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八木唯 — 八木唯
八木唯 — 契約
八木唯 — クリスマスフェス
八木唯 — 仮装舞踏会2020
八木唯 — 月夜のワルツ
八木唯 — 鼓動する夏
八木唯 — イーハンパス・トラベラー
八木唯 — ファンタジック&ロマンチック
八木唯 — 雲跡侠影

八木唯

IQ180の天才だが、他人の感情がよく理解できないせいでまわりとうまくいかない。他人を理解できるようになろうと、彼女は偶然にも魂天神社にお詣りに来たが、これをきっかけに、彼女は少しずつ変わり始めた。コーヒーとおやつが好きだが、絶望的なバカ舌である。

Profile

Stature
162cm
Birth
9月7日
Age
19
Blood Type
AB
CV
小清水亜美
Hobby
おやつ、コーヒー、水泳

Skins

八木唯の初期衣装

八木唯と契約を結んだ時に入手できる着せ替え衣装

「クリスマスフェス」にて購入できる限定の着せ替え衣装

ハロウィンテーマの着せ替え衣装

「煌めく舞踏会」にて購入できるドレステーマの着せ替え衣装

「雀魂夏祭り2022・にゃん国無双」にて購入できる水着テーマの着せ替え衣

「イーハンパス・トラベラー」にて購入できる冒険テーマの着せ替え衣装

「サンリオキャラクターズ × 雀魂 コラボイベント」にて購入できる、私服テーマの着せ替え衣装

「驚風破竹」にて購入できる、武侠テーマの着せ替え衣装。

Emotes

八木唯 emote 0 八木唯 emote 1 八木唯 emote 2 八木唯 emote 3 八木唯 emote 4 八木唯 emote 5 八木唯 emote 6 八木唯 emote 7 八木唯 emote 8 八木唯 emote 10 八木唯 emote 11 八木唯 emote 12 八木唯 emote 888 八木唯 emote 999 八木唯 emote 993 八木唯 emote 976 八木唯 emote 970 八木唯 emote 961 八木唯 emote 947 八木唯 emote 935
  • プレゼント・普通

    ...うん...

  • プレゼント・好み

    ...ほしい、ありがとう。

  • 絆レベルアップ5

    先輩、手を繋いでもいい?

  • 絆レベルアップ1

    別にときめいたりしません

  • 絆レベルアップ2

    ...少しときめいたのかもしれない、もう一回してほしい

  • 絆レベルアップ3

    先輩と一緒なら、私も変われるのかな

  • 絆レベルアップ4

    先輩、あまりじーっと見ないでほしい...恥ずかしい...

  • 隐藏语音 - 新年

    明けましておめでとう、先輩。一緒に、花火見に行こう

  • 隐藏语音 - 情人节

    先輩、チョコレートをどうぞ、手作り。先輩の好み合わせて作ってみたの、唐辛子の餡が入ってる、さぁ、食べてみて

  • メイン1

    ...なに?

  • メイン2

    どうして他のみんなはあんなに表情が豊かなの?...理解できない

  • メイン3

    わざと一発を見逃したのか...?他の二人がどんな顔をするか気になっただけ、深い意味はないよ

  • メイン4

    先輩、先輩、先輩、先輩...先輩って面白いね、言い方を変えただけでこんなに意味が変わるなんて

  • メイン5

    あの...先輩、ちょっと近すぎ...他の人が見たら勘違いするかもしれない...

  • メイン6

    先輩、私を突っつくのって面白い?私も人を指で突っついてみたい

  • メイン7

    これ、あげる...新しく見つけた食べ物の組み合わせだよ、セロリマヨネーズポテチ...こんな真っ青になった先輩の顔、初めて、記念に写真撮っておこう

  • メイン8

    先輩、良かったら、麻雀・・・一緒に・・・しよ?

  • ログイン・普通

    こんにちは...

  • ログイン・絆LvMAX

    ...おかえりなさい、先輩。よかったら、一緒にマージャンしよ

  • 契約を結ぶ

    あまり見ないで、新しい服、慣れない...

  • SP-友人戦部屋に入場する時

    うん、お邪魔します

  • SP-友人戦部屋で準備した時

    準備完了

  • 出会い

    ...八木唯よ、あなたは...?

  • 北抜き

    ペー

  • チー

    チー

  • ダブル立直

    ダブルリーチ、すごく楽しみ...

  • カン

    カン

  • ポン

    あ、ポン...

  • 立直

    リーチ、楽しみ...

  • ロン

    ロン、それ頂戴

  • ツモ

    ツモ、全部頂戴

  • 白

    ハク

  • 北

    ペー

  • 純全帯幺九

    ジュンチャン

  • 純正九蓮宝燈

    チューレン九メン待ち

  • 大三元

    ダイサンゲン

  • 大四喜

    大スーシー

  • 地和

    チーホー

  • ダブル立直

    ダブリー

  • 東

    トン

  • ドラ

    ドラ

  • ドラ10

    ドラ10

  • ドラ11

    ドラ11

  • ドラ12

    ドラ12

  • ドラ13以上

    ドラいっぱい

  • ドラ2

    ドラ2

  • ドラ3

    ドラ3

  • ドラ4

    ドラ4

  • ドラ5

    ドラ5

  • ドラ6

    ドラ6

  • ドラ7

    ドラ7

  • ドラ8

    ドラ8

  • ドラ9

    ドラ9

  • ダブル北

    タブペー

  • ダブル東

    ダブトン

  • ダブル南

    ダブナン

  • ダブル西

    タブシャー

  • 断幺九

    タンヤオ

  • 対々和

    トイトイ

  • 二盃口

    リャンペーコー

  • 発

    ハツ

  • 国士無双十三面待ち

    コクシ十三メン待ち

  • 国士無双

    コクシムソウ

  • 海底摸月

    ハイテイ

  • 河底撈魚

    ホウテイ

  • 混老頭

    ホンロートー

  • 混全帯幺九

    チャンタ

  • 混一色

    ホンイツ

  • 九蓮宝燈

    チューレンポートー

  • 嶺上開花

    リンシャン

  • 立直

    リーチ!

  • 流し満貫

    流しマンガン

  • 緑一色

    リューイーソー

  • 南

    ナン

  • 平和

    ピンフ

  • 槍槓

    チャンカン

  • 七対子

    チートイ

  • 清老頭

    チンロートー

  • 清一色

    チンイツ

  • 三暗刻

    サンアンコー

  • 三槓子

    サンカンツ

  • 三色同刻

    三色ドーコー

  • 三色同順

    三色ドウジュン

  • 四暗刻

    スーアンコウ

  • 四暗刻単騎

    スーアンコウ、タンキ

  • 四槓子

    スーカンツ

  • 天和

    テンホー

  • 西

    シャー

  • 小三元

    ショーサンゲン

  • 小四喜

    小スーシー

  • 一盃口

    イーペーコー

  • 一発

    イッパツ

  • 一気通貫

    イッツー

  • 中

    チュン

  • ツモ

    ツモ

  • 字一色

    ツーイーソー

  • 清算一位

    こういう時は、笑うべきなのかな...?

  • 清算一位・高い点数で勝利

    イエイ!よかった

  • 清算一位・ロンで勝利

    イエイ…

  • 倍満

    バイマン

  • 九種九牌

    キュウシュキュウハイ

  • 数え役満

    数えヤクマン

  • 満貫

    マンガン

  • ノーテン

    ノーテン

  • 三倍満

    サンバイマン

  • 四風連打

    スーフーレンダ

  • 四槓散了

    スーカン流れ

  • 四家立直

    スーチャ…リーチ

  • 跳満

    ハネマン

  • 聴牌

    テンパイ

  • 役満

    ヤクマン

  • ダブル役満

    ダブルヤクマン

  • トリプル役満

    トリプルヤクマン

  • 四倍役満

    四倍ヤクマン

  • 五倍役満

    五倍ヤクマン

  • 六倍役満

    六倍ヤクマン

  • SP - ドラを捨てた時

    うん、いらない

  • SP - 倍満/三倍満聴牌

    大きい役の気配…

  • SP - 同じ牌を連続に捨てた時

    運が悪かった

  • SP - 残り牌が10枚以下の時

    そろそろおわる…

  • 対局開始

    先輩、行きましょう

  • SP - 役満聴牌

    ふふふふ、楽しい~

  • 帯幺九

    帯幺九(タイヤオチュウ)

  • 根

    根(ルート)

  • 将対

    将対(ジャントイ)

  • 金勾釣

    金勾釣(キンコウテャオ)

  • 嶺上放銃

    嶺上放銃(リンシャンホウジュウ)

  • 龍七対

    龍七対(ロンチートイ)

  • 清対

    清対(チントイ)

  • 清金勾釣

    清金勾釣(チンキンコウテャオ)

  • 清龍七対

    清龍七対(チンロンチートイ)

  • 清七対

    清七対(チンチートイ)

  • 清十八羅漢

    清十八羅漢(チンジュウハチラカン)

  • 清幺九

    清幺九(チンヤオチュウ)

  • 十八羅漢

    十八羅漢(ジュウハチラカン)

