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明智英樹 — 明智英樹
明智英樹 — 契約
明智英樹 — 仮装舞踏会2020
明智英樹 — 運命の夏
明智英樹 — 去りし夏日を想ふ
明智英樹 — 湯気立ち込める温泉郷

明智英樹

大学の麻雀サークルの部長。幼い頃から英才教育を受けてたためか、いつも微かな笑みをたたえており人に親切。 祖母の影響でルールでローカル役が有効でない場合でも、ローカル役を作ってしまうことがある。 他人に知られていない過去があるようで、過去に関するような話題が出てくると、決まってごまかされてしまう。

Profile

Stature
177cm
Birth
1月9日
Age
20
Blood Type
O
CV
立花慎之介
Hobby
乗馬、囲碁

Skins

明智英樹の初期衣装

明智英樹と契約を結んだ時に入手できる着せ替え衣装

ハロウィンテーマの着せ替え衣装

「雀魂夏祭り・一姫当千」にて購入できる水着テーマの着せ替え衣装

「清秋の出会い」にて購入できる浴衣テーマの着せ替え衣装

「湯治旅の酒宴」にて購入できる、温泉テーマの着せ替え衣装

Emotes

明智英樹 emote 0 明智英樹 emote 1 明智英樹 emote 2 明智英樹 emote 3 明智英樹 emote 4 明智英樹 emote 5 明智英樹 emote 6 明智英樹 emote 7 明智英樹 emote 8 明智英樹 emote 10 明智英樹 emote 11 明智英樹 emote 12 明智英樹 emote 888 明智英樹 emote 993 明智英樹 emote 982 明智英樹 emote 969 明智英樹 emote 941
  • プレゼント・普通

    ありがとうございます。君らしい贈り物ですね

  • プレゼント・好み

    これは...覚えていてくれたんですね。ずっと大切にします

  • 絆レベルアップ5

    勝利が全てではありません。これは全国大会で得た教訓です。だから...僕が「雀卓の魔王」だということは二人だけの秘密にしましょう、ね?

  • 絆レベルアップ1

    サークル活動は大変ですか?何かあったらいつでも僕に相談してください

  • 絆レベルアップ2

    疲れたら僕に言ってください。君はもう充分頑張っていますよ。ちょっと休んだって大丈夫です。僕も一緒に手伝いますから

  • 絆レベルアップ3

    次は一緒に乗馬に行きましょうか。大丈夫ですよ。ゆっくり教えていきますから。こう見えて僕は馬術が得意なんです

  • 絆レベルアップ4

    昔の僕だったら只々勝利を求めるだけでした。そのために多くのことから目をそらしていました。今は...君と一緒に麻雀を打つ過程を大切にしたいと...そう思っています

  • 隐藏语音 - 新年

    明けましておめでとうございます。新年も楽しい出来事にたくさん出会えるといいですね

  • 隐藏语音 - 情人节

    君にこれを贈りましょう。君が前に言っていた物です。気に入っていただけるといいのですが。

  • メイン1

    勝利は確かに重要なものですが、そこに至る過程もまた重要です

  • メイン2

    君が来てくれてからサークル活動はとても賑わっています。お礼に何かごちそうしましょう

  • メイン3

    僕は麻雀サークルの部長をしているけど、もし君が参加してくれてなかったら今頃困ったことになっていたでしょうね

  • メイン4

    全国大会優勝?いいぇ。きっと見間違いです。世の中には似ている人は多いですからね。それに、あの「雀卓の魔王」と僕ではオーラが全然違います。

  • メイン5

    魂天神社はいい所ですね。祖母の家のように安心する景観ですし、それに面白い人たちも多いのでなんだか落ち着きます。もっと早くから出会えていたら......いえ、何でもありません。ただ、昔を思い浮かべてただけです。気にしないでください

  • メイン6

    願いですか...いつか僕が明智家の支配から離れて自由になることでしょうか。今の君との日常はとても気持ちがいいんです

  • メイン7

    「麻雀は、結果より過程を楽しもう。」これは祖母が僕に教えてくれたことです。今思うと、あの頃はもっと祖母と会うべきでした。でも、愚かな僕は勝つことしか頭にありませんでした。結局、勝利を手にしたときには、祖母は......「雀卓の魔王」とは皮肉な呼び名です。

  • メイン8

    ローカル役に興味があるんですか?僕が教えてさしあげましょうか。祖母からたくさん教えてもらいましたから。ですが、そのせいでついそれらの役を作ろうとしてしまうんです。面白い役は多いんですが、今はどれも使われていないのが残念ですね。

  • ログイン・普通

    おや、僕に相談事でもありましたか?

  • ログイン・絆LvMAX

    今日もお疲れ様です、一緒に息抜きしませんか?麻雀でも何でもいいですよ。

  • 契約を結ぶ

    あなたと一緒にいる時間が長くなるほど、このような日常を失うのが怖くなります。ずっとこのまま過ごしたい。もちろん、麻雀をするだけというわけではありませんが…

  • SP-友人戦部屋に入場する時

    僕もご一緒させてください。待たせてしまいましたか?

  • SP-友人戦部屋で準備した時

    僕の準備はできています

  • 出会い

    こんにちは、明智英樹といいます。僕は麻雀が好きで、大学では麻雀サークルの部長をやっています。君は麻雀がお好きですか?

  • 北抜き

    ペーを抜きましょう

  • チー

    チー

  • ダブル立直

    ダブルリーチです。ご注意あれ

  • カン

    カン

  • ポン

    ポン

  • 立直

    リーチ

  • ロン

    ロン、感謝します

  • ツモ

    すみません、ツモです

  • 白

    ハク

  • 北

    ペー

  • 純全帯幺九

    ジュンチャン

  • 純正九蓮宝燈

    チューレン九(きゅう)メン待ち

  • 大三元

    ダイサンゲン

  • 大四喜

    大スーシー

  • 地和

    チーホー

  • ダブル立直

    ダブリー

  • 東

    トン

  • ドラ

    ドラ

  • ドラ10

    ドラ10(じゅう)

  • ドラ11

    ドラ11(じゅういち)

  • ドラ12

    ドラ12(じゅうに)

  • ドラ13以上

    ドラたくさん

  • ドラ2

    ドラ2(に)

  • ドラ3

    ドラ3(さん)

  • ドラ4

    ドラ4(よん)

  • ドラ5

    ドラ5(ご)

  • ドラ6

    ドラ6(ろく)

  • ドラ7

    ドラ7(なな)

  • ドラ8

    ドラ8(はち)

  • ドラ9

    ドラ9(きゅう)

  • ダブル北

    ダブペー

  • ダブル東

    ダブトン

  • ダブル南

    ダブナン

  • ダブル西

    ダブシャー

  • 断幺九

    タンヤオ

  • 対々和

    トイトイ

  • 二盃口

    リャンペーコー

  • 発

    ハツ

  • 国士無双十三面待ち

    コクシ十三メン待ち

  • 国士無双

    コクシムソウ

  • 海底摸月

    ハイテイ

  • 河底撈魚

    ホウテイ

  • 混老頭

    ホンロートー

  • 混全帯幺九

    チャンタ

  • 混一色

    ホンイツ

  • 九蓮宝燈

    チューレンポートー

  • 嶺上開花

    リンシャン

  • 立直

    リーチ

  • 流し満貫

    流しマンガン

  • 緑一色

    リューイーソー

  • 南

    ナン

  • 平和

    ピンフ

  • 槍槓

    チャンカン

  • 七対子

    チートイ

  • 清老頭

    チンロートー

  • 清一色

    チンイツ

  • 三暗刻

    サンアンコー

  • 三槓子

    サンカンツ

  • 三色同刻

    三色(さんしょく)ドーコー

  • 三色同順

    三色(さんしょく)ドウジュン

  • 四暗刻

    スーアンコウ

  • 四暗刻単騎

    スーアンコウ、タンキ

  • 四槓子

    スーカンツ

  • 天和

    テンホー

  • 西

    シャー

  • 小三元

    ショーサンゲン

  • 小四喜

    小スーシー

  • 一盃口

    イーペーコー

  • 一発

    イッパツ

  • 一気通貫

    イッツー

  • 中

    チュン

  • ツモ

    ツモ

  • 字一色

    ツーイーソー

  • 清算一位

    僕の勝ちですね

  • 清算一位・高い点数で勝利

    すみません、ちょっと痛いかもしれませんよ

  • 清算一位・ロンで勝利

    今回は僕にツキが回ってきただけですよ

  • 倍満

    倍満(バイマン)

  • 九種九牌

    九種九牌(キュウシュキュウハイ)

  • 数え役満

    数え役満(カゾエヤクマン)

  • 満貫

    満貫(マンガン)

  • ノーテン

    ふぅ...ノーテンですか...

  • 三倍満

    三倍満(サンバイマン)

  • 四風連打

    スーフーレンダ

  • 四槓散了

    スーカン流れ

  • 四家立直

    四家立直

  • 跳満

    跳満(ハネマン)

  • 聴牌

    聴牌(テンパイ)

  • 役満

    ヤクマン

  • ダブル役満

    ダブルヤクマン

  • トリプル役満

    トリプルヤクマン

  • 四倍役満

    四倍(よんばい)ヤクマン

  • 五倍役満

    五倍(ごばい)ヤクマン

  • 六倍役満

    六倍(ろくばい)ヤクマン

  • SP - ドラを捨てた時

    僕にとっては都合が良いのですが、他の人にとっては都合が悪いかもしれませんね

  • SP - 倍満/三倍満聴牌

    みなさんご注意ください

  • SP - 同じ牌を連続に捨てた時

    この程度いつものことです

  • SP - 残り牌が10枚以下の時

    最後まで気は抜けませんよ

  • 対局開始

    対局を始めましょう

  • SP - 役満聴牌

    たまにはこういうのも試してみましょう

  • 帯幺九

    帯幺九(タイヤオチュウ)

  • 根

    根(ルート)

  • 将対

    将対(ジャントイ)

  • 金勾釣

    金勾釣(キンコウテャオ)

  • 嶺上放銃

    嶺上放銃(リンシャンホウジュウ)

  • 龍七対

    龍七対(ロンチートイ)

  • 清対

    清対(チントイ)

  • 清金勾釣

    清金勾釣(チンキンコウテャオ)

  • 清龍七対

    清龍七対(チンロンチートイ)

  • 清七対

    清七対(チンチートイ)

  • 清十八羅漢

    清十八羅漢(チンジュウハチラカン)

  • 清幺九

    清幺九(チンヤオチュウ)

  • 十八羅漢

    十八羅漢(ジュウハチラカン)

定められた未来

絆LV1で開放

ぼくのパパとママは、ほかのうちのパパやママとはちがう――明智英樹は、幼い頃からそれに気付いていた。 朝目覚めた時に「おはよう」と言われたことも、夜寝る前に愛情を込めた「おやすみ」の言葉を貰ったことも、ママの腕に抱かれながら絵本の読み聞かせを聞いたことも、一度も無い。両親の仕事は忙しく、家族の時間も自然と短くなっていった。 でも大丈夫。聡明でお利口さんの英樹少年は,既に一人きりでのお留守番にも慣れっこだ。 蓄音機、ラジカセ……部屋を賑やかにする「音を出す機械」はみんなお友達。特にお気に入りなのはテレビだ。テレビで見られるもの、摩訶不思議な世界。それから……一家団欒のひと時。 番組の温かい雰囲気につられてだろうか、今日の彼は疲れも忘れて深夜まで耐え、ようやく帰りの遅い父を迎えた。つい最近覚えた折り紙を慎重に手のひらに乗せ、父の傍に寄った。 「パパ、これウサギのおりがみ、あげる」小さな英樹がつま先を上げ、折り紙を机の上に置いた。 テレビのおはなしの通りなら、この後父は息子を抱き寄せて、息子の賢さを褒め、使用人まで呼びつけて、この折り紙を宝物としてガラスケースに入れるだろう……初めてこんな振る舞いをした英樹少年ははにかみ、顔を赤らめて俯いた。 そのせいで、半日かけて作った折り紙が床に落とされ、椅子のキャスターに押し潰される様を鮮明に目に焼き付けてしまった。 「将来性のないことはするな。」にべもない返事。父にとっては、息子からのプレゼントより、書類の方が重要らしい。「学習能力があるのなら、明日から勉強だ。政治家になること、これこそお前が歩むべき道だからな。」 「せーじか? パパ、ぼ、ぼく、よくわからないよ……」 父は机から顔を上げ、ようやく明智英樹を見た。「明智の家に生まれた以上、政治家以外の道は無い。」 明智家の当主であり、やるべきことが山積みの父には、幼い息子が父の言葉を理解出来たか確認する暇も無い。これ以上仕事の邪魔をするなという意を込め、彼は英樹に向かってひらひらと手を振った。 待ち望んだ褒め言葉がかけられることは、終ぞ無かった。 「ぼく……こんなのやだ……」泣きだしそうな英樹は唇を噛みしめ、破れた折り紙の破片を見ながらそう呟いた。 「せーじか」が嫌だったのか、それとも「パパ」が嫌だったのか。この問題は、この後も長い間にわたって、明智英樹という人間をずっと悩ませることになるのだった。

微笑み

絆LV2で開放

中学で生徒会長に選ばれると、明智英樹は無意識に、自分の感情を隠すようになった。 仏頂面で厳しい父親とは違い、彼は常に笑顔の仮面を被っていた。この仮面は非常に上手く機能していたが、通用しないパターンもあった。 「おぉ、英樹くんじゃないか! 学校は休みかね、ばあさんのとこへ遊びに来たんか。半年ぶりだなあ、また背が伸びたんじゃないか!?」英樹が車から降りると、近所のおじいさんが、周囲に聞こえるほど大きな声で話しかけてきた。 この町の住人は皆、こんな調子で人との距離感が非常に近く、毎年休みが来る度に同じやり取りが繰り返されている。父親の「英才教育」に縛られた英樹は、こういうおもてなしには慣れていない。それでも、居心地の悪さを隠しつつ顔をあげ、「おじいさん、こんにちは」と挨拶を返した。「微笑み」の仮面を被って。 「わはは、相変わらずお利口さんじゃ! 今度また、飴玉あげような!」近所のおじいさんがカラカラ笑ったかと思うと、すぐさま周りの人に自分の孫について話し出し、街中に笑い声が響き渡った。 これで丸く収まったなと安堵した英樹が、背後にいた祖母の複雑な表情に気付くことは無かった。 英樹のことを気遣って、その場では何も口出ししなかった祖母だったが、家に入ってすぐ、心配そうに呼びかけた。「英樹くん、無理に笑わなくていいのよ」 「えっと……」 「笑顔が好まれるのは、楽しい気持ちを伝えられたり、喜びを分かち合えるから。でもね、その魔法を使えるのは、心からの笑顔だけ」祖母は話しながら彼の頭をそっと撫でた。「だからね、笑いたくない時は笑わなくていいの。おばあちゃん、英樹くんにはもっと素敵な顔で笑ってほしいな」 学校では常に「素敵な会長」の称号をほしいままにして来た英樹だが、初めて人に直接「素敵な顔をしていない」と言われ、大きな衝撃を受けた。そこで彼は、庭の片隅にある水が張られた水瓶を使って、こっそり微笑みの練習を始めた――少しでも祖母の「素敵な顔」とやらに近付こうと。 しかし、空が夕焼けに染まり、薄暗くなって来ても、納得出来るほどの成果は無かった。凝り固まった頬の筋肉をほぐしながら、彼はぼんやりと空を眺めた。 なかなか難しい……彼はそう思った。 「チー」 「ポン」 「サンゾー!」 聞き覚えのある単語が、隣から聞こえる話し声や笑い声と共に彼の思考を遮断した。それは麻雀というゲームで、一飜市で生活する人々なら誰でも夢中になっているものだ。父に一切の娯楽にかかわるなと命じられていたが、英樹はうっすらとそのゲームに関する知識を持っていた。 ジャラジャラという洗牌の音に興味を引かれ、英樹はその場を立ち去ることが出来ずにいる。凪いだ水面に一粒の小石が投げ入れられて波紋が立ったかのように、彼は壁の向こうの世界への憧れを止められなかった。楽しい遊びに興じてみたいと思いつつも、父親の教えに背くことも出来ず、ただその場に立ち尽くしていた。 「英樹く~ん」どれほど経っただろうか、祖母の呼ぶ声を耳にした明智は、速足で家の中へ急いだ。まるで今起きた全てを忘れようとするかのように。 ところが、正に今彼の心をかき乱していた麻雀牌が、居間の机に散らばっている。英樹は戸惑いながら祖母を見た。 「やりたいのかい?」 「いえ……」麻雀への憧れを否定するつもりはない。確かに楽しみをもたらしてくれるゲームなんだろう。しかし本能が、近寄るべきでは無い、「パンドラの箱」は開けてはならないとも告げていた。 「牌の種類はわかるかしらね。今日はそれを使ってどう遊ぶかを教えましょう。ああ、その前に、順子、刻子、あとは対子について知ってもらわなくちゃね……」 「おばあ様!」自分の拒絶をあっさり無視したばかりか、麻雀のルールの説明を続ける祖母に、英樹は自分の声を張り上げた。「お父様が僕をここへ向かわせたのは、一人暮らしのおばあ様が寂しくないようにするためです。僕がこんなゲームをやるために来たわけでは……」 半ば自分に言い聞かせながら、誘惑に負けないように麻雀牌へ視線を戻した。しかし、人間である以上、近しい人の前で自分の本心を隠すのは難しい。 とっくに彼の迷いを見抜いていた祖母は、さっと「東」を一枚渡した。「おばあちゃんの願いは、ただ英樹くんが色んなことを楽しんで、元気に大きくなること……これだけよ。麻雀に興味があるならやってみたらどうかしら、お父さんのことは気にしなくていいから。」 「立派な後継者になる」ことに比べたら、その要求はあまりにも簡単だ。英樹は、肩に置かれた祖母の手から限りない勇気が沸き上がるのを感じた。しばし沈黙した後、彼は自分の声がはっきりと部屋中に響き渡るのを聞いた。「ではおばあ様、あがり方を教えてくれませんか?」 しばらくして、自ら揃えたローカル役が机の上に並び、まるで極上の甘味のように彼を興奮させた。役が出来上がると、英樹は「感情を隠すこと」もすっかり忘れ、心の底から湧き上がる喜びで破顔(わら)ったのである。 まさにその時、彼ははっきり分かったのだ。自分がこの麻雀というゲームを、好きになったことが。 隣の祖母も笑いながら軽く肩を叩いた。 「そうそう、そんな風に笑う英樹くんの方がよっぽど素敵よ。」

