本当の話だったとは……。
{character:抚子}やっぱ適当だって分かったよ。あたしが見るか見ないか、いるかいないかなんて関係なく、親父はいつも同じように仕上げられた。
{character:抚子}……。
本当の話じゃなかったんかーい!
{character:抚子}……ハハ。
私の表情の変化を横目で見て、撫子さんは笑い出した。
{character:抚子}でもそんな可愛いあんたを見てると、親父が適当に誤魔化してた理由がわかった気がするよ。
何をわかったんだ……実質的には何も出来なかったけど、修理中ずっと撫子さんが楽しそうだったからいいか。
さすがに修理の手伝いは素人じゃ出来ないだろうし、他に出来ることを探そう。
バックパックにある折りたたみ傘を開き、撫子さんの日除けを作った。
突然暗くなったからか、撫子さんはバイクから私の方に注意を向けた。
{character:player}ごめん、邪魔だったかな。こうした方が涼しいかなって。
{character:抚子}ちょっと細部が見辛くなったな。
撫子さんは掌の上の小さなパーツを見せてくれた。確かに日陰の中では見にくい。
{character:player}ごめんごめん、すぐどかすよ。
と言って、傘をどかした。撫子さんは修理の手を止めて、感動した表情でこちらを見つめてくる。
{character:抚子}ありがとう……。この身長だからさ、誰かに傘を差してもらうなんていつぶりかって感じで……。さっき、ほんの一瞬だけ、あの時の気持ちを思い出した気がするよ。
{character:抚子}……そうだ。
その言い方に、こっちまでドキドキさせられる。あの時の気持ちって、まさか……?
{character:抚子}ガキの頃、お袋に守られてた時の安心感……もう一度体験させてくれてありがとね、{var:player_nickname}。
{character:player}……?
{character:player}そ、それはよかった。
何を期待したんだ自分……!
{character:抚子}ん、やる気が出た。もうちょっと休憩しながら待っててくれ、ちゃちゃっと終わらせるから。
{character:player}うん。頑張って。
実質的には何も出来なかったけど、修理中ずっと撫子さんが楽しそうだったからいいか。
撫子さんの修理が終わり、バイクが元気に復活した。
{character:车手}本当にありがとうございます……! 僕こう見えてズブの素人でして、お二人に会えなかったら今日は押して帰る羽目になるところでした……!
{character:抚子}バイク乗りはお互い助け合うものさ、気にすんな。
{character:车手}なんとお優しい……これ、僕の連絡先です。今後何かあったら、微力ながらお助けしますのでぜひお呼びください。
{character:抚子}それなんだけどさ……
{character:抚子}何だ?
撫子さんは私たちが探している目的地についてライダーくんに尋ねた。しかし、彼は頭を掻いて、いかにも知らないといった表情を見せた。
{character:车手}申し訳ない。このあたりは初めてで、チャレンジし甲斐のあるロードだと聞いて来ただけなんです……。
{character:抚子}そっか。
{character:车手}お力になれずすみません……。
{character:抚子}いいさ。もう少し先の方へ行って探してみるよ。
{character:车手}え、この先ですか?
{character:抚子}そうだけど……。
そういうつもりではないと思うが、撫子さんが真面目な顔をすると、元から凛々しい顔立ちが更に鋭くなる気がする。
{character:车手}い、いえ。この先はもっと走りにくくて、事故も多発してるって聞いたので……。
{character:抚子}そうか、ありがとう。
ライダーは私達に別れを告げて、来た道を戻って行った。
撫子さんは私の方を向いて、この先に行くかどうかを目で問いかけてきた。
目的地の手がかりはないし、この先はより危険になるらしい。この状況、私の選択は……。
{character:player}今度一緒に旅する時は、やっぱり計画を立ててから行こう。
そんな思いを抱きながら、撫子さんとの旅を早々に終わらせた。
郷に入っては郷に従えというし……撫子さんの方に歩いていく。
{character:抚子}終わったか?
{character:player}うん。私達も一枚どうかって。
{character:抚子}ここで? ……、まぁ、いいけど。
と、しばらく迷いを見せたが最後には頷いてくれた。私たちは比較的人が少ない所を見つけ、そこで写真を撮ることにした。
{character:旅客}お二人とも、もう少し近づいて……そうそう、いいですよ!3、2、1、はい、チーズ! もう一枚!……
{character:抚子}……。
結局、何十枚も撮ってもらった。
撮影後。
{character:player}ありがとうございます。
{character:旅客}こちらこそ、ありがとうございました!
二人が満足気に去っていき、私と撫子さんはスマホに送ってもらった写真を見た。
{character:抚子}……。
{character:player}これ……。
ピンボケした背景に、逆光で顔が真っ黒。加えて私と撫子さんの表情も変だ。よく「上手い」って言えたな、お兄さん……。
深呼吸して落ち着こう。
{character:player}記念とはいえ、この写真はさすがに……。
{character:抚子}二度と見ることはないな。
そうそう、それ。
お互いの顔を見て、私たちは同時に笑いだした。
{character:player}あははは。撫子さんだよ、絶対に後悔しないって言ったの!
{character:抚子}こんなことになるとは思わなかったんだよ。あんたといるといつも予想外のことが起きるんだよな。
{character:player}でも、今日は誘ってくれてありがとう。なんだかんだ楽しかったよ。
{character:抚子}そっか。
撫子さんの表情から、嬉しさが伝わって来る。片眉が軽く上がったようにも見えた。
{character:抚子}実をいうと、あたしも楽しかった。
{character:player}じゃあ……また誘ってくれる?
{character:抚子}いや。
{character:抚子}何だ?
{character:抚子}今度はあんたから誘ってくれ。それに旅の計画を練るなんてのは、あたしの性に合わないしもうやりたくない。
{character:player}そこは任せて。
日が完全に落ちるまで、人混みの中で景色を楽しんだ。次はもっといい旅が出来るといいな。
写真は苦手って言ってた気がするから、本当は撮りたいけどここは断っておこう。二人旅なんだし、撫子さんの気持ちも考えなくちゃ。
{character:player}いや、大丈夫です。お気持ちだけありがたくいただきます。
カップルと別れて、私はさっさと撫子さんのところに戻った。
{character:player}おまたせ。
{character:抚子}今どきの若者ってやっぱ写真好きだよね。あんたも一枚撮るか? あたしが撮ってやるよ。
{character:player}それより、完全に日が落ちるまでどっか散歩しに行こうよ。
{character:抚子}せっかく来たのに? ここが一番景色がいいはずだけど。
{character:player}いい景色を見て心身をリフレッシュさせるために旅をして来たのに、この人混みじゃ、どんなにいい景色でもよく見えないよ。
撫子さんはそれを聞いて笑った。
{character:抚子}フン、いいだろう。ついて来な。
{character:player}また「後悔はさせない」?
{character:抚子}何だい、今後悔してるってこと?
{character:player}冗談だよ。今日は楽しかったし、もっと楽しくなると思ってる。
撫子さんの手を取り、行動で気持ちを示した。
夕日を背に、私たちは人混みを抜け、足早に展望台から離れた。
{character:抚子}日が落ちる前にあそこまで行くぞ!
{character:player}わかった!
バイクを起動させ、人が集まる展望台周辺から、開発されていない雑木林の奥へとひたすら走った。
夕日に見守られながら、荒野を走るバイクは更に加速する。地平線は後退しつつ、より広い世界を私たちに見せてくれる。
{character:player}すごい!
思わず声を上げた。
「観光スポット」に行くのではなく、誰も歩いたことのない場所へ、勇気と共にひたすら前進する……これこそが撫子さんの好きなバイク旅なんだろうと思った。
{character:抚子}ここはどうかな。ようやく記憶の中のイメージに近づいて来たよ。
私たちは広い道を外れた崖の上にバイクを止めた。さっきまでいた展望台からそこまで遠くないが、観光地として開発されてはいない。
{character:player}ここからは川が見えないから、開発を免れたのかもしれないね。
{character:抚子}かもな。悪いな、今日は珍しい夕日を見せたかったんだけど、結局ありふれたもんになっちまって。でもあんたなら気にしないか。
「九つの夕日」は確かに絶景だったが、この穏やかな自然と風も清々しい気持ちになって良い。
{character:player}撫子さんと一緒に見られたし、満足満足。今日はありがとう。
{character:抚子}こちらこそだ。誰かと一緒なら何しても楽しい、なんて昔のあたしなら絶対思わなかったけど、今日はちょっと考えが改まったよ。
{character:抚子}二人で行くバイク旅は思ったより楽しかった。また一緒に何かやろうぜ、{var:player_nickname}。
{character:player}喜んで。
ゆっくりと落ちていく夕陽が、とうとう一条の光を残すのみとなった頃、撫子さんはスマホを取り出した。
{character:抚子}そうだ、二人で写真を撮ろう。この一風変わった旅の記念に。
{character:player}わかった!
パシャッ――カメラが私たちと夕日を収めた。
でもなんというか、撫子さんの撮る写真、ちょっと……
{character:player}今までのCatChatに投稿された写真に、人がほぼ出てこなかった理由がわかった気がする。
{character:抚子}なんだよ、リアリティがあって美しいだろうが。あんたの顔も可愛く撮れてるし、文句あんのか? あ?