Spot Voices

  • Spot Voice 1

    惊讶

  • Spot Voice 2

    肯定1

  • Spot Voice 3

    否定

  • Spot Voice 4

    打招呼-早晨

  • Spot Voice 5

    打招呼-白天

  • Spot Voice 6

    打招呼-夜晚

  • Spot Voice 7

    告别

  • Spot Voice 8

    承接

  • Spot Voice 9

    叹气

  • Spot Voice 10

    高兴1

  • Spot Voice 11

    生气

  • Spot Voice 12

    递进

  • Spot Voice 13

    转折

  • Spot Voice 14

    疑惑1

  • Spot Voice 15

    语气

  • Spot Voice 16

    放弃

  • Spot Voice 17

    邀请

  • Spot Voice 18

    打招呼1

  • Spot Voice 19

    害羞

  • Spot Voice 20

    高兴2

  • Spot Voice 21

    称呼1

  • Spot Voice 22

    称呼2

  • Spot Voice 23

    疑惑2

  • Spot Voice 24

    肯定2

  • Spot Voice 25

    思考

  • Spot Voice 26

    打招呼2

  • Spot Voice 27

    称呼3

  • Spot Voice 28

    高兴3

  • Spot Voice 29

    高兴4

  • Spot Voice 30

    高兴5

  • Spot Voice 31

    称呼3

  • Spot Voice 32

    索要

  • Spot Voice 33

    高兴6

  • Spot Voice 34

    感谢

  • Spot Voice 35

    高兴7

  • Spot Voice 36

    犹豫

  • Spot Voice 37

    疑惑3

  • Spot Voice 38

    准备

白衣のバリスタ

絆LV1で開放

――この、妙な生臭さは何なのだろう。 本日3杯目の試作コーヒーをテーブルに置きながら、白衣を着た少女はその原因を分析する。 理論は完璧なはずだった。いいコーヒーの条件は苦味・酸味・コクのバランスが取れていること。つまり、コーヒーが本来持つ苦味を、様々な食材をブレンドして補ってあげればいい。食材の種類が多ければ多いほど旨味も増すだろう。だから彼女は足し算を続けた。柚子の皮。乾燥トマト。梅干し。ヨーグルト。バルサミコ酢。ここまでの工程に問題はない。そのはずなのに……。 「足し算が甘かった……?」 彼女はスーパーのレジ袋へと手を伸ばす。中には、今回の実験のために購入しておいた予備の食材が大量に詰め込まれていた。その中のアンチョビソースを掴み取り、パッケージをしばらく眺める。 ……駄目だ。 なんとなく、これを入れてしまったら全てが崩壊してしまう気がする……。 「コーヒー作りは、宇宙探索みたいなものなんだよ」 研究室へ遊びに行くたびに、父はそう言って笑っていた。 豆と豆の組み合わせパターンは星の数ほどあるし、ミルの回し方、湯の注ぎ方、コーヒーカップの材質に至るまで、考えなければならないことは無限にある。なるほどたしかに、究極のコーヒーをつくる旅路は果てしない。 それこそ、暗黒の宇宙を探索するようなものだ。正確な地図すらどこにもない航路を、粗末な宇宙船で進んでいく。そこにロマンを感じるんだ、というのが父の口癖だった。 たぶん父は、究極のコーヒーになど辿りつけなくてもよかったのかもしれない。未知への挑戦と、失敗の連続。そういう険しい道のりそのものを、父は心から愛していたのだ。 ……とは言っても。 「……お父さん。難しすぎるよ」 思わずつぶやいてしまっていた。 もちろん、彼女にも友人と呼べそうな相手はいる。一緒に麻雀をしたり、科学談義に花を咲かせたことは何度かある。だけど、なぜかコーヒー作りが趣味であることは誰にも打ち明けられなかった。 その理由はよくわからない。心を許していない……わけではないと思う。 なんというか、照れ臭いのだ。 コーヒー作りは父や母と過ごした日々の記憶と深く結びつきすぎていて、その温かい世界に誰かを招くのはむずがゆさを感じてしまう。 だから、究極のコーヒーは一人で完成させなければならないのだ。 覚悟を固めた彼女は、4杯目の試作に入ることにした。ひとまず口直しとして、何もブレンドしていない状態のコーヒーを口に含んでみる。 「…………あれ?」 美味しい……。 これはいったいどういうことだろう。 あれだけたくさんの材料をブレンドしたこだわりのコーヒーより、こんな何の変哲もないコーヒーの方がよっぽど洗練されている気が……。 「まさか、何かが根本的に間違って……」 そう言いかけて、彼女はぶんぶんと首を振る。 そんなはずはない。足し算のやり方が間違っていただけだ。 物質を足せば足すほど美味しさの総量が増えていく――彼女が導き出した理論は、宇宙の法則と照らし合わせても間違いないはずだから。 どうにか疑問を押し殺し、彼女は再び実験を始める。 「今度こそ、大丈夫なはず……!」

一粒の素粒子

絆LV2で開放

テーブルの上に、一杯のコップが置かれているとする。 中に入っているのは、何の変哲もない水だ。透明で無味無臭。生物が生きていくのに欠かせない、この世界で最も重要な物質の一つ。 虫眼鏡で覗いてもわからないことだが、この物質の中には無数の水分子がひしめき合っている。化学式はH2O。水素原子が2つ、酸素原子が1つ結合した姿。中学生以上なら誰でも知っているこの分子が、コップ一杯の中に6秭個入っている。ちなみに「秭」というのは数字の桁を表す漢字で、6の後に0が24個続いた数値を指す。「垓」の次で、「穣」の一つ前。「億」や「兆」とは比べ物にならないほど大きい。数秒で飲み干せてしまう物質の中に、それだけ途方もない概念が存在しているのだ。 でも、そこで終わりじゃない。 水素原子や酸素原子の中には、さらに一回り小さな原子核があり、その中にはさらに陽子と中性子が収まっている。もちろん、まだまだ先もある。途方もないほど小さな粒の中には、さらに気が遠くなるほど小さな粒がいくつも含まれている。 それが「素粒子」だ。 この世界を構成する、最小の概念。 昼下がりの図書館で、彼女はそんなミクロの世界について調べていた。 とはいえ、素粒子は両親の研究分野の一つだった。幼い頃から両親の研究室が遊び場だった彼女は、大学に入る前にはもう素粒子にまつわる論文や学術書にあらかた目を通していた。両親は教えるのが上手だったから、疑問点は中学生の頃にはほとんど解消してしまっている。今読んでいる海外の物理学者の本は、内容がよくまとめられているのは確かだけど……それだけだ。新しい知見が得られそうな気配はない。 「ふう……」 分厚い本を閉じ、彼女は溜め息を吐く。 何かもっと、彼女の心を躍らせてくれるような発見はないのだろうか? 退屈な世界の見え方が根本から変わる、驚きと喜びに満ちた出会いはないのだろうか? それとも人類は、もう世界の秘密をすべて解き明かしてしまったのだろうか? ……だとしたら。 「……そんなの、楽しくない。」 誰にも聴こえないほど小さな声で呟いてから、彼女は窓の外を眺める。 違う学部の学生たちが、楽しそうに笑いながらどこかへと歩いていた。 退屈、という言葉とは無縁そうな彼らと自分は、いったい何が違うのだろう。知識量が足りないのだろうか? 科学以外の分野にも手を広げてみた方がいいのだろうか? ……いや、違う。 それで解決できそうな問題ではない気がする。 読み終わった本を元あった場所へ戻すため、彼女は席を立つ。特集コーナーを歩いていると、漫画のような可愛らしいイラストが表紙に描かれた絵本が目に留まった。 タイトルは「たのしい科学との出会い」。もちろん子供向け。おそらく、教育学部の学生向けに置かれているものなのだろう。 海外の最新論文を読むのが日課の彼女にとっては、さすがに初歩的すぎる代物だ。 それでも彼女は、気付いたときにはその絵本を手に取っていた。 「……出会い。」 そう。出会いなのだ。 水素原子が酸素原子と出会って水になるように、無数の素粒子たちが出会って原子ができるように、出会いこそが退屈な世界を変えてくれるのだ。もし自分にもそんな出会いがあれば、窓の外を歩いていた彼らのようになれるかもしれない。劇的な科学的ブレイクスルーを待つ必要なんてないのかもしれない。 そう考えると、少しだけ身体が軽くなった気がする。 自分はこれから、どんな人と、どんな風に出会うのだろう。 そんなことを考えながら、彼女は絵本の最初のページをめくってみた。

世界よりも大切なもの

絆LV3で開放

小学校に上がる前、両親とよくピクニックへ出かけた。 研究で忙しい両親はあまり遠出をしたがらなかったから、車で30分くらいの場所にある大きな公園が主な目的地だ。魚釣りやアスレチックなどの遊びよりも、アウトドア用の椅子を3つ並べてのんびりするのが八木家のルーティン。コーヒーを飲みながら本を読む両親にならって、幼い彼女はオレンジジュースを片手に、少し難しい科学の本に挑戦していた。 幼稚園のころから読書が好きだった。というか、本を読む以外の過ごし方をあまり知らなかった。同級生たちが砂場でお城やお山を作ったり、プラスチック製の野菜やお肉でおままごとをするのを遠巻きに眺めながら、彼女は幼稚園にあった絵本を1年間で読破してしまった。今ではもう、小学生向けの漢字の多い本にも手を広げている。 両親の温かいまなざしを左右から感じながら、彼女は科学の本を読み進めていった。 ホタルのおしりが光る理由。 ドライアイスが普通の氷とは別物だということ。 宇宙ができるきっかけになった大爆発について。 今まで知らなかった世界の真実を、まだ小さな頭に夢中で詰め込んでいく。 「何だか暗くなってきたな」と思っていたら、父親が困り顔で頭を撫でてきた。 「唯、もう6時だよ」 いつの間にか、空が赤く染まり始めていた。 時間が経っていることにも気付かずに夢中で本を読んでいた彼女を、両親はずっと待ってくれていたらしい。 「科学の本は楽しい?」 父が持つマグカップから、コーヒーの香ばしい匂いが漂ってくる。 母がくれた手作りのクッキーをかじりながら、彼女は何度も頷いた。 「このせかいのことを、たくさん知れるから」 「すごいな、唯は。もうそんなことを考え始めてるのか」 「うん。……だけど」 「どうした?」 「……あのね、おとうさん。」 それに続く言葉はなかなか出てこなかった。まだ幼い彼女には、その感情の正体がよくわからなかったのだ。両親と一緒に本を読むのはとても楽しいはずなのに、それだけで十分なはずなのに、なぜだか胸が締め付けられる。幼稚園や家にある本を全部読み終わったあとは、いつも落ち着かない気分になってしまうのだ。 「本をよんだあと、なんだかそわそわするの。このままでいいのかな、って」 「勉強熱心なのはいいことじゃないか。どうしてそわそわするの?」 「えっと……」 まだ拙い言葉で、唯は自分が抱えている不安を打ち明けた。 漢字の多い本で彼女が学んだ、自然や宇宙の不思議たち。その素晴らしさを、本当は、おままごとや砂遊びをしているみんなにも伝えてあげたいのだ。 でも、どうすればいいのかわからない。 どうすれば、みんなが話を聞いてくれるのか。 どうすれば、自分のことを知ってもらえるのか。 どうすれば、みんなと仲良くなれるのか。 こんなにたくさん本を読んでいるはずなのに、みんなが普通にできていることが彼女にはわからない。悔しくて悔しくて、しょっぱい味のする水が目から溢れてきた。このしょっぱい水は色んな種類の小さな粒でできていて、その小さな粒の中にはもっともっと小さな粒がたくさん詰め込まれている――そんな面白い世界があるんだって、本当はみんなに伝えてあげたいのに。 「大丈夫だ、唯。いつか唯にも、世界より大切な人ができるよ」 父の目線が、彼女と同じ高さになった。 「そのときが来たら、ゆっくり伝えてあげるといい。宇宙の成り立ちとか、目に見えないほど小さな世界のことを」 父は優しく笑って、大きな手で頭を撫でてくれた。 その温かい感触を、今でもまだ覚えている。

君と過ごす日々

絆LV4で開放

Possible Endings

End1.シャボン玉が丸い理由
意志の宝玉 ×1
End2.未知数なカレー
コイン ×8000

Scenario Script

Spots 1, Scenes 256, Choices 7, Endings 2

#10263 Spot 0
#10001 Spot 0
四宮夏生

だから、本当に見たんだって!

#10002 Spot 0
四宮夏生

ささ昨晩、あの部屋の窓の中で、緑の炎がゆらゆらと動いていたのを!

#10003 Spot 0
四宮夏生

あれは間違いなく霊魂……いやエクトプラズム……?

#10004 Spot 0
それ、両方同じ意味でしょ。 → Spot 10006
確かに気になるね。緑の炎……? → Spot 10006
#10006 Spot 0
未来

落ち着くんだ。あの建物は理工学部の実験棟だろう。

#10007 Spot 0
未来

そこで緑の炎ときたら、恐らくは銅の……

#10008 Spot 0
八木唯

炎色反応。

#10009 Spot 0

声がした方向を見ると、そこには八木さんが立っていた。

#10010 Spot 0

そういえば、麻雀以外で話すのは初めてな気がする。 八木さんもちょっと緊張しているように見えた。

#10011 Spot 0
四宮夏生

そ、そう! 炎色反応ね!

#10012 Spot 0
四宮夏生

知ってる知ってる! かの有名な博士が提唱した原理で……。

#10013 Spot 0
未来

炎色反応なんて、中学校で習う内容だぞ。

#10014 Spot 0
四宮夏生

ぐぬっ……

#10015 Spot 0
八木唯

熱エネルギーで解離した試料は、原子に変換される。

#10016 Spot 0
八木唯

その過程で発生する電磁波には物質ごとに特定の周波数があって……

#10017 Spot 0
未来

そのエネルギーが人間の可視光線の範囲に入ったときに、 炎の色が変わって見える……

#10018 Spot 0
未来

ふふ、流石だなゆいちんは。

#10019 Spot 0
四宮夏生

こ……これも中学校で習うのか?

#10020 Spot 0
player

……いや、細かい原理まではさすがに……。

#10021 Spot 0

どうやら波長が合うらしく、 八木さんと未来さんはちょっと専門的過ぎる科学談義を始めてしまった。

#10022 Spot 0

聞いたこともない用語が次々と飛び交い、付け入る隙がまるでない。

#10023 Spot 0

このままだと、私と四宮くんだけ蚊帳の外だ……。

#10024 Spot 0
player

ちょうど四人揃ったし、どうする? これから麻雀でも……

#10025 Spot 0
未来

ふむ、楽しそうだね。

#10026 Spot 0
未来

……いや。そういえば、このあと会食があったんだ。 残念だけど、僕はここで失礼するよ。

#10027 Spot 0
四宮夏生

おっと、僕も今からバイトだ……。ちくしょう……!

