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一ノ瀬空 — 一ノ瀬空
一ノ瀬空 — 契約
一ノ瀬空 — クリスマスフェス
一ノ瀬空 — わくわく新学期
一ノ瀬空 — 綺春歌
一ノ瀬空 — 眠れぬ夜の絆

一ノ瀬空

人々は彼をこう評価した。「賢すぎることには代償があるんだろうか…。」 幼い頃から病弱で運動をする機会がほとんどなかった。その代わり、科学に深く傾注し、今ではすべての事象は科学で説明ができると信じている。 偶然、魂天神社で麻雀を見る機会があり、そこで面白い確率ゲームだと思って以来、麻雀を遊んでいる。

Profile

Stature
147cm
Birth
3月14日
Age
13
Blood Type
B
CV
皆川純子
Hobby
読書、計算、キューブパズル

Skins

一ノ瀬空の初期衣装

一ノ瀬空と契約を結んだ時に入手できる着せ替え衣装

「クリスマスフェス」にて購入できる限定の着せ替え衣装

新学期テーマの着せ替え衣装

「迎春祭り」にて購入できる春節テーマの着せ替え衣装

「迷宮スペクター」にて購入できる、ハロウィンテーマの着せ替え衣装

Emotes

一ノ瀬空 emote 0 一ノ瀬空 emote 1 一ノ瀬空 emote 2 一ノ瀬空 emote 3 一ノ瀬空 emote 4 一ノ瀬空 emote 5 一ノ瀬空 emote 6 一ノ瀬空 emote 7 一ノ瀬空 emote 8 一ノ瀬空 emote 10 一ノ瀬空 emote 11 一ノ瀬空 emote 12 一ノ瀬空 emote 888 一ノ瀬空 emote 999 一ノ瀬空 emote 988 一ノ瀬空 emote 966 一ノ瀬空 emote 946
  • プレゼント・普通

    ありがとう

  • プレゼント・好み

    これは...!大事にするよ!

  • 絆レベルアップ5

    キミがいつもボクの相手してくれたおかげで最近体の調子が良くなってきたんだ。医師のおじさんもこの調子が続くようなら学校に行ってもいいって!...あ、なんだろう...こんな話をしてるなんて、ボクじゃないみたい。きっとキミに影響されたんだと思う

  • 絆レベルアップ1

    まだ知り合ってからそんなに経ってないけど、キミは悪い人には見えない...。ボクの相手をしてくれてありがとう

  • 絆レベルアップ2

    これは姉さんが作ってくれたかぼちゃプリンだよ。姉さんが食物繊維とタンパク質を摂れば体にいいって。キミも食べたい?

  • 絆レベルアップ3

    たまには同級生と同じように体育の授業をしてみたいな...自由に地面を走れたらどんな気持ちになるんだろう...小さい時に入院してからは医師のおじさんから激しい運動はダメって言われてるから......あっ!喋りすぎたね。会いに来てくれてありがとう

  • 絆レベルアップ4

    キューブパズルで遊びたいの?教えてあげるから見てて。こうして...こう!はい揃ったよ。え?よく見えなかった?仕方ないなぁ。もう1回やるからよく見てて

  • 隐藏语音 - 新年

    明けましておめでとう。初詣なんてほとんど行ったことないから、楽しみだよ

  • 隐藏语音 - 情人节

    これはボクが一番好きな7x7のルービックキューブなんだよ。おもちゃだけどレア物なんだよ。……絶対これを解いてみてね!

  • メイン1

    数学は世界の根本にあるものだよ。だから、この世界には「運」なんてものは存在しないんだ。あるのは「確率」だけ。キミと以前対局した時のデータによると、キミがボクに勝てる確率は39.8%だね

  • メイン2

    えぇ!?あの神社の巫女は何なの!?猫耳のある人間!?これはもしかすると生物学界の大発見かもしれないぞ!

  • メイン3

    麻雀は確率のゲームに過ぎない。計算でボクが負けることはないよ

  • メイン4

    ボクは...キューブパズルが得意なんだ...。だけど、誰も一緒に遊んでくれない...キミは一緒に遊んでくれる?

  • メイン5

    ボクはこの体のせいで学校にほとんど行ったことがないんだ。だけど、一人でも平気だよ。できたらみんなと一緒に遊んでみたいけどね...

  • メイン6

    うぅぅ......あ...泣いてないよ、一局負けただけで泣くもんか!目にホコリが入っただけだよ。今度こそ...今度こそはボクが必ず勝つ!

  • メイン7

    キューブパズル?小さい時からみんなの前で遊んでたよ。あの時はみんなが周りに集まってすごいって言ってくれたなぁ。みんなキューブパズルで遊ぶボクを見て喜んでくれるから、キューブパズルは友達を作ってくれる。...そう思ったから今もこうして遊んでるんだ

  • メイン8

    ん...どうしてこの牌を切ったの?この牌を切った方がもっと効率いいのに!ボクより年上の人でも頭がいいとは限らないんだね。そうだね~ボクに任せて。空先生がキミに効率のいい打牌の仕方を教えてあげるよ

  • ログイン・普通

    コホコホ...今日もボクに会いに来てくれたの?

  • ログイン・絆LvMAX

    待ってたよ。今日は体調がいい感じだし、一緒に麻雀しようよ

  • 契約を結ぶ

    [0]キミは、ボクの家族以外で、初めてボクの話し相手になってくれた人だよ。[6795]こんなことを言うのは変かもしれないけど、ボクたちはもう友達だと思っている。[15075]地球には何十億と人がいるけど、その中の2人が友達になれる確率はたった数百万分の一しかない。[25465]これはこの地球で一等賞を取ることと一緒だよ![32485]ボク達これからもずっとずーーっと友達でいられるかな?……[42427]本当?よかった!うれしい…!

  • SP-友人戦部屋に入場する時

    ボクも混ぜて!

  • SP-友人戦部屋で準備した時

    手加減はしないよ

  • 出会い

    ボクの名前は一ノ瀬空(いちのせそら)…コホコホ…ボクの半径75cm以内に近づかないで。姉さんから見知らぬ人を近づけないようにって言われてるから…

  • 北抜き

    ペーを抜くよ

  • チー

    チー

  • ダブル立直

    ダブルリーチ!

  • カン

    カン

  • ポン

    ポン

  • 立直

    リーチ、勝つためだよ

  • ロン

    ロン!待ってたよ

  • ツモ

    ツモ、ボクの勝ちだね

  • 白

    ハク

  • 北

    ペー

  • 純全帯幺九

    ジュンチャン

  • 純正九蓮宝燈

    チューレン九(きゅう)メン待ち

  • 大三元

    ダイサンゲン

  • 大四喜

    大スーシー

  • 地和

    チーホー

  • ダブル立直

    ダブリー

  • 東

    トン

  • ドラ

    ドラ

  • ドラ10

    ドラ10(じゅう)

  • ドラ11

    ドラ11(じゅういち)

  • ドラ12

    ドラ12(じゅうに)

  • ドラ13以上

    ドラたくさん

  • ドラ2

    ドラ2(に)

  • ドラ3

    ドラ3(さん)

  • ドラ4

    ドラ4(よん)

  • ドラ5

    ドラ5(ご)

  • ドラ6

    ドラ6(ろく)

  • ドラ7

    ドラ7(なな)

  • ドラ8

    ドラ8(はち)

  • ドラ9

    ドラ9(きゅう)

  • ダブル北

    ダブペー

  • ダブル東

    ダブトン

  • ダブル南

    ダブナン

  • ダブル西

    ダブシャー

  • 断幺九

    タンヤオ

  • 対々和

    トイトイ

  • 二盃口

    リャンペーコー

  • 発

    ハツ

  • 国士無双十三面待ち

    コクシ十三メン待ち

  • 国士無双

    コクシムソウ

  • 海底摸月

    ハイテイ

  • 河底撈魚

    ホウテイ

  • 混老頭

    ホンロートー

  • 混全帯幺九

    チャンタ

  • 混一色

    ホンイツ

  • 九蓮宝燈

    チューレンポートー

  • 嶺上開花

    リンシャン

  • 立直

    リーチ

  • 流し満貫

    流しマンガン

  • 緑一色

    リューイーソー

  • 南

    G

  • 平和

    ピンフ

  • 槍槓

    チャンカン

  • 七対子

    チートイ

  • 清老頭

    チンロートー

  • 清一色

    チンイツ

  • 三暗刻

    サンアンコー

  • 三槓子

    サンカンツ

  • 三色同刻

    三色(さんしょく)ドーコー

  • 三色同順

    三色(さんしょく)ドウジュン

  • 四暗刻

    スーアンコウ

  • 四暗刻単騎

    スーアンコウ、タンキ

  • 四槓子

    スーカンツ

  • 天和

    テンホー

  • 西

    シャー

  • 小三元

    ショーサンゲン

  • 小四喜

    小スーシー

  • 一盃口

    イーペーコー

  • 一発

    イッパツ

  • 一気通貫

    イッツー

  • 中

    チュン

  • ツモ

    ツモ

  • 字一色

    ツーイーソー

  • 清算一位

    ボクの計算通りだ!

  • 清算一位・高い点数で勝利

    驚いた?当然、ボクの計算通りだよ

  • 清算一位・ロンで勝利

    最初の計算と過程に少しズレがあったけど、この結果ならまだ許容範囲だ

  • 倍満

    倍満(バイマン)

  • 九種九牌

    九種九牌(キュウシュキュウハイ)

  • 数え役満

    数え役満(カゾエヤクマン)

  • 満貫

    満貫(マンガン)

  • ノーテン

    ノーテン

  • 三倍満

    三倍満(サンバイマン)

  • 四風連打

    スーフーレンダ

  • 四槓散了

    スーカン流れ

  • 四家立直

    四家立直

  • 跳満

    跳満(ハネマン)

  • 聴牌

    聴牌(テンパイ)

  • 役満

    ヤクマン

  • ダブル役満

    ダブルヤクマン

  • トリプル役満

    トリプルヤクマン

  • 四倍役満

    四倍(よんばい)ヤクマン

  • 五倍役満

    五倍(ごばい)ヤクマン

  • 六倍役満

    六倍(ろくばい)ヤクマン

  • SP - ドラを捨てた時

    これも勝利のために必要なこと

  • SP - 倍満/三倍満聴牌

    チャンスだね

  • SP - 同じ牌を連続に捨てた時

    コインが連続して裏になったようなものだよ

  • SP - 残り牌が10枚以下の時

    うぅ…残りの牌が少ない…けど、まだ可能性はある

  • 対局開始

    さぁ、始めようか

  • SP - 役満聴牌

    全部計算通りだよ

  • 帯幺九

    帯幺九(タイヤオチュウ)

  • 根

    根(ルート)

  • 将対

    将対(ジャントイ)

  • 金勾釣

    金勾釣(キンコウテャオ)

  • 嶺上放銃

    嶺上放銃(リンシャンホウジュウ)

  • 龍七対

    龍七対(ロンチートイ)

  • 清対

    清対(チントイ)

  • 清金勾釣

    清金勾釣(チンキンコウテャオ)

  • 清龍七対

    清龍七対(チンロンチートイ)

  • 清七対

    清七対(チンチートイ)

  • 清十八羅漢

    清十八羅漢(チンジュウハチラカン)

  • 清幺九

    清幺九(チンヤオチュウ)

  • 十八羅漢

    十八羅漢(ジュウハチラカン)

SFと科学

絆LV1で開放

一ノ瀬空の幼少期の記憶は、病院の白い色と消毒剤の臭いで満たされている。体が病弱な彼は、幼い頃から入院病棟の常連だった。 入院生活はいつも全て決まり切ったものだった。時間通りに点滴、時間通りに食事、それから時間通りに就寝。看護師たちの厳しい管理のもと、主治医が言い渡したスケジュールの通りに毎日を過ごしてきた。 幸い、同室の男子高校生のおかげで、そんな変わり映えしない日々であっても、何一つ楽しみがないという訳でもなかった。 「おいチビ、これ見ろ」と、男子は手を上げ、患者衣の袖口に隠したガラス瓶を少し出して一ノ瀬に見せた。 「おにいさん、またしょくどうのコショウもってきちゃったんだ……かんごしさんにみつかったら、おこられるよ?」と、一ノ瀬は無邪気に目をパチパチさせた。 「しーっ。声を抑えて。大事なアイテムなんだぞ、これがないと『マジック』が出来ないからな。」 男子は人差し指を口元に立てて言う。彼はコショウを水の入った茶碗に満遍なく降りかけてから、石けんを付けた指をコショウの海へ突っ込んだ。コショウの粉は即座に外周に向かって散り、彼の指には一粒たりともくっつかなかった。 「すごい! コショウよけのまほうだ!」と、一ノ瀬空は小さく拍手し、最高の賛辞を「魔術師」に送る。 「ふはっ、なんだよ魔法って」高校生は笑いながら片眉を跳ね上げた。 「魔法なんかじゃないさ。水に溶けた石けんによって周囲の水の表面張力が下がると、外側の表面張力の高い水がコショウの粉を引き寄せるから、コショウが逃げるように見えたんだ。これぞ科学の力!」と、得意げに解説してみせた。 こんな調子で「マジックショー」はほぼ毎日この部屋で上演された。ガラスのコップを通して見ると方向が真逆になる矢印、火で炙られても破れない水風船、鉛筆で刺しても水漏れしないレジ袋……どこにでもあるようなものでも、高校生の手にかかればあっという間に魔法のアイテムになる。 幼い一ノ瀬には光の屈折も表面張力も理解できなかったが、それでも知らず知らずのうちに科学への憧れを抱き始めていた。 その様子に嬉しくなった高校生は、「将来、俺たちは絶対にスダークみたいになるんだ」と度々口にした。 「スダークってだれ?」非ニュートン流体に夢中な一ノ瀬は振り返りもせずに尋ねる。 「そりゃ『スチールマン』の主人公だろうが! 心臓病を患っていたが、科学の力で機械の心臓を手に入れ、世界一の金持ちになった男さ」と熱く語る高校生。 SF映画だということくらいしか知らない一ノ瀬は、容赦なく高校生に言葉のナイフを突きつけた。 「でもおにいさん、あれって『えすえふ』だよね。『えすえふは、ほぼげんそーだ』って、ボクのねえさんがいってたよ。」 「真実か幻想かは、俺たちが実現しようとするかどうかで決まんだよ、ソラ。」横になっていた彼は体を起こし、一ノ瀬の目線に合わせて体を屈めてこう言った。「SFの中の幻想ってのは、科学の発展の先にあるもので、今生きる人類が未来へ託した希望でもあるんだ。」と。 そんな堅い信念と情熱に溢れた高校生の顔は、入院以来はじめて見たかもしれない。 「俺がなぜ青色が好きか知ってるか? お前くらいの年からずっと病院のベッドで過ごしてると、窓から眺める空の青が一番よく見る色だからさ。白を除けばな。」と、高校生が言う。「もしいつか、俺たちが機械の心臓を手に入れて、一緒に外の原っぱなんかで走れる日が来たら……きっと草の緑も好きになるだろうな。」 「そんなひが、くるのかなぁ…」と、一ノ瀬は小さな声で聞く。 「きっと来るさ。」 退院する時、高校生は、看護師たちへのお礼のついでに、科学愛好仲間の一ノ瀬にある特別なプレゼントを残した。 A4サイズで、0と1が一面に書かれた一枚の紙だった。その時の一ノ瀬にとってはまるきり謎の暗号だったので、いつか絶対解いてやる! と誓い、紙を大事にしまった。 しかし一ノ瀬は独学でプログラミングを始めてからしばらく経っても、その複雑な暗号を解けずにいた。 そんなこんなで数年が経ち、一ノ瀬が昔のSF映画を観返していたところ、初代『スチールマン』のあるシーンで同じようなコードが出てきたことに気付いた。映画の主人公の方法を真似てコードを解析してみると、短い言葉が現れる。一ノ瀬はそれを小声で読み上げた。 「俺たちの人生を科学の夢に、俺たちの手で夢を現実にしよう。」

最高のプレゼント

絆LV2で開放

一ノ瀬空はおもちゃをたくさん持っている。大人の身長ほど高く積み上げられたブロックの建物もあれば、小さな知恵の輪もたくさんあり、部屋一面がおもちゃで埋め尽くされている。だからあの日、母からキューブパズルを渡された時には、その地味で平凡な立方体はさほど一ノ瀬の興味を引かなかった。 それでも一ノ瀬はものの数日でキューブパズルのコツを掴んだ。それから一週間ほど経つと、キューブの面がどれだけバラバラになっていてもあっという間に揃えられるようになった。 時計の針が4時を指すと、一ノ瀬は手元のおもちゃをポケットにしまって、いつものように母親にマンションの敷地内の公園へ散歩に行ってもいいか聞いた。 「いいわよ。」母親は優しく一ノ瀬の頭をなでて答えた。「でも夕ご飯までには帰って来てね。約束よ、空ちゃん。」 一ノ瀬はうんと頭を縦に振る。父親は分厚いコートを持ってきて一ノ瀬に被せた。そして家を出る前に、一ノ瀬はいつも通り父と母にハグをした。 しかしこの日、一ノ瀬は公園に行かなかった。近くにある花壇の横、風を避けられるところに座り、その辺りで労働に勤しむアリたちの観察を始めた。迷うことなくアリたちの運搬通路を見つけられたのは、今回が初めてじゃなかったからだ。 子供の友達作りは至って簡単なことのはずだ。きっかけは単純で、同じ公園で走ったり、サッカーで競ったり、一緒に近くの木に登って木の実を取ったせいで防犯パトロールのおじさんに怒られるのでも、最悪喧嘩からでも友達になることもあるだろう。 一ノ瀬は、夢でもいいからそんな風に友達を作りたかった。でも彼は、医者の言いつけを守って激しい運動を避けなければならない。スポーツをしたい子たちの誘いを何度か断ったら、自然と誰からも誘われなくなった。 最初一ノ瀬は、公園の滑り台の横で他の子達をそばから見ていたが、段々と遠くに座るようになり、最終的に子供達がいない所にいるようになった。 「大丈夫、一人には慣れてるし。」と、一ノ瀬は自分を慰めた。「父さんも母さんも毎日忙しいから、こんなことで心配かけちゃいけないんだ。」 木漏れ日が一ノ瀬の背中に降り注ぎ、淡く揺れる模様を形作る。花壇の向こうから子供たちのはしゃぐ声が聞こえて来るが、一ノ瀬は空っぽの頭のまま目の前のアリを見続けていた。 ふと、アリの観察なんて全然面白くないなと感じた。アリですら仲間がたくさんいるのに、自分は一人ぼっちで、時間が過ぎるのをひたすら待つことしかできないし。 深くため息をつくと、一ノ瀬は時間をつぶす方法を変えようと決めた。何気なくポケットにしまったおもちゃを取り出すと、母からもらったキューブパズルが出て来た。一ノ瀬は慣れた手付きでキューブの六面を崩しては揃え、六つの色が高速で彼の手の中を飛び回る。 「うお~! それどうやったらできんだ!?」 突然話しかけて来た男の子に一ノ瀬は驚き、危うくキューブを落とすところだった。 もちろん男の子はそんなことに気付くはずもなく、大きなジャンプで花壇を跳び越え、一ノ瀬の前に来た。そして、興味津々に一ノ瀬の両手を覗き込む。 「すっげー!! 魔法みてー!!」と男の子はさらにはしゃぐ。「オレもそれ持ってるけど、どうやっても一つしか揃えられねーんだよな。もう一回やって見せてくれよ!」 記憶が確かなら、これが一ノ瀬にとって初めて年が近い子に褒められた瞬間だった。彼は顔を伏せて、赤くなった耳の先を隠しながら、手の動きをさらに速める。 「そういえばお前、見たことねぇな。なんて名前だ?」 「い、一ノ瀬、空……。」 「空! どんなに崩しても戻せるなんて、お前天才だな!!」 男の子のはしゃぎ声につられて公園の子供達もやって来たので、一ノ瀬のいる花壇は一躍人気スポットになった。ありふれた花壇がこんなに賑やかになったのは初めてだ。 キューブは一度また一度と崩されては揃えられ、一ノ瀬とともに注目の的になった。一ノ瀬は大勢に見られる感覚には慣れていなかったが、こうした賑やかな雰囲気を楽しんでいた。 「はじめましてだね!  わたしは五十嵐陽菜! 友達になってくれる?」と、ある女の子が一ノ瀬に近付き、笑いながら話しかけた。 「ずるいぞ! 俺が一番最初に空に話しかけたんだから、俺が一番の親友だ! そうだろ?」と、男の子は一ノ瀬の肩を抱き、子供らしい主張をした。 他の子供たちも、一ノ瀬に遊びの誘いをかけてきた。一緒にアニメを観る、おままごとする……など、あっという間に一ノ瀬のスケジュールが四日先まで埋まった。 一ノ瀬は、新しく出来た友達の熱意に圧倒され一瞬途方に暮れた。しかし、頭で理解するよりも早く、体が心の底から湧き出る嬉しさに駆られ、口角が上がり、声を上げて笑った。 友達を作るのはこんなにも楽しい。キューブパズルは今まで貰った中で最高のプレゼントだったな、と一ノ瀬は思った。