撫子さんは私の肩を抱き、スマホを私の目の前に突き出して写真を見せた。
楽しそうに笑う撫子さんを見ると、写真の中の私の顔が真っ黒なのもどうでも良くなってくる。
{character:player}そうだね、可愛い可愛い。
サプライズチャレンジ
契約を結ぶことで開放
Possible Endings
Scenario Script
Spots 24, Scenes 549, Choices 11, Endings 0
ことの始まりは、旅から帰ってきてすぐの夏の週末……のそのまた三日前。
{character:player}……撫子さんの誕生日パーティー!?
窓の外で騒がしく鳴いているセミよりも大きな声が思わず口から飛び出し、ソファの上でだらけていた私はウキウキして立ち上がった。
{character:抚子}誕生日というか、それを口実に、久しぶりにダチと会いたいだけさ。週末の予定あけといてよ。
{character:player}もちろん! 行かせてもらうよ!
ビデオ通話画面の中、興奮している私とクールな表情を崩さない撫子さんが鮮明な対比をなしている。でも、今の私ならはっきりわかる。彼女の表情に、かすかに嬉しさが滲んでいるのを。
{character:抚子}OK、当日迎えに行くから。じゃ。
{character:player}あ、ちょっ……。
ピロン♪
通話終了、通話時間:00:01:02。
{character:player}……パーティー会場の場所、教えて……。
だいぶ表情から気持ちを読み取れるようにはなったけど、このかなり情報がそぎ落とされているコミュニケーションにはまだ慣れが必要だ。撫子さんとのチャットから履歴を確認しようとしたら、チャット欄の一番上に見たことのないグループトークが現れた。
{character:【消息】}(未読)彼女らしいといえばそうだけど、たま~~にでいいからこっちのことも考えて欲しいわよね~。
{character:player}そうだそうだ。って、これはいったい……?
私の心を呼んだのかのようなメッセージが、そのグループトークから送られて来た。撫子さんのアイコンをタップしようとしていた指が、そのメッセージに引き寄せられてトークを開く。
{character:寺崎千穗理}何年か前、誕プレとして、彼女がいつも読んでる雑誌に似せた記念写真集を作ってあげたことがあるんだけど、渡したら速攻でバレたわよ。いつもと厚みが違うからって。
{character:藤田佳奈}そんな所もさすが先輩、ですね!
{character:如月彩音}私も、あの子の家に忘れ物を取りに行くって言ってケーキを持っていこうとしたら、電話した時に「この暑さじゃアイスケーキは溶けちまうから、迎えに行く」って言われたの~……。完全敗北だったわぁ。
{character:藤田佳奈}え……? 先輩の家に忘れ物って、なんで!?
{character:如月彩音}まあそれは置いといて、今仲間入りした{var:player_nickname}さんを歓迎しましょ~?
{character:player}仲間入り?
グループトークに入って初めてのチャットがこれって、いかがなものなのか。
そう思いつつしばらくやり取りをしてみると、このグループは、撫子さんへのサプライズチャレンジを今年こそ成功させようと立ち上げられたものだとわかった。
既にグループに入っている三人も、今週末のパーティーに参加する予定で、今までのサプライズ計画に失敗してきた者たちだ。ややデリカシーのない撫子さんは、彼女たちにこんな返事をしたらしい。
{character:抚子}あたしだってサプライズは好きだけど、あんたらとは何年の付き合いだと思ってんのさ。 そういうことじゃないかと思ってたんだよ。バレてない風に装うのも考えたけど、あたしらの間にそういうのは不要だろう?
{character:抚子}えーと……。もしかして、あたしまた知らなくていいこと知っちゃったか? そうだ、いっそ来年から誕生日のサプライズは無しで行かないか? みんなで集まることが大事なんだしさ。
{character:抚子}サプライズチャレンジって……もう完全にあたしとみんなとの対決みたいになってんじゃん。なら受けて立つよ。今年は誰が勝つか、楽しみにしてる。
……彼女たちのメッセージを見て、撫子さんが喋っている様をありありと想像出来た。
なるほど、デリカシーがなくて頭の回る撫子さんみたいな人相手に、バレることなくサプライズを贈るのって確かにチャレンジと言えるかも。だからこそ挑戦しがいがある。
{character:player}そういうことだったんだ。よし、私も協力するよ、今年はどんな感じでやるの?
{character:藤田佳奈}あっ……。
{character:藤田佳奈}あっ……。
{character:藤田佳奈}あっ……。
{character:player}……?
{character:如月彩音}{var:player_nickname}さんを仲間に呼んだのは、君にプランを考えて欲しいなと思って。
{character:player}私が!? なんで??
{character:藤田佳奈}なんかね、ファンさんなら誰も思いつかなそうなプランを考えられるんじゃないかーって話になって。それに、佳奈ちゃんみたいに運もいいし?
{character:寺崎千穗理}私の調査によると、これまでに{var:player_nickname}の発案でやってきたことの成功率は、一飜市市民の平均より高い傾向があるの。すでに特集が組めそうな素材が揃ってるけど、今回の件で決定的な証拠を押さえたい気持ちも、ちょっとあったりするわ。
{character:player}いやいやいや、そんな特殊能力があったら麻雀でも負けたりしないよ。
{character:如月彩音}もう引き返せないよ~、あなたが来る前にもう決めちゃってたし。
{character:player}なるほど、このグループトークに入れてくれたのは、話し合うためじゃなくて、ただ通達するためだったんだね……。
{character:藤田佳奈}まあまあ、そんなに心配しなくても。佳奈ちゃんも全力で一緒に考えてあげるから!
{character:寺崎千穗理}そうよ、私達も何にもしない訳じゃないし。
{character:寺崎千穗理}そうよ、私達も何にもしない訳じゃないし。
通知のバイブレーションが止まらず、彼女たちのメッセージで私のささやかな抵抗も虚しく流されていく。
{character:player}わかった。私なりに考えてみる。じゃあ、何か思いつくまで、一旦落ちるね。
{character:藤田佳奈}フレーフレー、頑張れファンさんー!
彼女たちの声援に見送られながら私はチャットを閉じ、プランを考え始めた。
パーティーでサプライズをしたいなら、まずはそのパーティーの場所を突き止めないことには始まらない。でも撫子さんのことだ、直接聞きにいくと多分バレる。彼女たちみたいに。
ここは堅実に、迂回ルートで行こう。
さて、考えられる迂回ルートは三つある。どこから攻めようか。
パーティーの会場選びには、料理の好みが影響する場合が多い。その点については、撫子さんとより付き合いが長い人の方がより詳しいだろう。だったら、行く場所は一つしかないーー
「バイクカレッジ一飜」。以前撫子さんの面接の予行練習のため連れて来られた、思い出の場所。いきなり教習を受けろって言われたけど、今思うとあれは初めてのデートだったよな。
ここも最初はごく普通の教習所だと思ってたけど、後になって、撫子さんは子供の頃からよくここに来ていて、しかも彼女のお父さんもここで働いてると知った。
このことを教えてくれたのは、あの時知り合ったベテラン教官さんだ。撫子さんのことを子供の頃から見てきた彼なら、何か知っているかもしれない。
だが、そう上手くは行かないのが世の常。
{character:驾校教练}撫子ちゃんの好みねぇ……。いや、バイクとか、ヘルメットならなんとなくわかるんだけど、パーティーや料理のことっていうとちょっとなあ……。
{character:抚子}そうなんですね……。
ベテラン教官さんに今日来た理由を説明すると、このような返答をくれた。
{character:驾校教练}ああそうだ、食いもんの好みってことなら、撫子ちゃんの親父に聞けばいいんじゃねえか? 今日はこっちに来てるぞ。
{character:player}え……!?
{character:驾校教练}ほら、案内してやるよ。あんたが撫子ちゃんに信頼されて、頼られてるってことはみんな知ってるし、いきなり親に会っても問題ねえだろ?
そうか、問題ないか……。いや問題しかないが?? 緊張を胸に、修理工房に連れて行ってもらった。
{character:抚子父亲}……。
目の前の男性は、髪こそ真っ白だが山のような体格をしていて、無言で私のことをじっと見ている。
{character:player}こ、こんにちは、{var:player_nickname}と申します……。
{character:抚子父亲}……。
{character:player}えっと……。
{character:抚子父亲}……あんただったのか。
{character:player}待ってください!! まず話を聞いてください!!
待って待って、レンチを持ったままずんずんこっちに来ないでー!
{character:抚子父亲}おっと、すまん。やっと思い出した、この前撫子のやつと一緒に夕日を見に行ったの、あんただったよな! ハッハッハ!
あ、今の無言タイムはただ思い出せなかっただけ?
