三上千織
裕福な家庭に生まれたお嬢様。父親は大学の教授で、母親は外科医師。両親は留守がちなため、いつもはメイドが彼女の面倒を見ている。誕生日プレゼントに両親からもらったクマのリュックはどんな時でも手元に置いて手放したことがない。テレビショッピングで麻雀のことを知ってハマった。「他人の苦痛の上に成り立つような楽しさがあって、麻雀って面白いよね」
Profile
Skins
三上千織の初期衣装
三上千織と契約を結んだ時に入手できる着せ替え衣装
「クリスマスフェス」にて購入できる限定の着せ替え衣装
「夏祭り・のんびりサマーデイ」にて購入できる限定の着せ替え衣装
「カフェ日和」にて購入できるウェイトレステーマの限定着せ替え衣装
「謎ガチャVer.ハロウィン」にて購入できるハロウィンテーマの着せ替え衣装
「春節廟会」にて購入できる、旧正月テーマの着せ替え衣装
Emotes
Bond Requirements
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プレゼント・普通
なになに、くれるの~?ありがとう!
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プレゼント・好み
なかなかいいセンスしてるじゃない、でーも、この程度で千織と仲良くなれるなんて、思わないでよね?
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絆レベルアップ5
千織にこんな素敵な服をプレゼントするなんて、ずいぶんと生意気ね!ま...千織は大人だから、細かいことには目をつぶってもらってあげるけどさっ。
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絆レベルアップ1
うふふ、お馬鹿さんって恐れ知らずよね。千織にバクチ勝負だなんて……はぁ!?怖いだなんて、ありえないわ!どんな勝負だって、千織は受けて立つわよ!後悔しても遅いんだからね!フフン……ところで、バクチってなぁに?
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絆レベルアップ2
あんたさぁ、麻雀がヘッポコだーって言われてるでしょ?...ま、救いようのないバカだから、そう言われてて当然なんだけどさ...ちょーっとだけ哀れよね。...仕方ない、この千織さまがあんたのこと特訓してあげるわ!
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絆レベルアップ3
毎日千織さまのご機嫌を取ろうとするの...はっきり言ってウザいんだけど!んまあ...仕方なぁ~く受け取ってあげるけどさ...
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絆レベルアップ4
ふん...だいぶ上達したみたいじゃない?ま、この千織さまとずっと一緒にいるんだから当然なんだけどね。でも、まだまだ私の足下にも及ばないんだから、もっともっと頑張りなさいよね?
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隐藏语音 - 新年
明けましておめでとう!フフン、意外だったでしょ?びっくりしたでしょ?もっと飛び跳ねるぐらい喜んだっていいのよ?千織さまからお祝いしてもらえるなんて、この上ない光栄なんだからね!お祝いしてあげたんだから、新しい一年も熱い心と忠誠心を胸に、きちんと千織さまにご奉仕するのよ。うふふ!
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隐藏语音 - 情人节
チョコをあげるわ。……は?あんたその顔、何か誤解してなぁい?皆にあげてるだけで、あんただけ特別なわけじゃないんだから。だ、だけどね!あんたはヘンタイだし、皆に嫌な思いをさせることになっても困るから、あんたには皆のとは違うチョコを用意してあげたわ。だから……ちゃ、ちゃんと感謝して受け取りなさいよね!そうしないと千織の苦労が水の泡になっちゃうでしょ!
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メイン1
こ・の・へ・ん・が...アンパイだと思わなぁい?ふふっ~単純なやつだね
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メイン2
なによ、ジロジロ見て、エッチなことでも考えてるの??
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メイン3
バカ!変態!アホー!!...え、怒らないの?変な人ね。
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メイン4
たとえ千織より麻雀が上手くっても、かわいさでは千織のほうが上だもん、もし千織よりかわいくても...、って、そんな人いるわけないし!
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メイン5
ねぇねぇ見て見て!この服とこの服、どっちの方が似合うと思う?
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メイン6
あんた、そんなに嫌なやつじゃなさそうね。ま、千織さまは優しいから、一回くらいは、勝たせてあげてもいいかな
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メイン7
わぁ~、おしゃれなカフェ♪...あんた、こういう場所に慣れてそうだから、今日は特別に千織をエスコートする役目を与えてあげるわ。さっ、はやく入りましょ♪
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メイン8
なに人のプリンをじろじろ見てんのよ!もしかして...食べたいわけ?ふーん、千織の食べかけを食べたいだなんて、変態ね~。...ほら、あーんして。仕方ないから一口だけ分けてあげるわ。
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ログイン・普通
え~?なんでまた来たの?
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ログイン・絆LvMAX
くるの遅いよ!ふん!ど~せ変なことでもしてたんでしょ!
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契約を結ぶ
み、見ちゃだめ!バクチで勝っても見るのはダメ!バカ!変態!アホー!だ、誰が千織のこの格好を可愛いって評価していいだなんて言った!?千織が可愛いのなんて当たり前でしょ?別にあんたなんかに認めてもらわなくても……なによ?「どうせこの先、千織より可愛い子に出会うことなんてもうないだろうし、今のうちにたくさん見て元は取りたい」って…?…ふん!ち、千織は優しいから、もう少し見せてあげてもいいわ。
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SP-友人戦部屋に入場する時
千織が来てあげたわよ!
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SP-友人戦部屋で準備した時
さっさと始めよう?
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出会い
ふーん、あんたが新しい雀士なの?...貧相な顔ねぇ、まぁ、せいぜい千織の足を引っ張らないでよね
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北抜き
ぺーするね!
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チー
チーしちゃおっと!
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ダブル立直
ダブルリーチ!
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カン
カーン♪
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ポン
それ、ポン!
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立直
リーチ!
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ロン
ローン♪
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ツモ
ふっふーん、ツモ
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白
ハク
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北
ペー
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純全帯幺九
ジュンちゃん
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純正九蓮宝燈
チューレン9メン待ち
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大三元
ダイサンゲン
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大四喜
大スーシー
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地和
チーホー
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ダブル立直
ダブリー
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東
トン
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ドラ
ドラ
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ドラ10
ドラ10
-
ドラ11
ドラ11
-
ドラ12
ドラ12
-
ドラ13以上
ドラいっぱい
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ドラ2
ドラ2
-
ドラ3
ドラ3
-
ドラ4
ドラ4
-
ドラ5
ドラ5
-
ドラ6
ドラ6
-
ドラ7
ドラ7
-
ドラ8
ドラ8
-
ドラ9
ドラ9
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ダブル北
タブペー
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ダブル東
ダブトン
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ダブル南
ダブナン
-
ダブル西
タブシャー
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断幺九
タンヤオ
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対々和
トイトイ
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二盃口
リャンペーコー
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発
ハツ
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国士無双十三面待ち
コクシ十三メン待ち
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国士無双
コクシムソウ
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海底摸月
ハイテイ
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河底撈魚
ホウテイ
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混老頭
ホンろーとー
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混全帯幺九
チャンタ
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混一色
ホンイツ
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九蓮宝燈
チューレンポートー
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嶺上開花
リンシャン
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立直
リーチ!