願い

絆LV3で開放

「僕の願いはもちろん、かの名作『パラダイスロスト』が現実になることだよ。そうなれば、誰もが自分の心のままに生きられて、白夜もこの世で自分の正義を貫くことができるようになるし!」 国立楓知大学麻雀サークルの活動中、誰かが言い出した「魂天神社の麻雀大会で優勝すれば、願いが叶う」という都市伝説に、四宮夏生が真っ先に反応した。 向かいに座る明智英樹は真剣に考え込む。……うーん、人と人の間に秘密のない世界、か。確かに良さそう。 部長が練習中の雑談を止めようとしないのを見て、部員たちは口々に自分の考えを言い、「自分なら何を願うか」という話題が広がっていった。 「毎朝、お母さんに元気なお花を届けてあげたいから、自分の花屋が欲しいな~。……そうすれば、気分もよくなると思うんだ~。」――小鳥遊さんの願いは温かみがあるな。 「大学に研究サークルの部費拡張を要求する! 多ければ多いほどよしだ!」――おや、未来さんの願いは意外と現実的だなあ。 「……どうしてもお願いしなきゃだめ? じゃあ……もう一度、家族と会いたい。」――どうやら、八木さんはあまりこの話題に参加したくないらしいな。 手際よく牌を取りながら、明智はそれらの願いが叶う可能性について考えた。そして、賑わっていた部室が急に静まり返り、複数の目線が自分に向けられているとわかった時、彼は自分がただの傍観者ではなく、討論会の参加者として見られているのだと気付いた。 もう長いこと、明智は麻雀の勝ち負けに執着していなかった。だから自然と、優勝者への褒美についてもほとんど関心を持たなかった。少しぼうっとした後、彼は久しぶりに自分の願いを真面目に考え始めた。 彼は窓の外にある運動場や、その周囲の芝生に目をやり、その鮮やかさに、彼は馬場を吹き抜ける風を思い出した。あれは、素の自分を解放出来る数少ない時間だよな……でも、得難いチャンスに「乗馬をやりたい」と願うのはちょっともったいないのでは? 明智は迷った末、かぶりを振ってこの案を却下した。 ならば自分が率いる、この麻雀サークルの全国優勝を願おうか。部長という身分的にもぴったりだし。しかし……実力で優勝した方が意義があるだろうし、魂天神社の力をわざわざお借りするほどではないよな。 まるで胸の内を見透かすように、窓から吹き込むそよ風が机の上のA4用紙をめくり、彼の本心を顕わにさせようとする。彼は人に気持ちを悟られないよう、目を伏せた。 出来ることなら、両親に謝ってもらいたいし、子供の頃に戻ってもっとおばあちゃんと一緒に過ごしたい。それから全国大会の時のあの激しい打ち方も直したい、それに……願いはあまりに多すぎて、両手でも数えきれないほどだ。 そして明智英樹は理解した、なぜこの伝説はこうも人を魅了してやまないのか――どんなに細い希望でも、人の欲望を膨らませるには十分だからだ。 「わっはっは、カン! 部長の番ですよ~」 麻雀牌のぶつかる音が彼を現実に引き戻した。勢いよく頭を上げた明智は、自分がまだ部室の麻雀卓の前に座っていることに気付いた。 こうも賑やかな環境にいては、一人で寂しく悔しかった記憶に浸る暇も無い。明智は今更ながら、自分の記憶に色鮮やかなものが増え、笑い声もどんどん明るいものになりつつあると気付いた。あの一匹狼だった自分にも友達が出来て、全てがよりよい方向へ進んでいるようだ。力で何かを改変するより、現状を維持し、楽しい日々を出来るだけ長く過ごせるようにする方が得策だろう。 この結論にたどり着き、明智はすっきりとした顔で牌を倒した。「すみません、それロンです。槍槓、ジュンチャン、ドラ2、11600!」 「えーーー!?」 点数を失った部員たちは悔しそうに牌譜を検討しに行った。残された明智は一人で席に座ったまま、心からこう願った。 流れに身を任せて、万事つつがなく、平穏に過ごせますように。 他のことまで、あまり欲張りにはなれそうにないな。

闇の中の歌劇場

絆LV4で開放

Possible Endings

End1.笑顔の仮面
コイン ×8000
End2.完璧じゃない君
光明の宝玉 ×1

Scenario Script

Spots 9, Scenes 257, Choices 3, Endings 0

#0 Spot 1

一晩の大雪が、一飜市を白く染め上げた。雪化粧した街を行く人々は冬の風に背を押されながら、積もった雪をギュッギュッと踏みしめて進む。

#0 Spot 1

この街に住む人たちは、忙しい生活の中でも決してロマンを忘れない。たとえこのような寒い日でも、歌劇場の前では大勢の人々が入場を待っている。その人混みの中、私は待ち合わせていた人物を見つけた。

#0 Spot 1

爽やかな金髪に青い瞳、細身だがしっかりした体格の彼――明智英樹が、階段の前で両手をコートのポケットに入れて立っている。カジュアルな服装なのに、どこかエレガントなオーラがあり、人混みの中でも目を引く存在感を放っている。

#0 Spot 1
player

{character:player}部長ー! こっちー!

#0 Spot 1

手を大きく振りながら明智くんを呼ぶと、彼もすぐ私に気付いてこっちに向かってきた。

#0 Spot 1

先日、明智くんが所属している国立楓知大学の麻雀サークルでは、他校の麻雀サークルとの試合前という大事なタイミングで、未来さん特製の麻雀練習用AI自動対戦卓が故障するというトラブルがあった。そこで、私は臨時の助っ人として、部員たちの練習相手を務めることになった。試合にも無事勝利出来たとのことで、お礼として今日のオペラに誘われたのだ。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}ここは部室じゃないんですから、名前で呼んで欲しいのですが……。

#0 Spot 1
player

{character:player}いやーごめんごめん。しばらく四宮くんや部員たちと一緒に部長部長って呼んでたからつい……。っていうか早くない? けっこう待たせちゃった?

#0 Spot 1

話すたびに白い息が漏れる。それを見るとより寒さの実感が深まり、私は思わず身震いをした。この寒さに対抗すべく、その場で足踏みしてみる。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}五分ほど前に着いたばかりです。それより、開演までまだ少し時間がありますし、劇場の見学でもしませんか? 一飜市では最も大きな劇場ですから、見て損はないはずですよ。

#0 Spot 1
player

{character:player}いいね! もちろん、解説はお任せしていいんだよね?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}ええ、よろこんで。

#0 Spot 1

劇場内に入ると、そこはまるで別世界だ。コンクリート製の重厚な壁は、外の寒さや喧騒を完全に遮断し、鏡のように天井のシャンデリアを映し出す大理石の床もさり気なく輝いている。

#0 Spot 1

恐る恐る明智くんの後ろについて、彼にこの建物について紹介してもらう。長い歴史からちょっとした小ネタまで、どこでそんな知識を仕入れるんだろうと思わずにはいられないほど教えてもらった。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}噂によると、この劇場を設計した建築家は、実際にデザインを手掛ける前の晩に、とても希少で美しい夜光石を手に入れたそうです。それを愛好するあまりに、この劇場のデザインにも取り入れたと言われています。この劇場が楕円のような形をしているのは、それが理由らしいです。UFOに似てる、とよく言われますけどね。

#0 Spot 1
player

{character:player}私はどっちかというと、卵の殻かなって思ってたよ。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}そういう解釈も出来ますね。卵の中からは新しい生命が産まれますし、芸術という命が生まれる場所であって欲しい……というデザイナーの願いも読み取れるんじゃないかと思います。実際に、新時代を代表する様々な芸術作品がここで生まれましたし。

#0 Spot 1
player

{character:player}そうなんだ……やっぱり部ちょ、いや、明智くんはここのことをよく知ってるね。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}父がオペラが好きだったので、その影響かと思います。6才あたりから、父によく連れられていて、多い時は一ヶ月に二、三回来たこともありますよ。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}その時はまだこんな斬新なデザインではありませんでした。現在の「卵の殻」は、拡張工事の際に作られたものです。

#0 Spot 1
player

{character:player}へー。それでか。

#0 Spot 1

気になったことは満足するまでとことん調べ尽くす、か。明智くんらしいというか。

#0 Spot 1

そんなこんなで、開演時間が近づいてきた。入場口に向かう途中で、劇場の雰囲気には場違いなタピオカドリンク屋が私の目を引いた。私の視線に気付いたのか、店員さんが熱烈に声を掛けてきた。

#0 Spot 1
店員

{character:店员}いらっしゃいませ~! ただいま三周年キャンペーン開催中です! 寒い日にもってこいの、ホットな新メニューも発売してますよー!

#0 Spot 1
店員

{character:店员}あ、お二人ご一緒でしたら、二杯目半額のキャンペーンもありますよ!

#0 Spot 1

明智くんと一緒だと気付いたのか、ペア向けのキャンペーンのことも紹介してくれた。

#0 Spot 1
player

{character:player}そうだなあ……。

#0 Spot 1
二杯買おう → Spot 2
また今度 → Spot 3
#0 Spot 2

店から漂うお茶と、蜂蜜の甘く優しい香りに鼻孔をくすぐられ、私は迷わず二杯買った。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}{var:player_nickname}さんって、「二杯目半額」のような売り方に弱いタイプなんですね。今度助っ人をお願いする時は、そういったものも考えたほうがいいでしょうか……。

#0 Spot 2
player

{character:player}違いますって。今日は寒すぎて手がかじかんじゃってるから、温かい飲み物で温まろうかなと思って。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}そうでしたか、すみません気付かなくて。あ、コート貸しましょうか?

#0 Spot 2
player

{character:player}いいのいいの、ちゃんと着てて。これを飲めば十分だよ。

#0 Spot 2

慌てて彼を止め、店員さんからドリンクの入った袋を受け取った。

#0 Spot 2
player

{character:player}あれ? 店員さん、頼んだのは二杯のはず……?

#0 Spot 2
店員

{character:店员}あ、こちらの方が先ほど追加されたものです。

#0 Spot 2

明智くんの方を向くと、彼は袋の中から追加の2杯を取り出した。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}こっちの二杯は白湯です。これで手を温めて下さい。 店員さんが作って下さったドリンクの方は、冷めないうちにいただきましょう。

#0 Spot 2

彼の有無を言わさず相手を信じさせ従わせてしまうイケボのせいか、あるいはそのスパダリっぷりのせいか、店員さんの明智くんを見る目は完全に一目惚れのそれになっているような気がする。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}さ、入りましょう。もうすぐ開演ですよ。

#0 Spot 3

オペラは3時間くらい続くし、途中で入退場して周りの人に迷惑をかけないために、水分を摂るのは控えめにしよう。店員さんには申し訳ないけど、お断りした。

#0 Spot 3

しかし、明智くんと入場列に並んでいる間も、私はずっとあの店から漂う良い香りに誘惑されていた。

#0 Spot 3
player

{character:player}この香り、絶対美味しいお茶なんだろうな……。

#0 Spot 3

と、小声で呟くと。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}この列だと、あと20分はかかるでしょうね。ちょっと待っててください、すぐ戻ります。

#0 Spot 3
player

{character:player}ちょ、明智くん?

#0 Spot 3

どこに行くのと尋ねようとする頃にはもう、明智くんは視界から消えていた。

#0 Spot 3

そして、暇すぎて壁に貼られたポスターの枚数を数え始めた頃に、明智くんは見覚えのあるロゴが描かれた袋を手に戻ってきた。

#0 Spot 3
player

{character:player}あれ、これってさっきの……?

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}見学してる時ずっと手を擦り合わせていたので、寒かったんだろうなと思いまして。これで温まりましょう。

#0 Spot 3
player

{character:player}それで、これを買いに行って来てくれたの?

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}はい。さっき飲みたそうな顔をしていたような気がしたのですが、もしかして勘違いでしたか……?

#0 Spot 3
player

{character:player}ううん、飲みたかった。よく気付いたなって思っただけ。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}今日は君へのお礼なので、君の気持ちを最優先にしなくちゃ、ですからね。

#0 Spot 3

明智くんは袋からドリンクを取り出して、慎重に渡してくれた。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}はい、どうぞ。結構熱いので、気をつけてください。

#0 Spot 3
player

{character:player}ありがとう。……明智くんのは熱くなさそうに見えるけど、店員さんが間違えたとか?

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}いえ、熱くないものを頼んだだけです。僕はそれほど寒くないので。ただ……。

#0 Spot 3
player

{character:player}ただ……?

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}二杯目が半額と言われて、つい……。

#0 Spot 3
player

{character:player}……ぷっ。

#0 Spot 3

明智くんは、見た目からはとてもそういうのにつられるタイプに見えない。だからこそ余計に笑えてしまう。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}さ、さぁ、入りましょう!

#0 Spot 4

ホールに入ってようやく、「一飜市最大級」を実感出来た。

#0 Spot 4

金と赤がランダムながらもバランス良く空間全体を彩り、各所に配置された金色のオブジェがいい味を出している。統一感のある空間にいると、まるで自分が小人にでもなったかのような感覚に襲われる。

#0 Spot 4
player

{character:player}5000人も入るホールなのに、ほぼ満席なのはすごいね……。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}音楽に言葉は要りません。たとえ他の言語で書かれていても、感情の流れやストーリーを肌で感じられる……この不思議な感覚も、オペラの人気に一役買っているんです。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}しかも今日は有名な歌手が揃っていますから、満席になるのも頷けます。

#0 Spot 4
player

{character:player}そうだったんだ……。チケット代、きっと高かったよね。何だか申し訳ないな。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}君が楽しんでくれるなら、これくらい大したことありませんよ。それに僕も、今日は珍しい体験が出来ましたし。

#0 Spot 4
player

{character:player}珍しい……?

#0 Spot 4

明智くんが手に持ったコップを軽く揺らすと、ドリンクがちゃぷちゃぷと音を立てた。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}いつもなら僕は同じ物しか買いませんが、君が選んでくれたドリンクはちょうど良い甘さで、意外と美味しかったです。

#0 Spot 4

そんな雑談をしていると、観客も入場し終わり、開演のベルが鳴り始めた。明智くんに「しーっ」のジェスチャーをして、幕が開くのを静かに待つことにした。

#0 Spot 4
役者A

{character:演员A}はいはい、わかりましたからあの可哀想なドアベルを虐めないで……あら、ごめんなさい。てっきり同居人かと……。どちら様?

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}すみません、金さんはこちらにお住まいでしょうか。昨日伺うと伝えたはずなのですが。

#0 Spot 4
役者A

{character:演员A}それなら住所が違いますわ、ミスター。金さんは隣の家です。あそこのお庭にいるラブラドールは狂暴なんですの、どうぞお気をつけて。

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}確かにそうみたいだな。けれど、君が扉を開けた時僕は確信した、主が僕をここに導いて下さったのだと。美しいレディ、僕は今二十四歳で、両親は健康で家庭環境もまあまあだし、経済力だってそこそこ……。

#0 Spot 4
役者A

{character:演员A}ミスター、ミスター? いきなりどうなさったの、そんなことを言い出して。

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}君が扉を開けた時、僕は君に一目惚れしたんだ。

#0 Spot 4

今日私達が観ているのは、ここの十大看板演目の中の一つ、「杏の花と静かな雨」。貴族の御曹司が庶民の女性に一目惚れし、二人は地位と宗教の差を乗り越えて愛し合うが、御曹司の父親の猛反発に遭い、悲しい結末を迎える……というストーリーだ。

#0 Spot 4

御曹司役の歌手はやんちゃな放蕩息子を生き生きと演じ、観客から喝采を得ている。

#0 Spot 4

薔薇の花束を手に、雪の中片膝立ちで彼女への愛を歌い出すと、観客の誰もが彼に共感せざるを得なくなる。

#0 Spot 4

でもやっぱり何かが足りないんだよな、と思いながら隣の明智くんをチラッと見る。

#0 Spot 4

明智くんは相変わらずゆったりと座り、優しい表情でオペラを楽しんでいる。もしかしてこれが本当の御曹司なんじゃないかとつい思ってしまった。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}……?

#0 Spot 4

私の視線を感じたのか、明智くんは目で「どうしたんです?」と聞いてきた。慌てて頭を横に振って何でもないと伝え、もう一度ステージの上に注意を向けた。

#0 Spot 4

重々しいメロディの中、厳格な父親が息子の恋に気付いてしまう。家族への裏切りだと言って息子を軟禁し、「正しい」結婚相手に会わせる。

#0 Spot 4

愛し合う二人が引き離され、御曹司は彼女を守るため父親の言うことに従う振りをしなければならない。父親は御曹司の誕生日に婚約の発表をすると決めたが、その当日、愛に苦しむ御曹司は反旗を翻した。

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}紳士淑女の皆様、本日は私の誕生日パーティーにお越しくださり、誠にありがとうございます。本日、私は皆様にお伝えしたいことがございます。

#0 Spot 4
役者C

{character:演员C}ゴホン、我が息子が失礼した。気にせずパーティーを楽しんでくれ。……いいか、お前は黙って部屋に戻れ。そうすれば不問にしてやる。

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}父さん、私はもう決めたんです。

#0 Spot 4
役者C

{character:演员C}黙れ!

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}父さん、その杖で私の背中を叩いても無駄です。部屋に閉じこめられたら毎日大きな声で宣言しますし、たとえ私の舌を切り落としても紙とペンで書き続けます。

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}私は——とある新聞社の編集者を愛しています。彼女は自由とロマンを胸に、毎日を楽しみながら生きています。私は彼女に真心を捧げると決めたのです!

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}今までもこれからも、未来永劫、私は彼女一人しか愛しません。彼女を花嫁にし、私の姓を授けたいのです!

#0 Spot 4
役者C

{character:演员C}黙れ、このバカ息子が! とうとう気でも狂ったか!

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}父さん! 私はただ、一人の女性を愛している、それだけです。いかなる法にも触れては……

#0 Spot 4
役者C

{character:演员C}今の地位があるのは誰のお陰だと思ってる! わしが今までお前に甘過ぎたのが悪かった。一家の長を怒らせるとどうなるか、今日こそ思い知らせてやる! さっさと連れ出せ!