「エテルニテ」との出会い

絆LV3で開放

「自然選択説」という理論がある。 生物が繁殖する過程で遺伝子変異が自然に起こり、その中でより自然環境に適応したものが生き残るという理論で、生物の進化を説明する「進化論」の根幹を成す考え方である。 一ノ瀬は体育の欄に「0点」と書かれた成績表を見て、いつか本で見た自然選択説の解説を思い出したが、それすらどうでもよくなるくらいにへこんでいる。無言で持ち物を整理して、帰路についた。 小学生の頃と違って、中学生になると体育も学期末の成績に入るようになった。他の科目でいくら頑張っても、体育の欠席の影響で、一ノ瀬は成績ランキングでいつも中途半端な位置にいる。勉強さえ頑張れば上を目指せる他の人と違って、一ノ瀬はこの現状に打つ手がなかった。 現状を変えるための努力を試みたこともある。しかし、誰でも楽にこなせる運動であっても、一ノ瀬の体にとっては危険な毒だ。現代医学のおかげで学校に通えてはいるものの、病歴に書かれた長い長い診断結果のリストは、彼が正に自然に淘汰されようとしている存在であることを証明している。 一ノ瀬は苛立ちまぎれに道路の石ころを蹴り飛ばし、心にわだかまる無力感を吹き飛ばそうとした。 ——ドン! 一ノ瀬は真正面から向かって来た段ボール箱にぶつかり尻もちをついた。 「ごめんごめん、荷物が多くて、前がよく見えなかったんだ。ボク、大丈夫か?」宙に浮いた紙箱の後ろから、中年の男性が顔が出した。「お詫びと言ってはなんだけど、うちのカフェでちょっと休んだらどうだ? ホットココアを作ってあげよう。」 「あ、いえ……大丈夫、です。」と、目尻に浮かぶ涙をこらえて一ノ瀬が言う。 「どこが大丈夫なんだ……ほら、手を擦りむいてるじゃないか。店に絆創膏があるから、擦り傷を手当てしよう」と、男は段ボール箱を地面に下ろして、一ノ瀬に手を差し伸べた。仕方なく、一ノ瀬は男に連れられて目の前のカフェに入った。 「店長! 何が何でもスマホで注文しようとするご老人の方が、誤操作でカプチーノを百杯注文したんですけど、キャンセルが効く時間が過ぎてからそれに気づいて……取り消すには店長が操作しないとでして……」カフェに入ると、女性の店員が男に向かって歩いてきた。 「わかった、ちょっと待ってくれ。」店長と呼ばれた男は一ノ瀬を空いている席に誘導し、「すぐ戻ってくるから適当にくつろいでて」と言った。 店長は困っているご老人の応対をしていた。その老人の客は、明らかにスマホアプリを使った注文に慣れていないようで、無意識に両手を握り合わせてとても困った様子だった。 次に一ノ瀬は、その隣のボックス席に座る女性のOLに目を向けた。無遠慮に他人をじっと見るのはやや失礼ではあるが、見られる側はどうやら電話に集中していて全く気づいていないようだ。 「はい、申し訳ありません、社長……はい、重要なデータを間違えまして……」 と、繰り返し謝り続ける女性OLに対し、電話の向こう側からは厳しい叱責の声がする。 ここのお客さん、みんなそれぞれに悩みがあるんだなぁ……と、一ノ瀬は思った。折り重なる様々な負の感情が、一ノ瀬をさらに落ち込ませる。 「どうした? 傷が痛むか?」と、ホットココアとともに店長が帰ってきた。消毒液と絆創膏もある。 ホットココアの温かさのせいか、それとも店長の優しさのせいなのか、一ノ瀬は初対面の人相手に悩みを打ち明け始めた。「何も打つ手がないって、辛いね。体育のせいで成績がずっと中途半端なままの生徒なんて、絶対みんなをがっかりさせてるでしょ……。」 店長は周りを見渡し、何か察したように一ノ瀬の頭を軽く撫でた。 「『生活』ってのは色んな一面があるんだ。悪い一面ばかり見えてしまうと辛いのもわかる。」店長は絆創膏を消毒が済んだ傷口に優しく貼った。「ほら、あのご老人はスマホを使うのは苦手だけど、世界中のコレクターに注目されている画家で、今すごい売れっ子らしいよ。それから、あちらの女性は会計の時もお金を間違えるくらいのうっかり屋だけど、CatChatでは大人気のインフルエンサーだ。この前、SNS関連の仕事を見つけたから今の会社をやめたいって言ってたぞ。」 「同じように、人にはそれぞれ色んな一面があるんだ、何でもできるような完璧人間は伝説の中にしかいないよ、一ノ瀬空くん。」 「えっ、店長さん、僕のこと知ってるの……?」 「ははは、私は君のクラスにいる七海礼奈の叔父だ。以前礼奈を迎えに行った時に、会ったことはあるはずだよ。」 「礼奈から、毎回テストの成績で落ち込んでいる……と聞いてたけど、どうやら体育の成績が君に与えた影響は想像以上だったみたいだな。」 「そうだね……頑張ってどうにか出来ることじゃないから……」一ノ瀬は顔を伏せ、ココアをすすってか細い声で言った。 「言ったろ、人には出来ることと出来ないことがあるって。君は確か、小学生キューブパズル大会と数学オリンピック大会の両方を制覇したそうじゃないか。たくさんいる一飜市の小学生の中で、唯一君だけが出来たことだ。 中学生大会を制覇するのも期待してるんだぞ。」店長の励ましは、一ノ瀬の焦燥感を落ち着かせた。 初対面というより久しぶりに会う人だったようだが、そんな立場の人からの励ましだからこそ効果があったらしい。 ゆったりした音楽が流れる店内で、温かいホットココアを口に含むと、その甘さが店内に漂うコーヒーの香りとともに体に染み渡る。そのうちに、一ノ瀬の焦燥感もすっかり無くなった。 「また、頑張ってみるよ。」と、一ノ瀬は微笑んで言った。 あの日から、「エテルニテ」には、一人のキューブパズルが大好きな常連が増えた。

ハロウィンコンテスト

絆LV4で開放

Possible Endings

End1.「怪物」の勝利
知恵の宝玉 ×1
End2.思わぬ収穫
純真の宝玉 ×1
End3.ドラキュラ伯爵
コイン ×8000

Scenario Script

Spots 14, Scenes 379, Choices 5, Endings 0

#0 Spot 1

ハロウィンの季節が来たので、「エテルニテ」はいつもより忙しく、スタッフもみんなてんてこ舞いだ。小鳥遊雛田に臨時助っ人として呼ばれた自分も例外ではない。

#0 Spot 1

今は珍しく落ち着いているので、休憩に行こうとしたら、近くの席から誰かのため息が聞こえてきた。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}はぁ……

#0 Spot 1

一ノ瀬空くんだ。眉をひそめ、テーブルの上に置かれた全く手の付いていないスイーツとにらめっこし、手は無意識にキューブパズルをいじっている。スイーツの横で開いたままの科学雑誌は、風に吹かれてパラパラと音を立てていた。

#0 Spot 1

目の前の光景は、一ノ瀬くんが物思いに耽っていることを示している……。

#0 Spot 1
直接聞いてみる → Spot 2
他の人に一ノ瀬くんのことを聞いてみる。 → Spot 7
#0 Spot 2
player

{character:player}どうしたの?

#0 Spot 2

テーブルを挟んだ向かい側に座る。キイ、という椅子の音が、上の空だった一ノ瀬くんの意識を引き戻した。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あ、えっ、{var:player_nickname}さん?いつからいたの?

#0 Spot 2
player

{character:player}今来たとこだよ、やっと手が空いたからさ。何も食べずにぼーっとして、今日のは美味しくなさそう?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あ、いや、とても美味しそうだと思うけど……なんていうか、そうじゃなくて……

#0 Spot 2
player

{character:player}さては悩みがあるんだな。良ければ相談に乗るよ、なんとかしてあげられるかもしれないし。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そうだな……じゃあ、{var:player_nickname}さんは、魔法使い、吸血鬼、キョンシーの中から選ぶなら、どれが一番好き?

#0 Spot 2
player

{character:player}えぇ!?

#0 Spot 2

どこから来たんだその質問は!?と一瞬思考停止に陥ったが、すぐ目の前の雑誌に気付いた。これか?一ノ瀬くんの悩みの原因は!

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホ……あの、ごめん、何か勘違いさせちゃったみたいで。えっと……もしハロウィンのパレードをやるなら、キミはその三者の誰にお菓子をあげる?

#0 Spot 2
player

{character:player}ハロウィンか、それなら……。

#0 Spot 2
player

{character:player}吸血鬼ってロマンがあっていいよね、優雅な魔法使いも素敵だし……あ、かわいいキョンシーちゃんも捨てがたい……うーん……。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}キミも選べないんだね……。

#0 Spot 2

答えになっていない答えを出してしまって、一ノ瀬くんはまた俯いてキューブをいじり始めた。

#0 Spot 2
player

{character:player}で、ハロウィン用の仮装を選んでるってこと?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん……。今年のハロウィンは、学校で仮装コンテストをやるんだ。生徒なら誰でも参加できるし、家族や友達と一緒に参加してもいいんだって。もし優勝したら、特別な賞品が貰えるらしいんだ。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}この間主治医の先生に聞いてみたら、最近の健康状態なら参加しても大丈夫って言われたから。

#0 Spot 2

コンテストに参加するにも医者の許可がいるのか……一ノ瀬くん、想像以上に体が弱いみたいだ。

#0 Spot 2
player

{character:player}つまり……その特別な賞品が欲しいってことか。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}予測によれば、今回の賞品が新作SF映画のアートブックである確率は72%。さすがに欲しいよね。

#0 Spot 2
player

{character:player}賞品の確率を予測できるのかよ……。じゃあ、さっきの質問もデータ収集のため?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あ、バレたか。うん、その通りだよ。あるデータによると、その三種類が最も好かれる可能性が高い仮装らしいんだ。

#0 Spot 2
player

{character:player}やっぱりか……でも、せっかくのコンテストなんだし、好きなキャラクターの仮装とかでも良いんじゃない?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}それもそうだね……。

#0 Spot 2

一ノ瀬くんは何か思い出したかのように、キューブを目まぐるしく回転させ、ようやく緩み始めた眉間の皴もまた険しくなってしまった。何かまずいこと言ったかな……

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}好きなキャラクターであればあるほど、よりそのキャラの魅力を引き出せる……そういう話はよく聞くけど、そんな「精神論」よりはやっぱりデータの方が信頼出来ると思う……コホコホ。

#0 Spot 2
player

{character:player}まぁね。で、一ノ瀬くんは結局どうするつもり?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}みんながみんな33%の確率を出すから、どうしても決められなくて……。

#0 Spot 2
player

{character:player}ほら、学問なき経験は経験なき学問に勝るってよく言うし、データとか想像だけで似合う衣装を見つけるのはけっこう難しいと思うよ。

#0 Spot 2
player

{character:player}たとえ実際に三種類の衣装が目の前にあったとしても、実際に着てみないとどんな感じになるかはわからないし、ちゃんとお店で試着とかした方がいいと思うな。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも……姉さんは今隣街に出かけてて、月曜まで帰ってこないんだよね……。

#0 Spot 2
player

{character:player}ああ、それなら一緒に行ってあげるよ。

#0 Spot 2

いくら大人びていると言っても一ノ瀬くんはまだ十三歳だし、こういう年相応なところもあってなんか助けてあげたくなるんだよな。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}え?カフェのバイトとか……大丈夫なの?

#0 Spot 2
player

{character:player}なんと、明日はちょうど休みだから、羽を伸ばしに街へ散歩でも行こうかなと思ってたんだよね。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そ、それじゃあ、明日このブティックの前で集合でどうかな。七海さんが勧めてくれた所だから、きっと何か見つかるはずだよ。

#0 Spot 2
player

{character:player}いいよ、約束ね。

#0 Spot 2

元気を取り戻した一ノ瀬くんが帰った後、書いてもらった住所をよく見ると……

#0 Spot 2
player

{character:player}「魑魅魍魎」……って、これがブティックの名前?

#0 Spot 2

なんだか嫌な予感がするなぁ。

#0 Spot 2
player

{character:player}232号、233号……あ、一ノ瀬くん!ここが例のお店だね。

#0 Spot 2

礼奈ちゃんが一ノ瀬くんにすすめたブティックは商店街の一番奥にあり、抑えられた色合いの外観も、周囲のアパレル店の中では最も地味だ。店名も出ていないし、よく見ないと見逃してしまいそうな「営業中」の黒板しか掲げられていない。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……看板もない店だったとは、道理でナビを使っても上手くルートが出ないわけだ。

#0 Spot 2
player

{character:player}ナビに頼り過ぎてはいけない場合もある……っていういい例だったね。さぁ、早く入ってみよう。服選ぶのって結構時間かかるしさ。

#0 Spot 2

と言って、一ノ瀬くんとその異様に古めかしいドアを開けた。

#0 Spot 2
???

{character:???}あら。迷える子羊ちゃんたち、悪魔の故郷へようこそ。

#0 Spot 2

その言葉は、黒板を爪でひっかくような音と、金属がぶつかり合うような音と共に私たちを出迎えた。と同時に、明らかに体温の低い指の感触が、私の腕を襲った。

#0 Spot 2

びっくりして硬直した首を無理やり横に回すと、ぼんやりと青く光る「お化け」と目が合った。

#0 Spot 2
こんな時こそ慌てず真正面から迎え撃つ! → Spot 3
やっぱりすぐさま後ろへ引っ込む。 → Spot 5
#0 Spot 3

ドスッ——。

#0 Spot 3

条件反射で正拳突きが炸裂。わざとじゃない、許せ。しかし……。

#0 Spot 3
???

{character:???}鼻、鼻が……ぐぅ……。

#0 Spot 3

ぐぅ?

#0 Spot 3

さっきまで怪しげなオーラを纏っていた「お化け」は、今は憐れな姿で地面に蹲り、「痛い、痛いよぉ……」と呻いている。衣装は相変わらずホラーな雰囲気だけど、こうなってしまうと流石に恐怖感が欠片も感じられない。

#0 Spot 3

「お化け」はどうやらここの店員で、この姿も客を呼び寄せるためらしい。アパレルの仕事って意外と危険なんだな……と自分の拳を見ながら心の中で呟いた。

#0 Spot 3
player

{character:player}すみません、いきなり現れたからつい反射で……

#0 Spot 3
店員

{character:店员}いえいえ、大丈夫です……。お連れのお子さんの方を驚かせようとばっかり思ってて、完全に判断を誤りました……。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}お化けは、所詮人々の想像によって生まれるものにすぎないでしょ。存在しないものを怖がるなんて、ボクはしないよ。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも確かによく出来た仮装だ。{var:player_nickname}さんの反応が一番の証明だよ。

#0 Spot 5
player

{character:player}うわぁ~~!

#0 Spot 5

ひとりでに大声が出てしまい、私は一ノ瀬くんの手を取って素早く店の入口まで飛び退いた。「お化け」にこっちを追ってくる様子は無く、その場で不気味な笑みを浮かべながら私たちを見続けている。

#0 Spot 5
???

{character:???}ヒッヒッヒ……。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……ど、どうも、店員さん、だよね。

#0 Spot 5
店員

{character:店员}ヒヒ……その通り〜。

#0 Spot 5
player

{character:player}店員さん!?なんでそんな姿を!?

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}一応ハロウイン仮装の専門店なんだし、そういう客寄せ方法なんじゃないかと思うけど……。

#0 Spot 5
店員

{character:店员}フフフ、お客様ごめんなさいね、ちょっといきなり過ぎたかしら。とりあえずここに座って落ち着いて下さい。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}確かに、{var:player_nickname}さんの脈拍、すごく早くなってる。

#0 Spot 5
player

{character:player}だ、大丈夫です。って、一ノ瀬くんはどうしてそんなに冷静で居られるんだ……怖くなかったの?

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん。「お化け」の存在は証明されてないし、科学で解明できないオカルトなんてないと信じてるから。

#0 Spot 5
店員

{character:店员}あらお客様、お若いのに頼りがいがありますね~。

#0 Spot 5
player

{character:player}そうは言っても、いきなり誰かが飛び出してきたら普通は驚くものだけどな……。

#0 Spot 6
player

{character:player}……それで、この子は今自分に似合う衣装を探してるんですが、何かおすすめはありませんか?

#0 Spot 6

子供より臆病者だとは思われたくないし、ちょっと強引だけど、当初の目的に話題を切り替えよう。

#0 Spot 6
店員

{character:店员}それならご安心ください。この「魑魅魍魎」は開業から三年、お客様満足度100%を誇ってますから。

#0 Spot 6

こんな接客をする店で、100%の好評価……信じていいんだろうか。

#0 Spot 6
店員

{character:店员}そうですね……こちらのお客様でしたら、エレガントなドラキュラ伯爵とかはどうかしら。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うーん……とりあえず、一度試着してみたいな。……あれ?この魔法使いの服って……?

#0 Spot 6
店員

{character:店员}お客様いいセンスされてますね。これはかの有名な大錬金術師・ニコラスとコラボした限定商品となっております。これで仮装すれば、きっと幸運に恵まれますよ。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}その……{var:player_nickname}さんに似合うと思いますが……。

#0 Spot 6
player

{character:player}私?いやいや、最近はカフェの方が本当に忙しいから、当日行けるかも怪しいし、まず一ノ瀬くんの服に集中しようよ、ね。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}試すだけならタダだし、案外気に入るかもしれないよ。

#0 Spot 6
店員

{character:店员}ハロウィンは本来豊作を祝うお祭りで、毎日の勤労を労う日という意味もあるんです。忙しいからこそ、祝う価値があるんですよ。

#0 Spot 6
player

{character:player}じゃあ……試すだけなら。

#0 Spot 6
店員

{character:店员}ではお二人とも、こちらへどうぞ。

#0 Spot 6

積極的な店員は私に迷う間を与えず、試着用の衣装を持ってきて半ば強引に試着室に案内した。

#0 Spot 6

まぁ、確かに好みの衣装だし……試すだけなら、ね?

#0 Spot 7

このカフェで一ノ瀬くんのことをよく知っている人というと、店長見習いの七海礼奈ちゃんだな。確か同じクラスだったような……?

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}一ノ瀬くんが悩んでること……?うーん、私もよく知らないな。学校でも、ハロウィンコンテストのお知らせがあったこと以外は、特に変わったこともないし……。

#0 Spot 7
player

{character:player}コンテスト?

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}うん。学校のハロウィンイベントの一環で、青露中学の生徒なら誰でも参加できて、特別な優勝賞品もあるとかないとか。

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}だとしたら、一ノ瀬くんはコンテストのことで悩んでるのかも……クラスの中で唯一仮装が決まってないって聞いたし……。

#0 Spot 7
player

{character:player}大変そうだね……。一ノ瀬くんなら迷わずフランケンシュタインの怪物を選びそうなものだけどな。

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}そうだよね。でも、今年の賞品が一ノ瀬くんにとって魅力的過ぎるから、あんなに悩んでるんじゃないか、ってみんな言ってるの。

#0 Spot 7
player

{character:player}その賞品って具体的には何なんだろう?

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}学校からの正式な発表は出てないけど、噂によればSF映画のアートブックらしいよ。

#0 Spot 7
player

{character:player}そっか、SF好きの一ノ瀬くんが欲しがるわけだ。でも、中学校のコンテストってそんなに本格的なものなの?プロのモデルさんとかが指導しに来るとか?

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}興味があるなら、当日見に来る?その日は、一飜市の市民なら誰でも参加出来るはずだよ。

#0 Spot 7
player

{character:player}いいの?でもハロウィンはお店も忙しくなるだろうし、私がいなくて大丈夫?

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}実をいうと、最近の{var:player_nickname}さんはちゃんと休憩出来てないから、私も心配してたんだよね……それで、その日はちゃんと他の人が入るようにシフト組んでたんだ。だから、安心して行って来て!

#0 Spot 7
player

{character:player}ありがとう……!でもハロウィンはもう来週か……何の準備もしてないし、せめて仮装用の服だけでも用意してればなぁ……。

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}あ、衣装が必要なら、毎年うちのカフェの装飾をお願いしてるお店の中に、いいお洋服屋さんがあるよ~。

#0 Spot 7
player

{character:player}それは助かる……!

#0 Spot 7
七海礼奈

{character:七海礼奈}はい、これが住所だよ。今週からは24時間営業になるはずだから、いつでも行っていいと思う。あ、でも、そこの店員さんはちょっと意地悪だから、気をつけてね。

#0 Spot 7

気をつけてって、ただのアパレル店員だよね……?

#0 Spot 7

嫌な予感がするなー。

#0 Spot 7
player

{character:player}232号、233号っと……あった、ここだ!