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流し満貫
流しマンガン
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緑一色
リューイーソー
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南
ナン
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平和
ピンフ
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槍槓
チャンカン
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七対子
チートイ
-
清老頭
チンロートー
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清一色
チンイツ
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三暗刻
サンアンコー
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三槓子
サンカンツ
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三色同刻
三色ドーコー
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三色同順
三色ドウジュン
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四暗刻
スーアンコウ
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四暗刻単騎
スーアンコウ、タンキ
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四槓子
スーカンツ
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天和
テンホー
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西
シャー
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小三元
ショーサンゲン
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小四喜
小スーシー
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一盃口
イーペーコー
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一発
イッパツ
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一気通貫
イッツー
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中
チュン
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ツモ
ツモ
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字一色
ツーイーソー
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清算一位
みんなと麻雀打つのって、楽しいね!
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清算一位・高い点数で勝利
千織に勝てる人なんて、この世に存在しないんだから!
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清算一位・ロンで勝利
あれ?ついロンしちゃった!
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倍満
バイマン
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九種九牌
キュウシュキュウハイ!
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数え役満
数えヤクマン
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満貫
マンガン
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ノーテン
ぐぐ...ノーテン
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三倍満
サンバイマン
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四風連打
スーフーレンダね
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四槓散了
スーカン流れね
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四家立直
スーチャリーチね
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跳満
ハネマン
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聴牌
テンパイよ
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役満
ヤクマン
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ダブル役満
ダブルヤクマン
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トリプル役満
トリプルヤクマン
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四倍役満
四倍ヤクマン
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五倍役満
五倍ヤクマン
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六倍役満
六倍ヤクマン
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SP - ドラを捨てた時
チェッ……残念。
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SP - 倍満/三倍満聴牌
さすがは千織さまよね!
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SP - 同じ牌を連続に捨てた時
むーー!ムカつくぅ!
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SP - 残り牌が10枚以下の時
ふっふーん、最後まで全力で!これが千織の作法なんだから
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対局開始
だ~れ~を~ビ~リ~に~し~よ~う~か~な~?
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SP - 役満聴牌
ふっふっふ……誰が運を味方にできるか、見てあげようじゃない。
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帯幺九
帯幺九(タイヤオチュウ)
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根
根(ルート)
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将対
将対(ジャントイ)
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金勾釣
金勾釣(キンコウテャオ)
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嶺上放銃
嶺上放銃(リンシャンホウジュウ)
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龍七対
龍七対(ロンチートイ)
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清対
清対(チントイ)
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清金勾釣
清金勾釣(チンキンコウテャオ)
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清龍七対
清龍七対(チンロンチートイ)
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清七対
清七対(チンチートイ)
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清十八羅漢
清十八羅漢(チンジュウハチラカン)
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清幺九
清幺九(チンヤオチュウ)
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十八羅漢
十八羅漢(ジュウハチラカン)
Spot Voices
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Spot Voice 1
惊讶
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Spot Voice 2
肯定
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Spot Voice 3
否定
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Spot Voice 4
打招呼-早晨
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Spot Voice 5
打招呼-白天
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Spot Voice 6
打招呼-夜晚
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Spot Voice 7
告别
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Spot Voice 8
承接
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Spot Voice 9
叹气
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Spot Voice 10
高兴