#0 Spot 4

幼い頃から順風満帆だった御曹司、自分の親が最大の障害になる日が来るとは思ってもいなかっただろう。言葉で抗ったものの、結局彼は地下室に閉じ込められ、心身ともに日に日に衰弱していくことになった。

#0 Spot 4

物語が始まった時にはあんなに溌剌としていた人がここまでの仕打ちを受けるのを見て、ただのお芝居だとわかっていても可哀想だと思ってしまう。

#0 Spot 4

全てを奪われた御曹司は地下室に差し込む月の光に向けて深呼吸し、愛する人への思いを言葉にしようと口を開いた。どんな悲しくも美しい歌が飛び出すのだろうかと、勝手に期待していると……。

#0 Spot 4
役者B

{character:演员B}愛する人よ、この命が枯れる前に——うわぁ!?

#0 Spot 4

最初のワンフレーズが流れたその時、ホールが急に真っ暗になった。

#0 Spot 4
player

{character:玩家}な、何事!?

#0 Spot 4

ホールには窓が無いので、照明が落ちると正真正銘の真っ暗闇になってしまう。これもオペラの演出なのかと一瞬思ったが、演者さんもびっくりしていたから多分違うのだろう。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}{var:player_nickname}さん、大丈夫ですか?

#0 Spot 4
player

{character:玩家}大丈夫。これ……そういう演出とか?

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}残念ながら、多分違うと思います。停電したのかもしれません。はぁ……オペラにするんじゃなかったですね……。

#0 Spot 4
player

{character:玩家}明智くんのせいじゃないよ。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}いえ、来る前にちょっと迷ったんですよ。ここの看板演目はどれも悲劇で、不吉だなと思って。

#0 Spot 4
player

{character:玩家}え? ……そういうの、意外と気にするタイプなの?

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}そこまで信じてるつもりはありませんが、祖母の影響かもしれません。毎年祖母の家に帰省するのですが、あの人は信心深いので。あ、でも一度も僕に強要したことはありませんでしたよ。

#0 Spot 4
player

{character:玩家}へえ、おばあさんと仲良しだから、言い伝えやジンクスも身近に感じるんだね。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}ええ……それもあって、悲劇を見ていたら停電に遭ったのが、もしかしたら僕のせいなんじゃないかと思ってしまいました。せっかく誘ったのに。

#0 Spot 4

明智くんの声には、はっきりと後悔の色が出ている。今回のお出かけに本気なのが伝わってくる。

#0 Spot 4
スタッフA

{character:工作人员A}ご観劇の皆さま、劇場内停電により、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。ただいま予備電源に切り替えています。照明の復帰は約十五分後を予定しております。それまで慌てず、お席で今しばらくお待ち下さい。

#0 Spot 4

停電で放送も使えないようで、劇場のスタッフは拡声器を使って停電のことをホール内に知らせている。困惑や不満はあるものの、観客はみんな落ち着いて席で待っているようだ。

#0 Spot 4

拡声器を持ったスタッフの他、懐中電灯を使って秩序を守ろうとするスタッフもあちこちにいる。

#0 Spot 4

わずかな光により、完全な暗闇ではなくなったので、ややリラックス出来るようになった。明智くんの方を見てみると、彼も同じようにこちらを振り向いて微笑んだ。

#0 Spot 4

一分、二分……暗闇の中だと十五分でもいつもより長く感じちゃうなと思っていたら、明らかに十五分経ったと思われるような時間になっても、劇場内の照明が復帰する気配は全く無い。

#0 Spot 4

スタッフの懐中電灯の光は、この5000席を収容出来るホールの中では心許ない。なぜか起動しない予備電源に、痺れを切らした観客達の声が上がるようになってきた。

#0 Spot 4

さっきまで静かに待っていた観客達も、スタッフに向けて不満の声を発し、ホール内の雰囲気が一段と重くなってきたような気がする。

#0 Spot 4
スタッフの案内を静かに待つ。 → Spot 5
周りの人を慰める。 → Spot 6
#0 Spot 5

むやみに動いても、転んで怪我するのが関の山だ。ここは落ち着いてスタッフの指示を待つことにした。

#0 Spot 5

予想以上に長い時間暗闇の中にいるからか、周りの観客達もはスタッフに文句を言い始め、みんな限界なんだなと感じる。

#0 Spot 5
観客A

{character:观众A}もう我慢出来ない! すみません、帰ります!

#0 Spot 5

あーあ、恐れていたことがやっぱり起こった。近くの席に座っていた女性客が闇に耐えられなくなり、とうとう爆発してしまった。叫んで立ち上がったかと思うと、手探りで外へ出ようとした。

#0 Spot 5
スタッフB

{character:工作人员B}お客様! もうすぐ予備電源が起動するのでその場でお待ちください!

#0 Spot 5
観客A

{character:观众A}嫌よ、もう帰る! もうこんなとこ居られないです!

#0 Spot 5
スタッフB

{character:工作人员B}お客様! お客様!!

#0 Spot 5

暴れる客を落ち着かせようと懐中電灯を持ったスタッフがこちらに近付き、わずかな光が周りを照らして、客はその光を頼りに出口へ向かおうとする。その客と同じ座席列にいた私は避けようもなく目の前で足を踏まれてしまった。

#0 Spot 5
player

{character:player}いてっ。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}大丈夫ですか?

#0 Spot 5

私の呻き声を聞いて、明智くんはスマホを取り出して足の辺りを照らしてくれた。靴の表面に踏まれた痕跡がはっきりと残っている。あの客の「傑作」になること間違い無しだな。

#0 Spot 5
player

{character:player}ハイヒールで踏まれなくてよかった。もしそうだったらここを出て次の行き先が病院になるとこだったよ。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}怪我が無くて良かったです。次はちゃんと喜劇を選ぶことにします……。

#0 Spot 5
player

{character:player}いいね。それより、これからどうする? みんな帰っちゃいそうだけど。

#0 Spot 5

一人目を皮切りに、他の人も続いて外へ出ようとし出して、状況は一気に混乱に陥った。スタッフがいくら現場の秩序を守るため奮闘しようと、出口へと蠢く影は増える一方。

#0 Spot 5

足音や物が落ちる音、他人にぶつかる音や悲鳴があちこちから聞こえる。ここまで混乱した状態は劇場のスタッフにとっても初めてだろうと思いつつ、私たちは一部の理性的な観客と一緒に着席したままで照明が復活するのを待つ。

#0 Spot 5

帰ろうとする客がほぼ全員出て行った頃、予備電源がやっと起動出来たらしく、ホールの中は再び煌びやかな景色に戻った。

#0 Spot 5

さっきまで満席状態だった客席にはほとんど客が残っておらず、その代わり通路は人々で溢れている。この様子を見て、オペラの再開は難しいなと思った。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:player}……ぷっ。

#0 Spot 5

カオスな状況を見守るのをやめて、明智くんの方を見ると、彼は変わらず微笑んでいる。さっきまで自分を責めるようなことを言ってたのに、その笑顔はまるで仮面のようだ。

#0 Spot 5
劇場放送

{character:剧院广播}皆様、本日はご迷惑をおかけし大変申し訳ありませんでした。安全確保のため、本日の上演は中止とさせていただきます。振替上演につきましては、改めてご案内させていただきます。

#0 Spot 5
劇場放送

{character:剧院广播}本日の停電につきまして、劇場のスタッフ一同、心よりお詫び申し上げます。

#0 Spot 5

ちょうど場内アナウンスが響き、幕も下り始めた。御曹司と庶民のお嬢さんの物語、続きはまた次回のようだ。

#0 Spot 5

オペラを引き続き楽しみたかったけど、今日のところは明智くんと一緒に帰るしかないな。

#0 Spot 6
player

{character:player}このまま待っても仕方ないし……どうしよう、明智くん。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}あれ、もしかして僕に何とか出来る力があるとでも思ってます?

#0 Spot 6
player

{character:player}出来たりしないかな~って! 頼りにしてるし。ま、根拠はないんだけどね。

#0 Spot 6

暗闇の中で顔が見えないが、彼の声はなんとなく嬉しそうだなと思った。

#0 Spot 6

懐中電灯を持ったスタッフがこっちに近づくと、明智くんは立ち上がってスタッフに何か話したが、周りの人たちの声で内容までははっきり聞こえなかった。わかったのは、スタッフの人がはっと何かを悟ったかのようにステージへ走っていったことだけ。

#0 Spot 6
player

{character:player}スタッフになんて言ったの?

#0 Spot 6

明智くんが戻ったあと、気になりすぎて聞いてみたけど、彼は笑うだけで答えてくれなかった。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}すぐわかると思いますよ。

#0 Spot 6
player

{character:player}それってどういう……?

#0 Spot 6
役者B

{character:演员B}愛する人よ……!

#0 Spot 6

急にステージの方から場内に響き渡る歌声が聞こえてきた。何も見えない暗闇の中、ステージ上の歌手は演技を続けることにしたようだ。

#0 Spot 6
player

{character:player}このまま続けるようにアドバイスしたの?

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}みんなの気持ちに訴えるには、音楽が一番効果的ですからね。このホールは何もしなくても音が良く響くように設計されていたので、音響設備が無くともステージ上の声は十分に聞こえるはずです。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}後から5000席に拡張したとは言え、外周の音響設備はあくまで補助的なものなんですよ。それに、演者は電気で動いてる訳ではありませんし、停電しても上演は続けられるでしょう。

#0 Spot 6
player

{character:player}そんなことまで知ってるの……?

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}興味を持ったことなら、とことん調べて損は無い、そうでしょう?

#0 Spot 6
player

{character:player}それはそうだけど。

#0 Spot 6

目を凝らしても輪郭しか見えないような闇の中だけど、彼が人差し指を立てて「しーっ」としたのはわかった。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}ここから長い独唱が始まるのですが、ここが今日一番聴いて欲しかった所ですので。

#0 Spot 6

ホールいっぱいに響く歌声には、愛する人を守りたいという想いが籠められていて、中世の地下室が目に浮かぶようだ。

#0 Spot 6

伴奏の旋律やハーモニー、そして演者の歌声が絶妙に一体となって、聴衆の感情を動かし、御曹司と一緒に悲しませ、反抗を決意させる。

#0 Spot 6

時に優しく、時に激しく。その歌声は現場の混乱を吹き飛ばすかのように、一人ひとりの耳に、心に染み渡っていく。そしてやっと、騒音に溢れていたホールは再び静けさを取り戻した。

#0 Spot 6
役者B

{character:演员B}初めて出会ったその瞬間から、君と一緒に歩むことは決まっていた。僕の魂を奪った人よ、君は天使、それとも悪魔? しかし僕は知っている、君はただ一人の少女であると。僕をこんな風にしたのは、君への愛だと。

#0 Spot 6

私はその歌声に心奪われ、少しでもステージを照らそうと、スマホを取り出してライトを声の方向に向けた。意外にも、明智くんもほぼ同時に同じことをした。

#0 Spot 6

そして周りの人も私たちを真似し出した。スマホが照らせる範囲には限界があったが、何とかステージ上の人影の動きがわかるようになった。

#0 Spot 6
player

{character:player}停電しなかったら、表情までわかったのに……残念。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}でも、こんなレアな演出が見れたのは停電が起きたからですよね。

#0 Spot 6
player

{character:player}いいこというじゃん。でも確かに、御曹司の苦悩を表す歌だし、闇の中でこそ感じられる美があるかもしれないね。

#0 Spot 6

ソロパートの最後に、御曹司は父親への反抗を固く決意し、地下室から脱走した。

#0 Spot 6

そしてやっとの思いでヒロインとの再会を果たしたタイミングで、ようやく予備電源が動いたらしく、二人の愛を彩るようにホールの中は再び煌びやかな光景に戻った。

#0 Spot 6
役者B

{character:演员B}僕の心は決して高潔とは言えないが、君のことを愛していることだけは誓える……

#0 Spot 6
役者A

{character:演员A}愛、なんて美しい響きなの……

#0 Spot 6
役者B

{character:演员B}僕は喜んで君に魅了されよう! 過去の僕がどんなに恵まれていようと、今は君に愛されることだけが一番の宝なんだ……!

#0 Spot 6
役者A

{character:演员A}二人の未来が犠牲になると知っていても、貴方からの薔薇を受け取りたい。私はいったいどこまで馬鹿なのと、何度も自分に問いかけた……

#0 Spot 6
役者B

{character:演员B}しかし、愛する人よ、僕たちはきっと共に歩む運命なんだ!

#0 Spot 6
役者A

{character:演员A}そうね、愛しい人。これからは二度と離れないことを、お互いに誓いましょう……。

#0 Spot 6

スマホをしまって二人の歌を聞いていると、いつの間にか涙を流していた。愛、なんて美しいんだ……!

#0 Spot 6
劇場放送

{character:剧院广播}皆さま、本日はご迷惑をおかけいたしまして誠に申し訳ありませんでした。安全確保や電源復旧作業のため、本日の公演は以上となります。お気をつけてご退場くださいませ。また、振替上演につきましては、後日改めてご案内させていただきます。

#0 Spot 6
劇場放送

{character:剧院广播}本日の停電につきまして、スタッフ一同、心よりお詫び申し上げます。

#0 Spot 6

停電した時はどうなることやらと思ったが、劇場を出てから今までずっと、あの暗闇の中での歌声を思い返しては感動の余韻に浸っていた。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}{var:player_nickname}さん、この後予定がなければ、コーヒーでも飲みませんか。アクシデントで不安にさせてしまったお詫びとして、ぜひ奢らせてください。

#0 Spot 7
player

{character:player}なにそれ、停電は明智くんのせいじゃないでしょ。そんなに気にしなくていいよ。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}いいえ、僕が悲劇を選んだからこうなったんです。それに今日の思い出が、停電で終わって欲しくないので……。

#0 Spot 7

私は別に気にしてないけど、明智くんは深刻そうに眉間に皴を寄せている。そんな顔されたら断りづらいじゃん。

#0 Spot 7
player

{character:player}今日のことは予測出来るものじゃないよ。停電は確かに残念だったけど、アクシデントじゃなくてサプライズだと思えば気が楽にならない?

#0 Spot 7

雪の重さに耐えかねた松の枝が垂れ下がり、上に乗った雪がドサっと地面に落ちてきた。沈黙。さすがの私でもちょっと恥ずかしくなってきた。めちゃくちゃなことを言っている自覚はあるけど、それを聞いて黙り込む明智くんも明智くんだ。

#0 Spot 7

パラパラと落ちてくる雪を避けようとした時、明智くんは急に笑い出した。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}ふっ、ははは。そうですね、わかりました。では、言い方を変えますね。もっと一緒にいたいので、一杯奢らせてもらえませんか?

#0 Spot 7
player

{character:player}いいよ。実は私もそう思ってたんだ。

#0 Spot 7
店員

{character:店员}いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}いつもの、スペシャルブレンドとケーキのセットで。君は?

#0 Spot 7
player

{character:player}同じものを。

#0 Spot 7
店員

{character:店员}かしこまりました。しばらくお待ち下さい。

#0 Spot 7

明智くんが選んだカフェはオーセンティックな雰囲気で、優雅だけど派手過ぎることもない、ちょうどいい感じの店だ。窓辺には様々な多肉植物の鉢が置かれ、静かな雰囲気が素敵。

#0 Spot 7
player

{character:player}それにしても、「いつもの」って、ここはよく来るの?

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}麻雀サークルの集合場所として、よくここを使っていました。ここ最近は来られていませんけどね。

#0 Spot 7
player

{character:player}へー、だからメニューも見ないで注文出来たんだ。

#0 Spot 7

明智くんが迷わず注文するメニューならきっと美味しいだろうと思いつつ、店内に流れる流行歌に乗せて鼻歌を口ずさんだ。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}いい歌声ですね。

#0 Spot 7

向かいに座る明智くんは頷き、私の鼻歌を褒めてくれた。

#0 Spot 7
player

{character:player}聞いたことあるの? この曲。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}最近流行りの歌だから、どこにいても聞こえてくるというか……。

#0 Spot 7
player

{character:player}だとしても意外。あの部長が流行りの、それもラブソングを知ってるなんて。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}……まあ、いいじゃないですか。たまにはね。

#0 Spot 7

明智くんは両手を合わせて、おずおずと顔を半分隠した。

#0 Spot 7

そんなに恥ずかしいことかなぁ……? もしかしたら本当はポップスも好きとか?

#0 Spot 7
話題を変える → Spot 8
深掘りする → Spot 9
#0 Spot 8

でも明智くんみたいな人が流行りのバンドのライブで、サイリウムを振る姿は想像出来ないな……。ここは話題を変えよう。

#0 Spot 8
player

{character:player}それにしても、コーヒーとケーキまだかな。ちょっとお腹空いてきちゃったかも。

#0 Spot 8
明智英樹

{character:明智英树}聞いてみましょうか。

#0 Spot 8

そう言って、明智くんはほっとしたようにいつもの笑顔に戻った。さっきもこの笑顔は崩れなかったけど、このところずっと一緒にいたせいか、微妙な違いがわかるようになってきたかもしれない。

#0 Spot 8

その笑顔は防壁のように、いつも彼の心をうまく隠している。

#0 Spot 8

いつかその壁を壊して、本当のことを打ち明けてくれる日が来るのかな。

#0 Spot 9

そんなに恥ずかしがるなんて、逆に気になるじゃないか。もう少し突っ込んでみよう。

#0 Spot 9

もちろん、これはあくまで明智くんのことをより深く知るためだ。

#0 Spot 9
player

{character:player}本当にこの曲知ってたの……?

#0 Spot 9

予想外の切り返しだったのか、明智くんは明らかに表情が硬直した。目を瞬いて、窓の外の方に顔を向けてしまう。

#0 Spot 9
player

{character:player}ふーん。本当は聞いたことないんだ。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}それは……

#0 Spot 9

BGMが切り替わり、ゆったりとしたピアノのメロディが流れて、時間の流れもより緩やかになったように感じる。

#0 Spot 9

明智くんは口を開けては閉じて、弁解のための言葉を一生懸命捻り出そうとしている。可哀想だからそろそろ話題を変えようと思った頃、彼はこう言った。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}{var:player_nickname}さんにバレたくなくて……。

#0 Spot 9
player

{character:player}どういう意味……?

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}普段は麻雀サークルで会うことが多いですし、部員のマネジメントや対局といった、僕の得意な所しか見せてないじゃないですか。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}もしこんな所で、「あの明智くんにも知らないことがあるんだ」なんて思われたら、君に幻滅されてしまうんじゃないかと……。

#0 Spot 9

顔を伏せたまま弁解する明智くん。そして彼は顔を上げ、いつもの笑顔でこう言った。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}でも、もし本当の僕がこんな風でも好いていてもらえるのなら、僕も嬉しい限りなんですが。

#0 Spot 9

明智くん、さらっと恥ずかしいセリフを言うじゃん。さも当たり前みたいに言うから、一瞬何を言ってるのかわからなかったよ。

#0 Spot 9
player

{character:player}そうだね、完璧人間の明智くんより、こういう人間味のある明智くんの方がいいと思う。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}完璧じゃなくても、いいんですか?