#10028 Spot 0
player

そっか、残念。二人ともまた今度ね。

#10029 Spot 0
player

……さて。

#10030 Spot 0

八木さんと自分だけ取り残されてしまった。

#10031 Spot 0
player

……

#10032 Spot 0
八木唯

……

#10033 Spot 0
あー、ええと…… → Spot 10035
これはまあ……いったん解散、かな……? → Spot 10035
#10035 Spot 0

少し気まずい沈黙の中、八木さんは何も言わずにこちらを見ていた。

#10036 Spot 0

相変わらずの無表情。なにを考えているのかいまいち読めない。

#10037 Spot 0

な、何か、話題を振らないと……。

#10038 Spot 0
八木さんは科学が好きなんだね → Spot 10040
私の顔、何かついてる? → Spot 10060
#10040 Spot 0
八木唯

……よく、わからない。

#10041 Spot 0
player

え、そうなの……?

#10042 Spot 0
八木唯

子供の頃から、科学の本はよく読んでた。両親が科学者だったから。

#10043 Spot 0
八木唯

でも、自分が科学者になりたいわけじゃないから…… 本当に好きな人とは少し違うはず。

#10044 Spot 0
player

でも、知識量とか物凄いと思うし……

#10045 Spot 0
player

私には、八木さんは科学が好きそうに見えるよ。

#10046 Spot 0
八木唯

……そう?

#10047 Spot 0
八木唯

先輩が言うなら、そうなのかも。

#10048 Spot 0
player

科学者以外なら、八木さんは将来何になりたいの?

#10049 Spot 0
八木唯

え……?

#10050 Spot 0
八木唯

……なんだろう。

#10051 Spot 0
八木唯

………

#10052 Spot 0
八木唯

………私、いったい何になりたいの……?

#10053 Spot 0
player

……そ、そんな真剣に考えなくても!

#10054 Spot 0

適当に話題を振ったつもりだったのに。

#10055 Spot 0

なんか面白いな、この子。不器用というか、真面目というか……。 どことなく放っておけない感じがする。

#10056 Spot 0

ここは一旦話題を変えよう。

#10057 Spot 0
player

じゃあさ、もし何か見つかったら私にこっそり教えてよ。

#10058 Spot 0
player

科学方面以外なら、私でも力になれるかもしれないからさ。

#10059 Spot 0
八木唯

……うん。ありがとう、先輩。

#10060 Spot 0

八木さんは何も言わずにこちらを見つめている。

#10061 Spot 0

これは……否定? 肯定? どっちなんだろう。

#10062 Spot 0
八木唯

……図星。

#10063 Spot 0
player

え?

#10064 Spot 0
八木唯

先輩のこと、観察してると、楽しいから。

#10065 Spot 0
八木唯

嫌なら、もうやめる。ごめんなさい。

#10066 Spot 0
べ、別に嫌じゃないけど…… → Spot 10068
でも、私なんか観察してもなにも楽しくないよ……? → Spot 10068
#10068 Spot 0
player

ほら私って、パラメーターがこの街の住民のちょうど平均値って感じしない?

#10069 Spot 0
八木唯

……そういう反応が、すごく面白い。

#10070 Spot 0
八木唯

先輩は、もっと、自分の面白さを、自覚した方がいいと思う。

#10071 Spot 0
player

もしかしてからかってる?

#10072 Spot 0
八木唯

本心、だよ。

#10073 Spot 0
player

そっか、本心か……

#10074 Spot 0

八木さんの方こそ、とても面白い女の子だと思った。

#10075 Spot 0
八木唯

先輩って、帰る方向、同じ?

#10076 Spot 0
八木唯

家の近くのコンビニで、見かけたことあるから……そこからの推測。

#10077 Spot 0
player

お、そうなのかも!

#10078 Spot 0
player

じゃあ、途中まで一緒に帰ろっか。

#10079 Spot 0
八木唯

うん。……あ

#10080 Spot 0
八木唯

そういえば、冷蔵庫に何も入ってない……。

#10081 Spot 0
player

八木さんって、自炊とかするんだ。

#10082 Spot 0
八木唯

うん。まだ修行中、だけど。

#10083 Spot 0
player

じゃあさ、一緒にスーパー寄ってみる? 私も久しぶりに自炊したい気分だし。

#10084 Spot 0

家の近くにある、二階建ての大型スーパーに立ち寄る。

#10086 Spot 0

ここは久しぶりだけど、品揃えが豊富で、欲しい食材は大体なんでも手に入る。

#10087 Spot 0
player

そういえば、牛乳を切らしていた気がする。ついでに買っておこうか。

#10088 Spot 0
player

八木さん、今晩の献立は……

#10089 Spot 0
player

あ。ちょっと待って、推理してみるね!

#10090 Spot 0

八木さんが買い物かごに入れていく食材をチェックする。

#10091 Spot 0

白菜、レタス、サニーレタス、サンチュ。

#10092 Spot 0

キャベツ、紫キャベツ、芽キャベツ……。

#10093 Spot 0
player

や、八木さん?

#10094 Spot 0
player

そんな、葉っぱ系の野菜ばっか集めて何を……。

#10095 Spot 0
八木唯

先輩、当ててみて。

#10096 Spot 0
何らかの鍋料理なはず……! → Spot 10098
ウサギでも飼ってたりする? → Spot 10110
#10098 Spot 0
八木唯

残念、ハズレ。

#10099 Spot 0
八木唯

そんなに難しかった……?

#10100 Spot 0
player

え、うん。だいぶ難しいと思うよ……?

#10101 Spot 0
player

……ちなみに正解は?

#10102 Spot 0
八木唯

肉じゃが。

#10103 Spot 0
player

え?

#10104 Spot 0
player

じ、じゃがいもをまず買わないと……

#10105 Spot 0
八木唯

肉じゃがに、お肉とじゃがいもを使うのは、固定観念。

#10106 Spot 0
八木唯

新しい食材で実験してこそ、美食への道は開かれる……はず。

#10107 Spot 0
player

そ、それもう肉じゃがではなくなってる気が……。

#10108 Spot 0

どうも独創性をはき違えている気がする。

#10109 Spot 0

というか、八木さんってもしかして、料理がものすごく苦手なんじゃ……?

#10110 Spot 0
八木唯

……やっぱり、先輩は面白い。

#10111 Spot 0
八木唯

私、ペットなんて飼ったことないよ。

#10112 Spot 0
player

ご、ごめん。カゴの中が緑ばっかりだったからつい……。

#10113 Spot 0
八木唯

正解は、肉じゃが。

#10114 Spot 0
player

え?

#10115 Spot 0
八木唯

あと先輩、うさぎにこんなにたくさん野菜をあげるのは、危険。

#10116 Spot 0
八木唯

水分補給目的で、ほんの少し与えるくらいにしないと。 上限は、体重1キロあたり3グラム。

#10117 Spot 0
player

ちょ、ちょっと待って! 恐ろしい回答をさらっと流さないで……!

#10118 Spot 0
八木唯

うさぎにとっては、新鮮な野菜よりも乾燥した牧草の方が栄養価が高い。

#10119 Spot 0
八木唯

不思議だと思わない、先輩?

#10120 Spot 0
player

いや、クイズどころじゃないよ……!

#10121 Spot 0
player

こんな材料で肉じゃがなんて作れるの?

#10122 Spot 0
八木唯

先輩、固定観念をひっくり返そう。

#10123 Spot 0
player

最低限守るべき固定観念もあると思うよ!?

#10124 Spot 0
???

えーーーん!!

#10125 Spot 0

不意に、小さな子供の泣き声が響き渡る。

#10126 Spot 0

辺りを見回すと、お魚コーナーの前で 4~5歳くらいの女の子が不安そうに立ち尽くしていた。

#10127 Spot 0

迷子だろうか?

#10128 Spot 0

平日の午後ということもあって、店内の客はまばらだ。店員さんも近くにはいない。

#10129 Spot 0
player

(これは……私たちが声をかけるべきだよね……?)

#10130 Spot 0
八木唯

……行かないと。

#10131 Spot 0

私よりも先に、八木さんが女の子の方へ駆け出していた。

#10132 Spot 0

目線が同じ高さになるようにしゃがみ込み、八木さんが優しい口調で言う。

#10133 Spot 0
八木唯

どうしたの?

#10134 Spot 0
八木唯

お父さんかお母さんは? はぐれちゃった……?

#10135 Spot 0
女の子

……ううう。

#10136 Spot 0
女の子

おかあさん……どこ……?

#10137 Spot 0
八木唯

大丈夫。

#10138 Spot 0
八木唯

私たちが一緒に探してあげる。

#10139 Spot 0
八木唯

このスーパーには迷子センターもないし……

#10140 Spot 0
八木唯

いいよね、先輩?

#10141 Spot 0
player

もちろん。一緒に探そう。

#10142 Spot 0
女の子

ありがと……。

#10143 Spot 0
八木唯

ねえ、どこでお母さんとはぐれちゃったか、わかる?

#10144 Spot 0
女の子

しゃぼん玉をね、さがしてたらね……

#10145 Spot 0
女の子

おかあさんがいなくなっちゃった……。

#10146 Spot 0
player

おもちゃがあるのは……二階かな?

#10147 Spot 0

さて、ここからどうするべきか……。

#10148 Spot 0
二階を探してみよう → Spot 10150
出口の辺りで待っていよう → Spot 10233
#10150 Spot 0

エスカレーターを使い、三人で二階へ向かう。

#10151 Spot 0

女の子がお母さんとはぐれたのはこの辺りで間違いないはずだけど……

#10152 Spot 0

おもちゃが並んでいる棚の周辺を探してみても、それらしい人影はない。

#10153 Spot 0

もうどこかに移動してしまったんだろうか?

#10154 Spot 0
女の子

ひぐっ、おかあさん……

#10155 Spot 0
女の子

どこいっちゃったの?

#10156 Spot 0

また泣き出しそうになった女の子を前にして、どうすればいいかわからなくなる。

#10157 Spot 0

店員さんを呼んで事情を伝えた方がいいのかもしれない。

#10158 Spot 0

店内放送でお母さんを呼び出してもらえば……。

#10159 Spot 0
八木唯

大丈夫、きっと見つかる。

#10160 Spot 0

焦る私とは対照的に、八木さんは落ち着いた様子だった。 どことなく、いつもよりも柔らかい空気を纏っている気がする。

#10161 Spot 0

八木さんは女の子の傍にしゃがみ込み、そっと頭を撫でてあげた。

#10162 Spot 0
八木唯

ねえ、しゃぼん玉がどうして丸くなるのか知ってる?

#10163 Spot 0
八木唯

普通、水をストローで吹いても、こぼれちゃうだけなのに。

#10164 Spot 0
女の子

ぐすっ、うう……

#10165 Spot 0
女の子

……ううん。しらないよ……。

#10166 Spot 0

……恥ずかしながら、私も原理までは知らなかった。

#10167 Spot 0
八木唯

たとえば、コップの中に水が入ってるとする。

#10168 Spot 0
八木唯

その水は、とても小さな粒がたくさん結びついてできてる。

#10169 Spot 0
八木唯

この小さな粒を「分子」って言うんだけど……

#10170 Spot 0
女の子

おねえちゃん……むずかしいよ……

#10171 Spot 0
八木唯

……失敗した。もっと噛み砕かないと。

#10172 Spot 0
八木唯

ええと……

#10173 Spot 0
八木唯

……妖精。

#10174 Spot 0
八木唯

コップの水の中には、小さな妖精がたくさん棲んでる。

#10175 Spot 0
八木唯

……もちろん、これはただのたとえ話で、 妖精なんて非科学的なものは存在しないけど、でも今は便宜的に……

#10176 Spot 0
や、八木さん! 今の方向でいこう! → Spot 10177
きっちり解説しなくてもいいと思う……! → Spot 10177
#10177 Spot 0
八木唯

……わかった。

#10178 Spot 0
女の子

ようせいさんは、わたしより小さいの……?