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Spot Voice 11
生气
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Spot Voice 12
递进
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Spot Voice 13
转折
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Spot Voice 14
疑惑
ぬいぐるみのお姫様
絆LV1で開放
「ねぇインデックス、おとうさまとおかあさま、きょうかえってくるかなぁ……?」 三上千織はピンク色のクマを抱きかかえ、ベランダに造り付けられているブランコに乗り、足をぶらぶらさせながら星空を見上げた。 「インデックス」とは、今彼女が腕に抱えているクマの名前だ。そのクマは、以前両親が外国から送ってくれた誕生日プレゼントだった。彼女の問いに、インデックスは答えない。いたって普通のぬいぐるみ型手提げバッグなのだから当然である。にも関わらず、インデックスは、大人達によって実現困難な使命を数多く課せられている。例えば、小さな主を一人ぼっちにしないという使命とか。 千織の背後には、ピンク一色のいかにも子どもらしい部屋。部屋の中には、数えきれないほどのぬいぐるみ。ぬいぐるみさえあれば子供は寂しくないだろう、大人達はみなそう思っている。他の子供たちはいつも羨ましそうに千織のことを「ぬいぐるみのお姫様」と呼んでいた。 「ちおりちゃんってすごいね。おうちにぬいぐるみがたくさんあって!」 「わたしもちおりちゃんちみたいに、たっくさんぬいぐるみがほしいな」 「ちおりちゃんのパパとママって、ホントにやさしいよね。こんなにぬいぐるみをかってくれるんだもん」 他の子がそう言いながら千織を取り囲む時、彼女はいつも出来る限りえっへんと胸を張り、他の子達からの羨望の眼差しを享受するのだ。 しかし、大人から向けられる視線は嫌いだった。いくら幼い千織でも、向けられる視線の違いくらいは分かる。彼らにとって「ぬいぐるみのお姫様」という称号は憐みと皮肉の象徴なのだ。 「かわいそうに、ご両親はいったい何を考えているのかしら?」 「本当よね。ぬいぐるみは話し相手にもならないし、このままじゃ性格も暗くなっちゃうんじゃないの?」 「いやいや、よそはよそ、うちはうちってやつでしょ。当のパパママがそれでいいと思ってるんなら、部外者があれこれ言うことじゃないんじゃない」 「あまり一緒に遊ばないように、うちの子に言っておかなきゃ。親が近くで面倒を見てないなんて、どんな性格になるか分かったものじゃないし」 三上千織は近所の人々の会話を思い出し、唇を引き結んでインデックスをぎゅっと抱きしめた。 千織は……平気だもん。
九条璃雨
絆LV2で開放
「まあ、なんてあいらしい方なのでしょう!」 出会いがしらに抱き締め、めちゃくちゃに撫でくり回してきた少女――九条璃雨。母が連れてきた人間ではあるけれども、視野の狭いご近所さん達と大して変わらないように見える。家の中を案内すると、璃雨は凝った内装や調度を褒め讃え、大量のぬいぐるみを目にすると、彼らと同じように驚きと羨望の表情を浮かべた。 どうせこの人も同じだ。近所の子みたいに、すぐに両親から近づくなと言われて引き離されてしまい、二度と自分には会いに来てくれないだろう。 「千織、これからは璃雨ちゃんがお友達になってくれるわ。毎日のことも面倒を見てくれるから、仲良くするのよ」 千織の反発を察したのか、母は彼女の頬を名残惜しそうに繰り返し撫でた。外科医である千織の母は、メスを握ることも多く、他の子の母親に比べて硬い指をしている。指先には薄いタコがあり、頬を撫でられると少し痛いくらいだ。 しかし、千織にとっては何より恋しいスキンシップ。強張っていた心がだんだんと解れていき、気付いた時には、握りしめていた小さな手が母親に導かれ、璃雨の手に重ねられていた。 我に返った千織は慌てて手を引っこめようとしたが、母のものと同じくらい硬い璃雨の手のひらがそれを思いとどまらせた。 千織はまだ幼いが、幼いなりに、医師としての母が重要な人材であろうことはわかっている。母親の手の感触は、子供が最も肌で安心感を感じ取れるものなのだ。 ということは……似た手を持つ璃雨も頼れる人なのではないか……? 「はじめまして、千織様。以後、あなた様の専属メイドとしてお仕えいたします。よろしくお願いしますね!」璃雨はしっかりと千織の手を握り、彼女の戸惑いなどものともせず、はっきりそう告げた。 二人がきちんと挨拶出来たので、千織の母は安心し、また慌ただしく出かけていった。病院には、彼女を待つ患者が大勢いるのだ。 「おかあさまはほんとうにすごいのよ」千織は去り行く母親の背中を目を赤くして見送り、横に立つ璃雨にそう言った。「みんないってたもん。おかあさまは、たくさんのひとをたすけてきた、かみさまみたいなひとなんだって」 「ええ。……それにしても、神様とはどのようなお方なのでしょうね?」 「バカね。みんな、おかあさまのことをかみさまみたいっていってるのよ。かみさまってのは、おかあさまみたいなのにきまってるでしょ!」 「そうですね、千織様!」璃雨はテレビに出てくるメイドの真似をして、スカートのすそを持ち上げて一礼した。しかし、まだ幼い女の子がそんなポーズを取ると、なんだかやけに面白い。 「あはははっ、もうほんとバカなんだから。そんなんじゃ、ちおりのメイドはつとまらないんだからね」 「あら……では、わたくしは不合格ということでしょうか?」 「そうよ、ちおりのメイドになるのなら、ちおりとおなじくらいすごいひとにならなきゃだめなの!」 「すごい人……例えばどのような?」 「ふん! すごいメイドっていうのはね……」千織は、以前見た映画のシーンを思い返した。「まずは、ちゃんとお茶をいれられなくちゃね」 「それなら出来ますよ。少々おまちください」そう言うや否や、璃雨はまるで竜巻のように走っていった。 「もう! なんなの……あんなにあわてて、ちっともゆうがじゃないったら」 しかし、璃雨が入れてくれた紅茶は思いの他美味しかった。千織の大好きなミルクティーにしてくれている。 「こ、これくらいあたりまえよ。これだけじゃ、すごいかどうかきめられないわ! ふん!」 「千織様のお望みとあらば、どんなことでもこなしてみせます!」 「そんなごきげんとり、いってもむだよ。そういうことばはききあきたわ。せんにん……ううん、いちまんにんくらいからきいたもの」 「ごきげん取りだなんて、とんでもございません。わたくしはただ、千織様のことが誰よりも何よりも大好きなだけなのです」 目の前のメイド服姿の少女は、どこまでも真摯な笑顔を見せた。今まで、下心で自分に近づいてきた他の人とはまるで違う。 それに……「何よりも大好き」なんて…… 「ふん! こんなにかわいいちおりさまだもの、す、すきになるのもとーぜんよね! ま、そういうことならしかたないわ。とくべつにちおりのおせわをさせてあげる」 金髪の少女は、目頭を熱くしながらも、強がるように顔をあげた。この千織さまが、会ったばかりのメイドの言葉に、ほんのちょーっとだけでも感動させられるなんて。 でも、あくまでちょっと。このメイドを受け入れたのは、おかあさまに免じてってだけなんだから、友達になんてなるものか。でも、もしも…… もしも、これからもずっとそばにいてくれるのなら、考えてやらないこともないけど。 この出会いがあった時、千織は五歳、璃雨は十歳だった。
麻雀
絆LV3で開放
「一飜市で四象戦の予選が月末に行われると発表されてから、各地の麻雀会館は大勢の人で賑わっています。今回の大会への注目度の高さが伺えますね……」 テレビから、途切れることなく現地の様子を伝えるリポーターの声が流れている。人は皆、なぜこうも集まって騒ぎたがるのか……三上千織にはまるで理解出来ない。そういった人混みを、彼女は常に遠ざけてきた。 しかし、この試合は結構面白そうだ。画面には、これまでの四象戦予選の様子が映し出されている。 千織のために紅茶を淹れつつ、面白そうにテレビを見ている九条璃雨の様子も気になった。 「璃雨、この四象戦っていったい何なの?」 何度か見つめても反応を返さない璃雨に痺れを切らし、千織はついにゲーム機を手放して尋ねた。 「四象戦というのは、麻雀というゲームの大会です」 「それ、楽しいの?」 「そうですね……わたくしも実際に遊んだことはありません」 「じゃあ、どうしてそんなに興味深々なの?」 「それは……」璃雨は千織を見て、真剣な表情を浮かべた。「麻雀は一飜市の伝統的なマインドスポーツで、様々な社交の場でもごく当たり前に口にされる話題だとか。最高のメイドとしては、ぜひとも知識を付けておきたいのです。そうすれば、千織様が恥をかく心配もないかと思いまして」 「あ、そ、そうよね……えっと……ち、千織もそう思ってたとこなの」わずかに声が上擦る千織。「そういうことなら、ニュースを見てるだけじゃ意味ないわよね。璃雨、あんたもその麻雀の大会に出てみなさい」 「へっ?」数秒ほどぽかんとした後、璃雨は力強く頷いた。「分かりました。どれだけやれるかわかりませんが、千織様のお望みとあらばベストを尽くします」 「ふんっ! たかが麻雀じゃない。あんたは、この千織さまのメイドなのよ。絶対優勝するに決まってるわ」 千織は璃雨自身以上に璃雨のことを信頼していた。 「でもそうね……あっ、そういうことなら、千織も一緒にその試合に出てあげる。由緒ある三上家の娘たるもの、メイドだけを戦地に送り出すわけにはいかないでしょ」 「まあ、素晴らしいです! 千織様が直々に出場されるのなら、きっと優勝間違い無しです!」 璃雨もまた、尋常じゃないほど千織を信頼していた。 そんな訳で、お互いへの自信と信頼に満ちた主人とメイドの麻雀道が始まったのだった。 ……結果から言えば、この自信と信頼は全くの大言壮語という訳でもなかったらしい。 大会が始まってすぐ、大会に参加する千織の身の回りの世話をするには身動きが取れた方が良いという理由で、璃雨はみずから試合を棄権した。しかし千織の方は麻雀に対するずば抜けた才能を発揮し、短時間で様々な役を覚えて連勝を収めた。それにより、多くの雀士の注目を集めるようになったのだ。 「璃雨、麻雀ってすごく楽しいね!」 「試合中の相手の表情、見た?」 「他人の苦痛の上に成り立つ喜びを味わわせてくれるゲーム、最高だわ!」 璃雨がこれほどまでに目を輝かせた千織を見るのは初めてのことだった。 「はい、麻雀はとても面白いですね!」 だって、千織様をこんなに楽しませてくれるのですから。 後半は口には出さず、そっと心の中でつぶやいた。
お嬢様の危機
絆LV4で開放
Possible Endings
Scenario Script
Spots 18, Scenes 418, Choices 6, Endings 2
抜けるような青空をした夏の昼下がり。しかし今、魂天神社の対局室は分厚い雲に覆われているかのように、重苦しい緊張に包まれていた……一姫の「エサやり」に来ていた私は、対局室に入ると、一度深呼吸して、その理由を導き出した。
{character:player}この悪魔でも降臨したかのような重い空気は、最近ここに入り浸っているあの人のせいだろうな。
{character:三上千織}役満!
声がした方を見ると、思った通り、金髪の少女――三上千織が意気揚々と対局していた。彼女の真っ赤なカチューシャは、まるで「近づくと痛い目見るぞ!」と警告しているかのようだ。
卓をちらと見ると、点棒の数的に、今終わったばかりの局は千織の一人勝ち、まさしく圧勝だったらしい。
{character:三上千織}ふん! 大口叩いてた割に大したことないわね。この千織様に目に物見せてやるとか言ってたのは誰だったかしらぁ~?