#0 Spot 7

礼奈ちゃんにすすめられたお店は商店街の一番奥に立地していて、抑えられたトーンの外観も周囲のアパレル店の中では最も地味だ。店名も出ていないし、ちゃんと見てないと見逃してしまいそうな「営業中」と書かれた黒板しかない。事前に聞いてなければ多分一生この店に入ることも無さそうだけど……。

#0 Spot 7

住所が合ってるか再確認し、勇気を出してその異様に古めかしいドアを開いた。

#0 Spot 7
???

{character:???}あら、新鮮な脳みそがやって来たわね。今宵は宴じゃ〜!

#0 Spot 7

その言葉は黒板を爪で引っかくような音と、金属がぶつかり合う音と共に出迎えられた。と同時に、明らかに体温の低い指の感触が私の腕を襲った。

#0 Spot 7
player

{character:player}な、なんだ!?

#0 Spot 7

びっくりして硬直した首を無理やり振り向かせると、青白く光る骸骨と目が合った。

#0 Spot 7
こんな時こそ慌てず真正面から迎え撃つ! → Spot 8
やっぱりすぐさま後ろへ引っ込む。 → Spot 9
#0 Spot 8

ドスッ——。

#0 Spot 8

条件反射で正拳突きが炸裂。わざとじゃない、許せ。しかし……。

#0 Spot 8
???

{character:???}鼻、鼻が……ぐぅ……。

#0 Spot 8

ぐぅ?

#0 Spot 8

さっきまで怪しげなオーラを纏っていた骸骨は、今は憐れな姿で地面に蹲り、「痛い、痛いよぉ……」と呻いている。衣装は相変わらずホラーな雰囲気だけど、こうなってしまうと流石に恐怖感が欠片も感じられない。

#0 Spot 8
player

{character:player}すみません、いきなり現れたからつい反射で……

#0 Spot 8

どうやら礼奈ちゃんが言ってた意地悪な店員ってこの人のことだな。そういう客引きの手段なんだろうか。

#0 Spot 8
店員

{character:店员}いえいえ、こちらこそお客様を驚かせて申し訳ありません。改めまして、「魑魅魍魎」へようこそ。

#0 Spot 9
player

{character:player}うわぁ~~!

#0 Spot 9

ひとりでに大声が出てて、叫びながら入口まで飛び退いてしまった。

#0 Spot 9
店員

{character:店员}お、お客様?大丈夫ですか?驚かせてすみません……。

#0 Spot 9
player

{character:player}ま、待って。ちょっと落ち着かせて。

#0 Spot 9
店員

{character:店员}は、はい。本当にすみません。改めまして、「魑魅魍魎」へようこそ。

#0 Spot 10
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あ、{var:player_nickname}さん?

#0 Spot 10
player

{character:player}一ノ瀬くん!君も衣装を買いに?

#0 Spot 10

骸骨の店員に奥の方へ案内されると、試着用の衣装を抱えた一ノ瀬くんに遭った。

#0 Spot 10
店員

{character:店员}あら、お二方はお友達だったんですね。反応は正反対だったのに、本当に奇遇ね~。

#0 Spot 10
player

{character:player}正反対……って、一ノ瀬くんもあんな風に接客されたんだ……。

#0 Spot 10
店員

{character:店员}そうなんです。幽霊の仮装をしたんですけど、「幽霊の存在は証明されていない」って、全然驚いてくれませんでした。

#0 Spot 10
店員

{character:店员}そうしたら、現実にいるものに仮装した方が効果的だってアドバイスまでしてくださって……お陰様で、お客様の良い反応が見られました。

#0 Spot 10

科学を信仰しているから、幽霊にも全く動じない、か……言われてみたら確かに一ノ瀬くんっぽいな。

#0 Spot 10
一ノ瀬空

{character:一之濑空}七海さんからおすすめされたの?だとしたら、「店員に気をつけて」って言われたはずだけど……。

#0 Spot 10
player

{character:player}物理的に気をつけなきゃいけないなんて、誰が思うかー!

#0 Spot 10
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも、ここで会えてよかった。ちょうど、どうしたらいいか悩んでたから……七海さんからコンテストのこと聞いた?

#0 Spot 10
一ノ瀬空

{character:一之濑空}これまでのデータによると、吸血鬼、魔法使い、キョンシーの三つの勝率が高いんだけど、{var:player_nickname}さんはどう思う?あ、いや、七海さんが、悩んだらとりあえずキミに聞けばいいって言ってたから、その……

#0 Spot 10
player

{character:player}そこまで言われちゃ断れないなぁ。いいよ、私も衣装を選びたいし、お互い助け合おう。

#0 Spot 10

一ノ瀬くんは安心した様子で、店員さんに試着室へ連れられて行った。自分も服選びに関心を戻して、店員さんの解説に集中するようにした。

#0 Spot 10
店員

{character:店员}こちらの商品は大錬金術師ニコラスとコラボしたもので、よく売れております。お客様も試着されてはいかがでしょうか。

#0 Spot 10
player

{character:player}そうですね……一回試してみます。

#0 Spot 10

綺麗な衣装がいっぱいありすぎて一つに絞れないので、とりあえず店員さんのおすすめを信じて試着してみよう。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}{var:player_nickname}さん、どうかな?ボク、一応さっきの服を着てみたんだけど……

#0 Spot 11

ちょうど自分の衣装を着終わったタイミングで、一ノ瀬くんの呼ぶ声がした。試着室のドアを開けると、目の前には可愛さとエレガントさが見事に調和した幼い吸血鬼がいた。濃いブラウンの髪色は一ノ瀬くんの肌の白さをより際立たせ、青く輝く瞳は海のような深みがある。これはマジで似合ってるわ。

#0 Spot 11

店員さんがテンションブチ上げで、ぜひ記念写真を!と暴れ出したことも、私の結論を証明している。

#0 Spot 11
player

{character:player}似合ってるよ、小さなドラキュラさん。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホッ。そ、そっちもね。魔法使い殿。

#0 Spot 11

でも一ノ瀬くんは、褒められたのにまだ安心できないようで、繰り返し鏡の前で全身をチェックしている。特に大きなマントに付いた複雑な装飾が気に入らないようだ。

#0 Spot 11
店員

{character:店员}あ、お客様!お気をつけ下さい……!

#0 Spot 11
player

{character:一之濑空}うわっ……!

#0 Spot 11

一ノ瀬くんがうっかりマントを踏んで倒れそうになったので、私は一歩前に出て彼の体を支えた。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あ、あり、がとう……ゴザイマス。……この服はとても素敵だけど、安全面を考えるとちょっと心配だな……。

#0 Spot 11
player

{character:player}この装飾は尖ってて危ないよね。特にハロウィン当日は見物客も多いだろうから、こんな服を着て歩き回るのはちょっとね……。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん、その通りだよ。

#0 Spot 11

一ノ瀬くんもマントのことに気がついたようで、瞳からは残念そうな気持ちが読み取れたが……なぜか少し安堵したような表情を見せた。

#0 Spot 11

まるで「この衣装」じゃなくて良かったみたい……でも、あれ?一ノ瀬くんはこういう服を買うために来たはずだよね?

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ま、まぁ、とりあえず他のを見てみよう。この衣装は……残念だけど。

#0 Spot 11
店員

{character:店员}他でしたら、お客様はキョンシーなどいかがでしょう?装飾も少なめですし、動きやすいはずですよ。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん、一応それも試すつもりだけど……。

#0 Spot 11
player

{character:七海礼奈}ん?

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あ、いや、とりあえず試してみるよ。

#0 Spot 11

「けど」?なんか引っかかる言い方だなぁ……詳しく聞くよりも先に、一ノ瀬くんは衣装を持って試着室に入ってしまった。

#0 Spot 11

そこで私もこの隙に私服に着替えた。店員さんが勧めてくれた他の衣装は丁重にお断りした。

#0 Spot 11

そもそも自分が着るものにそこまでこだわりはないし、今は一ノ瀬くんの衣装を選んであげよう。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}これは……どうかな。

#0 Spot 11

試着室のドアが再び開き、小さなキョンシーがゆっくり出てきた。歩くリズムに沿って揺れる額に貼られたお札は、無性に剥がしてみたくさせる魔力でもあるかのようだ。

#0 Spot 11
player

{character:player}さっきのと比べると少し地味だけど、とても似合うよ。

#0 Spot 11
店員

{character:店员}せっかくですし、本物のキョンシーのように跳びはねて前進などなされては?きっと更に可愛らしくなりますよ。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}本物のキョンシーなんていないし、跳んで歩くのは体に負担が掛かるから、先生は許してくれなさそう……。

#0 Spot 11
player

{character:player}まぁまぁ、一応これはキープにしといて、他のも試してみようよ。

#0 Spot 11
店員

{character:店员}でしたら、魔法使いの仮装はいかがでしょうか。こちらのお客様は先ほど錬金術師の衣装を試されてましたから、二人で永遠のライバル感を出してみるのも……

#0 Spot 11
player

{character:player}ライバルって言っても身長に差がありすぎない?

#0 Spot 11
店員

{character:店员}いえいえ、千年の時を生きる魔法使いと超絶天才錬金術師のコンビなんて、注目を集めること間違いなしです!

#0 Spot 11

今度は一ノ瀬くんは何も言わずに、勧められた衣装を持って試着室に戻った。しかし五分もしないうちに試着室のドアが再び開かれた。

#0 Spot 11
player

{character:player}早いね……って、どうしたの?

#0 Spot 11

試着室から出てきたのは千年を生きる魔法使いではなく、いつもの一ノ瀬くんだった。彼は衣装を店員さんに返して、他の衣装の勧めも断った。

#0 Spot 11
店員

{character:店员}お客様、もしかして魔法使いの衣装はお気に召しませんでしたか……?

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}いや、とても素敵な衣装だよ。

#0 Spot 11
店員

{character:店员}ではサイズが合わなかったとか……。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ち、違うんだ。服の問題じゃなくて……。

#0 Spot 11

その後どう聞かれても、ノーとしか答えない一ノ瀬くん。まだ時間はあるし他のお店も見てみようと提案したら、一ノ瀬くんはやっと肯定的な答えをしてくれた。ただ店を出る前に、彼はパッと店の隅の方を一瞬振り返った。

#0 Spot 11
店員

{character:店员}あれは……なるほど。またお会いしましょうね、お客様。

#0 Spot 11
player

{character:player}……?

#0 Spot 11

商店街の中で最後のブティックから出てきた時には、月は既に太陽に代わって空の支配者となり、人工のライトよりずっと柔らかな光を放っていた。

#0 Spot 11
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホッ。もうこんな時間だ……。早く決めなきゃいけないのに……。

#0 Spot 11

十月下旬になって、夜も肌寒くなってきた。私にとってはちょうどいいくらいだけど、一ノ瀬くんの体には少し障りそうだ。下がった気温も服が見つからない現状も、一ノ瀬くんをイラつかせている。

#0 Spot 11

結構良い服が沢山あったのに、全部、一ノ瀬くんは色々な理由をつけて断った。こんなにお店を回ったのに、結局一着もいいのが見つからなかったなんて。

#0 Spot 11

あの時一ノ瀬くんは、どうしてちょっと安心したんだろ。

#0 Spot 11
player

{character:player}……一ノ瀬くんさ。

#0 Spot 11

もしかして、あれなんじゃないか?と私は思った。

#0 Spot 11
もしかして……選択困難症候群? → Spot 16
もしかして、もう他のに決めてた? → Spot 13
#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……ち、違、コホコホ……どうして?

#0 Spot 13
player

{character:player}どれも一ノ瀬くんに似合ってて、素敵な服ばかりだったけど、ここまで首を横に振り続けるんだから、それしかないかなって。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}それは……そんなこと、ないよ。

#0 Spot 13
player

{character:player}まだ自分ではわかってないだけかもしれないよ。一ノ瀬くんが思う理想の衣装を頭にイメージしてみて、良かったら私にも教えてよ。一ノ瀬くんが本当に欲しいものが何なのか、よく知らないままだと私もちゃんとしたアドバイスが出来ないと思うし。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホ、コホ……じゃあ……。ボクが欲しいのは、えっと……ちょっと地味で、破れた服から金属の肌が見えて、機械の腕には包帯が無造作に巻かれてて、それから……

#0 Spot 13

一ノ瀬くんの声に導かれて、あるキャラクターの姿が段々と鮮明になってきた。

#0 Spot 13
player

{character:player}それって、『フランケンシュタイン』の怪物じゃん!

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あ、わかるんだ……?

#0 Spot 13
player

{character:player}そこまで詳しく言ってくれたらね。科学と数学が大好きで、孤独で繊細な、実験で生み出されたモンスター……ハロウィンの仮装としては新鮮でいいチョイスなんじゃないかな。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも、あの「怪物」はかっこよくないし、神秘的でもない……コホコホ……勝率はたったの0.012%だし、やっぱり人気のキャラを選んだ方が……。

#0 Spot 13
player

{character:player}そうでもないかもよ。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}え……?

#0 Spot 13
player

{character:player}人が祝日に求めるものって、何かを祝う過程の中で感じられる「楽しさ」のはず。で、その「楽しさ」っていうのは、どんな数式を使っても計算し切れないと思うよ。過去のデータでは1%の可能性しかないって言うけど、「今」は違うかもしれない。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも、さすがに1%未満じゃ、賞品を狙うには得策じゃない気が……

#0 Spot 13
player

{character:player}優勝して賞品を貰えたら、それはもちろんいいことなんだけど、麻雀と同じで、過程はどうあれ結果的に勝てれば良いんじゃないのかな。賞品のアートブックが目標ってことなら、小野寺さんに後で聞いてみるよ。本のことなら彼女が一番詳しいし。

#0 Spot 13
player

{character:player}だから、せっかくのハロウィンには、やりたい仮装を遠慮なくやった方がお得だと思うよ。それに、私も一ノ瀬くんがしたい仮装を見てみたいし。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}じゃあ……やっぱり『フランケンシュタイン』の怪物!実験室で生きるモンスター、これ以外ないよ……!

#0 Spot 13

一ノ瀬くんの表情から曇った所が完全に消えて、この年頃の子供らしい明るい表情に戻った。なんなら興奮で普段より少し赤くなっているくらいだ。

#0 Spot 13
player

{character:player}じゃあ、欲しいものは決まったね。でも『フランケンシュタイン』の怪物か、どこで売ってるんだろう……?

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}それが……実はあの店で見たんだ!こっちだよ。

#0 Spot 13
player

{character:player}わ、わかったわかった。服は逃げないから、とりあえずゆっくり歩こう!

#0 Spot 13

十分後、私たちは再び「魑魅魍魎」に戻った。店員さんはピエロの仮装に変わっていて、「ほらやっぱり」って顔をしている。

#0 Spot 13
店員

{character:店员}あらあら、お二方ともおかえりなさいませ。やっぱりまたいらっしゃったわね〜。

#0 Spot 13
player

{character:player}戻ってくるのをわかってたのか……?

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あの衣装は確か……こっち!あったよ!

#0 Spot 13

一ノ瀬くんは隅に向かって直行し、棚から迷うことなくお目当てのものを取り出した。きっと、午後店を出た時からこれに狙いを定めてたんじゃないかな。

#0 Spot 13

多分私が何か言わなくても、彼はここに戻って来て、この服を選んだかもしれないな。

#0 Spot 13
店員

{character:店员}あら、こちらになさるんですね。ちょっと予想外でしたわ……ここ数年のコンテスト優勝者は大体吸血鬼かその類でしたが、これもまた新鮮、と言ったところですね。

#0 Spot 13
player

{character:player}コンテストのこと知ってるんだ。

#0 Spot 13
店員

{character:店员}エテルニテだけではなく、学校の先生たちにも服装提供してますから。

#0 Spot 13
player

{character:player}先生の服装はさっき驚かされたアレじゃないだろうな……。

#0 Spot 13
店員

{character:店员}それは、生徒さんたちも同じ反応してくれるといいですね、としか言えません。

#0 Spot 13

生徒たちよ、涙を拭け。

#0 Spot 13

そしてハロウィンコンテストに参加する全ての人に祈りを捧げよう……。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でもなんか……足りない気がする。

#0 Spot 13
店員

{character:店员}そうですね、このままだとシンプルすぎますので、少々テコ入れしましょうか。腕に鉄製のチェーンを付けるのはいかがでしょう?お代は頂きませんので。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}それは……もっと違う気がする。「怪物」は孤独を嫌うモンスターだから、そんないかつい飾りは付けないはず。

#0 Spot 13
店員

{character:店员}では、このジャックオーランタンの暖かい光で柔らかい雰囲気を演出するのは?

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}もっとかわいいランタンがあればいいな……もし「怪物」が本当に存在していたら、きっとハロウィンが大好きだと思うから。

#0 Spot 13
店員

{character:店员}ハロウィンのランタンに「かわいさ」があるかどうかは置いといて……多分他のランタンでは似合わないと思います。

#0 Spot 13
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そういうものかな……コホコホ。何かこう……「怪物」の外見と内面の対比を演出できる何かがあったら……。

#0 Spot 13
服にちょっとアレンジを加えてみたら? → Spot 14
舞台慣れしてるパートナーと一緒に出たら? → Spot 15
#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}{var:player_nickname}さん、何かアドバイスはない?

#0 Spot 14
player

{character:player}ちょっと思いついたかも……ここで待ってて。

#0 Spot 14

午後いっぱいで商店街を踏破していたので、記憶を頼りに20分ほどで全てのアイテムを揃え、店に戻った。その間に、一ノ瀬くんは「怪物」の衣装に着替えて待っていた。

#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}これは……小鳥のオブジェ?

#0 Spot 14
player

{character:player}ふふん。店員さん、これを肩のあたりで固定してもらえる?

#0 Spot 14
店員

{character:店员}お任せ下さい。

#0 Spot 14

数分後、鏡の前の一ノ瀬くんは思わず「わぁ……」と感服していた。恐ろしいモンスターの肩で毛づくろいをする小鳥は、全体の雰囲気を一気に和らげた。鳥の暖色と服の寒色の対比がより鮮明になり、人間味も更に感じられるようになった。

#0 Spot 14

優しさを持ったモンスターは魅力的だってことだ。

#0 Spot 14
店員

{character:店员}ブラボー。まるで魔法のようですね。コンテストが終わったら、『フランケンシュタイン』のお話が次のトレンドになるでしょう。

#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}では、この衣装をください。

#0 Spot 14
店員

{character:店员}承知致しました。あわせて2万コインになります。ありがとうございました~。

#0 Spot 14

買い物を終えて、一ノ瀬くんをマンションまで送った。本人は何度も一人で帰れるって言ってたけど。

#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}なんていうか、……ありがとう。

#0 Spot 14
player

{character:player}方向一緒だし、これくらいなんでもないよ。

#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}送ってくれたことだけじゃなくて、その。コホンコホン……キミがいなければ、ボクは今でも数字とにらめっこしたままだったかもしれないし……。

#0 Spot 14
player

{character:player}それなら尚更だよ。友達にちょっとアドバイスしただけだから。

#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そうかもしれないけど……。これ、受け取ってよ。

#0 Spot 14
player

{character:player}これ……あの錬金術の服?いつの間に?

#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そうだよ。ぜひ、学校のハロウィンイベントを見に来てほしい。キミがいなかったら、ボクはきっとあの「怪物」なんて選ばなかったと思う。ある意味で、キミこそが科学者・フランケンシュタインのような存在だから。

#0 Spot 14
player

{character:player}えぇ……不吉なこと言わないでよ。そのフランケンシュタインって、最後は怪物に殺されちゃうんでしょ?

#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホ、そうじゃなくて……!

#0 Spot 14
player

{character:player}夜は肌寒くなってきたから、そろそろお家に帰りな。病気が悪化したら、ハロウィンイベントどころじゃなくなっちゃうよ。

#0 Spot 14
一ノ瀬空

{character:一之濑空}待って、当日は……

#0 Spot 14
player

{character:player}絶対行くから。友達として見に行けるなんて嬉しいよ、一ノ瀬くん。

#0 Spot 14

今日まで生きてきて、これほど大規模なハロウィン仮装イベントに参加したことがあっただろうか。学校のグラウンドにはありとあらゆるお化けや怪物が集まって、ものすごい人波……いや、鬼波だ。

#0 Spot 14
「忍者」

{character:“忍者”}迷える錬金術師殿、いざ拙者の火球術をご覧あれ。

#0 Spot 14
player

{character:player}すまぬ、もう投票先は決まっておるでな……。

#0 Spot 14
「忍者」

{character:“忍者”}無念……。もし気が変わることがあれば、拙者はいつまでもここで待っておる。

#0 Spot 14

会場に入ってから似たような会話が四回くらいあった気がする。ため息をひとつ吐いて、それから頑張って一ノ瀬くんを探し出した。

#0 Spot 14

グランドを一周したところて、やっとその鮮やかな赤を捉えられた。一ノ瀬くんは、今四人の生徒に囲まれて記念写真を撮っているようだ。

#0 Spot 14
七海礼奈

{character:七海礼奈}あれは……一ノ瀬くん?フランケンシュタインって、吸血鬼の群れの中にいると相当目立つね。

#0 Spot 14
player

{character:player}礼奈ちゃんがあの店を教えてくれたおかげだよ。あの店員は確かにちょっと意地悪だったけど。

#0 Spot 14
七海礼奈

{character:七海礼奈}あはは。力になれてよかった。でも、一ノ瀬くんは確か優勝を狙ってるけど、今は「エルフの王子」に大差で負けちゃってるね……

#0 Spot 14
player

{character:player}一ノ瀬くんなら、もうそんなことどうでも良くなってるはずだよ。

#0 Spot 14
七海礼奈

{character:七海礼奈}ん?