{character:player}あ、はい……。
ほんの少しか言葉を交わしてはいないけど、撫子さんのあの「クールさの中に秘めた情熱」は親譲りのものだったんだ……とはっきりわかった。
そして、撫子さんのお父さんに事情を説明すると……。
{character:抚子父亲}ほう、バースデーサプライズか。あのバカ正直な娘は、そういうロマンチックなもんとか、誰かから優しくされるとかいうもんには一生無縁なんじゃねえかと思ってたわ。まぁ、その性格のおかげで俺は助かったんだがね……。
{character:抚子父亲}でもあんたがいりゃ、そういうつまらない心配もしなくて済むだろうよ。
年上の男性は、飾らない言葉で包み隠さず話してくれているが、それを聞いた私は何とも言えない複雑な気持ちになった。
{character:player}そこはぜひ、任せてください。
目が合うと、お互いの言いたいことが分かった気がした。大男の目に残っていた最後の迷いが散っていき、ハハハと笑って私の質問に答えてくれた。
{character:抚子父亲}さて、撫子の誕生日だが。実はあいつがガキの頃、俺は仕事と育児を両立するために、毎日街中を連れ回しててな……。なかなか誕生日を祝うチャンスなんて無かったんだ。
{character:抚子父亲}このままじゃだめだって俺も思ってた。それで、ある年誕生日の時にやつにどこか行きたい所はあるかって聞いたんだ。やつは何って言ったと思う?「どっかに行ってもいいけど、親父は気にしなくていい。こちとら毎日仕事に付き合ってんだ、誕生日くらい一人で自由にさせてくれ。」ってよ。十代の娘が言う言葉か?
{character:player}親にこういうこと言える子供って、親のことを信頼出来る友人のように思っているって聞いたことがあります。それで……彼女はその年、どこに行ったんですか?
{character:抚子父亲}ここだ。
{character:player}え、ここですか?
{character:抚子父亲}そうだ、この修理工房だった。好きにさせろと言いながら、結局あれからも毎年ここで俺と、そしてバイクと一緒に誕生日を過ごしてきた。
{character:player}そうだったんですか。撫子さんはバイクが好きですし、自分の意思でここにいるんだってことを言いたかったんじゃないでしょうか。
{character:抚子父亲}ハハハッ! お前さん、あいつのことよく分かってるじゃねぇか。そういうこった、俺も何年もかかってようやく気づいたんだがね。あいつにとってバイクより大事な物はない。自分の誕生日よりもだ。
{character:player}でも今回は、撫子さんの方からパーティーをやろうと言い出したんです。流石にここで飲み食いはしないと思いますが……。
{character:抚子父亲}そうだなあ……あ、そうだ。一度だけ例外があったな。
{character:抚子父亲}高校行ってた頃、一度だけ学校の友達と人気のレストランで誕生日を祝って貰ってたな。たった一度きりだったからよく覚えてるよ。……そういえばこの前、「あそこは今でも印象に残ってるんだよね」ってメッセージが入ってたような。今回も、あんたらをそこに連れて行くつもりなんじゃねえか?
最近話題に出してたレストラン……? これは有力情報だ。撫子さんのお父さんにチャット履歴を見せてもらい、すぐマップでそのレストランの住所を検索してみた。一飜市内にある、サービスの良さと、「カワイイ」をコンセプトにしている人気レストランだ。
{character:抚子父亲}若い奴はこういうの好きそうだよな。ほら、あんたも見てばかりいないで、実際にそこへ確認してみたらどうだ。あいつの名前で予約が入ってるかもしれないぞ。
{character:player}は、はい!
答えに近づいたという手応えがありつつも、何か引っかかる所のあった私は教習所から出て、さっきメモしておいた三つのルートを取り出した。
これからレストランに直行するか、それともひとまず別のルートから調査を続けるか……。
誕生日パーティーに参加したことのある撫子さんの友達なら、今回の会場も予想出来るだろう。
グループトークを再び開き、三人に会場について聞いてみることに。
{character:藤田佳奈}佳奈ちゃんは今まで仕事で一回も参加出来なくてさー、今年こそ絶対に行きたいんだよ!
{character:如月彩音}撫子ちゃん主催のパーティーで思い出したんだけど、前にすっごく面白いことがあったのよね。
{character:藤田佳奈}なぬー!
{character:player}気になる……!
{character:如月彩音}高校の頃、撫子ちゃんとは先輩後輩の関係でね、「女らしさ」を身につけるにはどうしたらいいかって私に相談してきたの。それで、かわい~レストランを紹介して、とりあえずそこに行ってみよ~ってことになったの。そしたらあの子、いきなり自分の誕生日パーティーをそこでやるって決めたのよ。
{character:如月彩音}そのレストランの誕生日パーティーがどんなものだったかというと、店員さんたちが店内をゴリッゴリに装飾して~、あの子にメルヘンな衣装を着せて~、お姫様のティアラを被せて~、それで、名前を書いた光るボードを掲げながら、彼女の周りでお誕生日の歌を歌い出したの。その歌の歌詞もなかなかすごかったのよね、えっと……どんなだったっけ……?
{character:藤田佳奈}(ボイスメッセージ)「Wow☆ KAWAIIすぎちゃってサンキュ☆ キミの全てがKAWAIIすぎ☆ サンキュ☆」
{character:如月彩音}これこれ! 生徒達の間で流行ってるの?
{character:藤田佳奈}どこのお店かわかったと思う!
{character:寺崎千穗理}ああ、あの店ね。流行ってるっていうよりある種のミームになってるんじゃないかしら。
{character:player}これは確かに笑えますねw
高校時代の撫子さんがクリスタルの冠を被り、メルヘンな装飾やスタッフ達に囲まれて歌を聞かされている場面を想像すると、申し訳ないけどめちゃくちゃ笑える。
{character:player}そんなことがあったんですね、それならまた行こうとはならないでしょうね。お陰で一つ候補が潰れました、ありがとうございます! で、今年はどこでやるのかっていう話ですが……。
{character:如月彩音}ごめんね~、いきなり脱線しちゃって。
{character:寺崎千穗理}(URL)こことかどう?
寺崎さんが貼ったリンク先に飛ぶと、スポーツバーのホームページだった。特別なカクテルがウリとある。
{character:寺崎千穗理}休みの日に、たまに二人でバイクのレースを見ながら飲んだりする店よ。ここなら多人数のパーティーも出来るし、みんなで色々遊べるスペースもあるわ。ここの可能性も結構ありそう。
{character:player}あ、私もこの前撫子さんにここを勧められたような。お気に入りなのかな?
{character:藤田佳奈}へー、そんなことがあったんだ……。
{character:寺崎千穗理}有力そうなら一度行ってみる? 撫子がもう予約してる可能性もあるわよね、確認してみましょうか。
確かに寺崎さんの言う通りだ。これからアドバイスの通りに店に行ってみようか? それとも、他の情報を集めようか?
一ヶ月分ほど遡ると、撫子さんと夕日を見た日の投稿が目に入った。
{character:player}今見てもこの写真はエモいなぁ……。でも誕生日に関する情報は本当に何も無さそう。
{character:藤田佳奈}なぬー!
画像を見ながらに思いを馳せていると、撫子さんからのメッセージが通知欄に出てきた。「?」一文字のシンプルなメッセージに、とてつもなく恐ろしいことを気付かされた。
{character:player}やっべ、うっかり「いいね」押しちゃってる!!
夕日の投稿の下、ハートのマークが私の不覚を嘲笑うように赤く光っている。
何十日前の投稿に「いいね」をするようなことは、自分が「何か企んでいる」ことをわざとバラすような行為だ。
おおお落ち着け、どんな返信をすれば疑われずに済む?
子を知るは父に若くはなし。それに、撫子さんが最近話題にしていた、昔誕生日パーティを開催したレストランだ。これは行って確かめなくては。
そのレストランは、一飜市の都心部にある大型ショッピングセンターに入っている。ネットで見たことはあったが、実際に来たのは初めてだ。
ガラン――と店のドアを開いた瞬間、着ぐるみ風の制服を着た店員さんが満面の笑みで私を迎えた。
{character:店员}あらあら、これは可愛いお客さまがいらっしゃいましたね! ようこそ「KAWAII☆PARADISE」へー!
{character:player}あはは、どうも……。
{character:店员}申し訳ありません、現在番号順でご案内しておりますので、こちらで今しばらくお待ちください! お待ちの間、よろしければスタッフと麻雀対決しませんか? もし勝てたら、本日のお会計は全て15%オフですよー!
サービスがいいとは聞いていたが、順番待ちの時点で良過ぎでは? これなら撫子さんがここを選んでもおかしくないか……。
麻雀は正直に言うと打ちたいところだけど、今の目的は調査だ。撫子さんの写真を見せながら事情を説明すると、店員さんは何かを思い出したようにポンと手を打った。
{character:店员}あ〜! こちらのお客さまなら、先週末にいらっしゃいましたよ。
{character:player}先週末、ですか?
それはちょっと意外な回答だった。
{character:店员}はい、週末はスペシャルイベントをやっておりまして、店内で看板メニューの料理教室を開催しております。こちらは、ご自身で作られた料理を店内または持ち帰りで食べられるというイベントなんです。こちらはご予約のお客様限定となっておりまして、先週にこちらのお客様がいらっしゃったと思います。
{character:店员}撫子様は、オーラがあって印象的な方だったというのもありますが、あの日はちょっとしたハプニングがありましたので、恐らく私の記憶にも間違いは無いかと……。
{character:player}ハプニング……?