野次馬が千織への歓声を上げた。一方同卓した雀士はというと、引きつった笑みを浮かべ、悔しそうに立ち上がった。
{character:雀士A}オイ! 俺たちゃガキ相手だってんで、わざと負けてやったんだからな! じゃないとつまんなくなっちまうだろ!
{character:雀士B&雀士C}そうだそうだ!
それを聞いて、他の二人の雀士も決まりが悪いこの状況を打開出来るぞとばかりに頷く。すると、三上千織の顔が一瞬でくもった。
{character:三上千織}はぁ!? わざとですって? あんたたち「ガラスおじさん」のくせに?
{character:雀士C}ガラス……?
{character:三上千織}そうよ。あんたたちって考えてることも手牌もまるでガラス張り、丸見えなのよね。
{character:雀士B}あ……ハハハ、今のは冗談だ。ったく、真に受けちゃって、嬢ちゃんは~。
{character:三上千織}お互い様でしょ? 今のおじさんたちの言い訳、さっきの麻雀よりマジだったものね。
容赦なく言い返す千織。野次馬の声が次第に大きくなってきた。どうやら三人の雀士の発言に対するブーイングのようだ。彼らはますます小さくなり、顔を赤くしたり青くしたりして、おどおどと俯いてしまった。
{character:雀士A}悪かったよ、俺たちの負けだ。
{character:三上千織}謝るくらいなら、もっと練習して来ることね。実力もないくせに、口ばっかりで全然行動に移さない雀士はもう見飽きたわ。
ブーイングが止まない中、三人の雀士は顔を真っ赤にして足早に去っていった。一部始終を見ていた私は――
{character:player}こんな不遜な態度で、いつか報復に遭わないといいけど。
一飜市はいたって平和な所だが、一飜市だからこそ、麻雀の怨みを甘く見てはいけないのだ。
{character:九条璃雨}報復しようとでも思っているのですか?
{character:player}九条さん、いつの間に!?
いつの間にか横に立っていた少女は、千織の専属メイドの九条璃雨さん。主従関係ではあるが、実態としては姉妹のようなものだ。
九条さんは腕も立つ。お嬢様を不当に扱ったり、何か害を加えようとする者は誰であろうと滅殺する。私も、千織に冗談を言ったときに何度かその鉄拳を喰らったことがある。
……ちょっと待て。今自分の口から言葉がポロッと……嫌な予感がする。
{character:player}九条さん、さっき言ったことなんですけど、まだ弁解のチャンスはありますでしょうか?
{character:九条璃雨}さあ、どうでしょうね……?
九条璃雨は薄笑いを浮かべながら、私の肩をガシッと掴んだ。
{character:九条璃雨}しかし、今はそれより重要なお話があるのです。
「ううう、今に見てろ。いつか誰かがお前をボコボコにする日が来るんだからなー!」
九条さんが「相談したいことがある」と言った時、またしても付近の卓からあがった悲壮な叫びが神社一帯に響き渡り、聞く者を恐怖に陥れた。
また一人、卓についていた雀士が千織に完膚なきまでに負かされ、号泣しながら逃げて行った。全ての元凶である傲慢な大魔王の高笑いが響く中、険しい表情の九条さんを見つめた。
{character:player}ほら、感情が高ぶると思わず過激なことを口走ってしまうものなんですよ。信じて、さっき言ったことはほんの冗談なんだって。報復なんて絶対しませんから!
{character:九条璃雨}しっ、もう少しお静かに。わたくしのようなか弱い少女が、あなたに何かするとでも?
{character:player}もしかして、「か弱い」って単語の定義変えました?
{character:九条璃雨}ああ、急に強い風が。……何か言いましたか?
{character:player}いや、何も。
{character:九条璃雨}なら良いです。では、本題に入りましょうか。わたくしの悩みを聞いてもらえますか?
{character:player}えっ? 私でよければ聞きますけど。
完全無欠の九条さんが「悩み」なんて言葉を口にするとは珍しい。これはきっとかなりの難題だろう。
{character:九条璃雨}……不審者です。それもかなり危険な。
{character:player}え、不審者!? そんなのがいるの?
{character:九条璃雨}何ですか? 千織様のように輝いているお方なら、不審者に目をつけられてもおかしくありません!
{character:player}そうじゃなくて……落ち着いてください、あなたなら守れるでしょう?
{character:九条璃雨}そうです、千織様の視界に入るゴミ共を一掃するのがメイドとしての存在意義なのですから、当然でしょう。
長年のテコンドー修行で培った構えを崩さない九条さんを見れば、あの不審者たちがどのように片付けられたのか、容易に想像がついた。
{character:player}わかってますよ。それにしても、その口ぶり……今回はいつもと違うみたいですね。
{character:九条璃雨}そうなんです。ちょうど一週間前の夜のことでした。夕食の準備を終えて、千織様をお呼びしようとしたところ、不可解なことがあったのです。
九条さんは、その日あったことを語り始めた。
{character:九条璃雨}千織様、お食事の支度が整いました……千織様?
驚いたことに、千織の部屋には誰もいなかった。
他の場所を探しに行こうとすると、突如ベランダから「キイ……」という音が聞こえてきた。よく確認すると、ベランダに続くガラス戸が開いていて、夏の暑い空気が室内まで入ってきていた。
今の音は、ブランコが揺れた音らしい。
{character:九条璃雨}こんな暑い日に、どうしてベランダなんかへ……? 千織様? あら?
主人の居場所を掴んだと思っていたのだが、ベランダまで出て驚いた。そこに千織の姿はなく、ブランコが揺れているだけだったからだ。空気はよく乾燥していて、風も全くなかった。椅子に触れると、温もりがまだ残っていた。
ブランコのそばにはクマのぬいぐるみが落ちていて、それを拾い上げた九条さんは顔をしかめた。
{character:三上千織}やったわ! 大勝利よ! 千織がホームで負けるなんてありえないわ! 璃雨ー!
そのとき、千織の声が部屋の外から聞こえ、彼女は隣の小さな書斎にいたのだとわかった。
ハッと我に返った九条さんは、急いでぬいぐるみをブランコに置き直すと、千織の呼びかけに応じるべく部屋を飛び出した。
{character:九条璃雨}はい、ここに。
{character:三上千織}今半荘が終わったとこなの、お腹が空いたわ。今なら一姫より食べられそう。
{character:九条璃雨}フフ、かしこまりました。今夜はビーフピザにエビチリ、デザートはマンゴーミルフィーユでございます。足りなければ、パスタもご用意します。
{character:三上千織}あら、それってもしかして、この前お店で食べたおいしいエビチリ? レシピを覚えたの?
{character:九条璃雨}思い出の味の通りになれば良いのですが。
{character:三上千織}自信もちなさいよ。璃雨の料理の方がおいしいんだから!
{character:九条璃雨}千織様がそうおっしゃるなら、店以上の味になっているはずですね!
{character:九条璃雨}……大変光栄なことに、あの日のエビチリは千織様が全てペロリと召し上がられました。
{character:player}ゴクッ。おいしかっただろうな……って、今は不審者の話ですよね。
{character:九条璃雨}そうでした。とにかく不審者の存在を知ったのは、その時が初めてでした。それからというもの、千織様と出かけるたび、物陰から何者かに見られているかのような感覚が何度かありました。しかし相手は勘が鋭く、いつも追いつく前に逃げられてしまうのです。
{character:player}それは手強そうですね。
{character:九条璃雨}最新のメイド養成合宿に参加し、アンチ尾行スキルを磨きましたが、それでも完璧に千織様の安全を保証するレベルには達していなくて。
{character:player}九条さんはよくやってると思いますよ、いつも千織をしっかり守ってるじゃないですか。……状況はわかりました、それで、私は何をすれば?