#0 Spot 14

言ったそばから、怪物くんはにっこり笑って今の喜びを見せつけて来た。記念撮影の人たちが行った後で、彼は自分の票を花びらの絨毯の上で踊るエルフの王子に入れた。

#0 Spot 14

優勝が出来なくても、今この瞬間が楽しければそれでいい。

#0 Spot 14

「楽しさ」は、祝日を過ごす上で一番大切な宝物だから。

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}パートナー……そうか!その手があった、コホコホッ……。

#0 Spot 15
player

{character:player}一旦落ち着こう、ね?

#0 Spot 15
店員

{character:店员}なるほど〜。

#0 Spot 15
player

{character:player}店員さんも突然わかったような素振りしないでくれます!?

#0 Spot 15
店員

{character:店员}失礼しました。でもお客さまのおかげで、何がこの衣装に欠けているのかわかりましたよ。

#0 Spot 15
player

{character:七海礼奈}ん?

#0 Spot 15
店員

{character:店员}怪物であると同時に、人間の感情や思考力を持つ……そういう所が『フランケンシュタイン』の怪物の魅力。その「人」の部分を引き出せるキャラと言えば……

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}創造主であるフランケンシュタイン……、いや、「怪物」が追い求めるパートナー……!

#0 Spot 15
店員

{character:店员}イグザクトリー!お客さま、その気があればここでバイトしません?私達、気が合いすぎて怖いわ。

#0 Spot 15
player

{character:player}ブティックで科学講座を始められたくなかったらやめといた方がいいよ。

#0 Spot 15

一ノ瀬くんの言葉をもとに想像してみる。原作小説では巡り会えなかった「怪物」とそのパートナーが同じ舞台に立ったら、確かに原作にもない新鮮な美しさがあるかもしれない。

#0 Spot 15

しかし、それに従って新たな問題が出て来た。

#0 Spot 15
player

{character:player}じゃあ……パートナー役は誰がやるの?

#0 Spot 15
店員

{character:店员}え?それ聞いちゃいます?

#0 Spot 15
player

{character:player}……。

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……{var:player_nickname}さん、ボクの友人として、ボクと一緒にコンテストに参加してほしい!キミがいなければ、ボクはきっと『フランケンシュタイン』の怪物なんて選ばなかったし……ボクにとってパートナー役はキミしか考えられないよ。

#0 Spot 15
player

{character:player}でも、ほら、コスプレしてパフォーマンスとかうまくできないし……

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ボクも、本格的に演じられる自信はないけど……そもそも、原作ではいい結末にはならなかったし、ボクたちで新しい結末を作るのもいいんじゃないかな。

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}だから{var:player_nickname}さん、ボクと一緒に参加してよ。ボクの、……一番大切な友達と、ステージに立ちたいんだ!

#0 Spot 15

一ノ瀬くんは顔を上げて私の返事を待っていて、青い瞳には私の輪郭が映っている。

#0 Spot 15
player

{character:player}ま、まぁ……断る理由も別にないし、いいよ。

#0 Spot 15

この答えを待っていたかように、一ノ瀬くんは安堵の笑みを浮かべた。と同時に、店員さんが甲高い声で私たちを現実に引き戻した。

#0 Spot 15
店員

{character:店员}合計三万五千コインになりま~す!

#0 Spot 15
player

{character:player}……。

#0 Spot 15

たけぇわ!

#0 Spot 15

今日まで生きてきて、これほど大規模なハロウィン仮装イベントに参加したことがあっただろうか。学校のグラウンドにはありとあらゆるお化けや怪物が集まって、ものすごい人波……いや、鬼波だ。

#0 Spot 15

人混みと壁の間を縫うように、ゆっくりと前へ進みながら一ノ瀬くんの姿を探す。前方を歩くエルフの王子と王女が、なぜか突然花びらと共に踊り出すと、人混みが一気に散開したので、私はバランスを崩した。

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うわっ……!

#0 Spot 15

次の瞬間、私の腕は細い両腕に掴まれて、なんとか顔と地面との衝突だけは免れた。目の前にはあの見慣れた、肩に小鳥を乗せた「怪物」の姿。

#0 Spot 15
player

{character:player}一ノ瀬くん……瞬間移動とか出来るようになったの?

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}「怪物」にとっては簡単なことだよ。

#0 Spot 15

映画版にも似たような展開があったな。でもそれって創造主のフランケンシュタインと執事の初対面のことだったっけ。じゃあいっそ、全部混ぜて即席劇にしちゃおっと。

#0 Spot 15
player

{character:player}私からすれば、君はまだお世話が必要なお子様ですよ、坊ちゃん。

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そういうキミは?無人島で怪物と暮らす仕事を受けなければならないほど金に困ってるのか?

#0 Spot 15
player

{character:player}どうせ私を追い返した所で、次の人が来るでしょう。私じゃ不足?

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}怖くないの?

#0 Spot 15
player

{character:player}何が怖いっていうの?

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……ボクのパートナーになったら、ここで一生暮らすことになる。今帰ればまだ間に合う。

#0 Spot 15
player

{character:player}別荘の間取り図は見たよ。二階の部屋は私が使ってもいいよね、坊ちゃん?

#0 Spot 15

劇中のセリフをごちゃ混ぜにしながら会話していると、なぜか周りに原作ファンや派生作品のファンたちが集まってきた。投票箱用のジャックオーランタンはあっという間に投票用紙でいっぱいになり、優勝候補のドラキュラ伯爵に大差をつけた。

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホン。こんなことって……始まる前は、ボクたちの優勝確率は5%しかなかったはずなのに。

#0 Spot 15
player

{character:player}だから言ったでしょ、なんでも計算で解決できる訳じゃないって。知らない人と友達になれる確率は、何十億分の1しかないって言うし。

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}じゃあ、これから麻雀打つ時も、99%勝利するような局面でも安心できなそうだね。

#0 Spot 15
player

{character:player}しーっ。ほら集中集中。イベントはまだ終わってないよ。

#0 Spot 15
学生A

{character:学生A}見て見て!新しいステージ写真が出てるよ!

#0 Spot 15
学生B

{character:学生B}はーっ、何この写真尊い。肩の小鳥になりたい。

#0 Spot 15
学生A

{character:学生A}あの夜『フランケンシュタイン』の派生作品を何個か見たけど、執事が一人で全部背負って怪物を庇ったとこで、監督にナイフでも送りつけようかと思ったよ。

#0 Spot 15
学生B

{character:学生B}あっまたCatchatに新しい写真上がって……待って構図神すぎんか?壁紙にするわ。

#0 Spot 15

青露中学校のハロウィンコンテストから既に一週間経ってるのに、未だに話題になっているのは驚異的だ。一ノ瀬くんの『フランケンシュタイン』の怪物は、最後に一票の差で優勝を収めた。

#0 Spot 15
七海礼奈

{character:七海礼奈}これから一ヶ月くらいは、「怪物」くんの話題で持ち切りになりそうだね……。

#0 Spot 15
player

{character:player}昨日原作の円盤を買おうと思ってCDショップに行ったら、関連商品が全部売り切れになってたしね。

#0 Spot 15
七海礼奈

{character:七海礼奈}イベントも大成功だったし。そう言えば、結局特別賞品って何だったの?一ノ瀬くんに聞いても教えてくれなかったんだよ。

#0 Spot 15
player

{character:player}あー。あれね。どうやら全科目の予想問題集だったらしい。一ノ瀬くん大分へこんでたなぁ……。

#0 Spot 15
七海礼奈

{character:七海礼奈}あはは。一ノ瀬くんが欲しがってたアートブックは今日から一般販売らしいから、買ってあげるのはどう?

#0 Spot 15
player

{character:player}たぶん、もう必要ないんじゃないかな。一ノ瀬くんはもっと大事なものを手に入れたから。

#0 Spot 15
七海礼奈

{character:七海礼奈}ん?

#0 Spot 15

その夜、最終二位だったエルフの王子は、一ノ瀬くんの投票用ジャックランタンの前に来て、自分の票を一ノ瀬くんに入れた。

#0 Spot 15
「エルフの王子」

{character:“精灵王子”}俺も『フランケンシュタイン』のファンなんだ、友達になってくれるか?

#0 Spot 15
一ノ瀬空

{character:一之濑空}もちろん、いいよ!

#0 Spot 15

取り合った二つの手が友情の橋を築き上げた。一ノ瀬くんの目に煌めく光は夜空の星よりも輝いている。

#0 Spot 15

友情という「優勝賞品」よりも大事な宝物なんて、無いよね。

#0 Spot 16

選択困難症候群、それはいつも自分で何かを選ぶのが難しくて、どうしても選ばなければいけない時は焦ってしまい、どうしようもなくなる人のことを言う。

#0 Spot 16

今日の一ノ瀬くんの言動から考えて、そうなんじゃないかと思った。

#0 Spot 16
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……どうして、そう思うの?

#0 Spot 16
player

{character:player}だって今日、何回も「服のせいじゃない」って言ってたし。服のせいじゃないなら、やっぱそれなんじゃないかなって。違った?

#0 Spot 16
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホッ、いや、それは本当に違うよ。ただ……

#0 Spot 16
player

{character:player}ただ?

#0 Spot 16
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ううん……キミは、どれが一番良かったと思う?

#0 Spot 16
player

{character:player}やっぱりキョンシーが可愛かったな……あ、でも、一番似合ってたのは最初のドラキュラだったと思う。装飾品の問題も店員さんに調整してもらえるはずだし、それなら完璧じゃないかな。

#0 Spot 16
一ノ瀬空

{character:一之濑空}最初の店だね……。

#0 Spot 16

「魑魅魍魎」の話題になると、一ノ瀬くんの目にはまたあの不思議な感情が宿っていた。何だろう、一体。

#0 Spot 16
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホン、じゃあ……それにしよう。データ上でも一番だし、何よりキミの選択を信じたい。

#0 Spot 16

十分後、私達はまた「魑魅魍魎」に戻った。店員さんはピエロの仮装に変わっていたが、誰もそこには突っ込まなかった。

#0 Spot 16
店員

{character:店员}あらあら、お客様また来て下さったんですね〜!

#0 Spot 16
一ノ瀬空

{character:一之濑空}やっぱり、そのドラキュラの服を買いたい。それと、マントと装飾品の配置を調整して欲しいんだ。

#0 Spot 16
店員

{character:店员}もうお決まりですか?本当に他のものは試さなくてもよろしいですか?

#0 Spot 16
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……データによれば、最善の選択だから。

#0 Spot 16
店員

{character:店员}それでは、作業代込みで二万三千コイン頂きますね、ありがとうございます!

#0 Spot 16
一ノ瀬空

{character:一之濑空}二万と三千ちょうど……。これで、よかった……んだよね。

#0 Spot 16

一ノ瀬くんがまた微妙な表情になった。やっぱりやめた方がいいのかなとも思ったけど、一ノ瀬くんもああ言ってたんだし、データは嘘をつかないって、信じていいよね……?

#0 Spot 16

その歯がゆい感覚は、一ノ瀬くんと別れて家に帰った後も解消出来ないままだった。

#0 Spot 16
学生A

{character:学生A}見て見て!新しいステージ写真が出てるよ!

#0 Spot 16
学生B

{character:学生B}端っこにいる王女のことをじっと見つめるエルフの王子がまた素敵なんだよね〜!

#0 Spot 16
学生A

{character:学生A}あの日の夜原作を見返したんだけど、森に必死に帰って来た王子の腕の中で王女が死んじゃったシーンでもう涙止まらんかった……。

#0 Spot 16
学生B

{character:学生B}あっまたCatchatに新しい写真上がってる、いいアングルだ〜!やっぱ王子x王女って最高だよね……

#0 Spot 16

青露中学校のハロウィンコンテストから既に一週間経ったにも関わらず、未だに話題になっていてすごい。

#0 Spot 16

特に今年の優勝者は人気の吸血鬼などをあえて避け、エルフの王子と王女を選んだのが新鮮だったらしい。

#0 Spot 16

二人が花びらの絨毯の上で踊り出す演出はその日全員の目を奪った。礼奈ちゃんに誘われて見物に来た私も、当然そのうちの一人だった。

#0 Spot 16

ということは、残念なことに、一ノ瀬くんが欲しかった賞品は他の人の手に渡ったわけで。

#0 Spot 16
七海礼奈

{character:七海礼奈}あとひと月くらいは、ずっとエルフの王子の話題で持ち切りだろうな……。

#0 Spot 16
player

{character:player}昨日原作の円盤を買おうと思ってCDショップに行ったら、関連商品が全部売り切れになってたしね。

#0 Spot 16
七海礼奈

{character:七海礼奈}イベント大成功だったからね~。そう言えば、最後の投票は誰に入れたの?はぐれちゃったから聞かないままだったけど。

#0 Spot 16
player

{character:player}それはもちろん、かわいい吸血鬼くんだよ。

#0 Spot 16
七海礼奈

{character:七海礼奈}吸血鬼……そう言えば一ノ瀬くんがドラキュラ伯爵だったね。とてもかっこよかったけど……

#0 Spot 16
七海礼奈

{character:七海礼奈}ここ数年はずっと吸血鬼が優勝だったからか、みんななんだかんだ飽きてきちゃったのかもね。一ノ瀬くん、あのアートブックが欲しかったんだっけ……?あんまり落ち込まないと良いけど……。

#0 Spot 16
player

{character:player}……。

#0 Spot 16

落ち込むっていうか、結果発表の時めちゃ泣きそうだったけどね。人目が無ければその場で泣いてたかもしれない。

#0 Spot 16
player

{character:player}残念だったけど、今回の経験があれば、来年は確実に優勝できるでしょ。

#0 Spot 16
七海礼奈

{character:七海礼奈}うん。その時はまた一緒に応援に行こう!

#0 Spot 16

そう言えばそのアートブック、来週からは通常販売されるらしいから、あとで一ノ瀬くんに教えてあげよう。早く立ち直るといいな。

リアル脱出ゲーム

絆LV5で開放

Possible Endings

End4.これからもよろしく
月光の福袋 ×1
End5.そこは盲点でした
コイン ×12000

Scenario Script

Spots 6, Scenes 357, Choices 2, Endings 0

#0 Spot 1

秋の長雨が続き、日中も心地よい涼しさが感じられるようになったので、夏場はエアコンの効いた部屋に引きこもってばかりだった私も、最近はよく外出するようになった。今日は一ノ瀬くんを誘って、商店街へ散歩に来ている。

#0 Spot 1

ただし、夏の暑さという枷から解き放たれ、外へ出る人がこんなに多いとは思っていなかった。

#0 Spot 1

商店街は想像以上に混雑しており、やっとの思いで一ノ瀬くんとメインストリートから抜け出し、裏路地で一息つくことが出来た。二人して壁に手をつきながら深呼吸する。出発する前のワクワク感は、とっくにどこかへ飛んでいってしまった。

#0 Spot 1
player

{character:player}のんびり週末を過ごすつもりだったのに……。もう一度考え直せるなら、躊躇うことなく家でゴロゴロする方を選ぶわ。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}はぁ、はぁ……。今日はちょうど商店街のキャンペーンがあったから、ボクはそれでも行こうと思ってたよ。

#0 Spot 1
player

{character:player}こっちはすし詰めになりながら買い物する趣味はないよ……はぁ、せめて神社に行って麻雀でも打っとけばよかった。

#0 Spot 1

メインストリートを見渡し、最後に残された淡い希望を人の波にあっさり打ち砕かれた私は、一ノ瀬くんと裏路地の小さなカフェに入ることにした。

#0 Spot 1
player

{character:player}こんな調子だと、ここでしばらく座って、ちゃんと午後のプランを練り直す必要があるなあ。何か頼みたいものはある?

#0 Spot 1

ドリンクのメニューに目を通し、隣に並んだ少年をひじで小突いた。一ノ瀬くんは病気のせいで食べてはいけないものも多いから、注文する時は彼自身にチェックしてもらっている。

#0 Spot 1

前に並んだ人があと二組になっても、一ノ瀬は相変わらず壁に貼っているポスターに「んー」と見入っていて、注文を決める気配がまるでない。

#0 Spot 1
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{character:player}なるほど、あのリアル脱出謎解きゲームか……こんな所にまで宣伝を出しているとは。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}{var:player_nickname}さん、これ知ってるの?

#0 Spot 1
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{character:player}まあね。元々はイマーシブシアターの劇場なんだけど、最近はハロウィン前後でしか上演されないし、看板演目が人気すぎて中に入ることも難しかったよ。以前舞ちゃんとバイトで行った時、オーナーは何らかの形でハロウィン以外の時期も劇場を開けたいって言ってたけど、脱出ゲームになったのは予想外だったな。

#0 Spot 1
player

{character:player}最近はテレビとか地下鉄の看板とか、色んなところでこの脱出ゲームの宣伝を見るようになったよね。昔から密かに人気のシアターではあったし……

#0 Spot 1

路上で配られてたチラシの中にも確かに……っと、これか。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}えーと……「バタフライエフェクト」、「アンプレミアムフライデー」、「ブロークバック・ノート」、「異世界神社」、「狼男と吸血鬼の知られざる物語」……。

#0 Spot 1

一ノ瀬はチラシを受け取ると、掲載されているタイトルを一つずつ音読し始めた。

#0 Spot 1
player

{character:player}そういえばこの前ネットで口コミ見たんだけど、「異世界神社」は一飜市で最も面白い脱出ゲームとか言われてて、めっちゃ人気らしいよ。

#0 Spot 1
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{character:player}やっぱりこういうのは若者ウケがいいから、脱出ゲームガチ勢だけじゃなくて、友達を作るために行く人も少なくないって。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そう……なんだ、やっぱり面白いんだな、脱出ゲームって……。

#0 Spot 1
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{character:player}まぁ、商店街巡りはしばらく無理そうだし、いっその事今日はそっち行っちゃう?歩いて15分くらいで着くよ。

#0 Spot 1

一ノ瀬くんがリアル脱出謎解きゲームに興味津々なのは明らかだ。でも、何故かこの提案にかなり躊躇う素振りを見せている。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも……最低4人からって書いてあるよ。僕たち2人だけじゃ入れないじゃないか。

#0 Spot 1
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{character:player}それが心配なの?まぁ、気持ちは分からなくもないけど。任せて、人なら集められるから。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}集めるって……誰を?

#0 Spot 1
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{character:player}ん?私の友達とか、あと麻雀で知り合った人とか。ま、週末だし2人くらいは来られるでしょ。

#0 Spot 1

スマホを取り出し、メッセージを一括送信っと。一ノ瀬くんにも、家族や知り合いに聞いてみてとお願いした。

#0 Spot 1

でも生憎、天気のいい週末に考えることはみんな同じようで、誰も彼も既に外へ出かけているか、他の人との先約があった。

#0 Spot 1

希望が断たれた私はスマホを降ろす。一ノ瀬くんの方は、再びぼーっとしながらスマホにぶら下げている小さいルービックキューブをいじっていた。さては落ち込んでいるな。

#0 Spot 1
player

{character:player}ジョセフも佳奈ちゃんも仕事で来られないし、小鳥遊さんは店が忙しすぎて抜け出せない。石原くんは既読すらついてなかったから、副会長に怒られているのかもな……。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}姉さんも、日用品の買い出しで出かけてるって。

#0 Spot 1
player

{character:player}参ったな……私達の脱出ゲームが、始まる前から終わっていたとは。

#0 Spot 1

誘うあてが一人もいなくなった私は、しかしこのままじゃ帰れないと思い、一ノ瀬くんに最後の手段を提案した。

#0 Spot 1
player

{character:player}最後に一つだけ、一緒に行ってくれる人を見つけられる方法があるよ、一ノ瀬くん!

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}え、何……?