{character:店员}はい、撫子様は、料理教室の時も非常に真剣なご様子で、実際に作られたお料理も店で出せるほどの出来栄えだったのですが、どうやらお気に召さなかったようで、もう一度作り始めたんです。どなたかとご一緒にお食事されるんですかとお聞きしたのですが、むっとしたご様子で答えていただけませんでした……。
{character:店员}もちろん、スタッフとして、このようにプライベートのことを聞くべきではなかったと悔やむばかりですが……。
店員さんはとても申し訳なさそうにしている。そう言えば撫子さん、教習所の時も、スライド資料の修正中は集中しすぎて私の話全然聞いてなかったな。
{character:player}多分ですが、それは料理に集中するあまり、店員さんの声が聞こえてなかっただけだと思います。撫子さんはそんなことで怒る人じゃないと思いますし……。
{character:店员}そうでしたか! 実は撫子様は前回の料理教室の直後に、今週末の同じメニューの料理教室を再度予約されてまして、その際に謝ろうと思っておりました……。
{character:player}ん? 今週末に予約?
{character:店员}はい。先ほどお客様が、今週末は撫子様のお誕生日だと仰ったのも考えますと、皆さんのために看板メニューを振る舞うおつもりなのではと思います。
{character:店员}お客様も、撫子様のためにサプライズを用意したいとのことでしたよね。でしたら、お二人の素敵な思い出のためにぜひ私共スタッフにも協力させていただきたいです。
{character:player}それは助かります……。
食事を終えてレストランを出て、私はスマホを取り出した。撫子さんの誕生日パーティーの会場はここだろうか。
店員さんが提供してくれた手がかりもあるし、週末のパーティー会場はここで間違いないだろう。撫子さんはここで、友人である私達に手料理を振る舞う予定だ。
グループトークからみんなを呼び出し、店員さんの協力のもと、当日の装飾を決めて、撫子さんのための特別な誕生日ケーキも予約した。撫子さんの手料理を食べられると思うと、当日が待ち遠しくて仕方ない。
ところが……。
{character:player}……え? 今からキャンプ場?
パーティー会場へ向かってるはずなのに? 撫子さんのバイクに乗っていた私は、驚きのあまり危うく落ちる所だった。
サイドミラーの中の撫子さんは胡乱な目をした。
{character:抚子}嫌か? でももう遅いよ。
{character:player}い、いやー。まさか……。ただ、急すぎてちょっとびっくりしちゃったっていうか……。
私の声がだんだん小さくなった。レストランを予約してたのに、なぜキャンプ場……? レストランで今日のため一生懸命装飾をしたスタッフさん達と、そこで私達の登場を隠れて待っている友人たちのことを思うと、目の前の景色が少しずつ歪み始めた。
{character:抚子}急? あれ、あたし言わなかったっけ? ……あー、忙しくて忘れちゃってたかもしれない。
{character:player}忘れてたんだ……。あえて言わなかったのかと思ってた。
{character:抚子}何だよそれ、ただのど忘れに決まってるだろ? でも安心しな、キャンプ用のアイテムも食事も全部あたしが用意したから。これから料理を取りに行って、それからキャンプ場に行くとするか。
{character:player}取りに行くって、まさか「KAWAII☆PARADISE」へ……?
{character:抚子}そうだ。いや待て、どうしてわかるんだ?
撫子さんは勘づいたようで路肩に停車した。こうなったら私もすべてを打ち明けるしか無い。
{character:player}それはね……。
事情を撫子さんに説明した。
{character:抚子}ぷははは! まさかあんたまで、あいつらみたいなバカをやるとは意外だな!
{character:player}結局チャレンジは失敗だし、意外でも何でもないよ……。
{character:抚子}でも、ありがとう。せっかく予約してくれたけど、あのレストランのサービスがあたしには合わないというか……。今日はやっぱり、あたしが用意したプランのまま進めるよ。レストランに用意してもらった材料を取りに行って、ついでに店員さん達に謝ろうか。
{character:player}……そうだね。現時点ではそうするしかないと思う。
友人のアドバイスより頼れるものはない、私はスポーツバーへ足を運んだ。
{character:餐吧老板}はいはい、なんですかー! もうちょっと大きな声でお願いしまーす!
大胆かつアバンギャルドな内装の店内、プロジェクターから壁一面に投影されたバイクレースが映し出されている。その壁の手前はレースを見ながら酒と料理を楽しむスペースで、奥側の広いスペースではビリヤードや卓球などを楽しめる。
試合の実況解説や観客の歓声と、奥から響く球技の音が合わさって、店内に現代的なハーモニーを轟かせていた。
カウンターの前で私は撫子さんの画像を呼び出し、今回来た理由をもう一度オーナーに説明した。写真を見て、オーナーはやっと注意をレースの模様から私に向けた。
{character:餐吧老板}つまりお客さんは撫子さんのお友達? それなら、スケジュールが知りたいなら直接本人に聞けばいいんじゃ? そんな見え見えな嘘はやめてよね、撫子さんの連絡先を知りたい人、今まで何人いたと思う? 俺は客のプライベートをバラすような店主じゃないからな。
{character:player}ご、誤解です! オーナーさんに聞きに来たのも事情があって……。
疑われていることに動揺しながら、私はもう一度詳しい事情と、それを証明出来るチャット履歴などをオーナーに見せた。
{character:餐吧老板}本当に誤解だったか、ごめんよ。お詫びになるかわからないけど、特別に教えてあげるよ。お察しの通り、撫子さんは今週末ここでバースデーパーティーを開催する。
{character:player}予約をしたってことですか。
オーナーさんは自信満々に言ったけど、言い方がちょっと引っかかるので確認してみる。
{character:餐吧老板}いや、してないけど。
{character:藤田佳奈}なぬー!
{character:餐吧老板}いやそんなに疑わないでくれよ、いいか? 先週撫子さんが来たんだけどな、いつものように飲みに来たんじゃなくて、カクテルを作るコツを聞きに来たんだよ。来週友達に作ってあげたいからってさ。
{character:餐吧老板}レシピは別に特別なもんじゃないし、全部教えてあげたんだけどよ。で、実際に作らせてみたら、撫子さんさんがいつになく真剣に作ってるから聞いてみたんだよ。本当は大切な人に作るんじゃないかって。そしたらなんて答えたと思う? あのクールな撫子さんがまさかの恥ずかしくて聞こえてないふりだ! こりゃ大当たりじゃないか? わはははは!
オーナーが腰に手を当てて高笑いしてるけど、それは多分教習の時と同じ、集中しすぎてて本当に聞こえてないパターンだ。
{character:player}それは多分恥ずかしがってるんじゃなくて、カクテル作りに集中しすぎて本当に聞こえてなかったんだと思いますよ。
{character:餐吧老板}そんな! そうだったのか!
{character:player}多分ですけど……。
{character:餐吧老板}むむ……。でも、俺の判断は合ってると思う。週末までに結構な量のお酒を用意してほしいって言われたし? これは絶対にパーティーの準備でしょ。ってなわけで、早速サプライズの用意をするんだな若者よ。俺が全力で手伝ってやるから。
{character:player}それは、どうもありがとうございます……。
……ということは、撫子さんが選んだパーティー会場はここで確定か?
オーナーさんが提供してくれた手がかりから考えると、撫子さんは今週末、ここで友人である私達にお手製カクテルを振る舞うつもりだ。
グループトークからみんなを呼び出し、オーナーさんの協力のもと当日の店内の装飾を決めて、撫子さんのために特別な誕生日ケーキも予約した。撫子さんのカクテルが飲めると思うと、当日が待ち遠しくて仕方がない。
ところが……。
{character:player}……え? 今からキャンプ場?
パーティー会場へ向かってるはずなのに? 撫子さんのバイクに乗っていた私は、驚きのあまり危うく落ちる所だった。
サイドミラーの中の撫子さんは胡乱な目をした。
{character:抚子}嫌か? でももう遅いよ。
{character:player}い、いやー。まさか……。ただ、急すぎてちょっとびっくりしちゃったっていうか……。
私の声がだんだん小さくなった。スポーツバーを予約してたのに、なぜキャンプ場……? 今日のため一生懸命装飾をしたオーナーさんのことを思うと、目の前の景色が少しずつ歪み始めた。
{character:抚子}あれ、あたし言わなかったっけ?……あー、忙しくて忘れちゃってたかもしれない。
{character:player}忘れてたんだ……。あえて言わなかったのかと思ってた。
{character:抚子}何だよそれ、ただのど忘れに決まってるだろ? でも安心しな、キャンプ用のアイテムもドリンクも全部あたしが用意したから。これからドリンクを取りに行って、それからキャンプ場に行くとするか。
{character:player}取りに行くって、まさかこの前おすすめしてくれたあのスポーツバーへ……?
{character:抚子}そうだ。いや待て、どうしてわかるんだ?
撫子さんは勘づいたようで路肩に停車した。こうなったら私もすべてを打ち明けるしか無い。
{character:player}それはね……。
事情を撫子に説明した。
{character:抚子}ぷははは! まさかあんたまで、あいつらみたいなバカをやるとはね! あんた達の気持ちは無駄にしたくないけど、今日はカクテルじゃないから、バーだと色々難しくてね。
{character:player}そ、そうなんだ……。
{character:抚子}という訳で、あたしが用意したプランのまま進めるよ。バーに用意してもらったお酒を取りに行って、ついでにオーナーさんに謝るとするか。
{character:player}……そうだね。現時点ではそうするしかないと思う。
こういうサービス満点で可愛過ぎる雰囲気の店、撫子さんは苦手なはず。もしかしたら別の可能性も十分あり得る。
ここはひとまず、別のルートからも情報を手に入れないと。
撫子さんは寺崎さんとよくこのバーに飲みに来るとのことだけど、今回はお酒を飲めない高校生の佳奈ちゃんもいる。だから、撫子さんがここを選ぶことはないだろう。
やっぱり、他の情報も集めてみようか。
{character:player}ごめん、手が滑った。
{character:抚子}そう。てっきりまたあたしと旅に出たいのかと思った。でもなんで一ヶ月以上も前のに手を滑らせたんだ?