{character:九条璃雨}わたくしと一緒に千織様の警護にあたっていただきたいのです。他者の助力があれば、不審者をよりスムーズに捕まえられるかもしれませんから!
{character:player}それは構いませんけど、何故私に頼もうと思ったんですか?
{character:九条璃雨}わたくしが決めたというより、千織様のお気持ちがあなたを選んだ……と言った方が適切でしょう。
{character:player}どういう意味ですか……?
{character:九条璃雨}千織様は人を簡単に信用しません。しかし、あなたのことは嫌っているように見えても、有事の際は知らず知らずのうちにあなたを頼っているように感じます。
{character:九条璃雨}恐らく千織様ご自身も、いつからそうなったかはわからないと思いますが。
{character:九条璃雨}ですから、他の誰かよりあなたをお傍にお付けした方が、千織様は受け入れてくださるのではと判断しました。
{character:九条璃雨}とはいえ、ご心配なく。千織様に部外者への依存心を芽生えさせてしまったのは、メイドたるわたくしの落ち度です。必ずこの過ちを正し、千織様をあなたから取り戻してみせます!
最後の一言に、思わず背筋が寒くなった。
{character:player}アハハ……そこまで深刻に考えなくても、いや冗談抜きで。
{character:player}それはともかく、ストーカーなのか、もっと別の目的があるのか知らないけど、一刻も早く見つけ出した方がいいですよね。
{character:九条璃雨}しーっ、お静かに。千織様はまだこのことをご存知ないのですから。
{character:player}そうなんですか?
{character:九条璃雨}もし千織様のお耳に入ろうものなら、あまりの恐怖にお食事も喉をお通りにならなくなったり、眠れなくなってしまうに違いありません。それに、わたくしの知る千織様は何としてもご自身で不審者を捕まえようとなさるお方。もしそんなことになればあまりに危険すぎます。
{character:九条璃雨}という訳なので、あなたが私達に同行する理由を考えておかねばなりませんね。
{character:player}そうですね……一緒に遊ぶというのは?
{character:三上千織}一緒に遊ぶ? なんで千織が平民の{var:player_nickname}と遊ばなくちゃいけないのよ?
{character:三上千織}ふん! 嫌よ、ぜーったい嫌!
{character:player}……
わかり切っていた。千織の性格なら、こうなるのは当然だ。横で見ていた九条さんが、今にも崩壊しそうなボディーガード計画に助け舟を出した。
{character:九条璃雨}千織様は以前、いつか{var:player_nickname}と一緒に遊びたいと仰ってましたよね?
{character:三上千織}はぁ!? バカ璃雨! ち、千織がそんなこと言うわけないじゃない!
{character:九条璃雨}そうでした、私の記憶違いでした。千織様が{var:player_nickname}さんと遊びたがるなんてあり得ませんよね。
私は九条さんに疑惑の眼差しを向けていた。私達は共闘関係だったはずでは……!?
{character:player}やれやれ。千織を守るためには、私が一肌脱ぐしかないみたいだな。
{character:player}千織は何で私と遊びたくないの?
{character:三上千織}嫌なものは嫌なのよ。理由なんてないわ!
{character:三上千織}というか、{var:player_nickname}って、そんなにこの千織と一緒に遊びたいの? まさか、遊ぶ友達がいないとかぁ~?
{character:player}違うよ。友達の誘いを断ってでも、千織に会いに来たかったんだよ!
{character:三上千織}……ふん、千織のことを簡単に騙せるとでも思ってるのかしら? 友達がいない訳じゃないのなら、何か別の目的があるんでしょ、正直に言いなさいよ!
どうやら千織に信じてもらうには、もっと周到な口実を考えなければならないらしいな。……そうだ、こうしよう。
{character:player}千織のことが好きだから、千織のことをもっと知りたいんだ。私にチャンスをくれないかな?
そう言うと、千織は目でもわかるほど顔を真っ赤にした。
{character:三上千織}……す、好き? そんなの、今まで飽きるほど聞いたわ。全然珍しくも何ともないんだから!
{character:三上千織}……でも、あんたのポンコツ脳じゃこれ以上上手いこと言えるとも思えないし、とりあえず嘘もついてなさそうだし、一緒に来ることを許してあげてもいいわ。でも、あんまり近くに寄らないでよね!
{character:player}うん、オッケー!
{character:三上千織}行くわよ、ふふふ。
千織は言い方こそ渋々といった感じだったが、軽くスキップし、鼻歌を口ずさみながら歩き出した。
思った通り、直球こそ最強の対ツンデレ兵器……! 九条さんが通り過ぎざまに無言で親指を立て、すぐにぐっと拳を握ってみせた。私は九条さんの言わんとすることを理解し、黙ってうなずいた。
ルンルンの千織に、私の気持ちも軽くなり、すぐに彼女達の後を追った。
遊ぶのが目的だったが、すでに時刻は夕方に差し掛かっている。午後の時間を対局に費やした私達は、神社から直接千織の家へと向かうことにした。
移動中は特に変わったこともなく、九条さんの言う不審者とやらも現れなかった。家の近くの公園まで来ると、千織は急に足を止めた。
{character:三上千織}公園を散歩してくるから、璃雨は先に帰って夕食を作っておいて。食べる量もわからないやつにも出さなきゃいけないんじゃ、時間もかかるでしょ。
{character:九条璃雨}あの、千織様? 今日のところは先に戻られたらいかがでしょう? こんな時間に公園に行っては危険ですし。
{character:三上千織}はぁ? 璃雨ってば何言ってんのよ。公園のどこが危険なの?
{character:九条璃雨}そ、その……
{character:player}あの、今日は私がいるので、千織と一緒にいるようにしますよ。
密かにメールの送信ボタンをタップしつつ二人の会話に割り込んだ。ポケットの振動を感じ取った九条さんがスマホを取り出すと、私はあくまでいつも通りに笑ってみせた。
{character:player}九条さんは、早く帰らないと夕食の時間に間に合わなくなりますよね。
{character:九条璃雨}……そうですね。あなたはともかく、千織様を空腹のままお待たせする訳にはいきません。
{character:九条璃雨}では、先に帰ります。まもなく夕食の時間ですので、千織様達も早めにお帰り下さいね。
{character:三上千織}わかってるわよ。璃雨は心配性なんだから。
私が九条さんに送ったメールの内容は、「千織から片時も離れない、本当に危ない時は真っ先に彼女を連れて戻ってくる」というものだった。
ここが家からほど近いことも手伝って、九条さんはついに「妥協」した。
「千織様をお守りしなかったら、責任を取っていただきますからね」返ってきたメールには警告文が記されていた。
{character:player}じゃあ、公園に行こうか! ……なんでそんな目で私を見るの?
心配そうな様子の九条さんに別れを告げる。隣にいる千織が、「すべてお見通しよ!」という目で私を見ていた。
{character:三上千織}やっぱりバカと一緒にいるとバカがうつるのかしら、璃雨でさえやられるなんて。そろいもそろって後ろめたそうなカオして、あんた達が何を企んでるかなんて興味ないわ。言いなさい、こそこそと何をやり取りしてるわけ?
……気づいてたのか!?
{character:player}そ、それは考え過ぎだよ。私は……私はただ、九条さんに千織と二人きりになるチャンスをくれって頼んだだけだよ!