#0 Spot 9
player

{character:player}もちろん。私だって全てが完璧なわけないじゃないけど、明智くんはこうしてよくしてくれるしね。

#0 Spot 9

明智くんは瞬き、澄んだ青い瞳が雄弁に煌めく。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}嘘をついてすみませんでした。本当はその歌も、バンドのこともよく知らないです。どっちかというと、クラシックの方がよくわかります。

#0 Spot 9
player

{character:player}正直に言えてえらい。今度機会があれば、ポップスの魅力を教えてあげる。クラシックにはないような情熱的なものを感じられると思うよ。

#0 Spot 9
店員

{character:店员}お待たせしました。スペシャルブレンドとケーキのセットです。

#0 Spot 9

ちょうどお腹が空いてきたところで、店員が私たちが注文したコーヒーとケーキを持ってきた。でも変だな、どう見てもコーヒーでもケーキでもないものが混じってるみたいだけど?

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}これは何ですか?

#0 Spot 9
店員

{character:店员}はい、こちらはミュージックフェスとのコラボ特典です。コラボ期間中にセットをご注文されたお客様に差し上げております。また、会計後に抽選にも参加出来ます。フェスのペアチケットなどが当たるんですよ。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}ミュージックフェス?

#0 Spot 9
店員

{character:店员}はい。間もなく開催されます。今流行りのバンドからデビューしたての歌手まで勢揃いです。先ほどお客様がお話されていた、ポップスを知る機会にはうってつけだと思いますよ。では、ごゆっくりどうぞ。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}ありがとうございます。

#0 Spot 9

明智くんは特典のマスコットキャラクターをじっと見つめてから、私の方を向いて尋ねた。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}と、いうことですので、一緒に、フェスに行きませんか?

#0 Spot 9
player

{character:player}もう特賞を引いた気になってる!? はずれたら悲しくない?

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英树}ただ君と一緒に行きたいと思っただけです。それに、今日外れてもまた明日、明後日……と君をカフェに誘う口実が出来ますので、僕としては全く損にはあたりません。二人で抽選すれば当選確率も二倍ですし、君も断らないだろうと思いまして。

#0 Spot 9

冗談めかした言葉に、より親しみやすくなったなと感じ、私は誘いを受けた。

#0 Spot 9
player

{character:player}いいだろう、この私がポップスの手ほどきをしてしんぜよう。

#0 Spot 9

それを聞いて、明智くんはまたいつもの笑顔に戻ってくれた。でも、この笑顔にいつもは見せない何かが乗っているように感じる。うまく説明出来ないけど、きっと今の明智くんは心から笑っているんじゃないかと思う。

#0 Spot 9

ミュージックフェスか……もう停電はしないでくれよ?

晴空の馬場クラブ

絆LV5で開放

Possible Endings

End3.優美なステップ
慈愛の宝玉 ×1
End4.一位と二位
月光の福袋 ×1
End5.心に秘めた思い
コイン ×12000

Scenario Script

Spots 10, Scenes 342, Choices 4, Endings 0

#0 Spot 1

ピピピピ、ピピピピ。

#0 Spot 1

週末の朝、なぜか平日と変わらない時間にアラーム音がけたたましく鳴った。目頭を揉みながら身体を起こし、壁にかかったカレンダーを見る。今日の日付の所に書かれた赤マル印を見た途端、目が覚めた。

#0 Spot 1
player

{character:player}そうだ、今日は英樹と乗馬に行く日だった!

#0 Spot 1

一飜市の中でも特に「普段行かない場所」の一つである馬場クラブを、なぜお出かけの場所に選んだのかというと……

#0 Spot 1

その日、部活が終わって部員たちが次々と部屋から出ていく中、部屋を片付けるために残った英樹を見て、私は牌譜整理を申し出た。毎日の牌譜を撮影・記録し、見返しやすくしておくのも部長の仕事だ。

#0 Spot 1

普段何を使って撮影しているのか聞くよりも早く、英樹は自分のスマホのロックを解除して渡してきた。

#0 Spot 1
player

{character:player}部長サーン、大丈夫? 中身見られちゃうかもよ? 私のことそんなに信頼してくれてるの?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}まあ、君に隠し立てしてることなんてありませんから。

#0 Spot 1

多分その通りなんだろうけど、まあ気が引けるよね……。とはいえ、私も特に探りたいことがある訳ではないので、素直にスマホで写真を撮る。約二十分ほどかかって、ようやく今日の分の整理が終わった。

#0 Spot 1
player

{character:player}部長の仕事って、見かけより大変だよね……。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}お疲れ様です。もうすぐ終わりますから、座って待っててください。

#0 Spot 1
player

{character:player}じゃ、遠慮なく~!

#0 Spot 1

椅子に腰掛け、撮った写真を一枚ずつ見返す。枚数が多く、ほとんど惰性でスクロールするようになった頃、今日撮ったものではない写真が画面に表示された。

#0 Spot 1
player

{character:player}これは……?

#0 Spot 1

青々とした草原と快晴の青空をバックに、三人の人物が表彰台に立っている。真ん中の英樹が、今の彼ならまず見せないだろうと言えるくらいの明るい笑顔でトロフィーを高く掲げている。

#0 Spot 1

詳細情報を見ると、この写真は四年前に撮られたもののようだ。きっと、英樹にとっては、わざわざスマホに取り込むくらいに大切な写真なのだろう。

#0 Spot 1

写真に夢中で、片付けを終えた英樹が隣に来ていたことに気づかなかった。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}ああ、これは、昔馬術大会で優勝した時のものです。その頃も両親は忙しくて観に来なかったので、代わりにコーチが撮ってくれたんですよ。

#0 Spot 1
player

{character:player}あれ? でも馬術大会って……部門にかかわらず、十八歳以上じゃないと参加出来なかったような。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}国際大会なら確かにそうですね。この大会は市内のエキシビション大会だったので、十四歳以上であれば参加出来たんです。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}親に言われて始めた馬術でしたが、何だかんだで気に入ってしまいましてね。あの頃は馬に乗っていると、辺りが真っ暗になっても気付かないほど夢中になったものです。

#0 Spot 1
player

{character:player}なるほどね。

#0 Spot 1

「貴公子と馬術」の組み合わせに違和感をまったく感じなかったのもあって、すんなり納得した。

#0 Spot 1
player

{character:player}今もやってるの? 英樹が馬乗ってるとこ見てみたいな。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}それは……ご期待には沿えないと思います。その後すぐ、祖母が入院して、僕も父に厳しく勉強を言いつけられて……。馬術を辞めざるを得なくなってしまったんです。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}非常に不本意でしたが、色々な方面から考えに考えて、その上で諦めました。

#0 Spot 1
player

{character:player}もったいないなー。市の大会で優勝出来たくらいなんだから、続けていたら今頃国際大会に出場してただろうね。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}君は、僕のことをそんなに買ってくれてるんですね……?

#0 Spot 1

英樹は笑った。青い瞳には嬉しさが滲んでいるが、その更に奥には悲しみのようなものも隠れている気がする。

#0 Spot 1

今の会話だけでも、英樹は馬術が大好きなのだと伝わってくる。そりゃ好きなものを諦めるしかなくなったら、悲しくもなるか……と思いつつ、もう一度写真に目を向けた。

#0 Spot 1
player

{character:player}ちなみに、この人は……?

#0 Spot 1

写真の中の英樹の右に、明らかに英樹に敵意の眼差しを向けた少年が立っている。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}この人はレーウェンくん。当時は彼が優勝候補だったし、彼自身も自分が優勝すると疑ってなかった。でも、僕の方が最終得点が0.5点だけ高かった。あの時は周囲に当たり散らして、彼のコーチも大変そうでしたね。

#0 Spot 1
player

{character:player}「暴れ馬」だったってことか。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}「暴れ馬」ですか……ふふ、君はいつも独特な比喩をしますね。でも的確な表現です。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}彼はその後、自分でより厳しいトレーニングメニューに変えたと聞きました。馬とより呼吸を合わせるために、毎日一緒に暮らしていたとか。次の大会で僕から王座を奪還するために。

#0 Spot 1
player

{character:player}それで? 彼は優勝出来たの?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}さっきお話した通り、すぐ僕が引退して、二度と勝負することはありませんでした。あれから市内で何度かばったり会いましたけど、いつも刺々しい態度を取られてしまって。

#0 Spot 1
player

{character:player}英樹が引退したことで、彼は永遠に君に勝てなくなったんだもんね。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}それもあるとは思いますが……。

#0 Spot 1

英樹は珍しくかぶりを振った。金糸が揺れ、碧眼に影を落とす。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}レーウェンくんは多分、僕のことを案じてくれているのではないかと。

#0 Spot 1
player

{character:player}どういうこと……?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}僕には才能があったのに、いきなり辞めたから怒っているのでしょう。彼の性格的に上手く言えないだけで。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}根本的に、彼は馬術を愛していますから。

#0 Spot 1

そういう英樹も、たぶん「暴れ馬」くんのことは嫌いじゃないんだろうと思う。なんなら友達になりたかったのかも。

#0 Spot 1

自分が馬に乗れなくなっても、本当に馬術を愛する人がその道の続きを走ってくれるなら応援したい……英樹らしい考え方だ。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}まあ、今は馬術はやっていませんが、馬を紹介するくらいなら出来ます。

#0 Spot 1
player

{character:player}マジ!?

#0 Spot 1
player

{character:player}間近で見れちゃったりする!?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}ええ、あの時乗っていた馬は今も同じ乗馬クラブにいます。ちょうど今週末に会いに行くつもりだったのですが、興味があれば一緒にどうですか。

#0 Spot 1
player

{character:player}行きたい行きたい! じゃあ、約束ね!

#0 Spot 1

……ということで、今日がその約束の日だ。壁掛け時計の短針は、7の数字に近づこうとしている。

#0 Spot 1

英樹は時間に余裕をもって移動する人だ。あまり待たせなくないし、早速出かける準備をしよう。

#0 Spot 1

渋滞がひどかった都市部に比べて、乗馬クラブのある郊外は静かで空気が綺麗で、そして居心地がいい。

#0 Spot 1

私の英樹に対する理解に間違いは無かったようで、三十分前に到着したのに英樹はもう着いていた。早めに家を出てよかった。

#0 Spot 1
player

{character:player}英樹、おはよう!

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}おはようございます、{var:player_nickname}さん。馬たちに合わせるためとはいえ、朝早くからすみません。

#0 Spot 1
player

{character:player}もっとお布団とイチャつきたい所だったけど、これから馬と触れ合えるんだと思ったら一気に目が覚めたよ。というか、英樹に教えられなかったら、一飜市にこんな大きい乗馬クラブがあるなんて知らないままだった。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}会員制ですし、市内でも積極的に宣伝してませんしね。知らないのも仕方ありませんよ。

#0 Spot 1

英樹に続いてロビーに入ると、そこは数百人も入れそうな広くて豪華な部屋。全体的に落ち着いた色調だが、ナチュラルで生き生きとした雰囲気になっている。

#0 Spot 1

ロビーには見るからに高そうな芸術品が一定の間隔で飾られている。中にはテレビでも見たことがあるようなものもあるが、タイトルよりも価格のゼロの数の方が印象的だ。

#0 Spot 1

そしてあの壁にかかった、八頭の馬が走っている絵。

#0 Spot 1
player

{character:player}まさか先日のニュースで言ってた、10億コインで落札された『八駿疾駆図』?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}そうです、作者の鴻志氏が最後に完成させた作品です。世界中のコレクターがこの絵を巡って争った結果、怒りに触れてしまい、ここのオーナー以外には売らないと言ったそうで……。

#0 Spot 1
player

{character:player}ここにピッタリな絵だと思う。画家の先生も、きっとここに飾られることになって嬉しかったと思うよ。

#0 Spot 1

その絵を含めた、目に映るもの全てがゴージャスなここは、まさに絵に描いたような貴族の社交場だ。ここで自分の馬を所有するなんて、何がとは言わないが、きっと相当かかるんだろう。

#0 Spot 1

英樹はしょっちゅう人に奢ってるから、裕福な家の生まれなのかもなと思ってはいたけど、まさかここまでとは。

#0 Spot 1

英樹は慣れた様子でロビーを通り抜けて馬場に入り、私に尋ねた。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英樹}ここに来るのは初めてとのことですし、まずはいろいろ案内しましょうか?

#0 Spot 1
英樹の馬を紹介して! → Spot 2
とりあえず馬に乗りたい! → Spot 4
#0 Spot 2
player

{character:player}そうだなあ、先に英樹の馬を見てみたいな。英樹と一緒に優勝した子。

#0 Spot 2

英樹もそのつもりだったようで、快諾してくれた。少し歩くと、厩舎に着いた。

#0 Spot 2

ヒヒーン! と、中から馬たちの嘶きが聞こえてきた。主が来たとわかっているのかのように、声を出して歓迎している。

#0 Spot 2
player

{character:player}入ってもいないのに来たことがわかるだなんて、これってもしかして「以心伝心」てやつ?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}僕たちの会話が聞こえただけだと思います。馬は視覚ではなく聴覚で飼い主を判別していると言われていますから。

#0 Spot 2

会話しながら中に入ると、厩舎は広く綺麗で、よく換気がされている。私のような素人でも、馬の飼育のための設備や管理が行き届いているのがよくわかる。

#0 Spot 2

そしてしきりに鳴いている馬の前に立つと、その長い純白の毛に覆われた健康的な体がとても力強く、気迫さえ感じる。

#0 Spot 2

馬と英樹が並ぶと、ふと「白馬の王子様」という言葉が脳裏をよぎった。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}怖がらないで、優しい子だから噛んだりしませんよ。もっと近づいても大丈夫です。

#0 Spot 2
player

{character:player}ううん、あまりに綺麗で圧倒されてただけ。今まで見た中で一番綺麗な馬だと思ったよ。

#0 Spot 2

ブルル……と、馬が鼻を鳴らし、尻尾を横に振った。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}シルバー、行儀が悪いぞ。

#0 Spot 2

英樹が軽く窘めると、馬は頭を下げた。まるで親に説教された子供のようだ。

#0 Spot 2
player

{character:player}「シルバー」っていう名前なんだ、いい名前だね。私、何か怒らせるようなことしちゃった?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}「シルバー・ホワイト」は牡馬なので、「綺麗」と言われると恥ずかしいんだと思います。昔から「かっこいい」と言われたがってましたし。

#0 Spot 2
player

{character:player}えっ!? この子、言葉がわかるの!?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}ええ、成年の馬は人間だと六歳の子供程度の知能を有していて、いつも好奇心旺盛です。学習もしますし、すねたりもしますよ。

#0 Spot 2
player

{character:player}ごめんね、シルバー。君は今まで見たお馬さんの中で一番かっこいいよ!

#0 Spot 2
シルバー・ホワイト

{character:越影}ヒヒーン!

#0 Spot 2

シルバーは嬉しそうに嘶いた。何を言っているかはわからないが、たぶん「許してやろう」じゃないかな。

#0 Spot 2
player

{character:player}むむ、なかなかお高く止まった奴だなあ……!

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}すんなり馴染めたみたいですね。もっと頑張る必要があるのではないかと思っていたのですが。

#0 Spot 2
player

{character:player}頑張るって、例えば何を? 餌やりとか?

#0 Spot 2

少なくとも一姫の飼い主をするなら、それが一番効果的なんだけど。

#0 Spot 2

そんなことを言っている間に、英樹は馴染みの厩務員を呼び、ニンジンを用意して貰っていた。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}ゆっくり近づいてください。シルバーはこう見えて結構臆病なので、急に距離を詰めると驚いてしまいます。

#0 Spot 2
player

{character:player}わ、わかった。ほらシルバー、ニンジンだよ……!

#0 Spot 2

慎重にニンジンをシルバーの前に持っていくと、彼はくんくんと匂いを嗅ぎ、ニンジンをばくりとくわえて豪快に食べ始めた。

#0 Spot 2
player

{character:player}まだまだあるからゆっくり食べてね。

#0 Spot 2
厩務員

{character:饲养员}あのシルバーがこうも簡単に初対面の人の餌を食べるなんて、珍しいですよ!

#0 Spot 2
player

{character:player}え、そんなにですか?

#0 Spot 2
厩務員

{character:饲养员}優しい子ですが、ひどく臆病でもありますからね。知らない人があげた水や餌は全然受け取らなくて……こんな短時間でこの子の信頼を得た人は英樹くん以来です。

#0 Spot 2
厩務員

{character:饲养员}私でも、最初は半年くらいかかりました。五年ほど経った今でも、餌をあげる時は、注意深くこちらを見てくるくらいなのに。

#0 Spot 2

厩務員は不思議で仕方ないといった表情で去っていった。

#0 Spot 2
player

{character:player}厩務員さんでさえ、シルバーくんの信頼を得るのに時間かかったんだ……。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}はい。当時、合わないようなら別の馬に担当を替えてもいいですよと言ったのですが、シルバーに負けたくないと、その場で断ったんです。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}聞いた話だと、シルバーとひと月ほど寝食を共にして、ようやく餌場に近づくことを許されたらしいです。

#0 Spot 2
player

{character:player}粘り強い人だなあ……。ちなみに英樹の時はどうだった?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}この子は仔馬の時に父が買ったのですが、いろいろな事情が重なって、二歳になった頃に一飜市に連れて来られて、僕の相棒になりました。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}それまではずっと貸出用の馬を借りていたので、本格的な世話を始めた最初の頃は結構大変でした。ここに来てすぐ歯の生え変わりの時期に入ったのですが、どうしても抜けない歯が一本残って……その痛みで何も食べてくれず、点滴で栄養を摂ることを余儀なくされたんです。

#0 Spot 2
player

{character:player}ええ~……。その歯、英樹が抜いてあげたの?