ん?
……「?」って、そういう意味だったのか!
また旅に出たいのは本当だし、今更話の流れを変えても不自然だ……。そうだ!
{character:player}実は友達におすすめのスポット聞かれて、あの時のことを思い出してさ!
{character:抚子}友達? 誰?
誰? えっと……。
誰にしようかと考えていたら、撫子さんから電話が掛かってきた。仕方なく出てみると……。
{character:抚子}どういうことだ。
撫子さんはいつものさっぱりした口調で、まるで私の嘘を見抜いたかのように単刀直入に聞いてきた。
{character:player}嘘ついてごめん、本当は誕生日パーティーの会場がどこなのか気になって、最近撫子さんが興味を持っていそうなものを探していたんだ。
{character:抚子}あ、ええ?
なぜか逆に撫子さんの方が驚きの声を発した。
{character:抚子}そ、そうか……。てっきり他の誰かと……いや、忘れてくれ。
{character:player}ん?
まさかの発言に思わず笑ってしまう。
{character:player}安心して、あの景色は二人の秘密でしょ?
{character:抚子}……。そういう風に言った記憶はないけどね。えっと、なんだっけ。パーティー会場? あたしこの前言わなかったっけ? ……もしかしたら、忙しくて忘れてたかもしれないね。キャンプ場だ、もう用意は出来てるから当日は迎えに行くよ。
{character:player}なるほど、キャンプ場だね。一旦落ち着いて?
貴重な撫子さんのあわあわボイス、ありがとう。
{character:抚子}いや待て、そういうことなら直接あたしに聞けばいいのになぜCatChatなんて探ってたんだ?
{character:player}あっ。それは……。
{character:抚子}なるほどな、こっそり場所を突き止めて、サプライズを用意したかったんだろ? 佳奈達にでも誘われたのか、あの馬鹿げたチャレンジに。
{character:player}なんで……。
どういうこと? あの一瞬ですべてを推理したってこと? あと何だ後半のドヤった言い方は!?
{character:抚子}なんだ、いきなり黙り込んじゃって。さては図星だね? フフッ、今年もあたしの勝ちだ。佳奈達には、来年また頑張れって伝えといてよ。
{character:player}そう、だね……。そうするよ。
降参するしかないみたいだ……
{character:player}あの日の写真うっかり削除しちゃってさ、もう一度保存しようと思って。
{character:抚子}そうか。直接あたしに言えば良かったのに。
{character:player}大事な写真だからさ、「うっかり削除しちゃった」なんて言いづらくて……。
{character:抚子}これくらいじゃ怒らないよ、ちょっとは信用して欲しいね。後で送るよ。
{character:player}ありがとう。
セーフ……! バレてなさそうだ。
ピロリンピロリン♪
撫子さんからの写真爆撃が到着した。どうやらあの日に撮った写真を丸ごと送ってくれたらしい。
{character:player}感謝感激!
{character:player}あれ、この写真……。
画像フォルダの中に、一枚だけ見たことのない写真が混ざっている。あの民宿の庭のようだけど、地面が乾いているから、晴れの日に撮られた写真だとわかる。
でもあの日民宿に寄った時って、確かゲリラ豪雨の真っ最中だったよな。雨が止んでから撮った写真だとしても、地面が乾いているなんてあり得ない。
{character:player}この写真は?
{character:抚子}あ、それはあたしが一人で行った時の写真だ。悪い悪い。あの民宿のご主人、覚えてる? キャンプに詳しいから、色々聞きに行ったんだ。
これだ!
突然ひらめいた。もしかしたら、答えは「キャンプ」かもしれない。平静を装いながら、しばらく撫子さんと他愛もないチャットをして、それが終わるとすぐ行動に出た。
民宿の主人が渡してくれた連絡先を探し出し、電話をかけた。
{character:player}こんにちは、先日お邪魔しました{var:player_nickname}です。
{character:旅店老板}ああ、あの時の。どうも。
主人に事情を話すと、撫子さんに先日キャンプについて色々教えた時、自分の友人が開いているキャンプ場を紹介した、と教えてくれた。これはかなりいい線行ってると信じたい。
{character:旅店老板}で、撫子さんにサプライズするんですよね? 面白そうなので、キャンプ場には僕の方から連絡しとくよ。頑張って下さい。
{character:player}ありがとうございます!
民宿の主人のお陰で、スムーズにキャンプ場のオーナーに連絡を取れた。それだけでなく、撫子さんは今週末そのキャンプ場の予約を取っていることまで教えてくれた。
会場が確定出来れば、この後の進行も一気に楽になる。
情報をグループトークに流し、サプライズチャレンジはいよいよ佳境を迎えた。
当日の朝、またまた撫子さんのバイクが私が家を出た瞬間に現れた。
今回の私は、撫子さんに言われる前に後部座席に進んで乗った。
{character:抚子}なんだ、今回はあれこれ聞かないのかい。
{character:player}本日のヒロインにすべてを任せるつもりだよ。
{character:抚子}いい返事だね。
{character:抚子}あ、ちなみに今日はキャンプに行く。この前伝えられて無かったよね。忘れてた、悪い。
{character:player}あれ、ただ忘れてただけか。そういうサプライズかと思ってた。
{character:抚子}まあ、あんたがそう思ってくれるなら結果オーライだな。
{character:抚子}民宿のご主人とキャンプの話をしてたらさ、いつかあたしもキャンプに行って、自分でテントを張ってみたいなって思ったんだよ。実は今日のために、半月前から準備したんだ。ということで、今日はまずは予約した持ち帰りのミールキットとドリンクを取りに行くよ。
{character:player}そうなんだ。撫子さんが入念に準備してるなんて、これは期待出来そう。
{character:抚子}それじゃ、他の人にも連絡しとくよ。
{character:抚子}撫子さんはスマホを取り出し、今日の参加者全員に個別に連絡を取り始めた。それと並行して、私は撫子さんの死角でスマホを取り出し、グループトークで現状を報告する。
{character:抚子}今日のプランはこの通り。現場に到着したあと、キャンプ場のオーナーが、「撫子さんが予約した麓のキャンプ場は臨時の設備点検のため使えなくなってしまった、お詫びに山腹のキャンプ場で良ければ無料で使っていい」と撫子さんに言う。そして山腹のキャンプ場に向かうと、そこは私たちが前日に用意したサプライズ会場……という流れだ。
しかし撫子さんにこのプランの通り動いてもらうとなると、今言っていた自分でテントを張ることも、料理も出来ない。これだと、撫子さんの半月かけた準備が台無しになってしまう。さっそくこの件についてグループトーク内で相談することに。
{character:藤田佳奈}ていうか、なんで料理だめなの?
{character:寺崎千穗理}山腹だと、火の管理が厳しくなるからね。そのキャンプ場だと、火の使用自体が禁止されているわ。
{character:藤田佳奈}じゃあさ、先輩と麓で料理をしてから上に運べば?
{character:如月彩音}それは無理じゃないかな~? 山道を往復するのは疲れるってのもそうだけど、そもそも麓のキャンプ場に入れるってことになったら嘘だとバレちゃうよね?
どうしよう、元のプランを強行させるか、それでも今から新しいプランを考えるか……?
サプライズチャレンジは私たちの敗北で幕を閉じた。今年も撫子さんは例年通り、サプライズのない誕生日を過ごした。
三人は言っていた、撫子さんは本当はサプライズに憧れているのだと。その憧れのために、私は……。
{character:player}やはり、プランの変更はなしで。撫子さんが予約したミールキットはキャンプの厨房に任せよう。料理が無くても、私たちが準備した軽食やおやつもあるし、食べ物の心配は必要ないと思う。それよりも、撫子さんにサプライズを送ることの方が大事だ。みんなもそう思うでしょ?
{character:众人}了解!
みんなの同意を得たところで、私は撫子さんにバレる前にスマホをポケットに戻した。
それから一時間後、撫子さんと一飜市の郊外にあるキャンプ場に到着した。キャンプ場の主人は計画通り、入り口の方で申し訳なさそうに例のセリフを言った。
{character:抚子}臨時メンテナンス……?
{character:营地老板}ええ……。水道設備が急に故障して、工事のためにあのエリアは終日使用不可になりまして。急すぎて連絡が間に合わず、申し訳ない。こちらとしても、こんなことで残念な思いをさせるのは不本意です。なので、お客さんさえ良ければ、山腹の方のキャンプ場を無料でお使いいただくのはいかがでしょうか。あっちはまた別の良い景色が見られますし、設備もワンランク上ですよ。
{character:抚子}確かそっちは火気厳禁でしたよね。
{character:营地老板}そうなんです。ですが、お持ちのミールキットはこちらの厨房で調理の上提供することも出来ますし、山腹キャンプ場の高級テントには、ゲーム機や雀卓といった遊べるものも揃ってます。本日はきっと、ご友人たちと素敵な時間を過ごせると思いますよ。
{character:抚子}そうなんですね……。
撫子さんが躊躇している間、私はこっそりとオーナーさんに親指を立てた。
{character:抚子}あんたはどう思う?