{character:三上千織}……本当かしら?
{character:player}そうそう!
{character:三上千織}……フン、そ、そういうこと。行くわよ、楽しい所に連れて行ってあげるわ。
{character:player}よし来た!
夕暮れの都市型公園に、のんびりと響く蝉の声。雲の向こうからやってきた鳥達が、木陰に羽を休めに来ている。人はまばらで、時折子供達がはしゃぎながら私達の前を通り過ぎ、遠くから戻ってきてと呼ぶ保護者の声が聞こえた。
千織に案内されて子供たちの遊び場に向かうと、遊んでいる子はおらず、様々な遊具だけが取り残されていた。そう言えば、千織はああいう子供達と同じぐらいの年頃だったよな。わざわざみんなが帰るタイミングを見計らって遊びに来たってこと?
{character:三上千織}ここよ。
{character:player}?
{character:三上千織}幼稚な考えね。千織はもうそういう遊びはしないわ。
{character:player}……これもお見通しってわけ?
{character:三上千織}はぁ、わかりやすいカマかけに引っかかってんじゃないわよ、しかも本当にそんな風に思ってたなんて!!
{character:player}こりゃやられたな。
{character:三上千織}ふん! 来なさい。
千織は手招きした。私は好奇心をそそられ、ウキウキと子供用の遊具エリアを横切り、茂みを踏み越え、さらにいくつかの小道を抜け、公園の奥へと向かった。
{character:三上千織}ゴホン……あんた、耳をふさぎなさい。
この年の割に頭のよく回るお嬢様は一体何をしたいのだろう。言うことを聞いた方がいいのだろうか?
私は大人しく耳をふさいだ。すると、千織が向こう側へ何か呼びかけた。そして、茂みが揺れたかと思うと、色とりどりの毛玉がいくつか出て来た。
虎穴に入らずんば虎子を得ず……私は初めから、千織の有難い助言を聞き入れる気はなかった。千織が背中を向けた瞬間、私はこっそり耳を塞いでいた手を離した。
{character:三上千織}……ニャニャ? ニャーニャー、ニャー。
夕陽が少女の髪を柔らかな金色に染め上げている。猫の鳴き真似をしてみせる千織の柔らかな声に、私はすっかり魅入られてしまった。
{character:三上千織}千織が来たよ、おいしいものを持ってきたの。ちびちゃんたち、出ておいで。
千織のこんな声を聞くのは初めてだった。相手が猫じゃなくて自分だったら瞬殺だろうな、などと想像していると、不意に茂みがガサガサと動き、中から、色とりどりの毛玉が複数出てきた。
子猫達はニャーニャー鳴いて千織にすり寄っているが、初めて見る私には警戒していて、近寄る素振りも見せない。
千織はバッグから、元々用意していたのであろうキャットフードと猫用おやつを取り出した。袋を開けてみせると、警戒心の薄れた子猫達が私達の足元に群がってきた。すると、猫用おやつの袋がサッと視界に入ってきたので、私は耳をふさいでいた手を離し、袋を受け取った。
{character:三上千織}……一緒にエサをあげるわよ。そうすればあんたにも懐くわ。
{character:player}あはは、ありがとう。
{character:三上千織}あ、あんたのためじゃないんだからね、この子たちに怖い思いをさせながら食べさせる訳にもいかないでしょ。
{character:player}うんうん、そうだよね。千織が言ってた用事って、ここで野良猫たちにエサをあげることだったんだね。九条さんにはこのこと言ってないの?
{character:三上千織}千織は子供じゃないのよ。何でも璃雨にやってもらう必要なんてないんだから!
なるほど、それもそうだ。九条さんは本当に千織の面倒見が良い。千織にとって大した手間にはならないことであっても、一度彼女の耳に入れば、即刻自分の日課に組み込んで、きっちりこなしてしまうんだろうな。「ご主人様のため、公園の子猫一家の面倒を見る」といった感じで。
{character:player}そうだね、千織は一人でもちゃんと出来るもんね。
{character:三上千織}……当然よっ。
{character:三上千織}千織はそっぽを向いてしまった。エサをあげるのに集中することにしたようだが、真っ赤になった耳の先だけは隠しきれない彼女の本心を示している。自分の秘密基地に友達を連れて来れたことが嬉しいんだろう。
しかし、子供が遊ぶような公園でもない、こんな辺鄙な所でよく子猫を見つけたよな。どうやって……? ふと疑問が沸いたが、この温かい雰囲気を壊さないためにも話題に出すのはやめておくことにした。
{character:三上千織}えっ!?
{character:player}ど、どうしたの?
{character:三上千織}突然千織が上げた声に、私はまたしても自分の思考が読まれたのではと思ってビクッとした。
{character:三上千織}……数が合わない、一匹足りないわ。
{character:三上千織}前に来たときは子猫が五匹いたんだけど、茶トラの子がいないのよ。
{character:player}さすが天才少女千織、進歩めざましいね。
そう言うと、麻雀卓を離れた千織が私を見た。声の主が私だとわかると、「やっぱりあんたか」と言わんばかりに私の方へと歩いてきた。
{character:三上千織}そんなこと、あんたに言われなくてもわかってるわよ。あいにく今日は時間がないから、次会った時にとことんイジメてあげるわ。行くわよ、璃雨。
{character:九条璃雨}はい、千織様。
{character:player}……九条さん? いつの間に?
いつの間にか横に立っていた少女は、千織の専属メイドの九条璃雨さん。主従関係ではあるが、実態としては姉妹のようなものだ。
九条さんは腕も立つ。お嬢様を不当に扱ったり、何か害を加えようとする者は誰であろうと滅殺する。私も、千織に冗談を言ったときに何度かその鉄拳を喰らったことがある。
幸い、アレなことを口走らなかったので命拾いした。
そのまま、千織と九条さんが神社を出て行くのを見送った。振り向くと、一姫が深く考え込んでいる様子でこちらを見つめていた。
{character:一姫}……ニオうにゃ。
{character:player}何が?
{character:一姫}璃雨、ご主人に何か言いたげだったのに、結局何も言わなかったにゃ。
{character:player}九条さんが?
{character:ikki}きっとご主人のお土産がなんなのか聞こうとしたのにゃ、いい匂いだにゃ~!
{character:player}それ、自分が聞きたいだけでしょ……わかったわかった、後であげるから、みんなの前で嗅がないで……手を出すのはもっとだめ!!!
猫を飼うのは忍耐だ、とつくづく思う。一姫にエサをやり、一緒に何半荘か打ち、神社を出る頃には日が傾いていた。夕暮れ時の空気は心地よく、今日の対局について復習しながら歩いているうちに、いつの間にか千織の家の近くまで来ていた。
定石もへったくれもない一姫の直感的な打牌より、千織の対局を通しで見たかったな。より戦略的な打ち方とかそういうものを学べるだろうし。
などと考えていると、スマホが震えた。なんと九条さんからの着信だった。
{character:player}もしもし、九条さん?
{character:九条璃雨}{var:player_nickname}さん、千織様を見かけませんでしたか?
{character:player}一緒に帰ったんじゃなかったんですか?
{character:九条璃雨}そうなんですが……その後、近くの公園に遊びに行くと仰って出かけたきり、まだお戻りになっていないのです。私は先ほどまで千織様のお食事の支度にかかりきりだったもので……。
{character:九条璃雨}あなたと一緒ではありませんか?