#0 Spot 1
一ノ瀬くんにクラスメイトに連絡するようお願いする。 → Spot 2
シアターの前で参加者を募る。 → Spot 3
#0 Spot 2
player

{character:player}さっきお姉さんにしか連絡してなかったでしょ、クラスメイトにも連絡してみたらどうかな?中学生なんだし、脱出ゲームに興味ある人も結構いるでしょ。

#0 Spot 2

一ノ瀬くんにはその発想が全く無かったらしく、虚を突かれた様子でキューブをぐっと握りしめた。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ゴホッゴホッ、で、でも僕、みんなのことまだよく知らないっていうか…

#0 Spot 2
player

{character:player}え?クラス替えから結構時間経ってるはずなのに……?何かあったの?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}実はボク……えっと、今学期はじめの二週間を病気で休んだら、クラスではもう友達グループが出来てて…。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}学校の行事はクラスのみんなと一緒にやったりするけど、僕が時々休むせいで、僕が担当してることも他の人を頼らないといけないし……みんなに迷惑をかけてる自覚はあるんだ……。

#0 Spot 2
player

{character:player}んー……。で、自分は迷惑なやつだからと思って、みんなとも距離取ってる感じ?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホ、そこまでじゃないけど……とにかく、学校のみんなと一緒に過ごした時間がまだ長くないっていうか……なんなら、今学期新しく来た先生は僕の名前すら覚えてなくて……。

#0 Spot 2

一ノ瀬くんの声がだんだんと小さくなっていく。学校での人間関係がうまく行ってないことを気にしてるんだな。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}だから……その……そんな僕がいきなり脱出ゲームに誘っても、みんな戸惑うだろうなって……。

#0 Spot 2
player

{character:player}でも、一ノ瀬くんはみんなと友達になりたいんでしょ。いつまでも待ってるだけじゃ、こういうチャンスは滅多に巡って来ないよ。もしかしたらクラスのみんなも君と仲良くなるきっかけを探してるかもしれないし、とりあえず誘ってみたら?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……

#0 Spot 2

一ノ瀬くんはしぶしぶスマホを取り出して、真剣な顔つきでメッセージを入力し始めた。そして震える手でクラスのチャットグループに送信した。一ノ瀬くんは努めて平静を装っているが、ぐぐっと小刻みに震える眉の動きで、すごく緊張しているのがバレバレだ。

#0 Spot 2

目の前のミルクティーからふわりと香りが立ち上り、窓から入ってきた日差しのように温かい。そんな中、返信を待っている一ノ瀬くんは下に視線を向けたまま、寒そうに小刻みに震えている。

#0 Spot 2

ブブッ。

#0 Spot 2

どうやって一ノ瀬くんを慰めようを考えていると、一ノ瀬くんのスマホの通知が鳴った。一ノ瀬くんはロックを解除して内容を確認し、驚きを含んだ笑顔で私に画面を見せた。

#0 Spot 2

【グループ】江山(ガチャ爆死なう):脱出ゲーム!めっちゃ行きたいけど持ち合わせが…来週だったら絶対行ける!来週また行こ! 【グループ】涼宮【KR-976】:ログ記録。午後2時23分、キーワード「リアル脱出謎解きゲーム」を検出。

#0 Spot 2

【グループ】ナタリー:あの新しいやつ?隣のパンケーキ屋がすっごくおいしいらしいね! 【グループ】江山(ガチャ爆死なう):やめろ、その話は俺に効く 【グループ】江山(ガチャ爆死なう):てか今パンケーキの話じゃないが!?

#0 Spot 2

【グループ】茂武:はーいはいはい!ちょうどアーミン…あ、明のことな。あいつと行こうとしてたとこ!俺ら入れたらちょうど4人じゃね? 【グループ】茂武:@一ノ瀬空 秀才クン!俺たちと行こーよーー! 【グループ】明:モブ、テンション抑えて

#0 Spot 2

通知が鳴り続ける。もう少しで件数が99+まで溜まりそうな勢いだった。

#0 Spot 2
player

{character:player}なにぼーっとしてんの、早く返事しなきゃ!

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホ……!う、うん!

#0 Spot 2

一ノ瀬くんは指を素早く動かし、クラスメイトとチャットを始めた。具体的な内容はわからないが、彼の表情からしていい感じだとわかる。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}茂武くん達が、今映画見終わったとこで、こっちに向かってるって。三十分くらいかかるから、もう少しここで待とう。

#0 Spot 2
player

{character:player}オッケー!丁度良く座ってられるし、脱出ゲームのために体力温存しとこう。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん!

#0 Spot 2
player

{character:player}お、注文の列が短くなってきたね。一ノ瀬くんも何か注文したら?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そうする!

#0 Spot 2
player

{character:player}ドリンクメニュー見てみて。スイーツも色々あるな……ティラミスとパンケーキ、どっちがいい?

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}どっちでもいい!!

#0 Spot 2

大好きな脱出ゲームだからか、クラスメイトと友達になれるチャンスに恵まれたせいか。

#0 Spot 2

こんなにもハイテンションな一ノ瀬くんは始めてみたかもしれない。

#0 Spot 2

約束の時間の約十分前に、一ノ瀬くんとシアターの前に到着した。スタッフとどの脱出ゲームの公演に参加するか決めて、入口前の待機ロビーで一ノ瀬くんのクラスメイトを待つことにした。

#0 Spot 2

間もなく、一ノ瀬くんと同じ制服の男子生徒二人の姿が目に入った。青露中学校の生徒はみんな制服を着て外出するのかな……。わかりやすいからこっちは助かるけどね。

#0 Spot 2
player

{character:player}一ノ瀬くん、お友達が来たよ。

#0 Spot 2
茂武

{character:路仁}お、秀才クンじゃーん!待たせてごめんな!

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ううん。えっと、こちらは{var:player_nickname}さん。今日一緒に脱出ゲームに参加してくれる。それから、こちらは茂武くんで、こちらは明くん。二人ともボクのクラスメイトだよ。

#0 Spot 2
player

{character:player}どうも~。

#0 Spot 2
明

{character:阿明}ど、ども……

#0 Spot 2
茂武

{character:路仁}おっ、こちらが噂の友人さん……!よろしくお願いします!てかさ、俺脱出ゲーム初めてなんだよな。下手でも笑わないで欲しいんだけど……。

#0 Spot 2
player

{character:player}私たちも初めてだし、助け合っていこう。

#0 Spot 2

あいさつを交わし終えたら、何故か場がスッと静かになった。少年たちは気まずそうに笑っていて、なんとなく動きもぎこちない。

#0 Spot 2

クラスメイトとあまり交流が出来てないとは聞いてたけど、ここまでとは思わなかった。これじゃまるで初対面みたいじゃないか。

#0 Spot 2
スタッフ

{character:店员}お客様、もうお揃いでしょうか。でしたら「異世界神社」のご用意が出来ましたので、こちらへどうぞ。

#0 Spot 2
茂武

{character:路仁}はーい、揃ってまーす!さっそく始めようぜ!

#0 Spot 2
スタッフ

{character:店员}はい。それでは、お荷物はこちらに預けて頂き、目隠しをしてください。まもなく異世界への旅が始まります。今回の旅は全7部屋、今までの最速記録は46分34秒です。

#0 Spot 2

スタッフさんから目隠しを受け取り、一瞬嫌な予感がした私はスタッフさんに聞いてみた。

#0 Spot 2
player

{character:player}これ、着けなきゃダメ?

#0 Spot 2
スタッフ

{character:店员}ゲーム演出を存分に体験していただくために、今はぜひご着用ください。

#0 Spot 2

無情にも光が奪われ、私はスタッフさんの誘導でひたすら前進した。茂武が誇張抜きで泣きながらついて来る声を聞いて、私もスタッフさんも思わず笑った。

#0 Spot 2
茂武

{character:路仁}アーミン、アーミンどこ?うわぁああーっ!誰か喋ってー!助けてー!!

#0 Spot 2
明

{character:阿明}……モブ、ここ。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}{var:player_nickname}さん……そこにいる?

#0 Spot 2
player

{character:player}いるよ、大丈夫。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん……。

#0 Spot 3
player

{character:player}いっその事、シアターに着いてから仲間を探すのはどうかな。スタッフさんに他の誰かと組ませてもらうのも手だと思うよ。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}し、知らない人と組むんだよね……。

#0 Spot 3
player

{character:player}いいじゃん?麻雀仲間が増えるいいチャンスだと思うよ。

#0 Spot 3

一ノ瀬くんは嫌がってるという感じでも無くて、ただ少し躊躇ってから私の提案を受け入れた。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}確かに、試す価値はあると思う。早速行ってみる?

#0 Spot 3
player

{character:player}今は道も混んでるし、もうちょっと休憩してから行こう。このカフェ結構評判いいし、一ノ瀬くんもなんか注文したら?

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}キミと同じやつがいい。

#0 Spot 3
player

{character:player}じゃ座って待ってて、注文してくる。

#0 Spot 3

それから30分後、私と一ノ瀬くんはシアターの前に到着した。受付前はチラシを持った人たちでごった返しているけど、スタッフさんにどんどん捌かれていく。

#0 Spot 3

一ノ瀬くんは、スタッフさんに、自分たち二人しかいないので、他の誰かと一緒に参加したいと伝えた。

#0 Spot 3
スタッフ

{character:店员}本日は沢山のお客様にご来場頂いておりますので、お客様とご一緒出来る方はすぐに見つかるかと。ですので、先に本日参加される公演を決めて頂ければと思います。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}わかりました、じゃあ、この「異世界神社」を……。

#0 Spot 3
スタッフ

{character:店员}かしこまりました。では、代表者の方はあちらのカウンターでお手続きをお願いしたいのですが……

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ボクが行きます。

#0 Spot 3
スタッフ

{character:店员}では、こちらへどうぞ。

#0 Spot 3

スタッフさんは営業スマイルのまま一ノ瀬くんを向こうのカウンターへ案内していった。その場に残された私は目の前にあるお客様ノートを開き、なにか面白いことが書かれていないかとパラパラページをめくる。

#0 Spot 3

ノートに夢中になっていると、にぎわう雑踏から少し気になる会話がチラッと聞こえてきた。

#0 Spot 3
???A

{character:???A}おい、さっきのって確かあの秀才クンだよな……あいつ図書館以外の所にも行くんだな。

#0 Spot 3
???B

{character:???B}他に友達も一緒みたいだった。よく見えなかったけど。

#0 Spot 3
???A

{character:???A}あっちも二人で一番人気の公演に行くって言ってたけど、どうかなー?誘ってみる?

#0 Spot 3
???B

{character:???B}ん……でも、急に声かけて、一ノ瀬君困らない……?

#0 Spot 3
???A

{character:???A}それは……うぅ……この前さ、やっと勇気出して秀才クンに数学教えてもらおうと声かけたんだけど、他のやつに呼ばれてフラれちまってさ、それ以降話すきっかけなかったんだよな……。

#0 Spot 3
???B

{character:???B}……やっぱりやめとく?

#0 Spot 3
???A

{character:???A}でも、もったいなくね?ただでさえ学校でもなかなか会えないのに、外で会えたんだぞ?

#0 Spot 3

少年らしい声を辿って辺りをうかがうと、近くに制服を着た男子生徒2人組を見つけた。青露中学校の生徒って、みんな制服で出かけるのかな……。

#0 Spot 3

一ノ瀬くんと同じ制服、秀才クン呼び、友達がいることに驚く……この子たち、さては一ノ瀬くんのことを言ってるな。

#0 Spot 3

その推測を証明するかのように、一ノ瀬くんが戻ってくると、二人組がこっちに近づいてきた。

#0 Spot 3
???A

{character:???A}よ、よお!秀才クン!

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}え?茂武くん、明くん。こんにちは。

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}ここで会うなんてな。あー、ゴホン、さっきスタッフさんから、秀才クンたち二人が一緒に参加する人を募集してるって聞いたんだけど、俺らも二人しかいなくてさ、良ければ一緒にどーかな?

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}え、いいの?

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}も、もちろん嫌ならいーから、忘れて……。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ボクはぜひ一緒に参加したいけど、{var:player_nickname}さんの意見も聞かないと……。

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}いいの?

#0 Spot 3

クラスメイトの突然の誘いに対して、一ノ瀬くんは特に驚かなかった。むしろ相手の方が、一ノ瀬くんの快諾に驚いたようだ。

#0 Spot 3
player

{character:player}私たちは「異世界神社」をやりたいんだけど、君たちもそれでよければ一緒に行こう。

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}もちろんオッケー!でも俺ら、脱出ゲームはこれが初めてだから、よろしく!

#0 Spot 3
player

{character:player}私たちも初めて、でも謎解きは一ノ瀬くんもいるしなんとかなるでしょ。

#0 Spot 3
スタッフ

{character:店员}お客様、もうお揃いでしょうか。でしたら、お荷物はこちらへどうぞ~。

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}うわぁーー!どっから出てきたし!

#0 Spot 3

茂武という名の少年は元気がよく、リアクションもいちいち大きいから、四人グループの雰囲気はずっと明るいままだった。

#0 Spot 3

でも一ノ瀬くんは、あんまり二人と親しそうに話さないし、どう見ても日々を共に過ごすクラスメイトの感じではない。その理由を探るべく、クラスメイトの二人に話を聞いてみた。

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}まさかあの秀才クンが、本当に俺の誘いに乗ってくれるとはなー。

#0 Spot 3
player

{character:player}断られるつもりで誘ったの?

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}だ、だってさ……あいつ、あんま学校にも来ないし、来ても数学オリンピックの準備とかで忙しそうで、俺みたいのとはあんまり話さなくってさ。正直脱出ゲームに興味あるのも知らなかったし、もっとこう……宇宙ロケットとか、未解決の謎とかそーゆーのが好きなんだろうな、と思ってた。

#0 Spot 3
player

{character:player}はは、一ノ瀬くんはあくまで君たちと同じ中学生だよ。科学オバケみたいに言っちゃって。

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}そ、それは、もちろんそういうイメージってだけだよ。

#0 Spot 3

一ノ瀬くんの病気のせいで、クラスメイトの間でそんな誤解をされてるとは思わなかった。

#0 Spot 3
スタッフ

{character:店员}では皆様、目隠しをしてください。まもなく異世界への旅が始まります。今回の旅は全7部屋、今までの最速記録は46分34秒です。

#0 Spot 3

スタッフさんから目隠しを受け取り、一瞬嫌な予感がした私はスタッフさんに聞いてみた。

#0 Spot 3
player

{character:player}これ、着けなきゃダメ?

#0 Spot 3
スタッフ

{character:店员}ゲーム演出を存分に体験していただくために、今はぜひご着用ください。

#0 Spot 3

無情にも光が奪われ、私はスタッフさんの誘導でひたすら前進した。茂武くんが誇張抜きで泣きながらついて来る声を聞いて、私もスタッフさんも思わず笑った。

#0 Spot 3
茂武

{character:路仁}アーミン、アーミンどこ?うわぁああーっ!誰か喋ってー!助けてー!!

#0 Spot 3
明

{character:阿明}……モブ、ここ。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}{var:player_nickname}さん……そこにいる?

#0 Spot 3
player

{character:player}いるよ、大丈夫。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん……。

#0 Spot 4

スタッフさんの足音が遠のいていき、シャキーンという効果音が私たちにゲームの始まりを告げた。

#0 Spot 4

目隠しを外すと、奪われた視界が戻ってくる。どうやら、私達は和室の縁側に立っているようだ。木製の屋根と床、庭には池と橋、その綺麗な景色は想像していた脱出ゲームとはまったく違うものだ。

#0 Spot 4
player

{character:player}なんだここ……庭の配置も、部屋の装飾も、魂天神社の客室と全く同じじゃないか。なんなら匂いまで再現されてるし、デザイナーさんすごくこだわって作ったんだろうな。

#0 Spot 4
player

{character:player}今この場に一姫とワン次郎が出てきても不思議じゃないくらいだ。

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ここのオーナーは、以前インタビューで、公演ごとに実際にロケハンしてから作ってるって言ってたよ。参加者に限りなくリアルな体験をして貰うために、大金と長い時間を費やしたって。

#0 Spot 4
player

{character:player}以前のインタビューって、一ノ瀬くんは前からここのこと知ってたの?

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}いや、さっきここに関するニュースを調べただけだよ。そういう情報も、クリアするために使えるんじゃないかと思って。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}なあなあ、これっていわゆる嵐の前の静けさってやつ?俺たちが油断したタイミングで、邪神とか闇の巫女さんとか出てこない?

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}この「異世界神社」は謎解き寄りの公演だから、そういうのはあんまり出てこないと思うよ。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}そ、それなら良かった。じゃあ何すればいい?とりあえず手がかりでも探すか?

#0 Spot 4
player

{character:player}怖い要素がないって聞いた途端に元気になったな。

#0 Spot 4
明

{character:阿明}……それは。

#0 Spot 4
player

{character:player}ん?どしたの?

#0 Spot 4

三人がアーミンこと明くんに目を向けると、明くんは言いにくそうに少し躊躇ってから話を続けた。

#0 Spot 4
明

{character:阿明}……それは、モブが怖がりだから。暗いところも、高いところも、水辺もおばけも苦手……。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}あのさ……ちょっとくらいメンツを立ててくれよ……。

#0 Spot 4

美しい景色が少年たちの緊張を解いたのか、一ノ瀬くんもほのぼのとした空気の中で、謎解きのことも忘れて雑談に加わった。

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}ふぉふぉふぉ、皆のもの、こんにちは。わしは神社の守護者と申す者だ。「天の声」と呼んでもよいぞ。さっそくだが、よい知らせと悪い知らせがある。どちらから聞くかの?

#0 Spot 4

歪な声がラジオから室内に響き渡り、雑談をぶった切った。一ノ瀬くんが私たちの代表として、声に答えることになった。

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}じゃあ、悪い知らせから聞かせて。

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}ふぉっふぉっ、悪い知らせじゃな。悪い知らせ、行くぞい!

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}神社を邪悪な暗黒の力から守るため、神主は神社全体をこのスクエアワールドに転送したのじゃが、この世界もすでに暗黒の力に蝕まれ、邪悪な魔神が蘇ろうとしておる。お主らはもうすぐ、魔神の生贄になるのじゃ。

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}じゃあ、よい知らせは?

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}ふぉふぉ、よい知らせじゃな。神主はこんな事もあろうかと、神社に光の導きを残した。その導きに沿って最後の部屋に進み、転送の魔法陣を起動すれば元の世界に戻れるぞ。

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}魔神が蘇るまでに魔法陣を起動出来なかったら……ふぉふぉふぉふぉ……。

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}その神主が残した導きって、一体……?

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}いきなり核心に触れるとは、小僧、なかなかやるのう。……じゃが、わしの答えは……知らん!紙切れかも知れぬし、絵巻きかも知れぬ。神主の考えなぞ、わしに知る由もないのじゃ。

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}じゃが、わしは善き守護者じゃからな、皆にありがた~い手助けをしてやろう。謎解きに詰まった時は、わしがヒントをやるぞ。もちろん、それ相応の「対価」は払ってもらうがな。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}魔神のいけにえ……!?ホラー要素ないってさっき言ったよね??

#0 Spot 4
明

{character:阿明}そういう設定ってだけだから……。

#0 Spot 4
player

{character:player}さっそく、手かがりを探そうか。この部屋大きいから、結構時間かかるかもね。

#0 Spot 4

中は十分に明るい。探索にもってこいの環境だ。茂武くんと明くんは二人で目の前の地面をチェックし、一ノ瀬くんは一人で探索を頑張っている。

#0 Spot 4
player

{character:player}一ノ瀬くん、何か私に出来ることある?

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}部屋の出口がパスワードでロックされてるから、{var:player_nickname}さんはどこかに数字が書かれてないか探して。

#0 Spot 4

ここが魂天神社を再現しているとしたら、この部屋に関しては私が四人の中で一番詳しいはずだ。だが、行動し始めるやいなや、天の声からのお知らせが響いた。

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}ばばばばーん、おめでとう。最初の謎をこんなにも早く解くとは、かくも聡明な頭脳、さぞ魔神様もおよろこ……いや、早く元の世界に戻れるじゃろうて。

#0 Spot 4

早くね?と、お知らせを聞いて素直に感じた。どうやら一ノ瀬くんがパスワードを見つけてロックを解除したらしい。最初の部屋でそこまで難しくなかったとしても、一ノ瀬くんってば想像以上だ。

#0 Spot 4
player

{character:player}あはは!やっぱ一ノ瀬くんがいれば楽勝だね。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}え、なに、もう終わり?早すぎだろ……脱出ゲームってこんなもんなのか?

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:路仁}いいの?

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}あ、いや、えっと、もっとこう……罠とか、隠し要素とかあったりするんじゃないかと……まぁいいや、次行こ次!

#0 Spot 4
明

{character:阿明}モブ……気をつけて。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}え?何を?

#0 Spot 4
player

{character:player}罠に気をつけてねってことでしょ。罠を踏んだら魔神に捕まるぞ~。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}う、うそだろ……そんなんあんのか……。なぁ、アーミン、俺を助けてくれよな……!

#0 Spot 4
明

{character:一之濑空}……

#0 Spot 4

一方一ノ瀬くんは、謎よりもどうすれば二人の会話に加われるかを一生懸命考えているようだ。

#0 Spot 4

第二の部屋は、さっきと違って、空間の輪郭がギリギリわかるような暗さになっている。何も置かれていないこの部屋は、広すぎて不気味な感じだ。

#0 Spot 4

暗くてお互いを見失いそうなので、私たちは集まって部屋を探索することにした。私は壁を伝って前方へ進み、壁と床に何か手がかりがないか必死に探し始めた。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}み、みんな!こっちになんかの仕掛けがあるっぽいぞ!