いきなり話しかけられ、私は慌てて指を引っ込めた。
{character:player}そうだなあ……。今の時間だと他のみんなももう向かってると思うし、全員に引き返させるのは現実的じゃないよ。やりたかったことが出来なくて残念だけど、次また来た時に一緒に出来ると考えれば、そんなに悪いことでもないんじゃないかな。
{character:抚子}そうか……。ならいいけど。
{character:营地老板}ご理解いただきありがとうございます! ささ、山腹キャンプはこちらです。
山道に沿って登っていくと、自然が一層深まっていく。木漏れ日が天然のドームとなり、ここと下界とを隔てている。その中を通り過ぎて、私たちは山腹のキャンプ場に着いた。
{character:营地老板}到着です。あらためて本日は申し訳ありませんでした。では、ごゆっくりどうぞ。
{character:抚子}ありがとうございます。
撫子さんはなにも考えずキャンプ場内に入って行き、次の瞬間……
パーン!
キャンプ場に先回りしていた挑戦者の三人が、クラッカーで撫子さんを出迎えた。金色のキラキラが舞い踊り、撫子さんは驚きのあまり硬直している。
{character:如月彩音}誕生日おめでと~♡
{character:寺崎千穗理}おめでとう。
{character:藤田佳奈}お誕生日、おめでとうございまーす!
{character:抚子}こ、これは? あんたたちいったい……?
私たちは目撃した、世にも珍しい感情を露わにした撫子さんを。
{character:藤田佳奈}先輩、驚きすぎー! 言葉になってませんよ? これって、今年は私達の勝利ってことでいいんですね? 先輩のこの顔、写真に撮りたいなぁ〜! カメラカメラ……あれ、カメラどこ?
カシャカシャ。如月先生はいつの間にか佳奈ちゃんのカメラを手に持っていて、この決定的瞬間を収めていた。
{character:藤田佳奈}あれ、なんで先生が佳奈ちゃんのカメラを持ってるの!
{character:如月彩音}藤田さん、さっき自分でテーブルの上に置いてたよ~。
{character:藤田佳奈}そんなわけ……!
{character:如月彩音}ホントだも~ん!
{character:藤田佳奈}本当にぃ~……? 寺崎せんぱーい!
{character:寺崎千穗理}私は何も見ていないし知らない。聞くだけ無駄よ。
はしゃぐ三人を見て、撫子さんはやっと我に返り、私の方を向いた。
{character:抚子}さてはあんたの仕業だな。
{character:player}誕生日おめでとう。サプライズ、喜んでくれた?
{character:抚子}フフッ、ありがとう。まさかキャンプ場のオーナーにまで協力させるとは、大したサプライズだ。あんたたちを見くびってたよ。気に入った!
{character:player}楽しみにしてたテント張りが出来なくて落ち込むんじゃないかと思ってたから、気に入ってもらえてすごく嬉しいよ。
{character:抚子}残念じゃないと言ったら嘘になるけど、あんたたち見てたらどうでも良くなった。まぁ、あとでちゃんと、いつからこんなこと企んでたのを白状してもらうけどね。それじゃ、パーティーの始まりだ!
快適すぎるキャンプ場で、キャンプ感ゼロの誕生日パーティーが始まった。来年は、サプライズも、撫子さんのやりたいことも一緒に実現出来るといいな。
{character:player}撫子さんが準備してくれたことを台無しにしてはいけない。今からオーナーさんに連絡して、山腹に用意したサプライズ用の小道具を出来るだけ麓に移動しよう。みんな、なんとか頑張って……!
グループトークにメッセージを送信した後、撫子さんと一緒に食べ物を取りに行っている間にも、バレないために具体的にどうしたらいいか相談を続けた。
一時間後、私たちはキャンプ場に到着した。元のプランだと、出迎えたオーナーさんは私たちを山腹キャンプ場へ誘導するのだが、うまく行ったのならここは……
{character:营地老板}いらっしゃい、撫子さん。キャンプ場にご案内します。
{character:抚子}ありがとうございます。
主人はそう言いながら、こっそり私にウインクしてくれた。
どうやらオーナーさんにはちゃんと連絡が届いたようだ。サプライズ用の小道具もちゃんと移動出来ていれば、無事に成功出来そうだけど……。
撫子さんと協力しながら、数人が入りそうなくらい大きなテントを組み立てた。その後、撫子さんは私と雑談しつつ、食材を並べ始めた。三人がめいめいに遅れる旨メッセージを送ったようだが、撫子さんは特に怪しいとは思っていないようだ。
その後、私の方にもメッセージが来た。
{character:藤田佳奈}雑談はそのくらいにして、先輩をちょっと遠くに連れてってー!! ここでずっと隠れてるの結構キツい!
周りを見渡すと、付近の低木の後ろに三人の頭頂部が見えている。その横には、ふわふわと揺れている、今にも浮き上がりそうな風船。
{character:抚子}どうした? 何を見ているんだ?
{character:player}いや別になんでも……!
撫子さんはその方向を見ようとしたが、私はそれを押しとどめた。同時に、低木の後ろで誰かが風船を引っ込めた。
{character:抚子}……あっちがどうした?
撫子さんは私の手を振りほどいてそっちを見に行ったが、そこにはもう何もなかった。
{character:player}ホントニナンデモナイヨ? そうだ、ちょっと小腹空いてない? どうせみんな遅れて来るんだし、一緒におやつでも買ってこようよ。
{character:抚子}あたしは別に減ってないな。つまめるもんならテントの中にあるよ。
{character:player}あ~喉も乾いてきた、飲み物でも買いに……。
言い終わる前に撫子さんがすっとペットボトルを渡してきた。どうしようと思って受け取れずにいると、撫子さんは「やれやれ」といった表情で蓋を開け、また私に突き出した。
{character:player}ありがとう。……ねえ、撫子さん? みんなが来る前に、ちょっとだけ散歩でもしない? 料理の準備にはまだ早いし。
{character:抚子}準備出来ることは全部済ませてから行きたいんだ。ハプニングが起きたら対処が大変だからね。
{character:player}そ、そうだよね……あはは。
もう、万事休すか……と思いきや、撫子さんは手を止めて私に声をかけた。
{character:抚子}やっぱり行くか。
{character:藤田佳奈}なぬー!
{character:抚子}三度目の正直だ、あんたの希望通り、その辺を散歩しよう。
{character:player}うん、行こう行こう!
撫子さんと並んで山道を歩き、キャンプ場付近の景色を堪能していると、すっかり遠くまで来ていたことに気付いた。しかし撫子さんは全く帰る様子を見せない。
ブーと、新着メッセージの通知でスマホが振動した。
撫子さんが景色に夢中になっている隙に、私はメッセージを確認した。
「準備完了!」
{character:player}撫子さん、結構遠くまで来ちゃったし、そろそろ帰らない?
{character:抚子}そうだね。彩音達もそろそろじゃないか? さすがにもう着いてると思うけど。
{character:player}遅刻は仕方ないよ……みんなそれぞれの理由があるんだし。
{character:抚子}二十分か……この時間でどんな風に仕上げたのか、楽しみだねぇ?
{character:player}突貫工事だしそこは大目に見てく……え?
つい口を滑らせた後で、やっちまったと気づいた。
{character:抚子}やっぱりそうだったんだね。あの木の後ろに三人はさすがに無理があるんじゃないか?
{character:player}くっ、不覚……。
{character:抚子}今年はあんたまで巻き込んだのに、結局あたしの勝ちじゃないか。ま、負けたあんたには、言う事を聞いてもらうよ。
順調だと思ってたのに、最後の最後で撫子さんにバレてしまい、心が折れそうだ。私は両手を上げ、降参の意を示した。
{character:player}負けを認めるよ。それで、言う事って、どんな?
十五分後、私は慌てたフリをしながらテントに入った。計画をまた変更する必要があると、嘘の新プランを三人に伝え、テントから出るように誘導した。そして、テントのファスナーが再び開かれたその時……。
パーン!
撫子さんはクラッカーを手に持って、きらめく紙吹雪の中で驚く三人を勝利者の姿勢で見下ろしている。
{character:抚子}今年「も」、あたしの勝ちだ。来年また頑張ってくれ、三人とも。
{character:友人们}{var:player_nickname}! 裏切ったなー!
{character:player}すまない、これも敗北者の定めなのだ……。
日が沈み、キャンプ場はぽつぽつと灯った焚き火の明かりに彩られた。
サプライズチャレンジは失敗したけど、パーティー自体は大成功。私たちのプランを聞いて、撫子さんは杜撰なプランと私たちの激軽フットワークに総ツッコミをした。
私たちの失敗を笑いながらも、彼女は一人で料理を仕上げ、カクテルまで作ってくれた。おかげで山の中で素敵なディナーを堪能出来た。
{character:player}じゃあ、おやすみなさい。
全員にお休みを告げたあと、私も自分のテントに戻ろうとしたら、腕を掴まれた。
{character:player}撫子さん?
先ほど自分のテントに帰った撫子さんがまた出てきていた。
{character:抚子}しーっ、みんな寝てるよ? ……う~……。佳奈も、千穂理も朝から大変だったんだもん、起こしちゃだぁめ……♪ ね、ダーリン?