#10179 Spot 0
八木唯

ずっと小さい。目には見えないくらい小さい。

#10180 Spot 0
八木唯

だけど、妖精はとても頑張り屋さんで……

#10181 Spot 0
八木唯

みんなで手を繋ぎあって、水がばらばらにならないように食い止めてる。

#10182 Spot 0
八木唯

そして、いちばんエネルギーが安定する形が球体だから……

#10183 Spot 0
八木唯

これを表面張力といって、界面活性剤が水の凝集力を弱めてくれるから……

#10184 Spot 0
player

八木さん! また難しくなってる……!

#10185 Spot 0
八木唯

難易度が高すぎる……。

#10186 Spot 0

実際、女の子は八木さんの解説をほとんど理解できていないようだ。

#10187 Spot 0

でも、いつの間にか泣き止んでいる。 さっきまではなかった笑顔まで見せてくれるようになった。

#10188 Spot 0

たぶん、八木さんの必死さが伝わったんだろう。

#10189 Spot 0

心なしか、小さな瞳には好奇心の輝きみたいなものも見える。

#10190 Spot 0
女の子

……わかった!

#10191 Spot 0
女の子

ようせいさんが手をつないでるから、しゃぼん玉はまるいんだね!

#10192 Spot 0
八木唯

そ、そう……!

#10193 Spot 0

気を取り直すように咳払いをして、八木さんはまた女の子の頭を撫でてあげた。

#10194 Spot 0
八木唯

だから、お母さんが見つかるまで私と手をつなごう?

#10195 Spot 0
八木唯

水の中の妖精みたいに一緒にがんばれば、きっと見つかる、から。

#10196 Spot 0

最後の方はちょっと照れ臭そうだったけど、 今のはなかなか言えない台詞だと思う。

#10197 Spot 0

人付き合いがあんまり得意じゃない子だと思っていたけど、 それはただ、私が八木さんのことを知らなかっただけだったみたいだ。

#10198 Spot 0

手を繋いで歩き始めた2人の背中を見て、温かい気持ちが込み上げてくる。

#10199 Spot 0
???

……あいちゃん?

#10200 Spot 0

落ち着いた女性の声が、後ろの方から聴こえる。

#10201 Spot 0

三人揃って振り向くと、 そこにはエスカレーターを昇って2階にやってきた髪の長い女性が立っていた。

#10202 Spot 0

女の子が嬉しそうに駆け寄っていく。やっとお母さんと再会できたのだ。

#10203 Spot 0
お母さん

おふたりとも、本当にありがとうございます……! ほらあいちゃん、お礼言って!

#10204 Spot 0
女の子

うん、ありがとう!

#10205 Spot 0
八木唯

もうはぐれちゃ駄目。わかった?

#10206 Spot 0
女の子

うん、きをつける!

#10207 Spot 0

エスカレーターを降りていく親子に手を振る八木さんの、 目元がいつもより細くなっていることに気付く。

#10208 Spot 0

これはもしかして……笑っているんだろうか?

#10209 Spot 0

相変わらず表情筋はあまり動いていないけど、 よく観察すれば感情がまったく見えないわけじゃない。

#10210 Spot 0

これもまた、新しい発見だ。

#10211 Spot 0
八木唯

お母さん、見つかってよかった。

#10212 Spot 0
player

うん。八木さんのおかげだよ。

#10213 Spot 0
player

八木さんが優しく向き合ってくれたから、 あの女の子も心を開いてくれたんだと思う。

#10214 Spot 0
八木唯

……私は、自分のためにやっただけ。

#10215 Spot 0
八木唯

あの子が、昔の自分に似てたから。

#10216 Spot 0
player

へえ、どんな風に……

#10217 Spot 0
八木唯

……あ。

#10218 Spot 0
player

えっ、どうしたの?

#10219 Spot 0
八木唯

今日、荷物届くの忘れてた。

#10220 Spot 0
player

え、ホント? 何時の予定?

#10221 Spot 0
八木唯

16時から18時まで。もう届いてるかも。

#10222 Spot 0

携帯を見る。現在はもう16時40分だ。

#10223 Spot 0
player

うわー……。これはどうだろう、ギリギリ行けるかな……?

#10224 Spot 0
八木唯

ごめん先輩、急がないと……

#10225 Spot 0
player

うん、気を付けてね。

#10226 Spot 0
八木唯

先輩こそ、気を付けて。

#10227 Spot 0

5メートルくらい走ってから、八木さんが急に立ち止まった。

#10228 Spot 0

振り返った彼女の表情は、今の私にはまだうまく読み取れない。

#10229 Spot 0
八木唯

先輩、今日は久々に楽しかった。

#10230 Spot 0
八木唯

また今度、麻雀でね。

#10231 Spot 0

少し名残惜しそうに見えたのは、思い過ごしだろうか。

#10232 Spot 0End

……もしそうだとしたら、ちょっと嬉しいかも。

End1.シャボン玉が丸い理由 — 意志の宝玉 ×1
#10233 Spot 0
player

あちこち動き回るより、絶対に通る場所で待ってた方がいいと思う。

#10234 Spot 0
八木唯

先輩、策士……!

#10235 Spot 0

だいぶ大袈裟な気はするけど、褒められて悪い気はしない。

#10236 Spot 0

女の子が泣き止むのを待ってから、スーパーの出入り口の方へ向かう。

#10237 Spot 0

読み通り、女の子のお母さんは数分も経たないうちに現われた。

#10238 Spot 0
女の子

おかあさん、どこ行ってたの!?

#10239 Spot 0
お母さん

あいちゃんのこと探してたの。急にいなくなっちゃうから……

#10240 Spot 0
女の子

あ、よるごはんはカレー?

#10241 Spot 0
お母さん

そ、そうだよ……?

#10242 Spot 0

子供特有の、コロコロと話題が切り替わる会話にたじたじになりながら、 お母さんがこちらに頭を下げてきた。

#10243 Spot 0

女の子に手を振って見送りながら、隣の八木さんが呟く。

#10244 Spot 0
八木唯

……完全に、カレーの口。

#10245 Spot 0
player

あはは、私も。

#10246 Spot 0
player

でも、八木さんが買った食材じゃ難しくない? また野菜コーナー戻ろうか?

#10247 Spot 0
八木唯

先輩……不思議なこと言う。

#10248 Spot 0
八木唯

肉じゃがとカレーは、材料がほとんど同じ。常識。

#10249 Spot 0
player

いや……それはまあそうなんだけど……どこから説明すればいいのかな……

#10250 Spot 0

ひとまず、八木さんの夕飯はカレーで確定してしまったようだ。 スパイス類が並ぶ棚へと二人で向かう。

#10251 Spot 0
player

……八木さん、いきなり本格派カレーは難しいんじゃないかな?

#10252 Spot 0
player

まずは普通にカレー粉とか、市販のルーで試してから……

#10253 Spot 0
player

……って、ちょっと! カレーに豆板醬なんか入れないよ! 棚に戻して!

#10254 Spot 0
八木唯

……もっと上級者になってから?

#10255 Spot 0
player

いや、そういうわけでもなくて…。なんていうか、概念からこう……

#10256 Spot 0
八木唯

そうだ、先輩。今度、麻雀のときカレー作っていくね。

#10257 Spot 0
player

う、うん。楽しみにしておくね……

#10258 Spot 0

八木さんは相変わらずの無表情だけど、 夢中になってスパイスを物色している姿は、楽しそうに見えなくもない。

#10259 Spot 0

……とはいえ。

#10260 Spot 0
player

先が思いやられるなあ……。

#10261 Spot 0
八木唯

先輩、何か言った?

#10262 Spot 0End
player

ううん、そんなことないよ!

End2.未知数なカレー — コイン ×8000

君の瞳に映る海

絆LV5で開放

Possible Endings

End3.新世界
月光の福袋 ×1
End4.方寸世界
知恵の宝玉 ×1

Scenario Script

Spots 1, Scenes 277, Choices 6, Endings 2

#10286 Spot 0
#10000 Spot 0
小鳥遊雛田

海だ~~っ!

#10001 Spot 0
四宮夏生

フフフ! 一番乗りは貰った!

#10002 Spot 0
明智英樹

どうやら、僕たちしかいないみたいですね。

#10003 Spot 0
未来

海水浴シーズンはあと少し先だからな。

#10004 Spot 0
小鳥遊雛田

でもでも、いいお天気でよかったね~。

#10005 Spot 0
player

本当にね。天気予報では曇りだったから……

#10006 Spot 0
四宮夏生

おい! 普通、誰かひとりくらいは追いかけてくるもんだろう!?

#10007 Spot 0

たまたま予定が合ったから、いつも麻雀をしているメンバーで海にやってきた。

#10008 Spot 0

まだ泳げない季節だというのに、みんな随分なはしゃぎっぷりだ。

#10009 Spot 0

小鳥遊さんと未来さんなんか、子供みたいに砂浜を走り回っている。

#10010 Spot 0
八木唯

……

#10011 Spot 0

八木さんは少しだけ眩しそうに、はしゃぎ回るみんなを遠目で見ていた。

#10012 Spot 0

最近よく話すようになったけど、こういう遊びに誘うのは初めてな気がする。 ちょっと緊張しているのかな?

#10013 Spot 0
八木唯

……楽しそう。

#10014 Spot 0

と、八木さんは小さな声で言ってるけど、楽しそうならよかった……か?

#10015 Spot 0
player

八木さんは、楽しくないの?

#10016 Spot 0
八木唯

……わからない。

#10017 Spot 0

肯定でも否定でもないとは……これは厄介かも。

#10018 Spot 0
player

海に来るのはいつ以来?

#10019 Spot 0
八木唯

……十年と三ヶ月ぶり。

#10020 Spot 0
player

へえ、そうなんだ。

#10021 Spot 0

よくそんな正確に覚えてるな……。

#10022 Spot 0
八木唯

家族で、初めて海に来たとき……

#10023 Spot 0
八木唯

泳げなかったのが悔しくて、水泳を習い始め。

#10024 Spot 0
player

じゃあ、八木さんって泳ぐの得意なんだ?

#10025 Spot 0
八木唯

……先輩、疑ってる?

#10026 Spot 0
player

い、いや、そんなことないよ!

#10027 Spot 0

……正直、八木さんはスポーツとは無縁な子だと思っていた。

#10028 Spot 0
八木唯

……証明したいけど、海開きはまだ先。

#10029 Spot 0
八木唯

……痛恨。

#10030 Spot 0
それならさ、貝殻でも探そうよ。 → Spot 10032
だ、大丈夫。砂浜で宝探しでもしよう。 → Spot 10032
#10032 Spot 0

ばっ、と八木さんが突然こちらを見る。

#10033 Spot 0
player

……な、なに?

#10034 Spot 0
八木唯

……先輩。

#10035 Spot 0
八木唯

珍しい貝殻みつけたら、プレゼントするね。

#10036 Spot 0
はは、ありがとう。 → Spot 10038
私も探しておくね。 → Spot 10038
#10038 Spot 0
小鳥遊雛田

みんな~! ビーチバレーしようよ~!

#10039 Spot 0
四宮夏生

フフフ……。こんなこともあろうかと、僕がボールを持参しておいたのさ。

#10040 Spot 0
四宮夏生

驚くがいい! この僕の圧倒的な独創性に!

#10041 Spot 0
明智英樹

最初に思い浮かぶ選択肢だと思いますけど……

#10042 Spot 0
未来

でも、楽しそうじゃないか。ゆいちんと{var:player_nickname}もやるよな?