#0 Spot 2

自分が話題に上っていることを知っているかのように、シルバーは長い頸を伸ばして飼い主に甘えている。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}あはは、僕はそこまで万能じゃありませんよ。 まあ、{var:player_nickname}さんが歯を抜いて欲しいと言うのなら免許を取りますが。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}……それで、その歯の問題を解決するためにクラブに駐在している獣医師をお呼びしたのですが、まだ経験が浅く処置出来なくて……。そのまま三ヶ月経って、父に頼んで海外の専門家の先生に手伝っていただいて、ようやく解決しました。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}サラブレッドの馬に歯の問題はつきものらしいです。その歯を抜いた途端に、シルバーは元気になりました。僕が先生をお呼びしたとわかったのか、それ以降シルバーは僕に心を許しました。この出来事があったからこそ、僕達はどのペアよりも息を合わせられて、最終的に優勝出来たのかも……と、今でも思っています。

#0 Spot 2
player

{character:player}そんなことがあったんだ……。じゃあ、私のニンジンをあっさり食べてくれたのって確かに不思議なことかも。もしかして、私ってそういう能力の持ち主なのかも!?

#0 Spot 2

両手を見てそういう能力があるかどうか確かめようとすると、英樹は声を上げて笑い、私にやめるよう言った。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}あながち間違いではないかもしれませんね。

#0 Spot 2
player

{character:player}どういうこと……?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}馬は飼い主を映す鏡と言いますし、実際飼い主に似て来るものなんですよ。

#0 Spot 2
player

{character:player}そうなんだ。じゃあシルバーが慎重なのも英樹くん譲り?

#0 Spot 2

見当違いなことを言ったらしい私を見て、英樹はため息をついて私の耳元に顔を寄せ、そっと囁いた。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英樹}つまり、シルバーは僕と同じように、君を信頼し、大事に思ってるってことです。

#0 Spot 2

シルバーはまたもや「ヒヒーン」と鳴いた。どうやら耳打ちでも馬には聞こえるようだ。英樹はシルバーの頭を撫で、落ち着かせた。

#0 Spot 2

英樹はそれだけ言うと、さっさとシルバーの世話に戻った。でも、広い背中と綺麗な金髪でも隠し切れないくらい、耳が赤くなっていた。

#0 Spot 2
player

{character:player}ま、まぁ、私も英樹のこと信頼してるし?

#0 Spot 2

それを聞いて英樹の恥ずかしさも多少和らいだのか、明らかにぎこちなさが消えた。なんだろう……このちょろい所もそっくりだなぁ……。

#0 Spot 2

夏の午前の風が、わずかに藁の匂いを帯びて室内を吹き抜ける。目の前の人と馬を見て、私はふと思った。

#0 Spot 2
英樹の馬術を見てみたい。 → Spot 8
馬に乗ってみたい。 → Spot 3
#0 Spot 3
player

{character:player}いいなぁ、私も馬に乗ってみたいな。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英樹}いいですよ。シルバーも散歩したかったよな?

#0 Spot 3

英樹が答えたことで、心の声が口に出ていたことに気付いた。

#0 Spot 3
player

{character:player}え、ってことは、私、シルバーに乗ってもいいの?

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英樹}はい。心配いりませんよ、シルバーもいいよね?

#0 Spot 3
シルバー・ホワイト

{character:越影}ヒヒーン!

#0 Spot 3

返事をするかのように、シルバーはその場で足踏みして従順に頭を下げた。それを見て、私は早速手綱を執り、英樹と一緒にシルバーを外へ連れ出した。

#0 Spot 3

馬術クラブのスタッフによると、レース場は大会準備のため使用停止中とのことなので、私達は反対側にある訓練場に来た。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英樹}手綱をしっかり握って、重心は真ん中をキープしてください。

#0 Spot 3
シルバー・ホワイト

{character:越影}ヒヒーン!

#0 Spot 3

主がついているのもあって、シルバーは私を乗せて訓練場をゆったりと、暴れることもなく、何周か歩いてくれた。もしかしたら私達「ウマが合う」のかと勘違いしかけた時、英樹が汗をかきながら心配そうに見ている姿が目に入った。やっぱり主の指示のお陰ってことか。

#0 Spot 3

馬はこの日差しの中でも悠々と、涼しげに歩いているけど、私にはちょっと厳しい暑さだ。早々にバテた私は馬を下り、英樹と一緒に冷房の効いたロビーに戻った。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英樹}{var:player_nickname}さんは乗馬の才能がありますよ。

#0 Spot 3
player

{character:player}ちょっと散歩しただけでわかるの?

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英樹}僕の見る目を信じてください。それに、シルバーも君のことを気に入ったみたいなので、今度また一緒に来てくれませんか?

#0 Spot 3
player

{character:player}もちろん、喜んで。

#0 Spot 4
player

{character:player}せっかくだし、馬に乗ってみたいなって。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英樹}そうですね。貸し出し用の馬もいますから、好きな子を選んでください。

#0 Spot 4

英樹はスタッフを呼び、私の要望を簡単に伝えた。

#0 Spot 4
スタッフ

{character:工作人员}申し訳ありませんが、レース場の方は大会準備のため現在使用中止になっています。訓練場なら入れますが、そちらは走らせるのが禁止でして……。

#0 Spot 4
player

{character:player}えっと、走らなくてもいいです。ちょっとだけ乗ってみたくて。

#0 Spot 4
スタッフ

{character:工作人员}それなら全く問題ありませんよ。では、馬種はいかがなさいますか? 馬ごとに特徴がありまして……例えば、オルロフ種は足が早く軽快な走りが特徴です。

#0 Spot 4

馬に詳しくないことを伝えると、馬ごとの特徴を細かく説明してくれた。でも、言葉だけではなかなかイメージが湧かない。

#0 Spot 4
player

{character:player}迷うなあ……。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英樹}実際に見てみて、それで選びましょうか。ちょうど今は散歩の時間ですよね?

#0 Spot 4
player

{character:player}そういうことも出来るんですか?

#0 Spot 4
スタッフ

{character:工作人员}もちろん、こちらへどうぞ。

#0 Spot 4

スタッフの先導でしばらく歩くと、訓練場に到着した。入り口から、馬達が散歩している様子が見える。

#0 Spot 4
馬たち

{character:骏马}ヒヒーン!

#0 Spot 4

エレガントに足を運ぶ馬もいれば、軽快にジャンプしながら歩く馬もいる。その子たちの鳴き声と足音を聞いていると、まるで私も馬になって散歩の行列に入ったような気分になってくる。

#0 Spot 4
スタッフ

{character:工作人员}お客様、どの子にされますか?

#0 Spot 4
自分で選ぶ。 → Spot 5
英樹に選んでもらう。 → Spot 6
#0 Spot 5
player

{character:player}そうだなあ……。

#0 Spot 5

私が迷っていると、目の前を馬たちが駆け抜けた。リーダー格らしい、すらりとした子が、全身真っ白で輝きを放っており、私の目を引いた。

#0 Spot 5
player

{character:player}この子にしたいです。

#0 Spot 5
スタッフ

{character:工作人员}お客様、お目が高いですね。借り出し用の馬の中だと、アハルテケ種はこの子だけです。今連れてきますね。

#0 Spot 5

自分の直感だけで決めたし、まさか有名な馬を選べたなんてとワクワクしてきたが、隣の英樹は何やらちょっと心配そうだ。

#0 Spot 5
player

{character:player}どうしたの、英樹。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英樹}……ううん、大丈夫です。何かあったら僕がサポートします。

#0 Spot 5
player

{character:player}?

#0 Spot 5

スタッフがさっきの馬を目の前に連れて来たら、英樹が心配する理由がわかった。

#0 Spot 5

濃紺の瞳からは、私のような素人を舐めくさった態度が見て取れる。優秀な馬相応にプライドも高そうで、すんなり仲良く、とは行かなさそうだ。

#0 Spot 5

でも生憎、私も負けず嫌いでね。今日は絶対に君を乗りこなしてやるからな、と馬に目で伝えた。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英樹}いきなり初対面の馬に近づくと危ないので、名前を読んであげたりして、じっくり君の声に慣れさせてあげましょう。

#0 Spot 5

白馬がやって来てから、英樹はずっと私のすぐ傍についている。厄介な馬であっても、馬の変更を提案することもなく、私に馬と仲良くするコツを辛抱強く教えてくれた。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英樹}そう、そんな感じです。ゆっくり首を撫でて、リラックスさせてあげましょう。

#0 Spot 5
越影

{character:越影}ヒヒーン!

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英樹}大丈夫です、これは嬉しい時の鳴き声。少しずつ信頼を得ている証拠です。今なら乗っても大丈夫だと思いますよ。そうそう、手綱をしっかり掴んで、重心を真ん中に。

#0 Spot 5
player

{character:player}う、うん。

#0 Spot 5

越影という名の白馬は、最初は付き合いにくそうに見えたが、貸出用の馬としてきちんと訓練されているからか、私を乗せた後はゆっくりと、暴れることもなく訓練場を歩いた。そして心配しきりの英樹は、少し前方でリード用の手綱を持ってくれている。

#0 Spot 5

馬はこの日差しの中でも悠々と、涼しげに歩いているけど、私にはちょっと厳しい暑さだ。リードしてくれている英樹はなおさらだろう。早々にバテた私は馬を下り、英樹と一緒に冷房の効いたロビーに戻った。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英樹}{var:player_nickname}さんは乗馬の才能がありますよ。

#0 Spot 5
player

{character:player}ちょっと散歩しただけでわかるの?

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英樹}僕の見る目を信じてください。もしよかったら、今度また一緒に来ましょう。

#0 Spot 6

せっかく専門家が側にいるんだし、自分で選ぶよりはお任せした方がいいんじゃないか? という訳で……

#0 Spot 6
player

{character:player}英樹、選んでくれる?

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英樹}喜んで。

#0 Spot 6

英樹は私の頼みを快諾してくれた。英樹の言うことなら間違いない。これは、長いこと麻雀サークルの助っ人として活動してきた私の、部長への絶対的な信頼だ。

#0 Spot 6

スタッフの紹介と自分で観察した結果を踏まえ、英樹は餌を食べている、比較的小柄な体格の白馬を選んでくれた。

#0 Spot 6
スタッフ

{character:工作人员}白馬をご希望でしたら、他にもこちらの仔が優秀ですよ。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英樹}大丈夫です。騎手にとって一番大事なことは相性であって、優秀かどうかは二の次ですから。

#0 Spot 6
スタッフ

{character:工作人员}承知致しました。では、すぐお連れいたします。

#0 Spot 6

白馬が目の前に現れると、英樹がこの子を選んだ理由が分かった。白馬はヒヒーンと嬉しそうに鳴きながら、頭を近づけて私の肩に擦りつけたり、トントンと叩いたりしてきた。

#0 Spot 6
player

{character:player}これはいったい……?

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英樹}馬が甘えてきているサインです。軽く首を撫でてあげると、リラックスさせることが出来るよ。

#0 Spot 6
照夜白

{character:越影}ヒヒーン!

#0 Spot 6

白馬は鼻を鳴らし、指示した通りに動きを止めた。英樹に助けてもらいながら馬の背に乗る。英樹の方は、前に回ってリードを執り、馬をゆっくりと曳いた。

#0 Spot 6

馬はこの日差しの中でも悠々と、涼しげに歩いているけど、私にはちょっと厳しい暑さだ。リードしてくれている英樹はなおさらだろう。早々にバテた私は馬を下り、英樹と一緒に冷房の効いたロビーに戻った。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英樹}{var:player_nickname}さんは乗馬の才能がありますよ。

#0 Spot 6
player

{character:player}ちょっと散歩しただけでわかるの?

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英樹}僕の見る目を信じてください。もしよかったら、今度また一緒に来ましょう。

#0 Spot 7

褒められたことは素直に嬉しい。英樹のような馬のことをよく知っている人ならなおさらだ。嬉しさに浸っていると、英樹は急に足を止めた。

#0 Spot 7
player

{character:player}英樹? どうしたの。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英樹}あ、いえ、その、少し道を変えませんか?

#0 Spot 7
player

{character:player}えっと……?

#0 Spot 7

あまりに唐突で、英樹の意図が読めず、少し戸惑う。英樹は何かを避けたがっているらしいと気づいたが、時既に遅し。

#0 Spot 7

パカラッパカラッ……と、一人の男が馬を駆り、私達にぶつかる寸前で華麗に横に避け、目の前で止まった。

#0 Spot 7

明らかに、敵意のある振る舞いだった。

#0 Spot 7
???

{character:???}新しく飼ったホルシュタインだ。昨日トレーニングを始めたばかりだが、このまま行けば次の大会にはこいつと出ることになる。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英樹}お似合いですね。

#0 Spot 7
???

{character:???}チェッ、相変わらずだなお前。競技だけじゃなく、気持ちまで捨てちまったのか。

#0 Spot 7

競技? ってことは、この人はまさか写真の「暴れ馬」こと、レーウェンさん? 写真よりたくましくなってるけど、確かに顔に面影があるな。

#0 Spot 7

その挑発にも動じない英樹を見て、レーウェンは馬を乗ったまま一歩近づいてきた。

#0 Spot 7
レーウェン

{character:列文}堂々たる優勝者が、負けを恐れて競技を辞めるとはな。そんなに一度きりの栄光が大事か?

#0 Spot 7
レーウェン

{character:列文}お前みたいなのが主じゃ、馬も憐れだよ。

#0 Spot 7

その言葉を残し、レーウェンは馬をUターンさせ、その場を離れようとした。

#0 Spot 7
レーウェンに反論する。 → Spot 9
英樹を慰める。 → Spot 10
#0 Spot 8
player

{character:player}英樹とシルバーが走るとこ、見たいなぁ~!

#0 Spot 8
明智英樹

{character:明智英樹}ご所望とあらば喜んで。

#0 Spot 8
player

{character:player}おおっ!

#0 Spot 8

英樹が答えたことで、心の声が口に出ていたことに気付いた。

#0 Spot 8
player

{character:player}で、でもしばらくやってなかったんでしょ? 大丈夫?

#0 Spot 8
明智英樹

{character:明智英樹}専用の訓練場がありますので、スタッフに言っておけば開けてくれるはずです。ではお客様、そちらの訓練場でしばしお待ち下さい。本番ではなくとも、僕とシルバーはしっかり準備しなくてはね。

#0 Spot 8
player

{character:player}わかった! 待ってるよ。

#0 Spot 8

英樹は完璧主義だから、プライベートな場でもしっかり準備するよなと思った。期待を胸に、私は訓練場の観客席の一列目の真ん中に座った。

#0 Spot 8

しばらくして、スピーカーから音楽が流れ始めた。入り口の方を見ると、英樹がシルバーに乗って登場し、「白馬の王子様」のようにゆっくりと近づいてきた。

#0 Spot 8

馬場馬術は、「馬術のバレエ」という通称の通り、騎手と馬が音楽に合わせ、あらかじめ決められた一連の動作を行い、その正確さと美しさを評価する競技種目だ。

#0 Spot 8

シルバーは英樹の指示の通りに優雅に動作をこなしていき、人馬一体となってステップを踏む。馬は騎手の一部であり、騎手もまた馬の一部。二人は見えない何かでゆるやかに、それでいてしっかりと繋がっている。

#0 Spot 8

曲が終わり、シルバーもかっこよくピアッフェのステップを踏んで踊りに終止符を打った。観客席から熱烈な拍手があがる。いつの間にか、多くのギャラリーが集まってきていたようだ。

#0 Spot 8
???

{character:???}チェッ、やっぱ上手えな。見てろ、次は俺が勝ってやる。

#0 Spot 8

不服そうな声が後ろから聞こえてきて、英樹の知り合いかな?と思って後ろを振り返った。

#0 Spot 8

しかし、ギャラリーが多すぎて、誰が言ったかなんて全く判別出来そうになかった。

#0 Spot 8
明智英樹

{character:明智英樹}何か気になるものでも?

#0 Spot 8
player

{character:player}あ、いや、気にしないで。それより英樹、シルバーとの演技、すごく良かったよ! 語彙力貧弱でアレだけど、とにかくめちゃくちゃかっこよかった!

#0 Spot 8

英樹は馬に乗ったままお辞儀し、謝意を返してくれた。

#0 Spot 8
明智英樹

{character:明智英樹}楽しんでいただけたなら何よりです。

#0 Spot 8
player

{character:player}楽しかったよ! こんなの誰でも感動しちゃうよ。

#0 Spot 8
明智英樹

{character:明智英樹}でしたら、また君のためにやりましょうか。次はしっかり練習して、君だけのために演技を捧げましょう。

#0 Spot 8
シルバー・ホワイト

{character:越影}ヒヒーン!

#0 Spot 8

明るい日差しの中、訓練場の草が青く輝く。白馬の王子様は、私を優しく誘ってくれた。もちろん、断る理由なんて無い。

#0 Spot 8
player

{character:player}じゃあ、約束だね。

#0 Spot 8

ヒヒーン! と、シルバーも嬉しそうに高く嘶いた。

#0 Spot 8

今日はいい天気だ。風も優しく吹いている。

#0 Spot 9

レーウェンの言葉は、英樹からしたらまるで傷口に塩を塗るようなものだ。英樹は一見気にしていないように見えるが、どこか穏やかでない雰囲気を感じた。

#0 Spot 9

言葉を選ぶ余裕も無いまま、口と体が動いた。

#0 Spot 9
player

{character:player}待ってください!

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}はい、何でしょうか。

#0 Spot 9

英樹以外の人には、レーウェンは礼儀正しく振る舞えるらしい。しかしそれが、余計に私の怒りを買った。

#0 Spot 9
player

{character:player}英樹に……謝ってください。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}謝るって、何を謝る必要が?

#0 Spot 9
player

{character:player}さっきの言葉、ひどいと思わないんですか!

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}僕はあくまでも本当のことを言っているだけです。僕のような下々の者が明智家に理由なく歯向かうなんて出来っこありませんが、この件については僕の考えを曲げるつもりはありません。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}上層階級の人間は、思いつきで馬を飼って、馬術を始めて、また思いつきで勝手に辞めていく。それに振り回される馬の気持ちを考えたことありますか? ないんでしょうね。まさか傷ついたのは彼の方……なんて言い出したりしないでしょうね。

#0 Spot 9

レーウェンは相変わらず馬に乗ったまま私を見下ろしている。太陽が頭上から光を放ち、逆光になった彼の顔はより威圧的だ。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}そんな身勝手なことをしておいて、今更何か弁解出来るとでも?

#0 Spot 9

違うと言いかけたその時、近くで大荷物を運んでいたスタッフがバランスを崩し、大きな音を立てながら荷物を地面に落としてしまった。

#0 Spot 9

ここでなければ些細なことだが、こういう馬場では小さなミスが大きな事故に発展する。散らばっていた馬たちが音に驚いて、悲鳴を上げながら暴れ出した。幸い、ほとんどの馬の傍には厩務員がついていたので、すぐに落ち着いた。

#0 Spot 9

そう、ほとんどの馬は。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}落ち着けレッドサンダー! お前が怖がるものは何もない! ほら、アレはもう大丈夫だから!