#0 Spot 4

茂武くんは一ノ瀬くんと明くんを両脇に置いている。仲間に挟まることで自分の怖さを半減する作戦だ。そのため、彼が探したところは一ノ瀬くんも一度見たことになる。緻密さを持つ一ノ瀬くんなら、そういうのがあったら見逃したりしないはずだ。

#0 Spot 4

茂武くんが仕掛けのボタンをぽちっと押すと、部屋の壁が、ゴゴゴという重い音とともに左右に開き、隠し扉が現れた。扉の奥は細長い廊下が続いており、暗さと不気味な効果音も相まって恐怖感が増し増しだ。

#0 Spot 4
守護者

{character:守护者}お主ら、こんなに早く隠し部屋を見つけるとは、さぞ元の世界へ戻りたい気持ちが強いのじゃろう。じゃが、二つの部屋の謎を同時に攻略せんと、隠された鍵は入手出来ぬ。二組に分かれて進むのじゃ。無事を祈るぞ……ふぉふぉふぉ……。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}うわぁああ!びっくりしたー!つかなんだよ「無事を祈る」って!攻略が失敗したら魔神に捕らわれちまうのか……。

#0 Spot 4
明

{character:阿明}……設定に入り込みすぎ。

#0 Spot 4

まぁ、設定はどうあれ、ここは二手に分かれて、隠された鍵を入手するのが目的らしい。グループ分けをどうするかはクリア率に大きく影響するから、ここは一ノ瀬くんと組みたいけど……一ノ瀬くんにクラスメイトと交流する時間をあげたいし、あえて分かれるのもありだよな……。

#0 Spot 4
茂武

{character:路仁}ふ、二組に分かれる必要があるらしいぞ?どうする……?

#0 Spot 4
一ノ瀬くんと組む。 → Spot 5
じゃんけんでチームを分ける。 → Spot 6
#0 Spot 5
player

{character:player}じゃあ、今立ってる位置で分けようか。私と一ノ瀬くんは左側にいくから、こっちは二人に任せた。どんな謎が待っているのかはわからないけど、お互い頑張ろう。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}お、おー!アーミン、守ってくれるって信じてるからな、行こうぜ!

#0 Spot 5
明

{character:阿明}あ、ウン。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}アーミン?守ってくれるよな?な?

#0 Spot 5
明

{character:阿明}……察して。

#0 Spot 5

二人が右の通路に進むのを見届けて、私たちも左側の扉を開けて廊下に出た。曲がりくねった廊下を壁伝いに進むと、目的地っぽい空間に出た。

#0 Spot 5

『不思議の国のアリス』版雀卓とも言うべき空間だ。床には麻雀卓の模様が貼られ、人間くらいのサイズの大きな麻雀牌が部屋中に散乱している。

#0 Spot 5
守護者

{character:守护者}ふぉっふぉっふぉ、憐れな生贄どもよ、ここのルールを教えるぞ~い。最後の会話になるかもしれんからの、ちゃ~んと聞くのじゃ。お主らが今から探す鍵は、この136枚の牌の中にはめ込んである。

#0 Spot 5
player

{character:player}一枚一枚探すとしたら時間がかかりすぎるな……まだルールがあるんでしょ?

#0 Spot 5
守護者

{character:守护者}そのと~り。凡人にしては頭が回るようじゃの。お二人さんの頭上にクイズが書かれておる。正解すれば、目的の麻雀牌を見つけられるぞ。

#0 Spot 5

顔を上げると、確かに天井に歪な文字でクイズらしき文字が書かれている。

#0 Spot 5
player

{character:player}一ノ瀬くんの得意な推理問題だ。よかった、これなら勝てる。

#0 Spot 5

でも一ノ瀬くんはそれを見もせず、その場で髪をいじっている。

#0 Spot 5
player

{character:player}どうしたの、どこか具合悪い?

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ううん、このところ体調はそこまで悪くないから、心配しなくて大丈夫。

#0 Spot 5
player

{character:player}じゃ、何を悩んでるの?さっきの部屋も実はとっくにボタンを見つけてたでしょ、どうして隠したりしたの?

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}だって、みんなと仲良くしたいから……。

#0 Spot 5
player

{character:player}え、っと?一ノ瀬さん?出来れば私にもわかるように説明して欲しいんですが……。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ほら、みんなにより達成感を感じてもらった方が、より楽しくなるでしょ。そうなれば、ボクもみんなと仲良く出来る確率が上がる。もし最初みたいに一瞬で謎を解いちゃったら、そういう楽しさが無くなっちゃうかなって……

#0 Spot 5

一ノ瀬くんはため息をついて、やるせなさそうに眉をひそめている。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}最初の部屋でやらかしたから、仲良く出来る確率が下がったみたいだ……。せめてルービックキューブでも持って来てたら、みんなに見せて楽しんでもらえたんだけど……。

#0 Spot 5
player

{character:player}一ノ瀬くん、そういうとこだぞ。誰かに合わせてばかりじゃ、友達は出来ないよ。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}どういうこと……?

#0 Spot 5
player

{character:player}みんなはルービックキューブが好きなわけじゃなくて、それを出来る君が好きなんだ。だけど、一ノ瀬くんの得意なことはまだたくさんあるよ。数学もすごいし、本をいっぱい読んでるし、物知りだし。

#0 Spot 5
player

{character:player}それは全部一ノ瀬くんの長所だよ。その長所にみんなが惹かれるんだ、私もその一人だけどね。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そう、なのかな……?

#0 Spot 5
player

{character:player}そうに決まってるよ!友達作りって、そんな複雑なことじゃないはず。

#0 Spot 5

普段の一ノ瀬くんでいればいいんだ。数学オリンピックの問題を解く時の自信満々な姿や、コーヒーのことを研究してる時の真剣な表情、科学の話になるとテンションが上がる可愛らしさなんてのも一ノ瀬くんにはある。

#0 Spot 5

そんな一ノ瀬くんと友達になるのを拒む人なんて、どこにいるんだって話よ。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}いや、違うよ。

#0 Spot 5
player

{character:player}何が?

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ボクたちは千月神社の雀荘で初めて出会ったよね、キミの同卓の人が用事で帰るからって、ボクが代わりに座ったんだ。ボクに惹かれたって言ったけど、その時はボクがキミに惹かれたんた。キミが麻雀を打っている時のキラキラした姿に。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも、{var:player_nickname}さん、ありがとう。おかげでどうすればいいかわかった。

#0 Spot 5

一ノ瀬くんは顔を上げて、天井のクイズを見た。その表情にもう迷いはない。二人で話が出来てよかったと、この組分けに感謝した。

#0 Spot 5

そしてクイズはその後一瞬で解けて、私が力を尽くして正解の麻雀牌をひっくり返し、鍵を手に入れた。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}秀才クーン、これから何すりゃいいー?

#0 Spot 5
明

{character:阿明}一ノ瀬君、探してたの、これ?

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}秀才クン、秀才クンてば!こっちだこっち!

#0 Spot 5
明

{character:阿明}い、一ノ瀬君、これ……

#0 Spot 5

その後、一ノ瀬くんはチームのリーダーとなって、全力で謎を解き初めた。彼の力のお陰で、私たちは30分くらいで最後の部屋に辿り着いた。

#0 Spot 5

最後の部屋は、壁に古びた絵画と蜘蛛の巣がかかり、壊れかけのソファーと本棚が部屋中に配置されている。そして地面の中央には欠けた魔法陣が描かれている。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}どう見ても罠だけど、この魔法陣を完成させないとゴールには行けなそう。早速だけど、茂武くん、明くんと一緒にソファーと絵画を調べて。ボクは{var:player_nickname}さんと本棚を見てみる。頑張れば記録更新が狙えるかも。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}おっしゃ!

#0 Spot 5

最後の部屋はこれまでよりも難しいのが、この手の脱出ゲームの定番だ。細部までよく見るようにして、本棚に入っているすべてのものを調べていく。

#0 Spot 5

そういう心理を利用したのか、謎クリエイターは本棚に罠を仕掛けたらしい。カチッと音が鳴って、部屋の両側の壁が中心に迫って来た。

#0 Spot 5
守護者

{character:守护者}ふぉっふぉっふぉ~!隠しステージに突入じゃ~!いや~、やはりお主らはラッキーじゃな~!10分以内に魔法陣を起動しないと潰されるぞ!頑張れ頑張れ~!

#0 Spot 5

自称「守護者」は、今までと違って感情のこもった声で話した。何がラッキーだ、こんな罠があるなんて聞いてないぞ!

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}何だと~!?ど、どーしよ秀才クン!助けてー!

#0 Spot 5

ゆっくりだが確実に近づいてくる壁は迫力満点で、私まで緊張して来た。しかし4人の中で唯一、一ノ瀬くんは冷静を保っている。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}引き続き、さっきの役割分担で手がかりを探そう。魔法陣を完成させないと何も始まらないから。

#0 Spot 5
明

{character:阿明}ソファーの下、パスワードでロックされてる箱があった。

#0 Spot 5
player

{character:player}あとこれ、「パスワードが欲しければ悪魔の心音を聞け」と書いてある紙切れもあったよ。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}悪魔の心音……そうか、本棚にある、心臓に関わる本の数だよ!

#0 Spot 5

一ノ瀬くんはパスワードを入力し、ロックが無事に解除された。中には欠けている魔法陣の模様が入っていた。一ノ瀬くんは、私と一緒に地面の魔法陣を完成させた。

#0 Spot 5
守護者

{character:守护者}ぐぬぬぬぬ、本当に完成させるとは……おぉ……生贄に逃げられたなんて知れたら、魔神様はどれだけお怒りになることやら……狡猾な凡人ども、おめっとさーん。

#0 Spot 5

その瞬間、出口の扉が開かれた。スタッフさんが営業スマイルで私たちを迎え、受付前まで案内してくれた。こういう店で客の体に危害を加える訳ないとわかってるつもりでも、壁に潰されないかと本気で心配した私からしたら、今吸ってるこの外の空気は本当にうまい。

#0 Spot 5

その仕掛けで失神した茂武くんは、部屋から出ても何が起きたのか分かっていない様子だった。でも記録を更新したと知った途端、一ノ瀬くんと明くんの肩を抱えて大喜びした。

#0 Spot 5

あいにく、一ノ瀬くんはそういうスキンシップが苦手なようで、何とか茂武くんの手から逃れようとしたが、逆に肩に加わる力が強まった。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}助かったぞ!やったー!

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}助かった、ではないでしょ。ゲームをクリアしただけだよ。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}今日からお前は秀才クンじゃなくて、命の恩人だ!俺の崇拝の念を受けとってくれー!

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホ……それは言い過ぎ……。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}はぁー。優等生との差を身をもって知ったわ。今度また一緒に来ようぜ、いいよな?

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}いいよ。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}じゃあさ、脱出ゲーム以外のとこにも一緒に行かねーか?ゲーセンとか、あとお前が大好きな麻雀とか!

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}もちろんいいよ。電話かメッセージでも入れてくれれば。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}やったー!じゃあ、俺たちはもう友達だよな!ずっと友達になりたかったんだ!

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん、茂武くんさえよければ。

#0 Spot 5

と、一ノ瀬くんはやっとの思いで腕の中から脱出し、彼の目を見て真剣に言った。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}いい!いいに決まってる!あとアーミンもな、俺たちずっと友達だよな!

#0 Spot 5
明

{character:阿明}……モブ、静かに。みんな見てる。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}友達なんだし、空って呼んでもいいよな?へへ。そしたら空、明日またここに来ないか?他の公演もあるし、今度こそ俺頑張るからさ!

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}それは、出来ない。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}いいの?

#0 Spot 5

一ノ瀬くんは私の隣に来て、年相応の笑顔で私を見てこう言った。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}明日は{var:player_nickname}さんと神社で麻雀する予定なんだ。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}じゃあ俺も行……

#0 Spot 5
明

{character:阿明}いや、モブはだめ。こないだ出された宿題まだ終わってない。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}うわぁ~!それ今一番思い出したくなかったやつ……

#0 Spot 5
スタッフ

{character:店员}盛り上がっているところ恐れ入りますが、お客様のお荷物です。

#0 Spot 5

スタッフさんが荷物が入った箱を運んで来た。一ノ瀬くんはスマホを受け取ると、ぶら下げた小さなルービックキューブをいじり、一瞬で六面を揃えた。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}いや……やっぱりはえーわ。

#0 Spot 5

最初の友達を作った、一ノ瀬くんの得意技だ。彼は得意げに微笑んで、それをポケットにしまった。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}今度教えてあげる。

#0 Spot 5
茂武

{character:路仁}やったー!あと知恵の輪とかも教えてくれよ!

#0 Spot 5
明

{character:阿明}僕にも、教えて……。

#0 Spot 5

少年たちの賑やかな会話が続く。一ノ瀬くんはルービックキューブを大事そうにポケットに入れたけど、もうキューブに頼らなくても友達を作れるようになるだろうな。

#0 Spot 5

あ、そうだ。今二人も麻雀友達が増えたんだし、今から麻雀の練習でもしよっか!

#0 Spot 6
player

{character:player}じゃんけんでチームを分けるのは?

#0 Spot 6

もっとクラスメイトと一緒に過ごす時間を作ってあげようと考え、ここはランダムな方法でチームを分けるよう提案した。

#0 Spot 6

少年三人はみんな戸惑ってたけど、渋々じゃんけんをした。結果、私は明くんと、一ノ瀬くんは元気な茂武くんとチームになった。

#0 Spot 6

チームになったものの、明くんと私は思ったように会話出来ていなかった。

#0 Spot 6
守護者

{character:守护者}ふぉふぉ、二人の挑戦は簡単じゃ、ラッキーじゃの。鍵は氷の中に閉じ込められておる。このち~さな氷を溶かし、鍵を手に入れればクリアじゃ。

#0 Spot 6

目の前にある、私の腰くらいまである氷の塊を見て、思わず突っ込んだ。

#0 Spot 6
player

{character:player}「小さい」の定義を調べ直せー!

#0 Spot 6
守護者

{character:守护者}ふぉっふぉっ……悪魔のサイズ感からしたら小さいもんじゃ。ほら、隣にアイスピックも用意したぞ。さぁ、氷を砕くのじゃ!

#0 Spot 6
player

{character:player}守護者だの、手助けだの言ってるけど、結局のところ悪魔のことばかり言ってるよね。まさか私たち、今悪魔の蘇生の儀式を手伝わされてたりして……?

#0 Spot 6
明

{character:阿明}ん……。

#0 Spot 6
player

{character:player}体力を使う謎だし、早速始めよっか。

#0 Spot 6
明

{character:阿明}ん……。

#0 Spot 6

茂武くんと分かれた明くんはまるで人が変わったかのように、二文字以上の単語を喋らない。なんなら近づくと逃げられるし、目が合うことすら無かった。

#0 Spot 6

そしてようやく氷が全部砕かれ、鍵を手に入れた。阿明くんは逃げるように元の部屋に戻り、残された私は力なく笑った。

#0 Spot 6
player

{character:player}明くんが実はここまで人付き合いが苦手な子だったとは……どうやって茂武くんと友達になったんだろ。

#0 Spot 6
茂武

{character:路仁}ぎゃ~~~!

#0 Spot 6

と思ったところで、向こうの部屋から茂武くんの叫び声がした。それから10分ほどして、一ノ瀬くんは茂武くんを連れて戻ってきた。何かあったかわからないが、二人とも何となく浮かない表情だった。

#0 Spot 6
player

{character:player}ど、どうしたの?

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ボクが……

#0 Spot 6
茂武

{character:路仁}いや、俺が悪かった。秀才く、一ノ瀬君の足を引っ張っちまった。もっと早く手かがりを見つけていれば、こうはならなかった……。

#0 Spot 6

どうして突然「秀才クン」から「一ノ瀬君」呼びになったのか分からないが、何かちょっと不愉快なことがあったに違いない。でも二人の問題だし、この年頃の子のことは手を出しづらいから、これ以上聞かなかった。

#0 Spot 6

一ノ瀬くんも呼び方が変わったことに気づいたのか、一瞬動揺した素振りを見せたが、すぐ元の様子に戻った。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}鍵を手に入れたし、さっそく次の部屋に行こう。

#0 Spot 6
茂武

{character:路仁}そ、そうだ!早く行こーぜ!

#0 Spot 6

二人は調子よく会話を続けるが、誰もさっきのことに触れなかった。この組分けは失敗だったか……この後の謎解きで、二人の関係を修復しなくちゃ。

#0 Spot 6

しかし最後の部屋に入っても、二人の雰囲気は変わらないままだった。しかも一ノ瀬くんは、阿明くんの方ともあんまり話せていない感じがする。

#0 Spot 6

コミュニケーションに欠けたチームでは、最後の謎を解くことも出来なかった。

#0 Spot 6

私が探索の途中で罠に引っかかり、カチッと音がして、部屋の両側の壁が中心に迫って来た。

#0 Spot 6
守護者

{character:守护者}ふぉっふぉっふぉ~!隠しステージに突入じゃ~!いや~、やはりお主らはラッキーじゃな~!10分以内に魔法陣を起動しないと潰されるぞ!頑張れ頑張れ~!

#0 Spot 6
茂武

{character:路仁}何だと!?ど、どーしよ!助けてくれー!

#0 Spot 6
明

{character:阿明}本当に潰されたりしない。でもその手を緩めないと、僕の腕は潰れる。

#0 Spot 6

ゆっくりだが確実に近づいてくる壁は迫力満点で、私まで緊張して来た。しかし四人の中で唯一、一ノ瀬くんは冷静を保ち、黙々と探索を進めた。

#0 Spot 6

時間が過ぎていき、部屋も段々と狭くなってきた。それに連れてみんなの精神も限界に近づき、現場はどんどん混乱に襲われた。最後は仕方なく守護者のヒントに頼り、魔法陣を完成させて、出口のドアを開いた。

#0 Spot 6

外の光が部屋に差し込んできて、暗闇に慣れた目にはちょっときつかった。ヒントに頼らなければ脱出出来なかったので、事実上はクリア失敗だ。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}すみません、最後の謎を解説してもらえませんか。

#0 Spot 6
スタッフ

{character:店员}はい。実は皆様はあと少しでクリアでした。どなたかがソファーの下にある本を見つけていれば、きっと皆様の力でクリア出来たと思います。

#0 Spot 6
茂武

{character:路仁}また俺がやらかしたか……ごめんな、一ノ瀬君。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}元々、成功率が50%しかない脱出ゲームだし、謝ることなんてないよ。

#0 Spot 6
茂武

{character:路仁}あ、あのさ……結構いい時間だし、これからアーミンと図書館に行くんで、俺らはこれで。

#0 Spot 6
player

{character:player}二人とも、気をつけて帰ってね。

#0 Spot 6
茂武

{character:路仁}はーい、ありがとうございます。一ノ瀬君も、またな。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん、また。

#0 Spot 6

二人組が帰ったあと、私は黙ったままの一ノ瀬くんに、あの時のことを聞いてみた。

#0 Spot 6
player

{character:player}一ノ瀬くん、茂武くんといったいなにがあったの?最後まで二人とはあんまり喋らなかったし。友達になるつもりだったんでしょ?

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……

#0 Spot 6
player

{character:player}もしかして、私にも言いにくいこと?

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}違うよ。ただ、どこから言えばいいかわからなくて……でも揉めたとかじゃないんだ。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}二人で協力し合わなければ解けない謎だったんだけど、ボクと茂武くんはほぼ初対面みたいなものだったし、ストレートに「あれをやって」みたいな言い方はしない方がいいかなと思って……結局ボク一人で全部の手かがりを全部見つけたんだけど、すごく広い部屋だったから、ずっと黙って探しちゃってて。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}最初の方で、茂武くんからどこを探せばいいか聞かれたような気がしたけど、早く茂武くんを暗い部屋から連れ出してあげたかったし、手がかりを探すのに夢中になり過ぎてて、何度かスルーしちゃったと思う……だから、やらかしたのはボクの方だよ。

#0 Spot 6

一ノ瀬くんは、ため息をついてルービックキューブを高速回転させた。なるほど、茂武くんの話と合わせれば、事の真相が明らかになるな。

#0 Spot 6

友達のことを思うあまり、逆にすれ違うパターンだ。少年同士の友情は最も熱く、それがかえって相手を傷付けてしまうこともある。

#0 Spot 6
player

{character:player}なんだ、ほんの些細な誤解だったんだ。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:路仁}いいの?

#0 Spot 6
player

{character:player}茂武くんは暗い場所が苦手だから、一ノ瀬くんは全力で謎を解いて彼を連れ出そうとした。でも茂武は、一ノ瀬くんが彼を無視した理由は自分がうるさいせいだと思って、一ノ瀬くんの邪魔にならないよう黙って見ることにしたと。で、それがまた、一ノ瀬くんに茂武が怒ったと勘違いさせたんだな。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}え、うん……。そう。怒ったかと思ってたから、話かけにくかったんだ……

#0 Spot 6

一ノ瀬は二人組が歩いていった方を見る。その表情は苦悩から驚きへと変わった。道路の両側に植えられた街路樹は風に揺れ、まるで手を振っているようだ。

#0 Spot 6
スタッフ

{character:店员}お客様、恐れ入りますが、よろしければこちらのノートに感想などを書いて頂けませんか。ご協力頂いたお客様には、次回使える無料体験チケットを差し上げております。

#0 Spot 6

スタッフさんは重い空気を察してか、一ノ瀬の表情が和らいだタイミングで話しかけてきた。私がノートを受け取るより先に、一ノ瀬くんがそれを手にした。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}誤解ってことなら、次会った時に二人とちゃんと話し合ってみる。それで、もう一度二人を誘って、脱出ゲームをやれたらいいなって思う。{var:player_nickname}さんも、また一緒に来てくれる?