{character:player}だー!? ゴホッゴホ、撫子さん、流石に酔いすぎじゃ……? それに撫子さん、さっきあの二人は嘘が下手だって笑ってたでしょ?
焚き火の炎に照らされた撫子さんは、顔は赤いだけで表情自体はいつも通りのクールさだ。その実どれだけ泥酔しているのかは彼女のみぞ知る。
{character:抚子}酔ってないもん。ほら来て。
{character:藤田佳奈}なぬー!
スマホのライトが誰もいない部屋を照らしだし、わずかな明かりによって壁に貼られた「ハッピーバースデー」のバルーンや地面に散乱した装飾品が確認出来る。
私と撫子さんは、山腹キャンプ場の一番ランクが高いテントにいる。三十分前、泥酔した撫子さんは私の手を引っ張りながら、麓からここまで登ってきた。
{character:player}ゆっくり歩いて、部屋の中とは言え、ちゃんと足元見てないと危ないから……
{character:抚子}はーい……きゃっ!
{character:player}ッ!!
千鳥足の撫子さんは何かに躓き、私の方に倒れて来た。
カランコロン。
周りの何かが倒れた音のあと、部屋の真ん中に置かれている小さなランプが灯った。柔らかい光で辺り一帯がようやく見えるようになり、そして目の前の撫子さんの顔もはっきりと見えるようになった。
{character:抚子}ふぅ……。
{character:player}撫子さん、大丈夫?
{character:抚子}ふーん……。これがダーリンたちが頑張って飾ってくれたパーティー部屋かー。うーん……。使わなかったの、もったいなかったな……。
{character:player}今回は結構時間が無かったから。今度こそ、本当のサプライズをしてあげる。
{character:抚子}そんなチャンス、絶対、ぜ~ったいあげないんだからな、ダーリン。
{character:player}……。
そして、撫子さんはプレゼント包装用の、赤いリボンを手に取った。
{character:抚子}ん、うで。
{character:player}え?
{character:抚子}なーに、ゆーこときけないの?
酔ってるくせに、だいぶ上からだな……と思いながら、腕を伸ばした。すると、少しヒヤッとする感触と共に、撫子さんはそのリボンを私の腕に巻きつけた。
{character:player}これは……。
{character:抚子}めじるしつけてる。
{character:player}何の?
{character:抚子}リボンをつけとけば、プレゼントだってぜったいわかるもん……これで、次のサプライズの時もわかるはずだから、あたしはー……ぜったい、まけないー……。
撫子さんはそのリボンで私の腕に蝶結びを作った。不格好だったけど、撫子さんは満足気に笑った。
{character:抚子}きれー……あたしこれすき……。
と言って、彼女は意識を手放した。私が支えなかったら、そのまま倒れ込んで怪我する所だった。
{character:player}撫子さん?
{character:抚子}……う、ん~……。
撫子さんは私の腕の中で熟睡している。温かい吐息が結ばれたリボンの上にかかり、まるで命を吹き込まれた蝶のようにふわふわとリボンが揺れている。
この日から、撫子さんは私のことを「ダーリン」と呼び始めた。サプライズチャレンジは成功しなかったけど、私たちはもうお互いにサプライズを送り合ったようなものだった。そう、この蝶結びのように、解けそうでいて、絶対に解けない関係性というサプライズを……。
パーティーの会場選びには、料理の好みが影響する場合が多い。その点については、撫子さんとより付き合いが長い人の方がより詳しいだろう。だったら、行く場所は一つしかないーー
「バイクカレッジ一飜」。以前撫子さんの面接の予行練習のため連れて来られた、思い出の場所。いきなり教習を受けろって言われたけど、今思うとあれは初めてのデートだったよな。
ここも最初はごく普通の教習所だと思ってたけど、後になって、撫子さんは子供の頃からよくここに来ていて、しかも彼女のお父さんもここで働いてると知った。
このことを教えてくれたのは、あの時知り合ったベテラン教官さんだ。撫子さんのことを子供の頃から見てきた彼なら、何か知っているかもしれない。
だが、そう上手くは行かないのが世の常。
{character:驾校教练}撫子ちゃんの好みねぇ……。いや、バイクとか、ヘルメットならなんとなくわかるんだけど、パーティーや料理のことっていうとちょっとなあ……。
{character:抚子}そうなんですね……。
ベテラン教官さんに今日来た理由を説明すると、このような返答をくれた。
{character:驾校教练}ああそうだ、食いもんの好みってことなら、撫子ちゃんの親父に聞けばいいんじゃねえか? 今日はこっちに来てるぞ。
{character:player}え……!?
{character:驾校教练}ほら、案内してやるよ。あんたが撫子ちゃんに信頼されて、頼られてるってことはみんな知ってるし、いきなり親に会っても問題ねえだろ?
そうか、問題ないか……。いや問題しかないが?? 緊張を胸に、修理工房に連れて行ってもらった。
{character:抚子父亲}……。
目の前の男性は、髪こそ真っ白だが山のような体格をしていて、無言で私のことをじっと見ている。
{character:player}こ、こんにちは、{var:player_nickname}と申します……。
{character:抚子父亲}……。
{character:player}えっと……。
{character:抚子父亲}……あんただったのか。
{character:player}待ってください!! まず話を聞いてください!!
待って待って、レンチを持ったままずんずんこっちに来ないでー!
{character:抚子父亲}おっと、すまん。やっと思い出した、この前撫子のやつと一緒に夕日を見に行ったの、あんただったよな! ハッハッハ!
あ、今の無言タイムはただ思い出せなかっただけ?
{character:player}あ、はい……。
ほんの少しか言葉を交わしてはいないけど、撫子さんのあの「クールさの中に秘めた情熱」は親譲りのものだったんだ……とはっきりわかった。
そして、撫子さんのお父さんに事情を説明すると……。
{character:抚子父亲}ほう、バースデーサプライズか。あのバカ正直な娘は、そういうロマンチックなもんとか、誰かから優しくされるとかいうもんには一生無縁なんじゃねえかと思ってたわ。まぁ、その性格のおかげで俺は助かったんだがね……。
{character:抚子父亲}でもあんたがいりゃ、そういうつまらない心配もしなくて済むだろうよ。
年上の男性は、飾らない言葉で包み隠さず話してくれているが、それを聞いた私は何とも言えない複雑な気持ちになった。
{character:player}そこはぜひ、任せてください。
目が合うと、お互いの言いたいことが分かった気がした。大男の目に残っていた最後の迷いが散っていき、ハハハと笑って私の質問に答えてくれた。
{character:抚子父亲}さて、撫子の誕生日だが。実はあいつがガキの頃、俺は仕事と育児を両立するために、毎日街中を連れ回しててな……。なかなか誕生日を祝うチャンスなんて無かったんだ。
{character:抚子父亲}このままじゃだめだって俺も思ってた。それで、ある年誕生日の時にやつにどこか行きたい所はあるかって聞いたんだ。やつは何って言ったと思う?「どっかに行ってもいいけど、親父は気にしなくていい。こちとら毎日仕事に付き合ってんだ、誕生日くらい一人で自由にさせてくれ。」ってよ。十代の娘が言う言葉か?
{character:player}親にこういうこと言える子供って、親のことを信頼出来る友人のように思っているって聞いたことがあります。それで……彼女はその年、どこに行ったんですか?
{character:抚子父亲}ここだ。
{character:player}え、ここですか?
{character:抚子父亲}そうだ、この修理工房だった。好きにさせろと言いながら、結局あれからも毎年ここで俺と、そしてバイクと一緒に誕生日を過ごしてきた。
{character:player}そうだったんですか。撫子さんはバイクが好きですし、自分の意思でここにいるんだってことを言いたかったんじゃないでしょうか。
{character:抚子父亲}ハハハッ! お前さん、あいつのことよく分かってるじゃねぇか。そういうこった、俺も何年もかかってようやく気づいたんだがね。あいつにとってバイクより大事な物はない。自分の誕生日よりもだ。
{character:player}でも今回は、撫子さんの方からパーティーをやろうと言い出したんです。流石にここで飲み食いはしないと思いますが……。
{character:抚子父亲}そうだなあ……あ、そうだ。あいつこの前、高校行ってた頃に誕生日を祝ってもらった人気レストランの話をしてたな。
98:最近話題に出してたレストラン……? これは有力情報だ。撫子さんのお父さんにチャット履歴を見せてもらい、すぐマップでそのレストランの住所を検索してみた。如月先生が言ってた通り、サービスの良さと、「カワイイ」をコンセプトにしている人気レストランだ。
{character:抚子父亲}99:{character:抚子父亲}若い奴はこういうの好きそうだよな。多分ここで間違い無いだろ!
{character:player}そうですね……。
答えに近づいたという手応えがありつつも、どこか引っかかる所のあった私は教習所を出た。
如月先生も言ったように、撫子さんがもう一度ここに来ようとする可能性は低い。撫子さんがお父さんにその話をしたのも、ただあの時のことを思い出しただけかもしれない。これ以上この方向を攻めるのは得策ではない、今日は一旦戻って撫子さんのSNSを探ってみようか。
撫子さんはあんまりSNSをやらない人で、CatChatには主にその時思ったことを投稿するくらい。誕生日に関わる情報は、ざっと見た感じ見当たらなかった。
誕生日パーティーに参加したことのある撫子さんの友達なら、今回の会場も予想出来るだろう。
グループトークを再び開き、三人に会場について聞いてみることに。
{character:藤田佳奈}佳奈ちゃんは今まで仕事で一回も参加出来なくてさー、今年こそ絶対に行きたいんだよ!