#0 Spot 9

レーウェンは手綱を引き、馬を音の発生源に向かわせて、事態を理解させようとしているが効果は芳しくないようだ。まだコンビを組んだばかりの馬と、十分な信頼関係を築けていない段階でこういうハプニングに遭ったのだ、レーウェンのような経験豊富な騎手でなければ事態は更にひどいものになっていただろう。

#0 Spot 9

レッドサンダーは興奮状態に陥っていて、騎手の命令も聞かずそわそわとしている。英樹は私を背中に庇い、馬に蹴られかねない範囲から離してくれた。

#0 Spot 9

手が空いたスタッフが遠くからこちらに向かってきている。彼らが到着するまでの間に、レッドサンダーが更に暴れないことを祈る。

#0 Spot 9
レッドサンダー

{character:赤电}ブルル……ブルル……。

#0 Spot 9

カチ、カチ、カチ、カチ。

#0 Spot 9

私は何をすればいいかもわからず慌てるばかりだったが、英樹はスマホを取り出し、一定のリズムを刻んでいる音を大音量で流し始めた。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}レーウェンくん、リズムに合わせて。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}……お前が指示すんな!

#0 Spot 9

不思議なことに、レッドサンダーがリズムに合わせて動き出し、次第に落ち着きを取り戻した。彼が完全に大人しくなるまで、英樹はその音を流し続けた。

#0 Spot 9
player

{character:player}ど、どういうこと……?

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}スマホでメトロノームのアプリを使ったんですよ。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}こんな感じで、馬は一定のリズムに合わせて動く習性があって、緩やかなリズムは緊張を解す効果もあるんです。なので、メトロノームは乗馬をする人の必需品なんですよ。

#0 Spot 9
player

{character:player}なるほどね。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}意外と、そういうこと忘れてないんだな。

#0 Spot 9

レッドサンダーが本来の優しい感じを取り戻してきた。レーウェンは私達に向き直り、複雑な眼差しで英樹を見ている。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}覚えていますよ、馬術は僕の身体の一部です。忘れられるはずありません。

#0 Spot 9
player

{character:player}英樹は今も、ほぼ毎週来てるんだって。あなたも知ってると思ったんだけど。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}くっ……。

#0 Spot 9

「暴れ馬」さんは元々感情が顔に出る素直な人だ。今の彼の表情からは、最初の敵意は消えている。

#0 Spot 9

しかし、英樹というライバルとの和解には至っていない。彼は英樹に問いかけた。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}それなら、なぜ馬術を諦めたんだ。お前を超えるためにずっと、それまで以上にトレーニングしてきたのに、お前はあれ以来一度も試合に出てこなかった。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}お前は俺と違って、大会優勝なんて最初から履歴書に書ける程度のこととしか考えてないんだろって、みんな……。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}違います。

#0 Spot 9

英樹は珍しくレーウェンの言葉を遮って、彼の目を見ながらこう言った。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}確かに、経歴作りのために馬術をやる人もいるのかもしれない。けど僕の場合は全然違う。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}あの時は……家族が急に入院して、学業も忙しくなったから、どうしても馬術を続けられなくなってしまって。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}もう一度君と勝負出来なかったことは、僕だって口惜しいと思っています。ですが、僕は僕の決断を後悔したこともありません。君には悪いと思いますが……申し訳ない、レーウェン。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}き、急にこっ恥ずかしいこと言うなよ……。

#0 Spot 9

レーウェンは馬に乗ったままバッと後ずさった。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}なんていうか……俺も悪かった。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}え?

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}お前の事情も知らずにしつこく煽って、すまなかった。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}あ……はい。そうだ、今度国際大会に出るって聞きましたよ。ぜひ優勝してきてください。

#0 Spot 9

いきなり和解したせいか、二人とも少し気まりが悪そうな感じだ。

#0 Spot 9
レーウェン

{character:列文}ぜ、絶対に優勝するからな、見てろよ!

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}……は、はい。

#0 Spot 9

レーウェンは馬の姿勢を調え、颯爽と遠くへ行ってしまった。

#0 Spot 9
player

{character:player}あいつ、自分が悪いってわかった途端素直になったね。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}誰もがこんな風に自分の思いをぶつけ合えたら、世界平和もそう遠くないと思います。{var:player_nickname}さん、ありがとうございます。

#0 Spot 9
player

{character:player}わ、私!?

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}はい、君を守らなければとばかり考えていましたが、今日は君に助けられました。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}いつものように一人で来ていたら、何も言えないままだったでしょうから。

#0 Spot 9
player

{character:player}私、そこまで深く考えてた訳じゃなくて……ただ言い返したかっただけ。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}はい。それでも、そう思ってくれたことが僕としては嬉しかったです。

#0 Spot 9

英樹は照れた様子だが、前のように目を逸らすことなく、じっと私を見つめている。

#0 Spot 9
馬たち

{character:越影}ヒヒーン!

#0 Spot 9

周りの馬達も空気を読んだかのように嬉しそうに嘶く。目の前のこの人が、自分の前でありのままの姿を見せてくれて、とても嬉しい。

#0 Spot 9

一緒にここに来て良かったと思った。

#0 Spot 9
スタッフ

{character:工作人员}お二人にと、お預かりしている物がございます。

#0 Spot 9

あれから、月に一回、英樹と乗馬クラブに来て馬に乗っている。今日も一日ここで過ごし、帰ろうとした時、スタッフにプレゼントボックスを手渡された。

#0 Spot 9
player

{character:player}私達に、ですか?

#0 Spot 9

私はここでは英樹以外の人と会話したことがないし、誰かにプレゼントされる理由はないはず。

#0 Spot 9
スタッフ

{character:工作人员}はい。お預かりした際、詳しくお二人の特徴も伺いましたので、間違いないかと。

#0 Spot 9
player

{character:player}そ、そうですか……。ありがとうございます。

#0 Spot 9

英樹とプレゼントボックスを受け取り、私と一緒に開けてみた。中身は、同じデザインで色違いの馬術用の帽子が入っていた。

#0 Spot 9

シンプルながらも洗練されたデザインが優雅で、馬術に詳しい人が選んだものだと一目でわかった。

#0 Spot 9
player

{character:player}誰だろ、こんなプレゼントくれる人なんて。

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}中に手紙も入っています。こっちは宛名が君になっていますね。

#0 Spot 9
player

{character:player}どれどれ?

#0 Spot 9

封筒を開けると、便箋には数行の手書きの文字列が書かれていた。「先日の謝礼です。そういえば、あなたの乗馬は見るに堪えませんでした。他の方から手ほどきを受ける方がよろしいかと存じます。例えば、世界チャンピオンを取った俺とかな。」

#0 Spot 9

なるほど、「暴れ馬」くん、世界に羽ばたいたんだ。

#0 Spot 9
player

{character:player}見るに堪えないってなんだよ、ムカつくなー!

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}フフッ、君が2代目暴れ馬になる日もそう遠くないかもしれませんね。

#0 Spot 9
player

{character:player}今度帰ってきたら、やつに敗北を味わわせてやろう。ね、英樹?

#0 Spot 9
明智英樹

{character:明智英樹}それはまた前途多難な……。でも{var:player_nickname}さんがそう仰るのなら、何としても実現してみせましょう。

#0 Spot 9

英樹はいつものように控えめに微笑んだ。ライバルが友になる日が来るなんて、彼本人も思ってなかったのだろう。

#0 Spot 9

英樹への手紙にはこう書いてあった。「一飜市代表として、俺はさらなる高みを目指すと決めた。お前も負けるなよ、俺のライバルならな。」

#0 Spot 9

そして便箋の裏に、「暴れ馬」くんによる不格好な絵が描いてある。それは自分の成績を誇示しているのか、それとも英樹へのエールのつもりなのか。

#0 Spot 9

真相は、描いた本人にしかわからない。

#0 Spot 10

レーウェンに反論したかったけど、英樹の方は彼を嫌っている訳ではないらしいことを思い出し、気持ちを抑えた。

#0 Spot 10

彼がいなくなった後、私は英樹の肩を叩いて慰めた。

#0 Spot 10

英樹は、一見するとレーウェンの言葉にも動揺していないように見えるが、どこか穏やかでない雰囲気がある。

#0 Spot 10
明智英樹

{character:明智英樹}大丈夫です。こういうのには慣れていますから。

#0 Spot 10
明智英樹

{character:明智英樹}彼は僕が馬術を放り出したことに対して怒っているだけで、本当に敵意があるわけではないんですよ。

#0 Spot 10
player

{character:player}そうか……わかった。

#0 Spot 10

言われた本人が相手を庇っているんじゃ、私にどうこう言う筋合いはないな。

#0 Spot 10

その後は、二人ともレーウェンの話題を出さなかった。でも、何をしていてもモヤモヤが抜けないまま、今日のデートを早々に終えた。

#0 Spot 10
player

{character:player}なになに? 国際馬術競技大会の参加者一覧……?

#0 Spot 10

CatChatがめちゃくちゃ気になるニュースをおすすめしてきた。内容を見てみると、あの「暴れ馬」の名前と写真も乗っていた。

#0 Spot 10
player

{character:player}「一飜市代表として国際大会に出場! 彼の国際進出に期待高まる」か……。「暴れ馬」くん、立派だなぁ。

#0 Spot 10

記事にはレーウェンの各大会成績も書かれている。こうも「優勝」の文字ばかり並ぶと、「青少年大会」の「準優勝」が余計に目立つ。

#0 Spot 10

あの頃二番手だった彼がトップスターになり、同じく馬術に並々ならぬ情熱をかけていた英樹は競技の道を諦めざるを得なくなるなんて、誰が予想出来ただろう。

#0 Spot 10

英樹がこのニュースを見たら、何を思うかなあ。

愛しいふるさと

契約を結ぶことで開放

Possible Endings

End6.私だけの思い出
日光の福袋 ×1
End7.過去、今と未来
祈願の巻物 ×1

Scenario Script

Spots 9, Scenes 360, Choices 3, Endings 0

#0 Spot 1

「千里鶯啼いて緑紅に映ず、水村山郭酒旗の風…」

#0 Spot 1

と、美しい漢詩と共に流れたCMにつられて、この週末、私は一飜市の隣にある古風な町に観光に来ている。

#0 Spot 1

優雅な週末を過ごすはずだったが、着いて早々ハプニングが続出した。まずスマホがいきなりフリーズし、再起動さえ受け付けなくなってしまった。初めての町を地図もなく歩くのは辛いなと思い、その時唯一近くにいた人物――遊んでいる八歳児に助けを求めたら、ありがたいことに鉛筆でシンプル過ぎる案内図を描いてくれたのだ。

#0 Spot 1

そのおかげで、ただいま絶賛迷子中である。

#0 Spot 1
player

{character:player}ここはいったいどこなんだ……!?

#0 Spot 1

入り組んだ細い路地に、どこに出ても似たような景色が続く、白と黒を基調としたの住宅街。更に、中心部からだいぶ離れてしまったせいか、周りに人っ子ひとりおらず……私は手書きの地図を持ったまま、途方に暮れていた。

#0 Spot 1
player

{character:player}一旦引き返すのも手か? 来た道を忘れてないといいんだけど……。

#0 Spot 1
???

{character:???}{var:player_nickname}さん?

#0 Spot 1

八方塞がりかと思った時、背後から聞き覚えのある声がした。振り返ると、英樹が小走りにこちらに向かってくる。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}本当に君だったんですね。見間違いかと思いました。どうしてこんな所に?

#0 Spot 1
player

{character:player}……いろいろあってさ。

#0 Spot 1

固まったままのスマホを見せながら、今までの出来事を英樹に説明した。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}なるほど……。確かにこの辺りは住居の見た目も似ていますし、初めて来た人は迷いやすいかもしれませんね。

#0 Spot 1
player

{character:player}そう言えば英樹はどうして? 観光? まさか英樹も迷ってるとか?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}あはは、違いますよ。僕は半分地元の人間みたいなものです。

#0 Spot 1
player

{character:player}うっそ!?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}明智家の屋敷はこの町にあって、昔は連休のたびに帰省して、祖母と過ごしていました。

#0 Spot 1

おばあさんのことに触れる英樹は、温かい目をしている。

#0 Spot 1

英樹の実家の話は、これまで何度か聞かせてもらった。山水画のような、風光明媚な町らしいというイメージはあったものの、具体的にどの辺りにあるのかは一度も聞いたことがなかった。

#0 Spot 1

正直に言うと、今日ここに来ようと決めたのも、そんな静かな町について話す彼に影響を受けたからだ。

#0 Spot 1
player

{character:player}まさかここだったとは……。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}言ってませんでしたっけ? とりあえず、観光なら僕に任せてください。君さえよければ、ガイド役を務めます。

#0 Spot 1
player

{character:player}英樹、せっかく帰って来てるのに、予定があるんじゃないの? 全然そっち優先でいいんだよ?

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}大丈夫です、特に予定はありません。つい昔からの癖で、休みに帰ってきただけです。もう習慣になってしまってるんですよね。

#0 Spot 1
明智英樹

{character:明智英树}さて、まずはどこに行きますか?

#0 Spot 1
定番の観光地に行ってみたい → Spot 2
英樹のおすすめスポットに行きたい → Spot 6
#0 Spot 2
player

{character:player}ネットでバズった商店街があるじゃん? そこに行くつもりだったんだけど……。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}ネットで……ああ、あそこですね。わかりました。

#0 Spot 2

迷った時に助けてくれる人がいることを幸運と言うのなら、その人が英樹だったことはもはや豪運と言えるだろう。

#0 Spot 2

彼になら何でも任せられるし、何なら私が何もしなくても彼がすべてを考慮したプランを考えてくれる。彼の後をついて歩くこと数分、誰もいなかった裏道から人で溢れた商店街に到着した。

#0 Spot 2

CMの中では、古き良きのどかな町というイメージが強かったけど、目の前の街道はむしろ賑やかな雰囲気だ。

#0 Spot 2

商店街と言っても、一飜市のそれとはまた別の趣がある。古めかしい民家のような店舗が道に沿ってズラッと並び、たくさんの観光客が出入りしている。

#0 Spot 2
player

{character:player}へー。お話に出てくるような風景だけど、色とりどりの現代的な看板を合わせても意外と違和感無いね。これを見られただけでも来た甲斐があったかも。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}もう満足しちゃったんですか? {var:player_nickname}さんって意外と欲がないんですね。

#0 Spot 2
player

{character:player}その方が生きてて楽しいでしょ?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}確かにそうです。だから、僕も君と一緒にいるときはリラックスできます。

#0 Spot 2
観光客たち

{character:人群}いいぞー!

#0 Spot 2

英樹との会話は向こうで起きた喝采に中断させられた。見てみると、路上パフォーマンスが行われているようだが、高い人垣ができていて何のパフォーマンスなのかはわからない。子供が親に抱き上げてもらっているのを見て、私も何とかつま先立ちになって様子を見ようとした。

#0 Spot 2

どんなに頑張ってもパフォーマンスが見えない私の腕を英樹が引っ張り、私を道路脇の縁石に立たせてくれた。周りが完全に人に包囲されているにも関わらず、英樹は場所を確保してくれたようだ。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}ここからなら君でも見えるんじゃないですか?

#0 Spot 2

一段高い場所に立つと、視界が格段によくなった。人混みの中心に、白い紗幕が見えた。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}なるほど、影絵芝居ですね。だからこんなに人が多かったのか。

#0 Spot 2
player

{character:player}影絵?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}はい、人形や手の影を幕に投影し、それでお芝居するんです。この影絵劇団は有名ですよ。

#0 Spot 2
player

{character:player}面白そう。なんでお隣の一飜市で今まで見たことなかったんだろ。っていうかこのお芝居って歌って演じるんだね。

#0 Spot 2

幕の中央に恰幅のいい金持ちらしきキャラクターが投影され、独特な歌声が私の注意を引き戻した。

#0 Spot 2
影絵の演者

{character:灯影戏摊主}封建主義の時代、今から千年も昔のこと……とある貴族のご令嬢は、学問を究めたいあまりに、なんと家を出ようとしていたのです……!

#0 Spot 2
影絵の演者

{character:灯影戏摊主}大切に育てて来た愛娘を、何百里も離れた街へ行かせるなんて。しかし引き止めることもできません、可愛い娘の心を病ませたくはないからです。

#0 Spot 2

ご令嬢は家出して、遠く離れた町の学院で庶民の男と愛し合った。しかし二人が想いを伝える日に、彼女は父親からの手紙を受け取った。手紙には、知り合いの貴族の跡取りとの婚約について書かれていた。ご令嬢はそれでも自分の愛を諦めず、男と共に家に戻り、学問の成果を披露し父親の許しを得た。そして愛し合う二人の結婚式の日には、千羽以上の蝶々たちがお祝いに来たという話だった。

#0 Spot 2

演者の人形や手の動きが生き生きとその物語を演じ、優美な歌声とともに観る者を物語の世界に没入させた。演者が明かりを消し、幕の裏から前に出てくると、拍手と歓声が送られた。

#0 Spot 2

素晴らしいお芝居に、私も思わず惜しみない拍手を贈った。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}演者さん、今日はにこやかでしたね。

#0 Spot 2
player

{character:player}そりゃそうよ。あの箱見た? あっという間にコインでいっぱいになってたよ。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}ふふ、違いますよ。ここが観光地化して間もない頃から、彼はここでお芝居をやっているんです。僕も観たことがありますが、その時も今日と同じ演目でした。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}ただ、あの時は、今日と違って悲惨な結末でした。貴族の父親は、婚約を押し通すために、彼氏を死まで追い込む。そして、ご令嬢は愛する人と結ばれない苦しみを抱えて、跡取りとの結婚式当日に彼氏の墓の前で自殺し、二人は蝶々となって飛び立った……という筋書きでした。

#0 Spot 2
player

{character:player}元々は悲劇だったんだね。でも私は、こういうハッピーエンドの方が好きかな。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}そうですね。それにしても始めはヒヤヒヤしましたよ、また君に悲劇を見せることになってしまう、と思って。

#0 Spot 2

英樹は俯いてそう言った。前のことをまだ引きずってるんだな。珍しく私のほうが高い位置にいるせいか、思わず彼の頭を撫でてしまった。

#0 Spot 2
player

{character:player}弱気な部長、かわいい~。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}はい?