#0 Spot 6
player

{character:player}もちろん、最小人数は四人だしね。

#0 Spot 6

どうやら今日は全くの失敗でもなかったらしい。夜まで時間はまだまだあるし、神社に行って麻雀でも打つかな。

恋愛シミュレーションゲームのおすすめ

契約を結ぶことで開放

Possible Endings

End6.パーフェクトクリア
祈願の巻物 ×1
End7.ゲームオーバー
日光の福袋 ×1

Scenario Script

Spots 8, Scenes 320, Choices 2, Endings 0

#0 Spot 1

「ドキドキ★物理科」という新発売の恋愛シミュレーションゲームがある。綺麗なグラフィックと想像の斜め上を行くストーリーで一気にファンを獲得した、最近売れ筋のゲームだ。

#0 Spot 1

開発者の話によると、シナリオを作る段階で実際に十万人以上の大学生にアンケートを取り、その結果をもとにストーリーのルート分岐を考えたそうだ。

#0 Spot 1

で、なぜいきなりこんな話をしたかというと、今私の目の前で一ノ瀬くんがこのゲームをやっているからだ。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}むう。また失敗しちゃった。

#0 Spot 1

「Game Over」の文字が画面上に映され、一ノ瀬くんはモヤモヤした様子でコントローラーを膝に置いた。「また」ってことは、少なくとも二度目以上のゲームオーバーか……。

#0 Spot 1
player

{character:player}一ノ瀬くんが恋愛ゲームに興味を持つとは思わなかったよ。もっとSF寄りのゲームが好きそうなイメージだった。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}学校の友達との話題作りのために、今流行ってるものを調べてるだけ。

#0 Spot 1
player

{character:player}はは、そっかそっか。でも一ノ瀬くんをここまでハマらせるなんて、このドキドキなんちゃらっていうゲーム、ちょっと興味湧いてきたかも。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}{var:player_nickname}さん、これまだやったことないの?

#0 Spot 1

一ノ瀬くんは顔を上げて、驚いた表情を見せた。どことなく嬉しそうでもあって、難しい数学の問題が解けた時する顔に似ている。

#0 Spot 1
player

{character:player}うん。PVとインタビュー記事くらいはざっくり見たけど、実際にプレイしたことはないな。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}だったら、コホコホ……一緒にやらない?

#0 Spot 1
player

{character:player}ええ?いいけどさ、こういうのって一人プレイが基本じゃない?

#0 Spot 1

一ノ瀬くんはため息をついて、隣に置いていたノートを開いて私に見せた。今までのプレイで遭遇したバッドエンドの内容がズラッと並んでいて、その数は想像していたよりも多い。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}攻略のために、プレイする前からゲームに関する情報収集をしておいたんだ。PVからイベント分岐、攻略サイトのURLやユーザーレビューまで。それらを全部表にまとめたよ。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でもこれらのデータをもってしても、今まで一度も最後まで攻略できてない。

#0 Spot 1
player

{character:player}そんなにクリアしたいのなら、攻略サイトを見ながらやれば良いんじゃない?なんでURLだけ見て内容を見ないのさ。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}それだと、こういうゲームをやる意味が無くなりそうな気がして……。でも攻略サイトが出来てるってことは、このゲームはちゃんとクリア出来るように作られてるはず。だから、キミのゲームプレイをデータとして記録して、参考にしたいんだ。

#0 Spot 1
player

{character:player}はぁ……恋愛ゲームをデータ分析しながらやるのって、一飜市、いや、世界中でもキミ一人だと思うよ。まぁ麻雀会館も混んでたし、ちょっとだけ付き合うかな。

#0 Spot 1

私の答えを聞いて、一ノ瀬くんは横にずれて席を譲ってくれた。そして待ちきれないといった感じで「はじめから」を選択した。

#0 Spot 1

画面が暗くなり、再び光ると、目の前にやや暗い裏路地の風景が広がった。ちょっと恰幅のいい男の子が数人の不良少年に壁際に追い込まれ、怖がりながらリュックサックを抱えている。

#0 Spot 1
不良A

{character:不良少年A}おいデブ、わざわざ学校の裏門から出るたぁ、一体誰から逃げようとしてるんだァ?

#0 Spot 1
不良B

{character:不良少年B}おいらたち最近お金が足りなくてさぁ……お前のお小遣い、ちょっと借りたいな~って。ひひひ……

#0 Spot 1
player

{character:player}あれ?このゲームって大学の話じゃなかったっけ、どう見ても中学生なんだけど……。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}まだ序章だから。主人公が小学生の頃、不良中学生に絡まれてる所をヒロインに助けられたのが、二人の最初の出会いだった……ってジャケット裏に書いてあった。

#0 Spot 1
player

{character:player}へぇ。じゃあ、これから正義のヒロインが登場するんだ。

#0 Spot 1

なんて話をしていたら、ビビってる男の子と同じ学校のものらしき制服を着た女の子が飛び出してきて、男の子を守ろうと不良の前に立った。

#0 Spot 1
???

{character:???}やめなさい!いじめはダメ!

#0 Spot 1
不良A

{character:不良少年A}ああん?なんだァこのチビ、どっか行けよ!

#0 Spot 1
???

{character:???}先生に連絡したわ、もうすぐ来るよ!さっさと退散しないと、罰を受けることになるから!

#0 Spot 1
不良B

{character:不良少年B}おいらたちをビビらそうってか?罰ゥ?そんなの屁でもねぇなぁ!

#0 Spot 1
不良A

{character:不良少年A}おい、本当に誰かこっちに来てる!チィ、バレたらまずい、早くずらかろうぜ。

#0 Spot 1
不良B

{character:不良少年B}ハァ~、チビ、運が良かったな……今日のことは覚えとけよ。

#0 Spot 1
不良A

{character:不良少年A}おい、さっさと行くぞ!

#0 Spot 1

不良たちが退散し、裏路地の中には小学生二人が残された。そのタイミングで雨が降り出し、女の子は雨に打たれながら男の子の方に向き直った。

#0 Spot 1
???

{character:???}大丈夫?ちゃんと立てる?……あんた、名前は?安心して、あんたをいじめる悪い奴らはもういないから。

#0 Spot 1

そして画面が止まり、真ん中にプレイヤー名を入力する欄が出てきた。

#0 Spot 1

一ノ瀬くんはコントローラーを操作し、慣れた手付きでランダム決定にカーソルを合わせた。

#0 Spot 1
player

{character:player}待った!一ノ瀬くん、ここはあえて自分の名前を入れてみない?

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ええ!?

#0 Spot 1
player

{character:player}恋愛ゲームってのはねぇ、自分の名前を入れるとより臨場感が増すんだよ。それだけでゲーム体験が全然違うものになるし、もしかしたら一ノ瀬くんでもクリアできるようになるかもよ。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そんなの、データでは何も証明されてないけど……一度試してみる価値はありそうだ。

#0 Spot 1

彼は「一ノ瀬空」と入力し、画面内の一ノ瀬くんを操作しながらあちこちへ歩き出した。その様子を見て思わず笑うと、彼は目線はそのまま、コホコホと咳込み、やめろの意を示した。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}確かに新しい体験だ……キミの言う事を参考にすれば間違いなさそう。

#0 Spot 1
player

{character:player}まだ始まったばかりだよ?それより早くヒロインに返事しようよ、女の子を待たせちゃだめだよ。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}僕は……僕は一ノ瀬空だ。

#0 Spot 1
???

{character:???}一ノ瀬空?いい名前じゃない。でも今度は早めに帰ってね、危ないから!

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}も、もう行っちゃうの?

#0 Spot 1
???

{character:???}うん!早く帰らないとお母さんが心配しちゃうし。また会おうね、一ノ瀬空くん!

#0 Spot 1

ヒロインの女の子は、主人公を助けたことがどれだけ立派なことかわかってない感じで、軽く挨拶し、画面外へ走り消えた。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}ま、待って!君の名前をまだ……!

#0 Spot 1
???

{character:???}リュウシ!あたしはリュウシ——

#0 Spot 1

主人公の手に握られた、ヒロインから貰った傘が雨に打たれてパタパタ鳴っている。その音とともに、遠くから女の子の声がした。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}リュウ……シ?理科の授業で先生が言ってたあの粒子のこと?……なんでそんな名前なんだろ。でも……ありがとう、粒子ちゃん。また、会えるといいな。

#0 Spot 1

トトッ、トトッ、トトッ……

#0 Spot 1

と、序章が終わるとともに、一ノ瀬くんは不可解そうに首を傾げ、テーブルを指で叩いた。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}よくわからない。

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player

{character:player}え、なにが?

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}だって、ヒロインは特に力が強いわけじゃないし、武道を修行したわけもないってキャラクター紹介に書いてあった。そんな彼女が、年上の不良に立ち向かっても何も出来ないと思うんだけど……

#0 Spot 1

なぜ主人公がヒロインを救うのではなく、その逆だったのか聞かれるのかなと思ったら、一ノ瀬くんはそれこそ予想の斜め上を行く質問をしてきた。

#0 Spot 1

逆にどうしてそんな質問を思いついたのか気になった。

#0 Spot 1
player

{character:player}じゃあ、一ノ瀬くんならどうする?

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ボク……ボクがヒロインだったら、とりあえず安全を確保するため誰かに助けを求めるかな。相手は年上だし、同年代の生徒より、先生に助けを求めるのがより安定する選択だと思う。

#0 Spot 1

少し考えて、一ノ瀬くんはさらに補足した。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}体育の先生が最適解だ。

#0 Spot 1

その答えを想像して、なんとなくその様子が目の前に浮かんだ。

#0 Spot 1

主人公が不良に壁際まで追い込まれたその時、裏路地の入り口から重量感のある足音が聞こえてきた。屈強な体育教師が現れ、不良たちは一斉に逃げ出す。

#0 Spot 1

自分を助けてくれた先生に感動した主人公は、真面目に勉強することを誓い、学校の栄光のために数学オリンピックの優勝トロフィーを勝ち取った。

#0 Spot 1

めでたしめでたし。って、これのどこが恋愛ゲームだ!

#0 Spot 1
player

{character:player}一ノ瀬くんの言う事はわかるけど、でも人間っていつもそういう冷静な判断が出来るとは限らないし、無謀だとわかっていてもやろうとするのが人の性ってやつだよ。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホッコホッ……危ないとわかってても、か。

#0 Spot 1
player

{character:player}そうだよ、元々人間は矛盾の塊なんだから。

#0 Spot 1

一ノ瀬くんは病気のせいで人と交流する時間があまりなかったし、安全第一と考えるのもわかる。そんな彼に、ヒロインの思考をわかってもらうにはまだ早いか……。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}なるほど、{var:player_nickname}さんはこういう感情で行動する人が好きなんだね。

#0 Spot 1
player

{character:player}それどういう……

#0 Spot 1

突如として画面から軽快なメロディが流れ出し、私たちの会話を切り上げさせ、二人の意識をゲームに向けた。

#0 Spot 1

さっきの話は気になるが、まあ後でまた聞いてみよう。

#0 Spot 1

オープニングテーマに乗って大学のキャンパスの風景が映る。風が図書館のカーテンを吹き上げ、日差しが部屋に入り込んだ。

#0 Spot 1

「一ノ瀬空」は本棚の間を縫うようにして、本を探し歩いている。今日は放課後の実験が休みなので、重要な専門書を探しに図書館に来た。お目当ての本を見つけ、手を伸ばしたその瞬間、別の手が反対側から同じ本へ伸びて来た。

#0 Spot 1

腕を辿って手の持ち主を見ると、そこにはどこかで見たような顔があった。

#0 Spot 1

「粒子ちゃん」——心の片隅にずっと残っていた名前が一気に思い出され、顔立ちは少し変わっていたが、「一ノ瀬空」はすぐあの時の女の子のことを思い出した。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}あっ、ごめんごめん。まさか同じ本を探してる人がいるとは思わなかったよ。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}君……。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}え?あたし?えっと……あたしたちってどこかで会ってたっけ?

#0 Spot 1

本棚の向こうの女子生徒は不可解そうな表情で、「一ノ瀬空」がどれだけ感動しているか全く気付かずにいた。まさか十年前に自分を助けてくれた少女と、こんな場所、こんな偶然で再会を果たすとは思ってもみなかったので、「一ノ瀬空」は感慨深くなっていた。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}質量のあるすべての物体や粒子同士に働く引力、これを万有引力という。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}ん?

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}いや、急に思い出しただけ。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}あはは、君も物理科の学生なんだねぇ。あ、そうだ、この本!ここはあたしに譲ってほしいんだけど……ほら、テストが来週で、マジで準備間に合ってなくて……。

#0 Spot 1

向こうの女の子が両手を合わせてお願いしてきた所で、画面が止まった。ここで2つの選択肢が出て、「本を譲る」と「本を自分で借りる」と表示された。

#0 Spot 1

一ノ瀬くんのバッドエンドリストを思い出して、彼にアドバイスしようとしたが、彼は迷わず前者を選んだ。

#0 Spot 1

画面の中の女の子は本を受け取り、大げさに主人公に感謝の意を伝えた。そしたらピンク色のエフェクトが出て、好感度があがったと表示された。

#0 Spot 1
player

{character:player}へぇ、一ノ瀬くん、ちゃんと好感度が上がる選択肢を選んでるじゃん。一回もクリア出来てないとは思えないよ。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}たまに非合理的な選択肢が出てくるんだよ……計算の結果と一致しなくても、仕方ないと思ってる。

#0 Spot 1
player

{character:player}非合理的?どういうこと?

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}例えばさっきの選択肢だと、前者を選ばないと後でゲームオーバーに繋がっちゃうんだけど……同ジャンルのゲームについて調べた結果によると、普通は後者を選んで「学力+50」のバフを取った方が有利になるはずなんだ。

#0 Spot 1
player

{character:player}学力?バフ?なにそれ……。

#0 Spot 1

このゲームのことはPVに出てる程度のことしか知らないので、その辺りの用語は流石に呑み込めなかった。一ノ瀬くんはステータス画面を開き、説明してくれた。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}このゲームのキャラには身長と体重以外に、学力・俊敏さ・スタミナなどの属性値があるんだよ。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}それぞれの属性値が、後のストーリーに影響するんだ。例えば、俊敏さが高ければ特殊イベントに遭遇する確率が上がるし、スタミナが多ければミッションの時間制限が長くなったりする。

#0 Spot 1
player

{character:player}へぇ……じゃあ学力は?

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}学力は一番重要なステータスだと言っても過言じゃない。ヒロインは勉強のできる男の子がタイプだから、主人公の学力を200以上にしてから告白すると……

#0 Spot 1
player

{character:player}あ、クリアできるのか。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ううん、この後の展開にもよるけど、クリア率が80.75%まで上がるはずだ。

#0 Spot 1

そこも小数点以下第二位まで計算してるんだ……。

#0 Spot 1
player

{character:player}どれどれ……あーそっか、今主人公の学力は150だから、さっきの本を取れば200になるんだね。確かにもったいないなあ……。

#0 Spot 1
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でしょ。だから、このバグの記録を取って、制作会社にメールしたんだ。いつか修正パッチが来るといいけど。

#0 Spot 1

バグと主張する一ノ瀬くんを見て、彼がこの手のゲームの主人公の行動原理を理解するには、まだまだ先が長いな……と悟った。

#0 Spot 1

図書館の出来事のおかげで、「一ノ瀬空」と「粒子ちゃん」は急接近し、今やもう親友と呼べる関係になった。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}「うがー!さっき復活したばかりなのにー!!」

#0 Spot 1

学生会室、スマホを両手で握った「粒子ちゃん」は、ソファーで横になりながら悲鳴を上げた。スマホの画面には「YOU ARE DEAD」の文字が浮かんでいる。

#0 Spot 1

最近、「粒子ちゃん」はいつの日か最強のゲーマーになるべく、暇さえあればスマホを取り出してゲーム三昧の日々を過ごしている。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}ほんっとーにひどくない?これで初心者向けの難易度ってマジ!?

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}サークルの勧誘を断り続けてたの、それが理由だったんだ。どうしていきなりそういうゲームにハマったんだか……。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}知らないの?学校のゲーム大会のこと。先週発表があったはずだよ。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}聞いたことはあるけど……でもゲームとサークル、粒子ちゃんなら両立できそうだけどな。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}それには、理由があるんだよぉ~!

#0 Spot 1

机の引き出しから宣伝ポスターを取り出し、「粒子ちゃん」は賞品の欄を指した。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}一等賞——物理ラボの利用権!?

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}そう!勝てばいつでも大学のラボを使い放題!

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}実験マニアのわたしたちにとって、これがどれだけ魅力的かお分かり~?優勝したら、CatChatでみんなに自慢するんだ~!

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}だからサークルにも入らずに頑張ってたんだ……えっと、0キル13デス2アシスト……優勝を目指してるんだよね?

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}やめてやめて、まだ練習中なのっ!!っていうか、あたしじゃなくて、この指が悪いんだよ。いつも思ったのと違う方に動くんだもん。

#0 Spot 1

証明のつもりなのか、「粒子ちゃん」は手を上げてヒラヒラと振った。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}どうしても優勝したいんだね。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}もちろん、そのためなら何でもやるわ。

#0 Spot 1
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}そこまでしなくても……僕も協力するよ。

#0 Spot 1
「粒子ちゃん」

{character:player}ハート……?

#0 Spot 1

予想通り、ここで選択肢が飛び出してきた。一ノ瀬くんは私の方を向いて、「どうしよう?」と問いかけてきた。

#0 Spot 1
粒子ちゃんとチームを組む → Spot 2
代わりにゲーム大会に出る → Spot 3
#0 Spot 2

カーソルが二番目に合わされているが、私は慌てて一ノ瀬くんを止めた。

#0 Spot 2
player

{character:player}待って、ここは「チームを組む」を選ぶべきだと思う。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホ……。そ、そう?でもゲームのシステム的には、ここで一人で大会に出て賞品をプレゼントすると、二倍の好感度を得られるんだけど……。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}好感度がMAXのハート五つになると、必ずハッピーエンドになる設定だから、ここは後者を選んだ方が効率的じゃないかな。

#0 Spot 2

一ノ瀬くんはノートを開き、好感度を数字にして計算し始めた。数式がペンの動きに合わせて列を成し、人の心を測定できる計算機でも出来上がるんじゃないかと一瞬思った。

#0 Spot 2

その数式が完成する直前に、私は一ノ瀬くんの手を止めてペンを取りあげた。

#0 Spot 2
player

{character:player}より良いゲーム体験のために、今からそれは禁止。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あとちょっとで、完成したのに……。

#0 Spot 2
player

{character:player}そんなことしなくても、一ノ瀬くんは自分に聞いてみれば何が正解かわかるはず。一ノ瀬くんなら、こんな時どうするか。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ボク自身に聞く……?

#0 Spot 2
player

{character:player}そう、ゲームに関係なくね。もし実際に一ノ瀬くんがこういう状況になったらって想像して、心の声を聞いてみて。それが一ノ瀬くんにとっての正解だよ。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……。

#0 Spot 2

午後の日差しはそっと部屋を淡い暖色に染め上げ、一ノ瀬くんの指と心を温めた。

#0 Spot 2

おかげで、一ノ瀬くんは数字の世界から一旦離れ、本腰を入れてこの問題を考え始めた。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そうだね……もし{var:player_nickname}さんがゲーム大会に参加するとしたら……チームを組んでも優勝できる確率は50.70%くらいしかないし、今から必死に練習しても、スコアが上がる見込みもない。多分そのまま初戦敗退になるかと……。

#0 Spot 2
player

{character:player}こらこら、そこまで弱くないぞ私は!

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホ。……でも、ボクはキミと組むと思う。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ただし、これはあくまでもボク個人の選択になるし、サンプル数が1の結果は、統計学的には意味がないよ。

#0 Spot 2
player

{character:player}人の思いや感情を統計学的に計算しないでよ。元々抽象的な概念なんだしさ。

#0 Spot 2
player

{character:player}この前のハロウィンの時のこと覚えてる?その時もデータに反する選択をして、いい結果を残したじゃん。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}それは……コホン、そうだけど。

#0 Spot 2

私の説得により、一ノ瀬くんは半信半疑になりつつ一番目の選択肢を選んだ。

#0 Spot 2

次のシーンで、ゲーム大会が始まった。「一ノ瀬空」と「粒子ちゃん」は朝一番で会場に到着し、対戦の準備を整えた。

#0 Spot 2
player

{character:player}さすが人気恋愛ゲーム、こういう会場までしっかりロマンチックにモデリングしてあるとは……。なんというか、ラブストーリー感あるよな。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}右下の地面のモデルに空洞があって、NPCがそこを通るたびにめり込むんだよね。

#0 Spot 2
player

{character:一之濑空}……。

#0 Spot 2

一言で雰囲気を台無しにする能力なら、一ノ瀬くんは免許皆伝と言っても過言ではないな。

#0 Spot 2
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}ヤバイヤバイヤバイ、敵のアサシンがまた来たよぉー!