{character:player}残念ですが来てないですね。ただ、三上家の近くの公園ってことなら、今ちょうどその辺りにいますよ。
{character:九条璃雨}えっ、そうなんですか? それは良かったです! では、一緒に探していただけませんか? 私もすぐにそちらに向かいます!
{character:player}もちろん協力します。けどちょっと落ち着いてください。先に、いつ千織が家を出たのか確認してもいいですか?
{character:九条璃雨}17時31分です。三十分したらお戻りになると言われて、出かけられました。
{character:player}すっごく時間が正確ですね、しかも即答とは……これもプロのメイドの能力なんですか? というか、今がちょうど18時だから、厳密にはまだ三十分経ってないですよね。
{character:九条璃雨}私の目の届く範囲にいらっしゃらない上、あと一分きっかりでお帰りになるとも思えませんし、それにスマホをお持ちではないので、本当に心配で心配で……!
{character:player}心配性だなぁ。それに、三十分くらい連絡がつかなくても、理由はいろいろだと思いますよ。一飜市は治安も良いし、事故や失踪でもなさそうですし、もう少し様子を見ては?
{character:九条璃雨}ダメです! 何かあってからじゃ遅いんですよ!!!
{character:player}……九条さん、いつもより余計に張り詰めてませんか? どうしたんです?
{character:三上千織}……
沈黙の後、電話越しに深く息を吸う音が聞こえてきた。荒ぶっていた声も、いつもの落ち着きを取り戻したようだ。
{character:九条璃雨}あの、失礼しました。最近、千織様の身に危険が迫っているもので、とても緊張しておりまして。
{character:player}なんて?
すると九条さんは、私がこれまで知り得なかった三上家の事情について話し出した。
{character:九条璃雨}ちょうど一週間前の夜のことでした。夕食の準備を終えて、千織様をお呼びしようとしたところ、不可解なことがあったのです……
{character:九条璃雨}千織様、お食事の支度が整いました……千織様?
驚いたことに、千織の部屋には誰もいなかった。
他の場所を探しに行こうとすると、突如ベランダから「キイ……」という音が聞こえてきた。よく確認すると、ベランダに続くガラス戸が開いていて、夏の暑い空気が室内まで入ってきていた。
今の音は、ブランコが揺れた音らしい。
{character:九条璃雨}こんな暑い日に、どうしてベランダなんかへ……? 千織様? あら?
主人の居場所を掴んだと思っていたのだが、ベランダまで出て驚いた。そこに千織の姿はなく、ブランコが揺れているだけだったからだ。空気はよく乾燥していて、風も全くなかった。椅子に触れると、温もりがまだ残っていた。
ブランコのそばにはクマのぬいぐるみが落ちていて、それを拾い上げた九条さんは顔をしかめた。
{character:三上千織}やったわ! 大勝利よ! 千織がホームで負けるなんてありえないわ! 璃雨ー!
そのとき、千織の声が部屋の外から聞こえ、彼女は隣の小さな書斎にいたのだとわかった。
ハッと我に返った九条さんは、急いでぬいぐるみをブランコに置き直すと、千織の呼びかけに応じるべく部屋を飛び出した。
{character:九条璃雨}はい、ここに。
{character:三上千織}今半荘が終わったとこなの、お腹が空いたわ。今なら一姫より食べられそう。
{character:九条璃雨}フフ、かしこまりました。今夜はビーフピザにエビチリ、デザートはマンゴーミルフィーユでございます。足りなければ、パスタもご用意します。
{character:三上千織}あら、それってもしかして、この前お店で食べたおいしいエビチリ? レシピを覚えたの?
{character:九条璃雨}思い出の味の通りになれば良いのですが。
{character:三上千織}自信もちなさいよ。璃雨の料理の方がおいしいんだから!
{character:九条璃雨}千織様がそうおっしゃるなら、店以上の味になっているはずですね!
{character:九条璃雨}不審者の存在を知ったのは、その時が初めてでした。それからというもの、千織様と出かけるたび、物陰から何者かに見られているかのような感覚が何度かありました。
{character:player}千織はこのことを知っているんですか?
{character:九条璃雨}いいえ、無闇に怖がらせてもいけませんので。はぁ、ひとえに私の能力不足です。アンチ尾行スキルを磨くための、最新メイド特訓クラスにはとうに申し込み済みです!
{character:player}九条さんは十分よくやっていると思いますよ。大体の状況はわかりました。公園に行くって言ってたんですよね? それなら、そこから探してみます。
{character:九条璃雨}ありがとうございます!
夕飯時なので、公園には人があまりいなかった。広場のステージや、道沿いの麻雀卓、子供の遊び場周辺といった場所を探したが、どこにも千織はいなかった。公園の周辺まで範囲を広げて、捜索を続けることにした。
三十分もかからないであろう行動範囲に、スマホも持たず向かったのだから、そう遠くには行ってないはずだ。見つからないのはさすがに心配だけど……ん? 何か変だな。
あたりを一瞥すると、薄気味悪さの原因がわかった。ここには私しかいないはずなのに、誰かに見られているような気がしたのだ。
私はふと、さっき九条さんから聞いた奇妙な状況について思い出した……まさか、例の不審者だろうか? だとしても、尾行される理由なんてないはずだけど……
鳥肌がおさまった所で、視線を感じる方へ爆走した。
{character:player}誰だ! 出て来い!
人影が現れたかと思うと、スタタ……と別の場所へ走っていった。はっきり誰かまではわからなかったが、茂みの奥からはみ出た赤いカチューシャ、やけに見覚えがあるんだよなあ……
{character:player}……千織? そこにいるの?
相手は固まっていたが、急に手を伸ばして赤いカチューシャの耳を隠した。
{character:player}……
逆にバレバレだよ!!!!
人影へじりじりと歩み寄ると、ガサガサという音とともに千織らしき人物が飛び出し、遠くへ走り去ってしまった。
{character:player}……かくれんぼでもしてるの? 出てこないのはどうして? 九条さんから千織を探してくれって頼まれて来たんだよ。
{character:???}……
{character:???}……ニャー。
無視するに飽き足らず、猫の鳴き真似までしてきた。
人間性の崩壊か、道徳教育の敗北か。なぜ千織は、猫のふりというコテコテな手法を使ってまで身を隠そうとしているのだろう。私に顔を見せようとすらしないなんて、どう考えても異常だ。
この異様な状況下において、迂闊な行動は取れない。とりあえず、千織の方から出てきてもらうようにしなければ。
私は、挑発することでこの不審者を誘き出すことにした。
{character:player}そういえば、千織の麻雀の腕前ってまだまだだよな~!
{character:???}……
{character:三上千織}はぁ!? 庶民の分際で。そんなに腕に自信があるなら、今すぐ受けて立つわ!
茂みから飛び出してきた少女は、いかにも負けん気の強い子といった感じで仁王立ちをしている。よし、やっぱり千織だったな。
{character:player}ははは、やっと出て来たね。
私の勝利宣言に、千織の目元が悔しそうに光る。
{character:三上千織}……あああ! 卑怯者、ズル、恥知らず、この大悪党!!!
{character:player}こそこそと私の後をつけておきながら、見つかったら隠れるし、正体がバレたら猫のふりをするなんて、どういうつもり?
{character:三上千織}何のことかしら? あんたこそ、庶民の分際で千織の周りをウロチョロして、目的も読めないし、千織のことボコボコにしようと企んでるかもと思ったから隠れてただけよ!
{character:player}逆ギレすんな!
{character:三上千織}あんたこそ良からぬこと企んでるんでしょ!