{character:如月彩音}撫子ちゃん主催のパーティーで思い出したんだけど、前にすっごく面白いことがあったのよね。
{character:藤田佳奈}なぬー!
{character:player}気になる……!
{character:如月彩音}高校の頃、撫子ちゃんとは先輩後輩の関係でね、「女らしさ」を身につけるにはどうしたらいいかって私に相談してきたの。それで、かわい~レストランを紹介して、とりあえずそこに行ってみよ~ってことになったの。そしたらあの子、いきなり自分の誕生日パーティーをそこでやるって決めたのよ。
{character:如月彩音}そのレストランの誕生日パーティーがどんなものだったかというと、店員さんたちが店内をゴリッゴリに装飾して~、あの子にメルヘンな衣装を着せて~、お姫様のティアラを被せて~、それで、名前を書いた光るボードを掲げながら、彼女の周りでお誕生日の歌を歌い出したの。その歌の歌詞もなかなかすごかったのよね、えっと……どんなだったっけ……?
{character:藤田佳奈}(ボイスメッセージ)「Wow☆ KAWAIIすぎちゃってサンキュ☆ キミの全てがKAWAIIすぎ☆ サンキュ☆」
{character:如月彩音}これこれ! 生徒達の間で流行ってるの?
{character:藤田佳奈}どこのお店かわかったと思う!
{character:寺崎千穗理}ああ、あの店ね。流行ってるっていうよりある種のミームになってるんじゃないかしら。
{character:player}これは確かに笑えますねw
如月先生が言っていたのが、撫子さんのお父さんも言ってたあのレストランだったとは!
高校時代の撫子さんがクリスタルの冠を被り、メルヘンな装飾やスタッフ達に囲まれて歌を聞かされている場面を想像すると、申し訳ないけどめちゃくちゃ笑える。それならまた行こうとはならないだろう。
{character:player}そんなことがあったんですね、それならまた行こうとはならないでしょうね。お陰で一つ候補が潰れました、ありがとうございます! で、今年はどこでやるのかっていう話ですが……。
{character:如月彩音}ごめんね~、いきなり脱線しちゃって。
{character:寺崎千穗理}(URL)こことかどう?
寺崎さんが貼ったリンク先に飛ぶと、スポーツバーのホームページだった。特別なカクテルがウリとある。
{character:寺崎千穗理}休みの日に、たまに二人でバイクのレースを見ながら飲んだりする店よ。ここなら多人数のパーティーも出来るし、みんなで色々遊べるスペースもあるわ。ここの可能性も結構ありそう。
{character:player}あ、私もこの前撫子さんにここを勧められたような。お気に入りなのかな?
{character:藤田佳奈}へー、そんなことがあったんだ……。
{character:寺崎千穗理}有力そうなら一度行ってみる? 撫子がもう予約してる可能性もあるわよね、確認してみましょうか。
確かに寺崎さんの言う通りだ。これからアドバイスの通りに店に行ってみようか? それとも、他の情報を集めようか?
友人のアドバイスより頼れるものはない、私はスポーツバーへ足を運んだ。
{character:餐吧老板}はいはい、なんですかー! もうちょっと大きな声でお願いしまーす!
大胆かつアバンギャルドな内装の店内、プロジェクターから壁一面に投影されたバイクレースが映し出されている。その壁の手前はレースを見ながら酒と料理を楽しむスペースで、奥側の広いスペースではビリヤードや卓球などを楽しめる。
試合の実況解説や観客の歓声と、奥から響く球技の音が合わさって、店内に現代的なハーモニーを轟かせていた。
カウンターの前で私は撫子さんの画像を呼び出し、今回来た理由をもう一度オーナーに説明した。写真を見て、オーナーはやっと注意をレースの模様から私に向けた。
{character:餐吧老板}つまりお客さんは撫子さんのお友達? それなら、スケジュールが知りたいなら直接本人に聞けばいいんじゃ? そんな見え見えな嘘はやめてよね、撫子さんの連絡先を知りたい人、今まで何人いたと思う? 俺は客のプライベートをバラすような店主じゃないからな。
{character:player}ご、誤解です! オーナーさんに聞きに来たのも事情があって……。
疑われていることに動揺しながら、私はもう一度詳しい事情と、それを証明出来るチャット履歴などをオーナーに見せた。
{character:餐吧老板}本当に誤解だったか、ごめんよ。お詫びになるかわからないけど、特別に教えてあげるよ。お察しの通り、撫子さんは今週末ここでバースデーパーティーを開催する。
{character:player}予約をしたってことですか。
オーナーさんは自信満々に言ったけど、言い方がちょっと引っかかるので確認してみる。
{character:餐吧老板}いや、してないけど。
{character:藤田佳奈}なぬー!
{character:餐吧老板}いやそんなに疑わないでくれよ、いいか? 先週撫子さんが来たんだけどな、いつものように飲みに来たんじゃなくて、カクテルを作るコツを聞きに来たんだよ。来週友達に作ってあげたいからってさ。
{character:餐吧老板}レシピは別に特別なもんじゃないし、全部教えてあげたんだけどよ。で、実際に作らせてみたら、撫子さんさんがいつになく真剣に作ってるから聞いてみたんだよ。本当は大切な人に作るんじゃないかって。そしたらなんて答えたと思う? あのクールな撫子さんがまさかの恥ずかしくて聞こえてないふりだ! こりゃ大当たりじゃないか? わはははは!
オーナーが腰に手を当てて高笑いしてるけど、それは多分教習の時と同じ、集中しすぎてて本当に聞こえてないパターンだ。
{character:player}それは多分恥ずかしがってるんじゃなくて、カクテル作りに集中しすぎて本当に聞こえてなかったんだと思いますよ。
{character:餐吧老板}そんな! そうだったのか!
{character:player}多分ですけど……。
{character:餐吧老板}むむ……。でも、俺の判断は合ってると思う。週末までに結構な量のお酒を用意してほしいって言われたし? これは絶対にパーティーの準備でしょ。ってなわけで、早速サプライズの用意をするんだな若者よ。俺が全力で手伝ってやるから。
{character:player}それは、どうもありがとうございます……。
……ということは、撫子さんが選んだパーティー会場はここで確定か?
撫子さんが選びそうな場所の手がかりは、案外彼女のSNSにあるかもしれない。
そんなことを思いつつ、私は撫子さんのCatChatのプロフィールを開いた。
撫子さんはあんまりSNSをやらない人で、CatChatには主にその時思ったことを投稿するくらい。誕生日に関わる情報は、ざっと見た感じ見当たらなかった。
撫子さんが選びそうな場所の手がかりを知る方法として、彼女のSNSから調べるという手もある。案外答えはそういった、何気ない日常を記録するような場所に転がってるんじゃないだろうか。
手がかりを探すべく、撫子さんのCatChatのプロフィールページを開いた。
撫子さんはあんまりSNSをやらない人で、CatChatには主にその時思ったことを投稿するくらい。誕生日に関わる情報は、ざっと見た感じ見当たらなかった。
より具体的な手がかりを知る方法として、彼女のSNSから調べるという手もある。案外答えはそういった、何気ない日常を記録するような場所に転がってるんじゃないだろうか。
そんなことを思いつつ、私は撫子さんのCatChatのプロフィール画面を開いた。
撫子さんはあんまりSNSをやらない人で、CatChatには主にその時思ったことを投稿するくらい。誕生日に関わる情報は、ざっと見た感じ見当たらなかった。
より具体的な手がかりは、案外彼女のSNSにあるかもしれない。
そんなことを思いつつ、私はスポーツバーを後にした。
撫子さんはあんまりSNSをやらない人で、CatChatには主にその時思ったことを投稿するくらい。誕生日に関わる情報は、ざっと見た感じ見当たらなかった。
撫子さんは寺崎さんとよくこのバーに飲みに来るとのことだけど、今回はお酒を飲めない高校生の佳奈ちゃんもいる。だから、撫子さんがここを選ぶことはないだろう。
他の情報も集めてみることにした。
撫子さんが前アルバイトしていた教習所に行って、撫子さんを子供の頃から見てきたベテラン教官にも聞いてみるつもりだったが、今からそっちに向かっても着く頃には営業終了しているだろう。今日は一旦戻って、撫子さんのSNSを探ってみようか。
撫子さんはあんまりSNSをやらない人で、CatChatには主にその時思ったことを投稿するくらい。誕生日に関わる情報は、ざっと見た感じ見当たらなかった。
撫子さんは寺崎さんとよくこのバーに飲みに来るとのことだけど、今回はお酒を飲めない高校生の佳奈ちゃんもいる。だから、撫子さんがここを選ぶことはないだろう。
今日は一旦戻って、撫子さんのSNSを探ってみようか。
撫子さんはあんまりSNSをやらない人で、CatChatには主にその時思ったことを投稿するくらい。誕生日に関わる情報は、ざっと見た感じ見当たらなかった。