#10043 Spot 0

もちろん、断る理由はない。

#10044 Spot 0

隣の八木さんも、まだ少し眩しそうに首を縦に振った。

#10045 Spot 0

八木さんと英樹が同じチームになった。

#10046 Spot 0

スポーツとは無縁そうに見えたけど、八木さんの動きは意外と様になっている。

#10047 Spot 0

どちらのチームにもバレー経験者はいないから、実力はほぼ互角だ。

#10048 Spot 0
小鳥遊雛田

そりゃ!

#10049 Spot 0
四宮夏生

ふんっ!

#10050 Spot 0
明智英樹

はあっ!

#10051 Spot 0
未来

はは、たまにはスポーツも楽しいな。

#10052 Spot 0
八木唯

……うん。楽しい。

#10053 Spot 0
player

よしっ、アタック決まった!

#10054 Spot 0

一進一退の攻防が続き、現在のスコアは20対19。勝負は大詰めだ。

#10055 Spot 0
小鳥遊雛田

ううっ……ここを落としたら負けちゃうよ~。

#10056 Spot 0
四宮夏生

ええい、くらえっ! 火の玉サーブッ!

#10057 Spot 0
明智英樹

くっ、技名のわりに遅すぎてタイミングが……!

#10058 Spot 0
明智英樹

{var:player_nickname}さん、トスを頼みます!

#10059 Spot 0

自分の頭上にバレーボールが飛んできた。

#10060 Spot 0

横目でチームメイトの位置を確認すると、少し後ろにいた八木さんと目が合った。

#10061 Spot 0

心なしか、その瞳には自信のようなものがみなぎっている気がした。 だけど……。

#10062 Spot 0

相手コートをちらりと見る。 敵の三人はみんな後ろに下がっていて、前方がガラ空きだ。

#10063 Spot 0

これを決めれば勝利だ! さあ、どうする!?

#10064 Spot 0
八木さんにボールをトスする。 → Spot 10067
フェイントで、相手コートにボールをトスする。 → Spot 10091
#10067 Spot 0
player

八木さん、任せたっ!

#10068 Spot 0
八木唯

ふっ……!

#10069 Spot 0

八木さんは狙いを定め、高く飛び上がってーー

#10070 Spot 0

スカッ

#10071 Spot 0
明智英樹

……

#10072 Spot 0
小鳥遊雛田

……

#10073 Spot 0
未来

盛大に空振ったね、ゆいちん。

#10074 Spot 0
八木唯

……不覚。

#10075 Spot 0

そのまま相手チームは勢いに乗ってしまい、私たちは逆転を許してしまう。

#10076 Spot 0

試合終了後、八木さんは砂浜を転がるボールを見下ろしながら立ち尽くしていた。

#10077 Spot 0

どうやら、八木さんは相当悔しがっているみたいだ……。

#10078 Spot 0
player

や、八木さん……?

#10079 Spot 0
八木唯

インパクト時の右手の座標は間違ってなかった……はず。

#10080 Spot 0
八木唯

踏み込みのタイミングが早すぎた?

#10081 Spot 0
八木唯

いや、力積をもっと増やせば 運動エネルギーを維持したまま空中で姿勢を制御して……

#10082 Spot 0

その辺にあった木の棒で、八木さんは砂浜に何やら難しい数式を書き始めた。

#10083 Spot 0
八木さん、落ち着いて! → Spot 10084
そんなに落ち込まないで。ね? → Spot 10084
#10084 Spot 0

八木さんはそんな私を無視し、計算を続けている。

#10085 Spot 0
player

ほら、あとでジュース買ってあげるからさ。

#10086 Spot 0
八木唯

……先輩。

#10087 Spot 0
八木唯

……

#10088 Spot 0
八木唯

アイスコーヒーがいい。

#10089 Spot 0
player

……よし、任せなさい。

#10091 Spot 0

手を高く挙げて、後方を狙うと見せかけて、力を込めて回転を加える……完璧! がら空きの相手コート前方に、ボールがゆっくりと吸い込まれていく。

#10092 Spot 0

最初に反応した四宮くんが頭から滑り込んできたが、ちょっと遅すぎた。

#10093 Spot 0

ゲームセット。即席チーム対決は、私たちの勝利で終わった。

#10094 Spot 0
四宮夏生

くそーっ、ぜんぜん反応できなかった……

#10095 Spot 0
小鳥遊雛田

策士だね~。まさかあの場面でフェイントなんて……

#10096 Spot 0

悔しがる敵チームの面々を見て、ちょっとだけ嬉しさが込み上げてくる。

#10097 Spot 0

チームメイトとハイタッチでもしようと思ったけど、なんだか空気が変だ。

#10098 Spot 0
八木唯

……先輩

#10099 Spot 0
八木唯

……(じーっ)

#10100 Spot 0
player

え? あっ、まさか。

#10101 Spot 0
player

ごめん……。最後、トス出して欲しかった……?

#10102 Spot 0
八木唯

……

#10103 Spot 0
明智英樹

八木さんもいいポジションにいましたからね。 まあ悪い判断ではなかったと思いますが……。

#10104 Spot 0
未来

{var:player_nickname}。キャプテンとして、 ここはゆいちんをフォローしてあげた方が賢明だろうね。

#10105 Spot 0

いつの間にかキャプテンになってた……

#10106 Spot 0
八木唯

先輩。

#10107 Spot 0

八木さんが肩を指でつんつんしてくる。

#10108 Spot 0
八木唯

コーヒー買ってくれたら、許してあげる。

#10109 Spot 0
player

えええ……

#10110 Spot 0

八木さんはどことなく楽しんでいるようにも見える。 これはもしかして、からかわれてるのだろうか?

#10111 Spot 0

ていうか、意外と悪戯好きな子なんだな……。

#10112 Spot 0
player

仕方ないなあ、買ってきてあげるよ。何がいい?

#10113 Spot 0
八木唯

ブラック。ありがとう、先輩。

#10114 Spot 0

ちょうど喉が渇いたところだ。近くの駐車場に自販機があってよかった。

#10115 Spot 0
player

せっかくだし、みんなの分も買ってあげようか。

#10116 Spot 0

そう思いながら、八木さんのアイスコーヒーとジュース何本かを買って砂浜に戻る。

#10117 Spot 0

だが、八木さんの姿がどこにもない。

#10118 Spot 0
player

ねえ、八木さんどこ行ったかわかる?

#10119 Spot 0
小鳥遊雛田

え、唯ちゃん?

#10120 Spot 0
未来

……ホントだ! ゆいちんどこ行ったんだろ?

#10121 Spot 0

こんな何もない砂浜で迷子になるものだろうか?

#10122 Spot 0

八木さんとさっき交わした会話を思い出す。

#10123 Spot 0

……まさか、泳げることを証明するために一人で海に……?

#10124 Spot 0
player

……探さないと。

#10125 Spot 0
小鳥遊雛田

うん、みんな呼んでくるね!

#10126 Spot 0

大変なことになった。

#10127 Spot 0

みんなで手分けして砂浜を探すけど、八木さんらしき人影はどこにも見えない。

#10128 Spot 0

沖に流されてるはずはない……とは思うんだけど……。

#10129 Spot 0

どこにいる? 八木さん、無事だよね……!?

#10130 Spot 0

ふと、百メートルほど先にある岩場が目に留まった。

#10131 Spot 0

砂浜から海に向かって突き出している岩場はごつごつしていて、起伏も激しい。

#10132 Spot 0

岩場を登ってみると、反対側の砂浜にしゃがみ込んでいる八木さんを見つけた。 岩場が死角になって見つけられなかったのだ。

#10133 Spot 0
player

……ふう。八木さん、やっと見つけたよ。

#10134 Spot 0
八木唯

……先輩?

#10135 Spot 0

八木さんは何が何だかわかっていないらしく、 いつもの無表情で目線をきょろきょろ動かしている。

#10136 Spot 0
player

よかった~、みんな心配してるよ。ちょっと連絡するね。

#10137 Spot 0
八木唯

……待って

#10138 Spot 0
八木唯

まだ、場所までは言わないで。

#10139 Spot 0
player

……うん?

#10140 Spot 0

よくわからないけど、 ひとまずみんなに「八木さん見つかったよ」とだけチャットを送る。

#10141 Spot 0

八木さんが岩場へ登ってきた。

#10142 Spot 0

同じ目線に立った彼女の掌には、小さな白い欠片がいくつか乗っている。

#10143 Spot 0
player

まさか、貝殻探してくれてたの?

#10144 Spot 0

夢中で探していたら、こんなところまで迷い込んでしまったのか……。

#10145 Spot 0
八木唯

珍しい種類、ではないけど……

#10146 Spot 0
八木唯

先輩、あげる。

#10147 Spot 0
player

……ありがとう、八木さん。

#10148 Spot 0
八木唯

……下の名前でいいよ。

#10149 Spot 0
player

え?

#10150 Spot 0
八木唯

先輩。ちょっと二人で話そう?

#10153 Spot 0
player

もちろん、八木さん。

#10154 Spot 0
八木唯

……

#10155 Spot 0
player

ゆ、唯。

#10156 Spot 0

八木さんは満足そうに頷いた。

#10287 Spot 0

波が岩肌にぶつかっては砕ける、心地よい音。

#10288 Spot 0

それに耳を傾けながら、二人で岩に座って水平線を眺める。

#10157 Spot 0
八木唯

……大昔、地球が丸いことを誰も知らなかったころ。

#10158 Spot 0
八木唯

とある古代文明では、ドーム型の地球を巨大な象たちが支えていて、

#10159 Spot 0
八木唯

その下にはもっと巨大な亀が棲んでいると考えられてた。

#10160 Spot 0
八木唯

面白いよね、先輩。

#10161 Spot 0
player

うん、確かに面白い。

#10162 Spot 0
八木唯

昔の人は、地球が丸いことを知ったとき、どんな気持ちになったんだろう。

#10163 Spot 0
八木唯

こんなに科学が進化した今、それ以上の新発見は訪れる……?

#10164 Spot 0

傾き始めた太陽が投げかける光で、唯の横顔は眩しく象られている。

#10165 Spot 0

そこには、今の自分ではまだ踏み込めない何かがある気がした。

#10166 Spot 0
player

唯の博識さは、科学者のご両親の影響?

#10167 Spot 0
八木唯

うん。二人が生きてたころ、色んなことを教えてもらった。

#10168 Spot 0
player

……え? 生きてたころ……?

#10169 Spot 0

唯は、長い髪を指で梳かしながら頷いた。

#10170 Spot 0
八木唯

中学校に上がる前、飛行機の事故で

#10171 Spot 0
八木唯

……そんな顔しないで、先輩。

#10172 Spot 0
八木唯

もう、昔の話。今は気にしてない。

#10173 Spot 0
そっか……。打ち明けてくれてありがとう。 → Spot 10175
……強いんだね、唯は。 → Spot 10175
#10175 Spot 0
八木唯

そんなことない。……一人に慣れすぎたから、今はときどき不安になる。

#10176 Spot 0
八木唯

みんなといるのは楽しいのに、それをうまく伝えられないから。

#10177 Spot 0
八木唯

……私、笑顔が上手く作れない。

#10178 Spot 0
八木唯

……先輩、

#10179 Spot 0
八木唯

どうすればいいと思う?

#10180 Spot 0
笑顔の練習、付き合うよ → Spot 10183
私には、唯が楽しんでるのがわかるよ → Spot 10240
#10183 Spot 0
player

今から頑張れば、笑顔も自然につくれるようになると思う。

#10184 Spot 0
八木唯

笑顔を、自然に……

#10185 Spot 0
八木唯

どんなふうに練習すればいいの?

#10186 Spot 0
player

れ、練習方法か……

#10187 Spot 0

改めて言われると、具体的に何をどうすればいいのか全然わからない。

#10188 Spot 0
player

あ、アレだよ。表情筋をストレッチしたり……

#10189 Spot 0
八木唯

……どの筋肉を指してるの?

#10190 Spot 0
八木唯

上唇挙筋? 口輪筋? 咬筋?