#0 Spot 2

やばい、心の声が漏れた。

#0 Spot 2
player

{character:player}ううん、忘れて! それよりほら、今日は楽しい芝居が観られたんだし、きっといいことが起こるに違いないよ。そうでしょ!?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}そ、そうですね。うん、きっといいことがあります。

#0 Spot 2

英樹は笑いながら手を差し出し、私を縁石から下ろした。英樹も何だか嬉しそう。

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}さて、次は何をしましょうか。

#0 Spot 2
player

{character:player}私が決めていいの?

#0 Spot 2
明智英樹

{character:明智英树}はい。君といるといいことが起きますし、君に決めて欲しいです。

#0 Spot 2
他の大道芸を探してみる → Spot 3
飲食店を見てみる → Spot 4
#0 Spot 3

影絵芝居がなかなか良かったこともあり、他の大道芸にも興味が沸いたので、英樹と二人で見て回ることにした。

#0 Spot 3

竹馬に乗る人もいれば、火吹きのパフォーマンスをする人もいる。ここはまるで商店街の中にサーカスが潜んでいたかのように、どこを見ても楽しい。

#0 Spot 3
player

{character:player}今弟子にしてくださいって言ったら、弟子にしてくれるかなあ。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}皆さんは、長い間練習してきたからあのようなパフォーマンスが出来るんですよ。「櫂は三年櫓は三月」と言いますし、仮に今修行を始めたら、向こう3年は一飜市に戻れないことになります。

#0 Spot 3
player

{character:player}じゃあやっぱり無理かぁ。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}民俗芸能に興味があるということでしたら、簡単なものを体験出来ますよ。

#0 Spot 3
player

{character:player}おお! どんなの?

#0 Spot 3

英樹は目で前方を示した。そこを見ると、平凡な中年の男が店の前の椅子に腰掛け、扇子で扇ぎながら目の前を通る大道芸人に拍手を送っている。

#0 Spot 3

英樹に示されなければ、私はきっと彼のことをただの休憩している観光客だと思っただろう。

#0 Spot 3

店に近づくにつれて、墨の香りが漂ってきた。ローテーブルの上に敷かれた画仙紙や、その横に置かれた墨が、ここがどんな店であるかを物語っている。

#0 Spot 3
player

{character:player}その場で描いてくれるの? デジタルアートが主流になりつつある今だと、結構珍しくなってきたよね。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}「描く」というより、「吹く」の方が正確かもしれません。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}ほぉ、若いのによくご存知で。

#0 Spot 3

英樹の言葉を聞き、店主は身体を起こしてあくびをした。彼は咥えタバコのまま、私たちの方にぶらぶらと歩いてきた。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}店主さん、「清韻館」出身の方でしょう。祖母はあの道館の作品が一番のお気に入りで、昔は毎年新作を買っていました。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}道理で詳しい訳ですわ。

#0 Spot 3
player

{character:player}清韻館って、さっきの電子看板にあったやつ? 絵師ごとに異なる技法で絵を描くのがウリの。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}そんなとこでも宣伝してるんだなぁ。うちは、墨を紙に吹くことで絵を書いてんですよ。

#0 Spot 3
player

{character:player}筆は使わないんですね。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}そうさ。人間は昔からいろんな方法で絵を書いてきた、手、石、骨……筆がなければ絵が描けないって訳じゃないんですよ。

#0 Spot 3

私たち二人が興味津々な様子を見て、店主さんが描いているところを見せてくれることになった。彼は髪の毛を後ろに流し、さっきと比べてキリッとした顔つきになった。どうやら描く準備が出来たようだ。

#0 Spot 3

流れた墨は意思があるかのように、彼の吹きかけた息に乗って四方八方に散っていく。段々と白い画仙紙の上に独特な絵が浮かび上がってきた。

#0 Spot 3
player

{character:player}見た感じ簡単そう……。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}フハハハ。そう、なんも難しいことなんかありゃしません。お二人も試してみたらどうです? プレゼントとしても好評らしいんだよなこれが。

#0 Spot 3
player

{character:player}ええ、今からですか? でも絵を描くのって、こう、デッサンとかから始めないといけないんじゃ……?

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}そんな堅苦しいことはせんでもいい。大事なのは、上手さより心。心を伝えられれば、それはもう十分完璧な絵なんですわ。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}初めてなので、どうかご指導のほどよろしくお願いします。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}あぁ、もちろん。毎度どうも!

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}いいぞ、こっちの方にも吹いて……上手い上手い! どうだ、簡単だろ?

#0 Spot 3

見てるぶんには簡単そうだけど、実際にやってみると意外ときつい。ひたすら息を吹きかけるので、酸欠になりかけている。店主さんの指示通りに吹いて、私は梅の花らしきものを描けた。

#0 Spot 3
player

{character:player}簡単とか言ってすみませんでした……!

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}初めてやったにしては、なかなか良い出来栄えではありませんか? ここの弟子になれば、すぐ吹絵の名手になれるかもしれませんよ。

#0 Spot 3

一枚書いただけで疲れ切っている私の横で、英樹は大真面目に絵を評価している。いやいや英樹サン? そんなこと言われたら、私、浮かれちゃうよ?

#0 Spot 3
player

{character:player}店主さんも英樹くんのように優しかったら、もっといい絵になったんだけどね。でも店主さん私の方ばかり指導してて、英樹くんにあまり教えてなかったよね? なんかごめん。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}そんなことありません。僕も横で見ながらたくさん勉強出来ましたし、店主さんも熱が入ったんでしょうから。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}聞こえてるぞぉ~!

#0 Spot 3

こそこそ店主の悪口を言ってたら、店主が怒ったフリをしつつ笑った。そんな店主さんの機嫌を取るため、私は必死にごまを擦った。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}いいのいいの、気にしてませんって。また今度二人で遊びに来てよ。……って、お兄さんのやつ、だいぶよく描けてたじゃない。 持ってかないんですかい?

#0 Spot 3

店主が英樹が座っていた席の傍に立って言った。そう言えば英樹はどんな絵を描いたんだろう、まだ見てなかったわ。

#0 Spot 3
player

{character:player}どんなの? 見せて見せて。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}そ、それは……。

#0 Spot 3

テーブルの前に行くと、画仙紙の上には、笑顔の人が描かれている。抽象的ではあるが、この人物は恐らく私だ。

#0 Spot 3

絵を見られるのが恥ずかしいのか、英樹が慌てて追いかけてきた。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}すみません、つい描いてしまいました……。

#0 Spot 3
player

{character:player}英樹の中の私って、こんな感じなんだね。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}いえ、違います。僕の画力が足りないんです、本物の君の方がずっと素敵です。

#0 Spot 3
player

{character:player}この絵だって十分素敵だよ。私、これ好きだな。もらってもいい?

#0 Spot 3

そう聞くと、英樹は笑ってくれた。店の外、エンジュの花の香りに満ちた白い路面が眩しい日差しの下で輝いているが、この英樹の笑顔の前ではそれも霞む。

#0 Spot 3

英樹は私のことを見つめながら、その絵を丁重に私に手渡した。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}では、どうぞ。でも、次はもっと素敵な絵を書いて見せますから、その時はそちらも受け取ってくださいね。

#0 Spot 3

こんなとこまで完璧主義を貫かなくてもいいのに、と言いかけたが、彼に次の約束をしてもらえた嬉しさが勝った。

#0 Spot 3
player

{character:player}もちろん。約束だね。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}お二人を見てたら、おじさんの方までぐっときちゃったよ。その絵、仕立ててあげよう。もちろんお代は無くていい。出来たら家に送るから、住所書いといてよ。

#0 Spot 3
player

{character:player}墨も紙も店主さんのものを使わせてもらったのに、装丁や送料までタダなんて……失礼ですけど、経営は大丈夫ですか?

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}なあに、若い人に心配されるほど困ってやせんよ。そもそもこの店も、吹絵を売るというより、見せるために開いたんですから。

#0 Spot 3
店主

{character:摊主}それと、キミのおばあさんへのお礼というのもあります。道館が今でもやっていけてるのは、今の年配の方々のおかげと言っても過言じゃない。ありがとうって伝えといてくださいよ。

#0 Spot 3
明智英樹

{character:明智英树}こちらこそありがとうございます。必ずお伝えします。

#0 Spot 3

店を出て、お腹が空いたことを英樹に伝えたら、飲食店エリアに案内してくれた。空腹が満たされたところで、ベンチに座って休むことにした。

#0 Spot 4

せっかくの旅行、ご当地グルメを堪能しないでどうする! と英樹に言ったら、飲食店エリアに案内してくれた。

#0 Spot 4

最初の露店では、ちょうど店主が目の前で料理をしている。卵、砂糖、でん粉を水に溶かし、鍋で焼くと、みるみるうちに黄色くてモチモチとしたお餅のようなものになった。甘い香りが漂ってきて、私の空腹を一気に加速させる。

#0 Spot 4
player

{character:player}「三不粘(サンプーチャン)」って、変な名前だね。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}「皿にくっつかない、箸にくっつかない、歯にくっつかない」という意味らしいです。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}昔皇帝が旅行中にこの料理を食べて、この名前を下賜したと。

#0 Spot 4
player

{character:player}皇帝も認めた料理だって? これは食べなければ……って、あっちのは何?

#0 Spot 4

珍しいスイーツに釘付けになっていると、今度は違う方向からスパイシーな良い香りが漂った。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}あれは……魚の辛味揚げだと思います。

#0 Spot 4
player

{character:player}ご当地グルメってやつ?

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}ええ。特製の下味を付けた魚を油で揚げて、辛い餡を掛けた料理です。辛そうな香りがしますが、実際はそこまで辛くありません。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}昔は魚を内陸へ運ぼうとすると何らかの工夫をしないといけませんでしたから、そこから発展してこのような料理が生まれたそうです。

#0 Spot 4

その後もいろいろな店を回ったけど、調理方法から歴史に伝説まで、英樹は何でも解説してくれた。

#0 Spot 4

私はこれまで味を楽しむばかりで、料理にまつわるエピソードにあまり関心を向けてこなかったので、英樹の知識量には本当に驚かされる。

#0 Spot 4
player

{character:player}なんで英樹はそこまで色んなことを知ってるの?

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}それは……。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}おやおや、明智さんとこの坊っちゃんじゃないか。

#0 Spot 4

英樹が答える前に、突然現れたおじいさんが私たちの会話を中断させた。「ほれ、これ食べな」と、英樹に焼きたての牛串を渡している。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}こちらはお友達かい? ほれ、お前さんにもあげよう。せっかく帰ってきたんだ、たくさん食べな。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}おじいさんありがとう、いつもたくさん頂いてしまってすみません。{var:player_nickname}さん、こちらは僕のお隣に住んでいる方です。料理の名人で、今もこうして串焼きの露店をやっています。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}ほっほっほ、焼くだけじゃ、上手も何もない。坊っちゃんみたいな若いモンが来てくれるおかげで、なんとか店が回っているだけじゃよ。

#0 Spot 4
player

{character:player}坊っちゃん、って呼んでるんですね。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}ああ、英樹くんのことは昔からそう呼んどる。坊っちゃんがまだ小さかった頃、うちの三人兄弟の孫はどいつもこいつも悪ガキだったが、英樹くんだけはしっかりしててなぁ。礼儀正しくて、文字通り坊っちゃんじゃった。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}あの頃よくうちに買い出しに来ててなぁ~。こんくらいしかない子がじゃよ。カウンターにすっぽり隠れて声だけが聞こえるもんで、毎回幽霊かと思ってたもんじゃ、ほっほっほっ。

#0 Spot 4
player

{character:player}そんなことがあったんですね!

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}子供の頃の話です。おじいさん、今度お家までご挨拶に伺いますので、今日はこれで失礼します。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}嬉しいねえ。そうじゃ、今日は何やら有名な大道芸人ちゅーもんが来てるらしいから、一緒に見に行きな!

#0 Spot 4

子供の頃の話になった途端、英樹は恥ずかしそうに話を遮ってきた。おじいさんも熱心に次の目的地を薦めてくれた。

#0 Spot 4

英樹がほっとした様子でその場を離れようとしたタイミングで、おじいさんは私に耳打ちした。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}坊っちゃんは恥ずかしがってるんじゃ、子供の頃のことを知られたくないんじゃな、ほっほっ。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}この前わざわざここの名物料理のことを聞きに来てな、珍しいと思ってたんじゃ。恋人でも連れてくるのかと思ってたんじゃが、お前さんだったんじゃのう。

#0 Spot 4
年寄りの男

{character:老爷爷}坊っちゃんは自分の気持ちを上手く言えないきらいがあるが、察してやっとくれ。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}コホン! さ、早く次行きましょう!

#0 Spot 4

お爺さんの話が丸聞こえだったのか、英樹の耳が真っ赤になっている。彼は私の手を握り、逃げるように店を後にした。

#0 Spot 4

大道芸人がいるあたりに着くまで、英樹も私も一言も話さなかった。そして……

#0 Spot 4
player

{character:明智英树}その……

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}その……

#0 Spot 4

私が話しかけようとした時、英樹も同時に話し出した。そして、顔を見合わせて同時に笑いだした。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}おじいさんの話ですが、あれは気にしないでください。

#0 Spot 4
player

{character:player}何を?

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}わざわざ聞いてたこととか。その、今日は何も気にせず楽しんで欲しいので。

#0 Spot 4
player

{character:player}それなら心配無用だよ、ずっと楽しいし。でも……おじいさんにわざわざ聞いてたのって、もしかして私のため?

#0 Spot 4

私の質問に、英樹はまた顔を真っ赤にした。今の英樹はいつもより格段に可愛かったし、この完璧部長にこんな意地悪が出来るチャンスなんて二度と巡って来ないんじゃと思って、つい意地悪な質問をしてしまった。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}{var:player_nickname}さんにこんな意地の悪い一面があるなんて知りませんでした。お互い新たな一面を知れましたし、今日は帰ってきて本当に良かったです。

#0 Spot 4

英樹は右手を軽く握り、小さく咳ばらいをして、顔を隠すように背を向けた。夏の午後の日差しがますます気温を上げるが、今の英樹の顔に比べたら可愛いものだ。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}君にこの街を案内したいと思ってたのは本当です。ただ今日は全くの偶然で、まだ何も準備が出来ていなくて……。

#0 Spot 4
明智英樹

{character:明智英树}だから今度、完璧に準備出来たら……もう一度、誘ってもいいですか?

#0 Spot 4
player

{character:player}もちろん。約束だね。

#0 Spot 4

その後、いろんな大道芸や民俗芸能を楽しみ、私達はベンチに座って休むことにした。

#0 Spot 5
player

{character:player}やっと座れたー! ふぅ……。観光って体力使うよね。こういう時、観光地に住んでいる人が羨ましくなるよ。毎日こんな楽しいことを体験出来るんだもん。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}そうですね。しかし、こんな古い街も、すっかり観光地になりましたね……。

#0 Spot 5
player

{character:player}あれ、昔からよく来てた町なんだよね?

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}そうですが……。大学に入ってからはあまり帰れてなくて、ここまで発展してたことも知らなかったので。

#0 Spot 5

英樹は目の前の賑やかな道路を見ながら、ちょっと寂しそうに言った。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}この道も、昔は舗装なんてされていませんでした。車が通る度、砂を巻き上げていましたよ。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}あの頃は、何人かで集まって、あのエンジュの樹の下でよく麻雀をやってました。人が多い時はお店の椅子を借りて、座って観戦しながら順番を待ったりもしました。

#0 Spot 5
player

{character:player}すごくのどかな感じだね。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}ええ。だからここを観光地として開発するという話が来た時はみんな嫌がりました。そういうのどかな日常が無くなってしまうのではと。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}でも発展は必要ですし、発展には何らかの犠牲を伴うものです。

#0 Spot 5

エンジュの樹を見ると、その下には大きな電子看板が立てられ、マップと広告が代わるがわる映し出されている。

#0 Spot 5

英樹も同じ方を見ているが、彼の目に映るのは大勢の観光客か、それとも昔の景色か。

#0 Spot 5
player

{character:player}たとえ町が変わっても、英樹が過ごした楽しい時間はきっと消えないよ。いずれここにも高いビルが建てられるかもしれないけど、英樹が忘れない限り、ここはずっと君の故郷だよ。

#0 Spot 5
player

{character:player}温かい思い出も、楽しい思い出も、いつまでも君だけの宝物だよ。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}僕だけの宝物……ですか。

#0 Spot 5

英樹が私の言葉を繰り返す。瞳に再び光が宿った。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}そうですね。過去に囚われてしまうところでした、今を生きなければいけないのに。

#0 Spot 5
player

{character:player}うんうん、現実に戻れてえらい! じゃあ、ここのことを忘れないために、二人でもっと楽しい思い出を作ろうか。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}賛成です。そうですね……一軒だけ麻雀会館があるのですが、そこに行きませんか? ふと麻雀したくなりまして。

#0 Spot 5
player

{character:player}えぇ? 今?

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}今。{var:player_nickname}さんにも、ここの楽しい思い出を作っていただきたいので。であれば、麻雀しかないかと思いまして。

#0 Spot 5
明智英樹

{character:明智英树}小さい会館ですけど、打ってる人は結構手ごわいですよ。

#0 Spot 5
player

{character:player}私のことなんだと思ってるんだ……。でもその案に乗った! 全力で勝ちに行くからね。

#0 Spot 5

それからずっと先の未来でも、今回の旅行で見た英樹の笑顔と、最後に和了した九蓮宝燈を思い出すことになるとは、 このときの私は知るよしもなかった。

#0 Spot 5

英樹と同じように、私も私だけの宝物を手に入れた。

#0 Spot 6
player

{character:player}そうだなあ……初めてだしいきなり言われても思いつかないから、任せてもいい?

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}いいですよ。{var:player_nickname}さんが気に入りそうな場所というと……。

#0 Spot 6

英樹が静かに考え込む。鳥たちのさえずりだけが閑静な住宅地に響いた。しばらく可愛らしい鳴き声に聞き入っていると、英樹は顔を上げて微笑んだ。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}一つ、心当たりがあります。きっと好きになると思いますよ。

#0 Spot 6

英樹に連れられて、今までいた路地裏よりも更に古めかしい住宅地に来た。

#0 Spot 6

石畳の道を、民家の壁からせり出した枝が落とした花びらが彩っている。風が花びらを吹き上げて、花の香りを運んできた。

#0 Spot 6

さっきいた場所と違うのは、はしゃぐ子供とそれを見守る年寄りたちの声が聞こえる所だ。時には、子供を叱る親のものらしき声も聞こえる。

#0 Spot 6

軽快に石畳の上を歩く英樹は、時折後ろの私に「ぐらついた石畳に気を付けて」と声を掛けた。

#0 Spot 6
player

{character:player}英樹はここをよく通るの?