#0 Spot 2
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}その塔の下に回復があるはず……って、遅かったか。

#0 Spot 2

「一ノ瀬空」の話が終わるより早く、「粒子ちゃん」が操作するキャラクターは相手に倒されてしまった。「悔しー!」というキャラボイスとともに、操作していた人間も悔しそうな顔を見せた。

#0 Spot 2

ブーッ。赤いランプが点灯、「一ノ瀬空」たちの敗退を会場内に知らせる。

#0 Spot 2
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}ごめんね、足引っ張っちゃって。

#0 Spot 2
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}練習の時よりはずいぶん上達したし、気にしないで。

#0 Spot 2
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}はぁ~。長い時間練習に付き合ってくれたのに悪いなぁ……そうだ、明日遊園地に行かない?私が奢るから。あ、もちろん一ノ瀬くんが暇だったらの話だけど。

#0 Spot 2
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}えっ……もちろん行くよ!

#0 Spot 2

ポンと画面上にエフェクトが表示され、隠しデートイベントに突入したという文字列が出た。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}おかしいな……ラボの使用権はゲット出来なかったはずなのに、ヒロインは出来たルートより明らかに嬉しそうだ。これもこのゲーム独自のデザインなのかな。

#0 Spot 2
player

{character:player}デザインも何も、こっちのルートだと毎日粒子ちゃんと練習することになるし、二人の気持ち的は長い間一緒にいる方がいいに決まってるでしょ。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも結果としては、それは何にもならなかったし、初戦すら通過できなかったよ。

#0 Spot 2
player

{character:player}結果より、その過程で一緒にいられた事実の方が大事じゃない?

#0 Spot 2

恋愛の醍醐味は味わってみないとわからないってよく言うし、一ノ瀬くんにあえてフワっと答えた。

#0 Spot 2

いつもの一ノ瀬くんならきっと色々気になって質問を続けるだろうけど、彼はコントローラーを持ったまま思考を巡らせ始めた。

#0 Spot 2
一ノ瀬空

{character:一之濑空}そうか……なんとなくわかる気がする。

#0 Spot 3
player

{character:player}ここはゲームが下手な「粒子ちゃん」の代わりに大会で優勝して、賞品をあげよう。

#0 Spot 3

私が言い終わるのとほぼ同時に、一ノ瀬くんが二番目の選択肢に決めた。この阿吽の呼吸とも言うべき感覚はとても心地良い。

#0 Spot 3

しかし、ゲームのストーリーは、そんな心が通じ合った私たちに残酷にも「不正解」を告げた。

#0 Spot 3
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}ここにいたんだね。探したよ。

#0 Spot 3
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}探したって、何か用事?

#0 Spot 3
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}はい、これ。欲しかったって言ってたよね、あげる。

#0 Spot 3

「一ノ瀬空」はポケットから優勝賞品を取り出し、「粒子ちゃん」に渡した。

#0 Spot 3
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}え……ありがとう……。でも、これ、受け取れないわ。

#0 Spot 3
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}大丈夫、教授にもお願いしたから、粒子ちゃんが使ってもいいかって……

#0 Spot 3
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}そういうことじゃなくて……違うんだよ……。

#0 Spot 3
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}じゃあ、どうして……。

#0 Spot 3
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}ほら、君とルームシェアしている彼、誕生日は来週でしょ?彼へのプレゼントで、何かいいアイデアないかなぁ?と思って。

#0 Spot 3
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}ルームメイトの……あいつ!?

#0 Spot 3
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}うん。ゲーム大会のために、毎日一緒に練習に付き合ってくれたの。彼に感謝を伝えたいから、これは彼に渡して。

#0 Spot 3
「一ノ瀬空」

{character:一之濑空}……。

#0 Spot 3

画面の一番目立つ位置には、「粒子ちゃん」とルームメイト……通称「間男くん」の現在の好感度がハート四つ分と表示されていた。なんなら周りに花火みたいなエフェクトも付いている。

#0 Spot 3
player

{character:一之濑空}……。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……。

#0 Spot 3
player

{character:player}おいおい、このゲームそういう要素もあるなんて聞いてないぞ!!

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}これも、「予想の斜め上」のストーリーなのかも……。

#0 Spot 3
一ノ瀬空

{character:一之濑空}女心は本当に複雑で、データ化するのは難しい。改めて痛感したよ。「間男くん」の好感度がボクのを越えちゃった、次の選択肢は慎重に選ばないと……。

#0 Spot 3
player

{character:player}そうは言っても……嫌な予感がするな。

#0 Spot 4

一ノ瀬くんは人付き合いが苦手ではあるけど、天才少年の名に相応しく、アドバイスへの理解が早い。あれから一ノ瀬くんは自分を主人公に置き換えて、最善の選択肢を選び続けた。そしていくつかのシーンを経て、今「粒子ちゃん」の好感度はハート四つになった。

#0 Spot 4

そしてゲーム内では新年を迎え、「一ノ瀬空」は「粒子ちゃん」を商店街へと誘った。初めて下宿先で迎える新年の雰囲気を、二人で楽しもうという主旨だ。

#0 Spot 4

新年の花火が打ち上げられ、画面の中央に「告白する」と「告白しない」の選択肢が表示された。私はスマホの録画機能を起動し、記念すべき一ノ瀬くんの初クリアを記録しようとしたが、一ノ瀬くんはやけに躊躇していて、カーソルを上下に動かし続けている。

#0 Spot 4
player

{character:player}どうしたの?

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}……コホンコホン、{var:player_nickname}さん、ここはどうすれば……?

#0 Spot 4
player

{character:player}好感度も高いし、花火デートの最中で一番雰囲気がいいタイミングだし、考えるまでもないんじゃない?告白しなよ。

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}でも……好感度は高いと言えとまだハート四つだし、つまり20.00%の確率で失敗するし。

#0 Spot 4

ため息を吐いて、一ノ瀬くんは無意識に私に没収されたペンを取ろうとした。今になって告白の成功率を検証しようとしているのかよ。

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}自分だと思って考えたら、余計に選べなくなった……。

#0 Spot 4
player

{character:player}え、どうして?

#0 Spot 4
一ノ瀬空

{character:一之濑空}相手がボクの大事な人だとしたら、少しでも失う可能性があると思うと……ここでリスクを冒して告白なんて出来ないよ。

#0 Spot 4

一ノ瀬くんは二度もため息をつき、こちらに助けを求めるような目を向けた。

#0 Spot 4
「告白する」を選ぶよう助言する → Spot 5
一ノ瀬くんに自分で選ばせる → Spot 6
#0 Spot 5

私はコントローラーを奪い、驚く一ノ瀬くんを尻目に「告白する」にカーソルを合わせた。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}どうして、これを選べるの。どういう計算でそうなるの。

#0 Spot 5
player

{character:player}計算とかじゃなくて、「勘」だよ。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}つまりデータ上の保証はどこにもないってこと?

#0 Spot 5
player

{character:player}恋愛ゲームの醍醐味、またわかっていないみたいだから教えてあげる。恋愛感情はデータじゃないし、どんな計算をしても「クリア」の保証はないんだよ。

#0 Spot 5
player

{character:player}「愛」は数字で表せないものなんだ。「愛」という感情はとても繊細で、あらゆる影響を受ける。対象・時間・場所・雰囲気、少しでも変わると全然違うものになる。でも「真心」と「勇気」で「愛」に向き合えば、「愛」はどんどん成長し、美しい実を結ぶ。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}だけど……

#0 Spot 5
player

{character:player}もちろん、一ノ瀬くんがこれを理解するにはまだまだ先が長そうなので、あくまでも「自分ならこうする」というアドバイスをした。確定ボタンを押すかどうかは、一ノ瀬くん本人の勇気に任せよう。

#0 Spot 5

一ノ瀬くんにコントローラーを返すと、彼は長いこと熟考した。そして喜ばしいことに、最後には確定ボタンを押してくれた。

#0 Spot 5
一ノ瀬空

{character:一之濑空}キミの考え方はまだよく理解出来ないけど、キミの直感を信じてみようと思う。

#0 Spot 6

一ノ瀬くんのヘルプサインを受け取ったものの、私は自分の考えを言わないことにした。恋愛ゲームでは、好感度をMAXにしてから告白するのも正攻法の一つだし、一ノ瀬くんがどちらを選んでも間違いとは言えない。

#0 Spot 6

私が沈黙を保つのを見て、一ノ瀬くんは最終的に「告白しない」を選んだ。

#0 Spot 6

花火が夜空に咲き、火花が人々の笑顔を照らした。

#0 Spot 6

「一ノ瀬空」は花火より目の前の女の子を無言で見つめていたが、結局何も言わずに視線を空に戻した。

#0 Spot 6
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}一ノ瀬くん……■■■■……

#0 Spot 6

「ドッカーン」と、その日最も大きい花火が、最も悪いタイミングで炸裂した。

#0 Spot 6
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}え?なに?

#0 Spot 6
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}一ノ瀬くんの……バカ!

#0 Spot 6
???

{character:???}どうしたんだい?女子を泣かせるなんて、紳士の風上にもおけないな。

#0 Spot 6

紳士というかキザというか、青年がスマートな所作で「粒子ちゃん」にティッシュを渡し、責めるような目つきで「一ノ瀬空」に尋ねた。

#0 Spot 6
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}……僕も、わからない……粒子ちゃんが突然泣き出して……。

#0 Spot 6
???

{character:???}今は、何も言わないのが賢明さ。

#0 Spot 6
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}……?

#0 Spot 6

泣き止んだ「粒子ちゃん」は逃げるように夜に紛れて消えてしまい、「一ノ瀬空」は何もわからないままその場に残された。

#0 Spot 6

そして赤文字のメッセージが出現し、「好感度が下がった」と書かれている。

#0 Spot 6
player

{character:player}いや誰だよ、そのいきなり出てきた奴。

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}彼は主人公とルームシェアをしているもう一人の生徒、通称「間男」くんだよ。

#0 Spot 6
player

{character:player}待て待て、そういう要素もあるのかよこのゲーム!

#0 Spot 6
一ノ瀬空

{character:一之濑空}これも、隠しイベントの一つか……。今「粒子ちゃん」は「間男くん」への好感度が高いっぽいし、嫌な予感がする。

#0 Spot 7

場面が一転して、卒業の季節になった。アカデミックガウンを着た学生たちがあちこちにいて、キャンパスでの青春の1ページを残そうと記念撮影をしている。

#0 Spot 7

そんな中「一ノ瀬空」は告白の手紙を持って、そわそわとあの子が来るのを待っていた。

#0 Spot 7
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}ごめんごめん、遅れちゃった。

#0 Spot 7
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}いいよ、僕も今来たとこだし。

#0 Spot 7
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}一ノ瀬くん……用事ってなに?

#0 Spot 7
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}僕……粒子ちゃんに、これを受け取ってほしいんだ。

#0 Spot 7

「一ノ瀬空」が綺麗な封筒に入った手紙を渡し出すと、「粒子ちゃん」はちょっと戸惑った表情を見せた。そして、すべてを察した。

#0 Spot 7
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}気持ちは嬉しいよ、でもあたし、もう好きな人がいるから。

#0 Spot 7

音楽が流れ出し、画面がモノクロへと変わる。「粒子ちゃん」の後ろ姿は振り返ることなく段々と小さくなっていき、最後には画面から消えた。

#0 Spot 7

「Game Over」の文字が表示されて、私たちの数時間の努力が否定されてしまった。

#0 Spot 7
player

{character:player}嫌な予感、当たっちゃったね。あれからヒロインが本当にそのまま「間男くん」の方に行くなんて、誰が予想できるってんだ。

#0 Spot 7
player

{character:player}すべてのステータスをカンストまで上げても、結局「粒子ちゃん」は振り向いてくれなかったな。一体どこで間違ったんだろ。

#0 Spot 7
一ノ瀬空

{character:一之濑空}コホコホ……バッドエンドのサンプルが、もう一つ増えたね。

#0 Spot 7

私より一ノ瀬くんの方がよっぽど早くゲームオーバーを受け入れたらしい。でもいつもより低い目線は、彼も内心落ち込んでいることを私に教える。

#0 Spot 7

何十回もゲームオーバーしてるし、さすがの一ノ瀬くんも気落ちするよな。彼にとっては、このゲームこそが今までで最大の難問かも。

#0 Spot 7

一ノ瀬くんを慰めるべく、私は彼の肩を叩いた。

#0 Spot 7
player

{character:player}クリアにだいぶ近づいたっぽいし、もう一度頑張ろう。今度こそ攻略するぞ!

#0 Spot 7
一ノ瀬空

{character:一之濑空}うん。

#0 Spot 7

と、一ノ瀬くんは「はじめから」を選んだ。そしてもう一度、私達はあの裏路地に戻された。さっきの経験があれば、今度こそクリア出来るっしょ!

#0 Spot 7
一ノ瀬空

{character:一之濑空}むう……「粒子ちゃん」は怒ってないって言ってるのに、なんで好感度が下がるんだろう……。

#0 Spot 7
一ノ瀬空

{character:一之濑空}あれ?水曜日にデートって、昨日水曜日は用事があるって言ってたのは「粒子ちゃん」の方じゃないか。

#0 Spot 7
一ノ瀬空

{character:一之濑空}何でもいいよって言ってた割に、何を注文しても好感度がただ下がり……なんで?何か隠し要素を見落としてる?

#0 Spot 7
player

{character:一之濑空}……。

#0 Spot 7

……と、思いきや、一ノ瀬くんには分からないことがまだまだ沢山ありそうだ。数字で表せないものだし、「愛」はこの子にとってやっぱり複雑過ぎるのかな……。

#0 Spot 7

クリアできるまで、一ノ瀬くんの「お勉強」はこれからも続きそうだ。

#0 Spot 8

花火が空高く打ち上がり、熱と光を放って夜をロマンチックに染め上げた。そんな夜空の下で、愛し合う人が二人。

#0 Spot 8
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}今こんなことを言うべきかわからないけど、粒子ちゃんに僕の気持ちを伝えたいんだ。粒子ちゃん、好きだ!

#0 Spot 8

「ドッカーン!」と、今夜最大の花火が最良なタイミングで炸裂した。その光に照らされて、粒子ちゃんの真っ赤な顔がバレにくくなっている。

#0 Spot 8
「粒子ちゃん」

{character:“粒子”}それは、あたしも……。

#0 Spot 8

ピピピピ!ピピピピ!

#0 Spot 8

無情にもアラームが鳴り響き、夢の中で物語のクライマックスを迎えようとする「一ノ瀬空」を起こした。その努力も空しく音の主に覚醒を促され、やや乱暴な手つきでアラームが切られた。

#0 Spot 8

「一ノ瀬空」はベッドで寝返りを打ち、夢の続きを見ようとしたが、夢の中で少女と抱き合う光景が、彼の意識を現実に引き戻した。

#0 Spot 8
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}昨日……本当に粒子ちゃんに告白したんだ……。

#0 Spot 8

と、半分夢の中にいる少年はベッドに座ったまま、自分の両手を直視していた。

#0 Spot 8
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}手を繋いで、ハグもした……まるで、夢みたいだ……。

#0 Spot 8

そして彼はスマホに電源を入れ、昨日起きたことが現実である証を探そうとした所で……。

#0 Spot 8
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}あれ?粒子ちゃんからのメッセージ……?

#0 Spot 8
「一ノ瀬空」

{character:“一之濑空”}r=a(1-sinθ)……。あ、これ、もしかして……!

#0 Spot 8

喜びのあまり「一ノ瀬空」は口角が上がるのを抑えられず、震える手で返信を入力し始めた。

#0 Spot 8

「y=1/x、x^2+y^2=9、y=|-2x|、x=-3|siny|」と打ち、送信。

#0 Spot 8

優しい音楽と共にゲームの画面がぼやけ始める。あの夜の回想シーンの後、夜空の下で抱き合う二人が幸せそうに笑っていた。

#0 Spot 8

その光景を見て、一ノ瀬くんまで目を細めた。

#0 Spot 8
一ノ瀬空

{character:一之濑空}やっと、クリア出来た……。

#0 Spot 8
player

{character:player}なんだよ、その感無量って表情は。世界最大の謎が解けたんじゃあるまいし。でも、最後の二人のチャットって、どういう意味なんだろう……。

#0 Spot 8
一ノ瀬空

{character:一之濑空}むむ……口だと説明しづらいから、書くね。

#0 Spot 8

恋愛ゲームは苦手だけど、数字は大得意の一ノ瀬くん。今の自信満々な表情を見ていると、13歳の少年だということを忘れそうになる。

#0 Spot 8
一ノ瀬空

{character:一之濑空}これは、ハートの方程式だよ。

#0 Spot 8
player

{character:player}ハート……?

#0 Spot 8
一ノ瀬空

{character:一之濑空}ある天才数学者が、お姫様に身分違いの愛を伝えるために書いた、特別な方程式だって言われてる。

#0 Spot 8
一ノ瀬空

{character:一之濑空}この方程式をグラフにするとハートの形になることから、「ハートの方程式」って呼ばれてる。さっきの主人公の返信も、似たようなやつなんだ。

#0 Spot 8

一ノ瀬くんがノートを広げると、演算過程がズラッと書かれていて、一番下には4つのグラフがある。

#0 Spot 8

主人公が書いた4つの方程式のグラフだとおぼしき一連の図形は、それぞれ「L、O、V、E」の形をしていた。

#0 Spot 8
一ノ瀬空

{character:一之濑空}愛してる、と伝えたかったんだろうね。

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player

{character:player}はぁ~。開発スタッフの中に絶対理系専攻がいるね……こんなの思いつくなんてすごいや。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}まぁ、今の時代なら、たまたまSNSとかで見かけて使ったかもしれないけど。

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player

{character:player}そう言えば、さっきCatChatで見たんだけど。このゲーム、ハッピーエンディングがいっぱいあるんだって。見た限りだと、4種類以上は絶対にあるはず。

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player

{character:player}興味があるなら、別のエンディングも回収しようよ。

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それを聞いた一ノ瀬くんはノートを閉じて、コントローラーを握った。どうやらデータで攻略法を導き出すのはとりあえずやめたらしい。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}ユーザー全員が、それぞれの思いで選択肢を選んで、違うエンディングに辿り着いてるけど……ボクはデータに頼って攻略しようとしたら、クリアすら出来なかった。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}ゲームデザインに問題がないとわかった以上、クリア出来ない原因はボクの実力不足だとはっきりした。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}今度こそ、ボク自身の選択でハッピーエンドを達成してみせるよ。

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player

{character:player}うん、頑張ろう。

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理想と現実は違うとよく言われる。特に他人が作ったゲームなら、その理想がプレイヤーのそれと違うことはよくある。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}むう……「粒子ちゃん」は怒ってないって言ってるのに、なんで好感度が下がるんだろう……。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}あれ?水曜日にデートって、昨日水曜日は用事があるって言ってたのは「粒子ちゃん」の方じゃないか。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}何でもいいよって言ってた割に、何を注文しても好感度がただ下がり……なんで?何か隠し要素を見落としてる?

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player

{character:一之濑空}……。

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一ノ瀬くんに、私はそれ以上何も言わなかった。自力でクリアできるまで、一ノ瀬くんの「お勉強」はまだまだ続きそうだ。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}{var:player_nickname}さん、今、電話大丈夫?

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前回一緒にゲームをクリアしてから、一ノ瀬くんは毎日電話してくるようになった。学校のことや麻雀のことをお互いに共有し合うのは、日常の一部になりつづある。

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もちろん、たまに会話が続かないこともあるけど。一ノ瀬くんは、まだ誰かに自分の気持ちを伝えるのが苦手だからしょうがない。

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player

{character:player}ゴホゴホ!もちろんいいよ。どうしたの?

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}え、咳してなかった?風邪?

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player

{character:player}ちょっとだけ風邪引いたかも。でも大丈夫、すぐ治るから。

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一ノ瀬空

{character:一之濑空}キミはボクにとって大切な人だから、いつも健康でいて欲しい……。

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少年のドストレートな言葉は、大の大人の私を無言にさせた。いつそんな言葉を覚えたのか、と電話を切った今も驚きが続いている。

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もちろん、一ノ瀬くんにとってそれは悪い変化ではない。むしろ、最初の頃よりだいぶ明るくなった気がする。

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{character:player}ゲームって人にここまで影響を与えるのか……なんか一ノ瀬くん、ゲームの中の「一ノ瀬空」に段々似てきてないか……?

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ピロン!と、スマホの通知が鳴った。一ノ瀬くんからのメッセージで、「白湯をたくさん飲めば風邪が治るってネットに書いてあった。」とある。

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{character:player}これ……なんか優良彼氏みたい……、いや、気のせいだよな。

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{character:player}でも一週間でここまで変わるなんて、一ノ瀬くんは本当に飲み込みが早いな。

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電話の向こうの少年がどんな顔でメッセージを送ってるのか、気になってきた。

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今度は彼に別のゲームをおすすめしてみよう。どんな風に変わるのか、今から楽しみだ。