#10191 Spot 0
八木唯

眼輪筋? 小頬骨筋? 口角下制筋?

#10192 Spot 0
八木唯

……まさか、オトガイ筋?

#10193 Spot 0
player

ほ、ほとんど何言ってるかわからない……!

#10194 Spot 0
八木唯

でも、表情筋は三十種類くらいあるから……

#10195 Spot 0
八木唯

完璧に笑うには、その動きを全部制御しないと。

#10196 Spot 0

唯は目をはっと見開く。

#10197 Spot 0
八木唯

みんな、そんな高度なことを毎日……?

#10198 Spot 0
八木唯

修羅の世界……!

#10199 Spot 0
player

違う違う、難しく考えすぎてる!

#10200 Spot 0
player

そうじゃなくて、なんていうか……

#10201 Spot 0
player

ほら、口角をこう、人差し指で持ち上げてみるんだ。

#10202 Spot 0
player

これが笑顔の基本の形。やってみて?

#10203 Spot 0

唯はけっこう素直な性格らしく、 両手の人差し指で口角を無理矢理持ち上げ始めた。

#10204 Spot 0

ただなんというか、ものすごくぎこちない。

#10205 Spot 0

本当に笑顔を作るのが苦手なんだな……。

#10206 Spot 0
八木唯

……先輩、何笑ってるの?

#10207 Spot 0
player

ああ、ごめんごめん。

#10208 Spot 0
player

必死に格闘してる唯が可愛かったから、つい……。

#10209 Spot 0
八木唯

……可愛い? 私が……?

#10210 Spot 0
八木唯

……

#10211 Spot 0

唯は何も言わず、こちらをじっと見つめてくる。

#10212 Spot 0

どうしよう、怒らせてしまったかな……。

#10213 Spot 0
小鳥遊雛田

あーっ、唯ちゃんここにいたの?

#10214 Spot 0

慌てて振り向くと、岩場の近くで小鳥遊さんが手を振ってきた。

#10215 Spot 0

他のみんなもこちらに気付いたらしく、安心した様子で歩いてくる。

#10216 Spot 0
八木唯

……見つかった。残念。

#10217 Spot 0
player

ん? 何か言った?

#10218 Spot 0
八木唯

……なんでもない。

#10219 Spot 0

結局、六人とも岩場の上で遊ぶことになった。

#10220 Spot 0

岩と岩の隙間にはたくさん水溜まりがあり、そこには小さな魚たちが泳いでいる。

#10221 Spot 0

きっとこの魚たちは、地球が丸いことなんて知らないんだろう。

#10222 Spot 0

みんなと一緒に小さな世界を眺めていると、唯が突然どこかを指さした。

#10223 Spot 0

その先を目で追うと、大量の触手をうねらせた奇妙な生き物が 岩を這い登ろうとしているのが見えた。

#10224 Spot 0
八木唯

……ヤドカリ。

#10225 Spot 0
player

え、あれヤドカリなの!?

#10226 Spot 0
八木唯

身を守るために、貝だけじゃなくてイソギンチャクを背負うこともある。

#10227 Spot 0
八木唯

……でも、実際に見たのは初めて。

#10228 Spot 0
player

そうなんだ……あっ。

#10229 Spot 0
player

今、もしかして笑った?

#10230 Spot 0

見間違いじゃない。ほんの少しだけど、唯の口許は綻んでいる。

#10231 Spot 0
八木唯

え?

#10232 Spot 0
player

気のせいかな。でも、私には笑ったように見えたよ。

#10233 Spot 0
八木唯

……そうかな。

#10234 Spot 0
八木唯

だとしたら、嬉しい。

#10235 Spot 0

そう呟いて、唯はまた足元の小さな世界に目線を落とした。

#10236 Spot 0

笑顔の練習はまだまだ続きそうだけど、ゴールは案外近くにあるかもしれない。

#10237 Spot 0End

今はただ、その道のりを楽しむことにしよう。

End4.方寸世界 — 知恵の宝玉 ×1
#10240 Spot 0
八木唯

……ほんと?

#10241 Spot 0
player

もちろん本当だよ。

#10242 Spot 0
player

楽しんでるとき、唯は眩しそうに目を細めてる。

#10243 Spot 0
player

まあ確かに口許は動いてないけど、それってれっきとした笑顔だと思うよ。

#10244 Spot 0
player

うん、この私が言うんだから間違いない。

#10245 Spot 0
八木唯

……先輩は、やっぱり面白い。

#10246 Spot 0
player

唯はいつも、そう言ってくれるけど……

#10247 Spot 0
player

私のどこがそんなに面白いの……?

#10248 Spot 0
八木唯

……いつも、他の人とは違う場所を見てるところ。

#10249 Spot 0
八木唯

面倒見がいいところ。

#10250 Spot 0
八木唯

誰にでも優しいところ。

#10251 Spot 0
八木唯

……一緒にいて、楽しいところ。

#10252 Spot 0

……なんだか、照れ臭くなってきた。

#10253 Spot 0
player

ええと、その……。……海、綺麗だね

#10254 Spot 0
八木唯

うん、綺麗。

#10255 Spot 0
player

あ、空が赤くなってきた。

#10256 Spot 0
八木唯

陽が沈むまで、ここにいよう。

#10257 Spot 0
八木唯

いいよね、先輩?

#10258 Spot 0
player

ああ。

#10259 Spot 0
八木唯

……きれい。

#10260 Spot 0

私たちは夕日に目を向けた。なぜだか、今この瞬間が永遠に続けばいいのにと思ってしまった。

#10261 Spot 0
小鳥遊雛田

あーっ、唯ちゃんここにいたの〜?

#10262 Spot 0

慌てて振り向くと、岩場の近くで小鳥遊さんが手を振ってきた。

#10263 Spot 0

他のみんなもこちらに気付いたらしく、安心した様子で歩いてくる。

#10264 Spot 0
八木唯

……見つかった。残念。

#10265 Spot 0
player

ん? 何か言った?

#10266 Spot 0
八木唯

……なんでもない。

#10267 Spot 0

結局、六人とも岩場の上で遊ぶことになった。

#10268 Spot 0

岩と岩の隙間にはたくさん水溜まりがあり、 そこには小さな魚たちが泳いでいる。

#10269 Spot 0

きっとこの魚たちは、地球が丸いことなんて知らないんだろう。

#10270 Spot 0
八木唯

先輩、ちょっといい?

#10271 Spot 0

小さな生態系を観察しているみんなには聴こえない声で、唯が囁く。

#10272 Spot 0
player

うん。どうした?

#10273 Spot 0
八木唯

本を読んだり、コーヒーを作ったり……それも楽しかったけど。

#10274 Spot 0
八木唯

本当はずっと、それを共有できる相手が欲しかった。

#10275 Spot 0
八木唯

だから、みんなと……先輩と仲良くなれて嬉しい。

#10276 Spot 0
八木唯

麻雀したり、海で遊んだり……少し前の自分では、考えられなかったから。

#10277 Spot 0
八木唯

ありがとう、先輩。

#10278 Spot 0
八木唯

私に、新しい世界を見せてくれて。

#10279 Spot 0

そう告げた唯の後ろでは、太陽が水平線の向こうに沈もうとしていた。

#10280 Spot 0

赤く染まっていく世界の中で、唯は控えめに、でも確実に微笑んでいた。

#10281 Spot 0

少なくとも、自分にはそういう風に見えた。

#10282 Spot 0
player

こちらこそありがとう、唯。

#10283 Spot 0

……私も、新しい世界に出会えてる気がするよ。

#10284 Spot 0

これから先も、唯のこんな表情をたくさん見られたらいいなと思う。

#10285 Spot 0End

こんなこと、今はまだ口に出せないけど。

End3.新世界 — 月光の福袋 ×1

君といる世界

契約を結ぶことで開放

Possible Endings

End5.素粒子たちの夕景
祈願の巻物 ×1
End6.ふたりの挑戦
日光の福袋 ×1
End7.究極のコーヒー
コイン ×12000

Scenario Script

Spots 1, Scenes 309, Choices 5, Endings 3

#10320 Spot 0
#10000 Spot 0

……海から帰ってきてから微熱が出ているらしく、今日はなんだか身体も重い。

#10001 Spot 0

どうやら風邪を引いたらしい。 仕方がない、治るまで麻雀サークルのお誘いは断らないとだな。

#10002 Spot 0

まぶたも重い……これは一旦寝た方が……。

#10003 Spot 0

……。

#10004 Spot 0

(コンコン)

#10005 Spot 0

……あれ? 宅配なんて頼んでたっけ?

#10006 Spot 0

ドアを開けると、そこには唯が立っていた。 両手にはそれぞれ大きなビニール袋を抱えている。

#10007 Spot 0
player

……びっくりした。どうしたの?

#10008 Spot 0
八木唯

CatChat見た。先輩、風邪ひいたって。

#10009 Spot 0
八木唯

……体調、大丈夫?

#10010 Spot 0
player

わざわざありがとう。もう熱は下がったよ。

#10011 Spot 0
八木唯

顔、まだちょっと青い。

#10012 Spot 0
player

そう? まあ病み上がりだからな。

#10013 Spot 0
player

……というか、その荷物は?

#10014 Spot 0
八木唯

食材。

#10015 Spot 0
player

え?

#10016 Spot 0
八木唯

滋養強壮にいい料理、作ってあげる。

#10017 Spot 0
八木唯

……先輩に、早くよくなってほしいから。

#10018 Spot 0
player

ありがとう……。なんて優しい子だ……

#10019 Spot 0

風邪のお見舞いに来てくれて、しかも手作り料理を振る舞ってくれるなんて。 いつも無表情の唯がこんなにも優しくしてくれていると思うと、 思わず涙が……。

#10020 Spot 0

それより両手の荷物が重そうだったので、ひとまず受け取ってみる。

#10021 Spot 0
player

どれどれ……どんな料理かな?

#10022 Spot 0

ビニール袋の中身を覗いてみて、思わず息を呑む。

#10023 Spot 0

長ねぎ、小ねぎ、白髪ねぎ、玉ねぎ、赤玉ねぎ

#10024 Spot 0

ニラ、にんにく、らっきょう。

#10025 Spot 0
player

ええと……この細長いのは?

#10026 Spot 0
八木唯

ギョウジャニンニク。

#10027 Spot 0

全部同じジャンルの野菜だ……。

#10028 Spot 0
八木唯

ねぎは風邪に効くらしいから、たくさん揃えてみた。ネギ属の野菜。

#10029 Spot 0
八木唯

これなら風邪、治るよね……?

#10030 Spot 0
player

あ、ああ。そうだね……

#10031 Spot 0

忘れてた! この子に料理を任せちゃ駄目だった! スーパーの日からわかってたはずなのに!

#10032 Spot 0

ていうか、コレでいったいどんな料理作る気だったんだ……?

#10033 Spot 0
player

じ、実はついさっき昼ご飯食べたばっかりでさ。お腹いっぱいなんだよね。

#10034 Spot 0
player

食材はありがたく受け取っておくね。ほんと助かる。

#10035 Spot 0
八木唯

………

#10036 Spot 0
player

ご、ごめん! わざわざ食材買ってきてくれたのに!

#10037 Spot 0

ビニール袋の中身を冷蔵庫に入れて、玄関先へ戻る。

#10038 Spot 0

唯の表情は相変わらず読みづらい。 だけど、少し落ち込んでいる雰囲気は伝わってきた。

#10039 Spot 0
player

あー……ええっと……

#10040 Spot 0
player

唯、ちょっと散歩でもしない? ずっと寝込んでたから、身体がなまってるんだ。

#10041 Spot 0
八木唯

……散歩、私もしたい。

#10042 Spot 0

心なしか、瞳の色が少し明るくなった気がした。

#10043 Spot 0
player

どこか行きたい場所とかある?

#10044 Spot 0
八木唯

「エテルニテ」

#10045 Spot 0
八木唯

コーヒーが美味しいカフェ。先輩も知ってるでしょ?