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}そう……ですね。車が通れないので、祖母の家に行く時はいつもここを歩いていました。荷物が多い時は大変でしたよ。

#0 Spot 6
player

{character:player}もうちょっと道が広くなればいいのにね。せめて車が通れるくらい。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}でも僕は、今のままがいいと思っています。

#0 Spot 6
player

{character:player}そう? どうして?

#0 Spot 6
お隣さんA

{character:邻居A}おや、明智さんとこの坊っちゃんじゃないか。帰ってたんか?

#0 Spot 6

英樹の返答を聞く前に、彼の知り合いらしき人に声をかけられた。彼は私に申し訳なさそうな表情を見せた後、知り合いさんに挨拶を返した。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}お久しぶりです。はい、今回はちょっと長めに滞在します。

#0 Spot 6
お隣さんA

{character:邻居A}それはいい。困ったら何でもおじさんに言ってくれ。

#0 Spot 6
お隣さんB

{character:邻居B}英樹くん、この梨持ってって。とれたてだからうまいよ!

#0 Spot 6
お隣さんC

{character:邻居C}おやつもあるよ、お友達と一緒に食べな。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}いつもありがとうございます。

#0 Spot 6

傍で見ていると、英樹の表情が段々と緩んでいくのがわかり、ここの住民達との仲の良さが伝わってきた。ここにいる英樹はいつもの完璧な部長じゃなく、年長のご近所さんに可愛がられる子供のようだ。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}お待たせしました。

#0 Spot 6
player

{character:player}いいのいいの。英樹がここに来ようって言った理由がわかった気がする。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}ええ。今のままでいいと思うのも、皆さんがいるから……あ、ここです。

#0 Spot 6

石畳の道を通り抜けると、他の家に比べて明らかに凝った造りの門の前に着いた。柱には精緻な彫刻が施され、黒い屋根には緑のツタが絡み、威厳がありながら温かみも感じられる。

#0 Spot 6
player

{character:player}ここって、もしかして……?

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}はい、僕の実家です。いつか君にも来て貰えたらと思っていました。

#0 Spot 6
player

{character:player}やっぱり……!

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}この町の、古い民家が織り成す風景そのものも素敵ですが、ここでしか味わえないゆるやかな生活こそが一番の魅力だと思っています。ここなら、君もそれを体験出来るのではないかと。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}祖母が亡くなってから、父さんは一度もここに来ていませんし……今は僕たちしかいません。

#0 Spot 6

英樹が扉を開くと、目に映るのは古式ゆかしい庭園。遣水を取り囲むように植えられた植物、その間を縫うように敷かれた青い石畳の道が、屋敷へと続いている。

#0 Spot 6

小さい井戸や、隅の方に巧みに隠された葡萄棚は、整然とした庭に可愛げをプラスしている。

#0 Spot 6
player

{character:player}このお庭、全然人が住んでいないようには見えないんだけど……。

#0 Spot 6
明智英樹

{character:明智英树}僕は每年帰ってくるので、人を雇って庭の手入れなどをやっていただいてるんです。

#0 Spot 6

英樹は子供時代をここで過ごしたのだと思うと、何となく親しみを感じた。思わず庭に足を踏み入れ、私は……。

#0 Spot 6
葡萄棚を見てみる。 → Spot 7
井戸を見てみる。 → Spot 8
#0 Spot 7

お庭はどこを見てもすばらしいが、一番私の目を引いたのは隅にある葡萄棚だった。美味しそうな葡萄が垂れているのも理由の一つだが、なぜこんな隅っこにあるのかも気になった。

#0 Spot 7

棚の下のベンチに座り、果実の甘い匂いを思い切り吸い込んでいると、英樹が口を聞いた。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}ちょうど今が食べごろですよ。食べてみますか?

#0 Spot 7
player

{character:player}いいの?

#0 Spot 7

英樹は葡萄を一房もぎり、井戸水で洗い、皿に乗せて戻ってきた。瑞々しい紫の果実に水が滴り、とても美味しそうだ。

#0 Spot 7

一粒つまんで口にすると、スッキリとした甘酸っぱさが口に広がる。清涼感が全身に染み渡り、さっきまでの疲れが吹き飛んだ。

#0 Spot 7
player

{character:player}美味しい……。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}祖母が選んで、僕が育てた品種ですからね。子供の頃、何気なく葉を一枚ちぎったら叱られたことがあります。

#0 Spot 7
player

{character:player}英樹が育てたの? うーん、庭仕事をする英樹、あんまりイメージ出来ないなぁ。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}今思い出しても大変でした。土を運ぶためにあの道を何往復もしましたし、植えること自体も難しくて。でも、自分だけの葡萄が育てられると思うと疲れを忘れられました。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}その葡萄が、後の僕のトラウマになるとは思いもしませんでしたけどね。

#0 Spot 7
player

{character:player}ど、どういうこと? もしかして怖い話?

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}はい、祖母の、ですが。

#0 Spot 7

葡萄のツルと葉が日差しを遮り、木漏れ日が英樹の顔を照らす。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}昼の間は、このツルたちはこんな風に素敵な日除けになってくれますが、夜にはまったく逆の姿を見せるんです。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}太陽の日差しを遮るように、夜には月の光も遮るので、ここは庭のどこよりも暗くなります。それに、風が吹くと葉っぱが揺れてサラサラと音を立てるので、何かが中にいるように感じられてしまうんです。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}祖母は……おばあちゃんはわざわざそんな暗くて怖いこの場所まで幼い僕を連れて来て、怖い怪談話をしたんですよ。

#0 Spot 7
player

{character:player}ええ、こんな場所で怪談話を? おばあさんが?

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}ええ。大女の妖怪の話を聞いてから、一年くらいは一人で通学するのが怖かったです。

#0 Spot 7
player

{character:player}なるほど、だから「おばあちゃんの怖い話」ってことか。おばあさん、英樹が怖がってるって知ってたのかな?

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}知ってたというより、むしろそれを狙っていたのではと思います。

#0 Spot 7
player

{character:player}どういう意味?

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}父の影響で、僕は子供の頃から周りの人と一定の距離を保つようにしてきました。たとえ家族であっても、です。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}でもおばあちゃんは、家族はもっと仲良くするべきだと思っていました。

#0 Spot 7
player

{character:player}あー、おばあさまが怪談話で英樹を脅かしたのは、その心の壁を壊したかったってこと?

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}そういうことなんじゃないかと。実は、これ以外にもびっくりさせられるようなことがたくさんありました。もしかすると、おばあちゃんはそういうことが好きだったのかもしれません。

#0 Spot 7
player

{character:player}そういうのって、例えば……?

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}……突然ですが、君の肩に乗っている人形、どこで買ったんですか?

#0 Spot 7
player

{character:player}人形? そんなのどこに……

#0 Spot 7

本当に突然の話で、自分の両肩を見てみても何のことかさっぱりだ。

#0 Spot 7

怪談の話をしていたせいか、もしかして英樹は私が見えないものを見てるのではと思った。そう思うと、急に背筋が冷たくなって、思わず英樹の手を握った。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}ほら、ここに。

#0 Spot 7
player

{character:player}やめてー! 今夜悪夢とか見たらどうする!

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}はいはい。僕はいつでも{var:player_nickname}の側にいるからね、大丈夫だよ。

#0 Spot 7
player

{character:player}今の、おばあさんが英樹を慰める言い方?

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}ええ、おばあちゃんは僕が怖がって手を握ってくるのが好きだったみたいで。高校に上がっても、時々怖がるふりをしておばあちゃんを喜ばせてました。

#0 Spot 7
明智英樹

{character:明智英树}もう二度と出来ないと思っていましたが、久しぶりにここで誰かと話せて嬉しかったです。来てくださって本当にありがとうございました。

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明智英樹

{character:明智英树}思い返せば、君に出会って、二度とはないだろうと思ってたことをたくさん経験してきました。でも意外と悪くなかった。そして今、君に手を握られてようやく気付きました。僕はもっといろんな君を見てみたいし、君にもっといろんな明智英樹を見てもらいたい。

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英樹は私の手を握り返して、目を見つめながら言った。

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明智英樹

{character:明智英树}君に、頼られる存在になりたい。

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player

{character:明智英树}その……

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明智英樹

{character:明智英树}返事は今でなくとも構いません。僕はただ、今の気持ちを知ってもらいたいだけです。

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庭を吹き抜ける風は、甘い香りとともに葡萄の葉っぱを揺らした。サラサラ鳴る音は、まるで私のかわりに英樹に答えているようだ。

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明智英樹

{character:明智英树}この香り……そうだ、花餅を食べませんか?

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{character:player}あはは、英樹にしては、話題変えるの下手すぎない? というか、花餅ってなに?

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明智英樹

{character:明智英树}ここのご当地グルメで、花びらをあんに混ぜて作る甘い焼き餅です。

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明智英樹

{character:明智英树}この街には、エンジュの木を植えると幸運に恵まれるという言い伝えがあるので、夏になるとエンジュのいい香りが街中に広がります。その花びらは、色々な食べ物に使われるんですよ。

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{character:player}そんな言い伝えがあるんだ。じゃあ、おばあさまはエンジュの木も植えたの?

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明智英樹

{character:明智英树}ええ。裏庭に一本あります。見てみますか?

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{character:player}そうこなくちゃ。花びらの味も気になるし。

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明智英樹

{character:明智英树}じゃあ多めに摘みましょう。あ、でもちゃんと洗ってからでないと食べてはいけませんよ。

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{character:player}わかってるって。

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今日は本当に暑いので、私は本能の赴くままに井戸、もとい水源に向かった。井戸の周りは気温も低く感じるし、内側へ手を伸ばすと壁がひんやりとしていて気持ちいい。

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明智英樹

{character:明智英树}釣瓶を落としますから、気をつけてくださいね。

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{character:player}はーい。

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英樹は重そうな木製の桶を井戸に投げ入れ、そしてロープを巻き上げて水で満たされた桶を少しずつ上に引っ張り上げた。

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{character:player}英樹って、細身なのに、意外と力あるんだね。

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明智英樹

{character:明智英树}そういうことを無闇に言うものではありませんよ? ドラマ等では、そういう台詞の後にその力強さを証明されてしまう展開が定番ですし。

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{character:player}ゴホッゴホ……君、本当に明智英樹? 人違いじゃないよね?

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英樹はぷはっと笑い出した。さっきの言葉がどれだけ問題発言なのか、全く気にしていない様子だ。

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あの英樹が際どいネタを口にするなんて。お屋敷に帰ってきて、かなり気が緩んでいるんだろうな。

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{character:player}涼しい……。ただ井戸水で手を洗ってるだけなのに幸せ……。

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明智英樹

{character:明智英树}それでは、もっと幸せになりましょうか。葡萄とライチがあるので、この水で冷やして食べましょう。

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英樹は果物をバケツに入れ、そろそろとバケツを井戸水に浸した。その姿は、正直いつもの完璧で王子様な部長とはとても結びつかない。

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明智英樹

{character:明智英树}祖母が教えてくれたやり方です。井戸の水で果物を冷やすと、すごく美味しくなるんですよ。井戸水じゃないとだめなんですよね……手を抜いて、水道水でやってみたこともありますが、全くの別物でした。

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{character:player}英樹でも、手抜きすることがあるんだ。

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明智英樹

{character:明智英树}それはそうですよ。実は昔、祖母と住み始めたばかりの頃は、お隣さんたちにも真面目な子だと思われてました。

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{character:player}だって実際そうじゃない。

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明智英樹

{character:明智英树}ふふ、ありがとうございます。でも祖母は、僕の真面目さを一度も褒めてくれなかったんです。

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{character:player}え、どうして?

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明智英樹

{character:明智英树}上手く説明出来ませんが……。祖母は、子供には「真面目」でいるより、「元気」でいて欲しかったんじゃないかと。

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明智英樹

{character:明智英树}僕を他の子供のようにはしゃがせるため、祖母は何でも試しました。毎日友達と遊ばせたり、おやつをたくさん買ってきて僕を誘惑したり……でもどれも効果はいまいちで。

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{character:player}あはは、おばあさま、可愛い~。

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明智英樹

{character:明智英树}ええ。でも僕は未だにこんなですし、祖母にはきっとたくさん心配をかけたと思います。昔に戻れたら、祖母に……おばあちゃんに元気な僕を見せたいです。

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英樹は懐かしそうに言った。今やけにはしゃいで見せているのも、昔の自分が出来なかったことを何とかこなそうとしているのかもしれない。

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慰めてあげたかったけど、下手に何かすると傷つけてしまいそうで出来なかった。英樹はそんな私の気持ちを汲んで、笑って話題を変えてくれた。

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明智英樹

{character:明智英树}そうだ、今朝会った場所に比べて、このあたりは何だかいい香りがしませんか?

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{character:player}言われてみれば、確かに……。

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明智英樹

{character:明智英树}この街にははエンジュの木を植えると幸運に恵まれるという言い伝えがありまして、うちの裏庭にも植えてあります。子供の頃は、よく友達とエンジュの花を摘んで食べようと、木を登ったりしましたね。落ちて怪我した子もいました。一度食べてみませんか?

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player

{character:player}花びらを? ぜひ食べてみたいけど、今日は怪我しないでね。

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明智英樹

{character:明智英树}どうでしょう。でもちゃんと安全を考えて摘みますから、心配しないでください。

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英樹は梯子で木に登り、エンジュの花を摘み始めた。その間、私はこのエンジュの樹をじっと観察していた。

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さすが明智家の歴史を見つめてきたエンジュの樹、とても大きい。二人で抱えられるかどうかの太い幹は、花のものとはまた違ういい香りがする。

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{character:player}あれ、ここに何か刻まれてる。

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幹には見覚えのある模様が刻まれている。確か何年か前の漫画に出てきた、主人公とヒロインが契約をした時の魔法陣に似ている。となると、これを刻んだのは英樹?

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明智英樹

{character:明智英树}よく気づきましたね。こんなのもありましたね……すっかり忘れてました。小学生の頃に秘密の箱をこの下に埋めたのですが、その目印として刻んだものです。

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{character:player}え、タイムカプセル的な? 漫画の真似してやったとか?

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明智英樹

{character:明智英树}その通り、あの漫画の影響です。これを埋めてから、もう十年以上も経ったんですね。

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{character:player}それなら、漫画のストーリー通りに、そろそろ掘り出した方がいいんじゃない?

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明智英樹

{character:明智英树}はは、確かに。では、掘り出してみましょう。

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英樹と一緒にせっせと地面を掘ると、すぐにボロボロの金属ボックスが出て来た。

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表面の土を払ったが、英樹はなかなか開けようとしない。

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{character:player}私見ないほうがいい?

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明智英樹

{character:明智英树}いえ、見せたくない訳ではないのですが……この中に入れる手紙を書いた時、ちょうど父と仲違いをしていて、後ろ向きなことばかり書いた記憶があって。

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明智英樹

{character:明智英树}今思えば、あの時の喧嘩の原因は本当に些細なことですが、当時の僕にとってはそれなりに辛かったなと。

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英樹はいつも完璧な一面を見せているから、今のような迷いはなかなか見せない。私は手を彼の手に添えて言った。

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{character:player}どんなことが書いてあったって、もう過去のことだから。英樹にとって大事なのは、今を生きることでしょ。

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{character:player}過去の自分を客観的に見つめることで、今本当に必要なことがわかるかもしれないよ。

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{character:player}私の知ってる明智英樹は、こんなどころでモタモタするような人じゃない。そうでしょ?

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チュンチュンと、私に答えるように梢に留まっている小鳥が鳴いた。英樹はそれを聞き、決心して蓋を開けた。

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でも箱の中身は、英樹が言ったような手紙ではなかった。

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{character:player}「私の可愛い孫、英樹くんへ」

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明智英樹

{character:明智英树}おばあちゃんの手紙……?

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「夜眠れなくて庭を歩いていたら、あなたの秘密を見つけてしまいました。勝手に中身を替えてごめんなさい。」

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「この箱を掘り出す時、あなたはもう高校生かな、それとも大学生、社会人かもしれないね。もう好きな人は出来た? まだ周りの人と距離を取っているのかな?」

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「どんなあなたでも、あなたはおばあちゃんの誇りです。一番聞きたいのは、あなたは今幸せかってこと」

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「明智家の後継者になるとしても、別の道を行くとしても、幸せになれるかどうかで決めて欲しい。」

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「この手紙を見た君が幸せでいること、そしてこの先もずっと幸せでいることがおばあちゃんの一番の願いです。いつでもあなたを愛していますよ。」

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簡潔な手紙だけど、おばあちゃんの孫への愛情と期待が溢れんばかりに詰まっている。手書きの文字を見て、夜更けに孫のことを思いながら手紙を書いた老女の姿が浮かんだ。

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明智英樹

{character:明智英树}父は、僕を政治家にし、明智家の後継者とするために、子供の頃から厳しく教育してきました。

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明智英樹

{character:明智英树}でも僕は、本当は、父の期待を重荷に感じていました。

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明智英樹

{character:明智英树}高校の生徒会長も、今の麻雀サークルの部長も、本当はやりたくなかった。でも、こういう役目を果たせば、父の教育が成功している証になるから……。

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{character:player}実際、向いてると思うけどね。

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明智英樹

{character:明智英树}ええ。うまくやれた時は、僕も嬉しかったですが、それを隠してきました。

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明智英樹

{character:明智英树}他の人に、特に父には知られたくなかったから。でも今、吹っ切れました。

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英樹は手紙を折りたたみ、大事に胸ポケットに入れた。

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明智英樹

{character:明智英树}この手紙のおかげで、僕は気づいたからです。父のためでもおばあちゃんのためでもなく、僕は僕自身のために生きていることに、そして、僕がずっと愛されていたことに。

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明智英樹

{character:明智英树}今なら、おばあちゃんの質問にこう答えられる。幸せです、と。これからもずっと幸せのために生きていきたい、とね。

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{character:player}おばあさんが聞いたらきっと喜ぶよ。

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明智英樹

{character:明智英树}ありがとうございます。まあ、おばあちゃんなら、君を家に連れてきたことだけで喜びそうですけどね。

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{character:player}え、それってどういう意味?

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英樹は近づいてきて、私の髪についたエンジュの花びらを取ってくれた。

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明智英樹

{character:明智英树}また一緒に、ここに来ましょう。

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{character:player}うん。

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おばあさまが喜んでくれるということだし、ね?