#10046 Spot 0
player

ああ、知ってるよ。

#10047 Spot 0

あそこなら、変な料理が出されることもないはず……。

#10048 Spot 0

見知った店内へと入り、店長見習いの七海礼奈ちゃんに挨拶すると、 一番奥の席に案内してくれた。

#10049 Spot 0

唯に強くおすすめされ、いつもと違うただのアイスコーヒーを注文する。

#10050 Spot 0
player

ここ、よく来るの?

#10051 Spot 0
八木唯

うん、週一回くらい通ってる。

#10052 Spot 0
player

へえ、そうだったんだ。コーヒーが好きなの?

#10053 Spot 0
八木唯

……コーヒーって、科学だと思う。

#10054 Spot 0
player

ほう。

#10055 Spot 0
八木唯

まずは、コーヒー豆の分量。

#10056 Spot 0
八木唯

少しでも誤差があったら、狙い通りの味にならない。 だから、計量器を使ってきちんと計る。できれば、グラム単位までこだわる。

#10057 Spot 0
八木唯

豆を挽くときは、もっと注意が必要。

#10058 Spot 0
八木唯

コーヒーミルを回すときは、早すぎても遅すぎても駄目。 豆に熱が伝わらないように、完璧なペースを保つ。

#10059 Spot 0
八木唯

それと……、コーヒーの淹れ方によって、最適な粒度が違う。

#10060 Spot 0
八木唯

あとはお湯の温度とか、注ぎ方とか……

#10061 Spot 0
player

なんか、こだわり始めたらキリがなさそうだな。

#10062 Spot 0
player

それこそ、科学の実験みたいだ。

#10063 Spot 0
八木唯

でもこの店は、その配分が完璧。

#10064 Spot 0
八木唯

だから、ここのアイスコーヒーは美味しい。

#10065 Spot 0
player

へえ~!

#10066 Spot 0

正直、唯の味覚はあんまり信用してなかったけど、 今の説明を聞いたら期待せずにはいられない。

#10067 Spot 0
七海礼奈

お待たせしました。アイスコーヒーです。

#10068 Spot 0

七海ちゃんに礼を言って、よく冷えたグラスに手を伸ばす。

#10069 Spot 0

ストローで一口目を啜ると、すぐに衝撃がやってきた。

#10070 Spot 0
player

……え、美味しい。

#10071 Spot 0

普段から通ってるのに、そういえば、シンプルなアイスコーヒーを飲むのは初めてだった。 素人には何がどう凄いのかなんてわからないけど、 まあとにかく、びっくりするくらい美味しいのは事実だ。

#10072 Spot 0

他のメニューもそうだが、やっぱりここのコーヒーは、どれも他の店のものとは 明らかにレベルが違う気がする。

#10073 Spot 0
八木唯

うん、美味しい。

#10074 Spot 0
八木唯

……先輩? どうしたの?

#10075 Spot 0
player

…いや、ちょっと感動してさ。

#10076 Spot 0

唯は確かに味覚がちょっと怪しいけど、コーヒーに関しては別だったんだ。 ……というか、ものすごく信頼できる。

#10077 Spot 0

それに、知識量も抜群だ。 もっと深掘りしたら、何時間でも解説してくれそうな気配がひしひしと伝わってくる。

#10078 Spot 0

唯とはけっこう仲良くなった気でいたけど、新しい発見はまだまだあるみたいだ。 ちょっとだけ、微笑ましい気持ちになる。

#10079 Spot 0
player

唯は、いつからコーヒーが好きなの?

#10080 Spot 0
八木唯

……たぶん、子供の頃から。

#10081 Spot 0
八木唯

亡くなった両親が、よくコーヒーのことを教えてくれた。

#10082 Spot 0
八木唯

美味しい淹れ方とか、珍しい豆の種類とか、豆の栽培方法とか。

#10083 Spot 0
八木唯

先輩、知ってる?

#10084 Spot 0
八木唯

とある地域では、卵を殻ごと入れて作るコーヒーがあるんだよ。

#10085 Spot 0
八木唯

砂漠の近くでは、コーヒーは熱した砂の上で煮出して作るし、

#10086 Spot 0
八木唯

コーヒーに紅茶をブレンドして飲んだりする人も。

#10087 Spot 0
八木唯

子供の頃、親に教わった。

#10088 Spot 0
player

お、奥が深すぎる……

#10089 Spot 0

思えば、唯はいつになく饒舌だった。

#10090 Spot 0

相変わらず表情は乏しいけど、心の底から楽しんでいることは伝わってくる。

#10091 Spot 0
将来、コーヒー屋さんでも開いてみたら? → Spot 10094
ご両親のことが好きだったんだね。 → Spot 10116
#10094 Spot 0

唯の瞳に、少しだけ暗い影が差した気がした。

#10095 Spot 0

よく注意して見ないとわからないほどの、ほんの少しの違いだけど。

#10096 Spot 0
player

……どうしたの?

#10097 Spot 0
八木唯

……私が淹れると、なぜか美味しくならない。

#10098 Spot 0

どうしてだろう。コーヒーに関してだけは、唯の味覚は確かなはずなのに。

#10099 Spot 0
player

いつも、どうやってコーヒー淹れてる? 手順を一個ずつ確認してみようよ。

#10100 Spot 0
八木唯

ええと……、まずはコーヒー豆を厳選。

#10101 Spot 0
player

うんうん。

#10102 Spot 0
八木唯

グラム単位で分量を量って、豆に熱が伝わらない最適な速度でミルを回して……

#10103 Spot 0
player

うん、いいんじゃない?

#10104 Spot 0
八木唯

香ばしさをプラスしたいから、魚粉をちょっと入れる。

#10105 Spot 0
player

うんうん。

#10106 Spot 0
player

ん!?

#10107 Spot 0
八木唯

カツオの割合が一番大きいけど、トビウオとかイワシもしっかりブレンドする。 その方が、何となく味に深みが出そうだから。

#10108 Spot 0
八木唯

隠し味は、未来から貰った新開発の調味料。 原料はよくわからないけど、とりあえず大さじ2杯くらい……

#10109 Spot 0
player

ちょっ、ちょっと待った!

#10110 Spot 0
player

アレンジが過激派すぎる……!

#10111 Spot 0
player

途中でやめてれば完璧だったのに……!

#10112 Spot 0
八木唯

なるほど、「引き算」……!

#10113 Spot 0
八木唯

その発想はなかった。ありがとう、先輩。

#10114 Spot 0
player

とりあえず、喜んでくれたなら何より……なのか?

#10116 Spot 0
八木唯

……うん。大好きだった。

#10117 Spot 0
player

……ごめん。つらいこと思い出させちゃった?

#10118 Spot 0
八木唯

ううん、大丈夫。二人がいなくなったこと、もう乗り越えてるから。

#10119 Spot 0
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……そっか。強いな、唯は。

#10120 Spot 0
player

ご両親はどんな人だったの?

#10121 Spot 0
八木唯

前にも言った通り、二人とも研究者だった。同じ研究室で出会ったみたい。

#10122 Spot 0
八木唯

お父さんは無口で、あまり笑わない人だった。 でも本当はすごく優しくて、たまに変なことを喋ってみんなを笑わせてた。

#10123 Spot 0
player

……唯はお父さん似なのかな

#10124 Spot 0
八木唯

お母さんは社交的で、友達も多かった。 いつも楽しそうに笑ってて、家事を手伝うと頭を撫でてくれて……

#10125 Spot 0
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何ていうか、真逆な二人だな。

#10126 Spot 0
player

だからこそ、相性がよかったのかも。

#10127 Spot 0
八木唯

……うん。そうかもね。

#10128 Spot 0

ストローに口をつけたまま、唯がこちらをじっと見つめていた。

#10129 Spot 0

顔に何かついてるのかな、と思って触ってみるけど、特に異常はないみたいだ。

#10130 Spot 0
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……どうしたの?

#10131 Spot 0
八木唯

ううん。何でもない。

#10132 Spot 0

よくわかんない子だ。でも、いつになく楽しそうなのは間違いない。

#10133 Spot 0

「エテルニテ」を出ると、二人で散歩を再開した。 カフェから歩いて十分ほど経つと、川沿いにある散歩道に到着した。

#10134 Spot 0

吹き抜ける風が気持ちよくて、 風邪のことなんて忘れて、いつまででも歩いていられる気がした。

#10135 Spot 0
八木唯

……先輩、顔色よくなってきた。

#10136 Spot 0
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ほんと? ……確かに、身体軽くなってきたかも。

#10137 Spot 0
八木唯

コーヒーの効果、だね。

#10138 Spot 0

唯が一瞬だけ笑ったように見えたけど、光の加減でよくわからなかった。 宝石みたいな川面の輝きはとても綺麗だけど、肝心なところを覆い隠してしまう。

#10139 Spot 0
八木唯

……私、たまに想像する。

#10140 Spot 0
八木唯

もしも、お父さんとお母さんがまだ生きていたらって。

#10141 Spot 0

唯は欄干にもたれかかり、眩しそうに川面を見つめた。

#10142 Spot 0
八木唯

もう大学生だから、三人で手を繋いで帰ったりはしないと思う。 会う頻度もどんどん減っていくはず。

#10143 Spot 0
八木唯

だけど、お父さんとお母さんはいくつになっても仲良しで、 こんな川沿いを楽しそうに話しながら散歩してる。

#10144 Spot 0
八木唯

家に帰ったらコーヒーを淹れて、今日起きたことを一つずつ振り返ったりする。

#10145 Spot 0
八木唯

私は、二人の話を聞いているだけでいい。

#10146 Spot 0
八木唯

……それだけで、すごく楽しいんだと思う。

#10147 Spot 0
八木唯

……先輩。

#10148 Spot 0

唯はこちらを振り向いた。

#10149 Spot 0
八木唯

私、本当は寂しかったのかな?

#10150 Spot 0
八木唯

二人が亡くなったこと、もう乗り越えたと思ってたけど……

#10151 Spot 0
八木唯

昔のことを思い出したら、何ていうか……。 これじゃ駄目なのはわかってるのに……

#10152 Spot 0
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駄目なんかじゃないと思うよ。

#10153 Spot 0
八木唯

え?

#10154 Spot 0
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急いで乗り越える必要なんてない。 たまには立ち止まって、ゆっくり二人のことを思い出したらいいんだ。

#10155 Spot 0
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……って、私が軽々しく言える話じゃないかもしれないけど。

#10156 Spot 0
八木唯

……ううん。ありがとう。

#10157 Spot 0

唯の隣に歩き、欄干に身体を預ける。

#10158 Spot 0

そろそろ太陽が傾き始めていた。夕陽を浴びた水面が、輝きをさらに強めている。

#10159 Spot 0
八木唯

……お父さんとお母さん、「パラレルワールド」について研究してた。

#10160 Spot 0
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パラレルワールド……? 何それ。

#10161 Spot 0
八木唯

……よくわからない。あんまり教えてくれなかったから。

#10162 Spot 0
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私たちのいる世界と違う世界とか、そういう感じ……?

#10163 Spot 0
八木唯

私も、そう解釈してる。言葉の意味から想像するしかないけど……

#10164 Spot 0
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なんかSFみたい。本当にそんなのあるのかな?

#10165 Spot 0
八木唯

わからない。

#10166 Spot 0
八木唯

……先輩。もし別の世界があったら、行ってみたいと思う?

#10167 Spot 0
えー、嫌かも。戻って来られるかわからないし。 → Spot 10169
うーん。面白いから行ってみたいかも? → Spot 10169
#10169 Spot 0
八木唯

ふふ、先輩らしい。

#10170 Spot 0
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そういう唯は? 別の世界に行きたいと思う?

#10171 Spot 0
八木唯

……私は、

#10172 Spot 0
八木唯

今はもう、この世界を大切にしたい……かも。

#10173 Spot 0
八木唯

……だって、

#10174 Spot 0
八木唯

先輩が、近くにいてくれるから。

#10175 Spot 0

いつの間にか、唯の視線がこちらに向けられていた。

#10176 Spot 0

すごい至近距離だ。正直照れるけど、今は目を逸らしたら駄目な気がする。

#10177 Spot 0

夕景を映し出して綺麗に輝く瞳を、私は正面から見つめ返す。

#10178 Spot 0
一緒にコーヒー屋でも開こうか? → Spot 10181
私も、唯がいる世界を大切にしたいな。 → Spot 10230
#10319 Spot 0
一緒にコーヒー屋でも開こうか? → Spot 10181
私も、唯がいる世界を大切にしたいな。 → Spot 10282
#10181 Spot 0
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はは、なーんて冗談……

#10182 Spot 0

がばっ!と、最後まで言い終わる前に、唯が手を握ってきた。

#10183 Spot 0

その目はさっきまでよりもさらに強く輝いている。

#10184 Spot 0

ただ、なんというか……。嫌な予感……!

#10185 Spot 0
八木唯

先輩!

#10186 Spot 0
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は、はい!

#10187 Spot 0
八木唯

私……先輩となら、バリスタの高みを目指せるかも……!

#10188 Spot 0
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ば……ばり……?

#10189 Spot 0

手を握ったまま、唯はどこかへと走り始める。

#10190 Spot 0

その足取りには、ちょっと怖いくらいに迷いがなかった。

#10191 Spot 0
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あの……ここは……?

#10192 Spot 0
八木唯

行きつけの漢方屋。

#10193 Spot 0
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漢方屋に行きつける人っているんだ……

#10194 Spot 0

古ぼけた店内には、何とも形容しがたい香りが漂っていた。

#10195 Spot 0

所狭しと並べられた瓶には、色んな種類の乾燥植物が詰められている。

#10196 Spot 0

たぶん、漢方薬の材料になる生薬ってやつだろう。

#10197 Spot 0
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な、なんで漢方? コーヒー作るんじゃなかったの?

#10198 Spot 0
八木唯

……薬膳コーヒー。

#10199 Spot 0
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何、それ……

#10200 Spot 0
八木唯

長年の研究で、私が辿り着いた最適解。

#10201 Spot 0
八木唯

コーヒーは美味しい。漢方は身体にいい。 この2つを組み合わせれば完璧な存在が生まれる。 ……証明完了。

#10202 Spot 0
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なんにも証明できてない! 味! 味を犠牲にしちゃってるから!

#10203 Spot 0
老店主

……うるさいねえ。他の客に迷惑だよ。

#10204 Spot 0

店の奥から、魔女みたいな恰好をしたおばあさんが姿を現した。 老店主は黒魔術でも放てそうな見た目の杖を使って、 こちらへとゆっくり歩いてくる。

#10206 Spot 0
老店主

もっとも、他の客なんてどこにもいないがね。

#10207 Spot 0
老店主

……まあいい。話は聞かせてもらったよ。

#10208 Spot 0
老店主

薬膳コーヒー……。面白そうじゃないか。

#10209 Spot 0
八木唯

!!

#10210 Spot 0
老店主

一緒に生薬を選んであげよう。……なに、特別に割引してあげるから安心しな。

#10211 Spot 0
老店主

ヒヒ……。完成したら私にも飲ませておくれよ……

#10212 Spot 0
八木唯

はい!

#10213 Spot 0
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……唯? そんな眩しい目で……

#10214 Spot 0

……あ、駄目だ。もう聞いてない……!

#10215 Spot 0

唯と老店主はあれこれと議論しながら、 黒魔術の材料にしか見えない品々を紙袋に詰めていく。

#10216 Spot 0

どんな分野の専門家が見ても、 あれがコーヒーの材料だなんてわからないだろう……。

#10217 Spot 0
八木唯

先輩、待たせてごめん。

#10218 Spot 0
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……ああ、もう選び終わったの?

#10219 Spot 0
八木唯

うん。試作会、楽しみだね?

#10220 Spot 0
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え、何? 試作会?

#10221 Spot 0
八木唯

さっそく、先輩の家でコーヒー淹れてあげるよ。楽しみにしてて。

#10222 Spot 0
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ひっ、ひいいいいいいっ!

#10223 Spot 0

表情じゃわからないけど、唯はたぶん試作会をすごく楽しみにしている。 断るわけにはいかない。

#10224 Spot 0

……ま、まあ、漢方だし。

#10225 Spot 0

少なくとも、風邪は完璧に治るはずだ……。

#10226 Spot 0

………大丈夫、だよな?

#10227 Spot 0End

どうにか自分に言い聞かせ、流れに身を任せることにした。

End7.究極のコーヒー — コイン ×12000
#10230 Spot 0

思わず口に出したけど、なんとなく気まずくなって、頬が熱くなるのを感じた。

#10231 Spot 0
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(ちょっとカッコつけすぎたかな……?)

#10232 Spot 0

不安になって目を向けると、唯は顔を伏せていた。

#10233 Spot 0
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(照れているんだろうか? それとも呆れてる?)

#10234 Spot 0

唯が無表情なのはいつものことだけど、いまはちょっともどかしい。

#10235 Spot 0
八木唯

……わ、

#10236 Spot 0
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ん?

#10237 Spot 0
八木唯

私と出会って、先輩は何が変わった?

#10238 Spot 0

唯はまだ俯いたままだ。

#10239 Spot 0
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んー、何だろう。

#10240 Spot 0
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でもやっぱり、世界が広がった気がするな。

#10241 Spot 0
八木唯

……大袈裟。

#10242 Spot 0
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大袈裟じゃないよ。 唯がいろんな知識を教えてくれて、物事の見え方が変わったっていうか……

#10243 Spot 0
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……うん。今までよりももっと、この世界で生きるのが楽しくなったと思う。

#10244 Spot 0
八木唯

……ねえ。

#10245 Spot 0

深く俯いたまま、唯は言う。

#10246 Spot 0
八木唯

先輩って、すごく変な人だよ。自分で気付いてる?

#10247 Spot 0
え、いきなり失礼だな。 → Spot 10249
変だなんて、そんなことないと思うけど? → Spot 10249
#10249 Spot 0

やっと顔を上げてくれた唯は、ほんの少しだけ微笑んでいるような気がした。

#10250 Spot 0

本当に僅かな、いつも近くで見ていないと 気付けないくらいの変化かもしれないけど。

#10251 Spot 0
八木唯

言ってることは普通なのに、他の人とは雰囲気が違う。

#10252 Spot 0
八木唯

……だから、目が離せないのかも。

#10253 Spot 0
八木唯

私も、先輩と出会って変わった。

#10254 Spot 0
八木唯

自分自身に、興味を持てるようになった。

#10255 Spot 0
八木唯

自分のことを、もっと知りたいって思えるように……

#10256 Spot 0

長い髪を風に梳かしながら、唯が川の方へ顔を向ける。

#10257 Spot 0
八木唯

……先輩、私ね。

#10258 Spot 0
八木唯

最近気付いたけど、大きな弱点があるみたい。

#10259 Spot 0
八木唯

自分が美味しいって思ったものと、他の人の反応に、何だかズレが生じるの。

#10260 Spot 0
八木唯

コーヒーなら、そんなことないんだけど。

#10261 Spot 0
八木唯

……隠しててごめんね。

#10262 Spot 0

大丈夫、ぜんぜん隠せてなかったから

#10263 Spot 0

ツッコミたい衝動を堪えつつ、もっと前向きな言葉を探す。

#10264 Spot 0
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一緒に乗り越えていこうよ。

#10265 Spot 0
八木唯

ほんと? でも、私にできるかな。

#10266 Spot 0
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できるよ。私が保証する。

#10267 Spot 0
八木唯

……ふふ。

#10268 Spot 0

今度こそ、唯ははっきりと微笑んだ。

#10269 Spot 0

たぶんこれは、見間違いなんかじゃない。

#10270 Spot 0
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さっそく、一緒に料理つくろうか。

#10271 Spot 0
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食材は唯が買ってきてくれたし。ねぎ系ばっかだけど。

#10272 Spot 0
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……ちなみに、何を作ってくれる予定だったの?

#10273 Spot 0
八木唯

ハンバーグ。

#10274 Spot 0
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え?

#10275 Spot 0
八木唯

え?

#10276 Spot 0

道のりはなかなか険しそうだな……

#10277 Spot 0

でも、きっと乗り越えられる。

#10278 Spot 0

そう言い聞かせながら、二人並んで歩き始めた。

#10279 Spot 0End

……とはいえ、あの食材でどんな料理を作ればいいんだろう……?

End6.ふたりの挑戦 — 日光の福袋 ×1
#10282 Spot 0

唯が、目を大きく見開いた。

#10283 Spot 0

彼女がここまでわかりやすく表情を変えるのを、初めて見た気がする。

#10284 Spot 0
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あっ……

#10285 Spot 0

一筋の光が、唯の頬を伝っていく。

#10286 Spot 0

唯が慌てて目尻を拭ったのを見て、ようやくそれが涙なのだと気付いた。

#10287 Spot 0
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ご、ごめ……

#10288 Spot 0
八木唯

宇宙の素粒子の総量は、永遠に変わらない。

#10289 Spot 0
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え……?

#10290 Spot 0

唯はこちらに背を向けて、慎重に語り始めた。

#10291 Spot 0

その声が少し震えているように思えるのは、錯覚ではないのかもしれない。

#10292 Spot 0
八木唯

物理学の基礎的な考え方。先輩は知ってた?

#10293 Spot 0
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聞いたことなら……あるかも。

#10294 Spot 0

唯のご両親が科学者だったことを、そして唯が二人を愛していたことを思い出す。

#10295 Spot 0

物理学にはまるで縁がない自分でも、 彼女が今、何か大切なことを伝えようとしているのはわかった。

#10296 Spot 0
八木唯

物質が燃えて灰になっても、また別の物質を形作る素粒子になって、 世界のどこかを漂う。物理法則でそう決まってる。

#10297 Spot 0
八木唯

だから、お父さんとお母さんも、世界から消えてしまったわけじゃない。

#10298 Spot 0
八木唯

二人の素粒子は、新鮮な風に形を変えて、今も世界のどこかを漂ってる。

#10299 Spot 0
八木唯

………

#10300 Spot 0
八木唯

…もしかしたら、

#10301 Spot 0
八木唯

私と先輩を引き合わせてくれたのは…… 素粒子になって風に運ばれてきた、二人だったのかもしれない。

#10302 Spot 0
player

もしそうだとしたら、本当に素敵な話だ。

#10303 Spot 0
八木唯

……飛躍しすぎ?

#10304 Spot 0
player

ううん、そんなことないよ。

#10305 Spot 0

また一つ、唯の頬を水滴が伝っていく。

#10306 Spot 0

何も言わずに隣に並んだ。

#10307 Spot 0

泣き顔を覗き込むなんて無粋な真似はしたくない。

#10308 Spot 0

ただ隣に立って、同じ景色を見つめていたかった。

#10309 Spot 0

誰かが遺した素粒子が漂う、この美しい世界の一瞬を。

#10310 Spot 0
八木唯

……先輩。

#10311 Spot 0
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どうした?

#10312 Spot 0
八木唯

ううん。夕陽、綺麗だね。

#10313 Spot 0
player

……そうだね。

#10314 Spot 0

どちらからともなく、歩き始める。

#10315 Spot 0

行き先はもう決まっていた。 唯が買ってくれた食材たちが、今も冷蔵庫の中で待ち侘びているのだ。

#10316 Spot 0
八木唯

……これからもよろしくね、先輩。

#10317 Spot 0

今まで見たことがないくらいはっきりと、唯は穏やかな笑みを浮かべている。

#10318 Spot 0End

どこかで見守ってくれている素粒子たちを安心させられるくらい、 この笑顔を大切に守っていきたいと思った。

End5.素粒子たちの夕景 — 祈願の巻物 ×1