{character:player}正直に言うんだ!
{character:三上千織}あんたには関係ないわ!
{character:player}あ~あ、後ろめたい事なんてないと言ってたくせに、もう馬脚をあらわしちゃったかなー?
{character:三上千織}何よその言い方、それに傲慢な態度! 帰ったら璃雨に全部言いつけてやるんだから。
{character:player}……はぁ、悪かったよ、お嬢様。
私は両手をあげて降参し、休戦を宣言した。物事にはタイミングが重要だ。挑発は有効だけどやり過ぎてもいけないし、自分にメリットがないことはわざわざしなくてもいい。
とにかく千織を見つけたんだから、九条さんに心配いらないと連絡するのが先だ。
九条さんにメッセージを送る。
{character:九条璃雨}(ショートメール)見つかったんですか? よかったです。どちらにいらっしゃるのでしょう?
{character:player}(ショートメール)この近くです
{character:九条璃雨}(ショートメール)場所を教えてください。そちらの安全度を確認する必要があります。
{character:player}えっと、今いるところは……
周りを見渡してみるが、目印になりそうな物は見当たらなかった。少なくとも、千織の家の近くであることは間違いないだろうけど……。
{character:player}千織? 千織、……千織~?
{character:三上千織}あんたみたいな、バカの一つ覚えみたいに同じことしか言わない奴と口なんか利きたくないわ!
{character:player}プクク……あのさ、ここはどこなの? 九条さんが千織の居場所を知りたいって。
{character:三上千織}……ここ……ここは……千織の家の近くの道よ。
{character:player}え?そんなんでわかるかな…?もっと具体的に教えてくれない?
{character:三上千織}……家の近くのあんまり広くない道よ!
{character:player}ねえ、やけにならないでよ。そういうことじゃなくて、方角とか、道の名前とかさ……あ、もしかして。
ばつの悪い顔をした千織を見て、瞬時に理解した。
{character:player}つまり、迷子になったから、こっそり私の後をつけて来たの?
{character:三上千織}……
{character:三上千織}何バカなことを言ってるのよ! この! 千織様が! 迷うなんてあり得ないわ!!!
耳をつんざく勢いの声量で否定してみせるが、一気に真っ赤になった顔からしてこれは噓だろう。
彼女はそんなに離れてないのに道に迷ったことを認めたくないから、自分で助けを求めるより、近くに現れた知りあいの後をつける方を選んだ、というのが実情だろう。私に言えることは――
さすがは千織様だね。
{character:三上千織}……{var:player_nickname}、あんたね……
{character:player}待って! 落ち着いて! 状況に応じて臨機応変に切り抜ける千織が凄いって意味だから!
{character:三上千織}……ふん! どうせバカにしてるんでしょ。でも、この千織様はバカなんて相手にしないの! さぁ、それを渡しなさい!
{character:player}さすが私、なかなか冴えてるよなぁ。
{character:三上千織}あんたが? 冴えてる!? 渡しなさいってば!
千織がプリプリ怒りながら歩いてきたので、これは殴られるなと覚悟を決めた。しかし千織は予想に反して私のスマホを奪った。千織はそのまま何枚かの写真を撮り、九条さんに送信した。
{character:三上千織}やっぱりバカはバカね。こうした方が効率的ってわからなかったのかしら?
{character:九条璃雨}(メッセージ)かしこまりました。
{character:player}……そうだね。
千織が怒ってスマホを放り投げてきた。近くで見ると、様子がおかしいことに気づいた。髪は少し乱れているし、日頃は綺麗に整えてあるスカートの裾や袖が見るからに汚れている。ずっとあそこにいたとしたら、これほどの汚れや泥はつかないはずだ。
{character:三上千織}何見てるのよ! あっち向いてなさいよ!
私の視線に気づいた千織は、困ったように両手を後ろに回した。この少し汚れた姿も、私に姿を見せたがらなかった理由の一つらしい。それにしても、彼女に何があったのだろう。「不審者」と関係があるのだろうか?
{character:player}千織、どこに行ってたか教えてくれる? どうして迷子になったの?
{character:三上千織}お黙り! 千織は言わないし、千織のことをバカにもさせないんだから!
{character:player}千織をバカにするために聞いてるんじゃなくて、心配だからだよ。千織の無事が一番大切だからこそ、それを確認したかった。だから、たとえ千織を怒らせたとしても、自分から出てきてもらうしかないと思ったんだ。
{character:三上千織}……本当に口だけは上手いんだから!
私の真剣な言葉に、千織は口をとがらせた。なんとか怒りはおさまったらしい。
{character:player}話してくれる?
{character:三上千織}……ふん! あんたのその情けない顔、これ以上言わなかったら、次の麻雀じゃ振り込みマシーンになること必至よね。ただでさえ脆弱な庶民が、そのせいで人生に絶望してしまったら、この千織様の手をさらに煩わせることになるわ。
{character:player}そう、その通りです。だから……話してくれる?
{character:三上千織}……千織、子猫を助けてたの。
{character:player}子猫?
{character:三上千織}公園に野良の三毛猫が一匹いるの。すごく警戒心が強くて触らせてもくれないけど、子猫を産んで大変だから、時間があるときにエサをあげに来てた。今日も、いつものようにエサをあげようと思ったら、一匹いなくなってて……それで、母猫に子猫が閉じ込められてる場所まで案内してもらって、助けたってわけ。
{character:三上千織}それだけよ。
{character:player}え?
{character:三上千織}わからなかったからもう一回話してなんて言ったら殺すわよ?
{character:player}わかった、わかってるから!
{character:player}あはは、そういうことだったんだ。千織は優しいね。九条さんはこのことを知ってるの?
{character:三上千織}千織はもう子供じゃないのよ。何でも璃雨にやってもらう必要なんてないわよ!
なるほど、それもそうだ。九条さんは本当に千織の面倒見が良い。千織にとって大した手間にはならないことであっても、一度彼女の耳に入れば、即刻自分の日課に組み込んで、きっちりこなしてしまうんだろうな。「ご主人様のため、公園の子猫一家の面倒を見る」といった感じで。
{character:player}うんうん、千織はよく頑張ってるね。ところで、助けた子猫はどうしたの?
{character:三上千織}助けたら、すぐ母猫が連れて行っちゃったわ。
{character:player}あはは、手厳しいね。
{character:三上千織}猫ってそういうものよ。警戒心が強いの。小動物とは言え、みんながみんな、千織みたいに優しくて可愛いわけじゃないんだから!
{character:player}そうだねぇ、千織の言うとおりだよ。これで九条さんも私も安心出来る……
私は、今回の千織の迷子事件と、九条さんの言う「不審者」について、私なりの推理を九条さんに報告することにした。
{character:三上千織}さあこれで全部話したわよ、いつまで立たせておくつもりよ! は、や、く、案内しなさい! 千織もインデックスも早くお風呂に入りたいの!
千織は薄汚れたクマのポーチを胸に抱えながら、ビシバシと私に命令した。
{character:player}はいはい、すぐに!
無事に千織を連れて家まで戻った。千織がお風呂に行っている間に、私は九条さんに今日の出来事について報告した。
{character:九条璃雨}ふんふん……そういうことがあったんですね……とにかく、本日は本当にありがとうございました。
{character:player}いえいえ、大したことじゃありませんから。
{character:九条璃雨}そういえば、不審者の件なのですが、新しい手掛かりが残されていましたので、ついて来てください。
{character:player}わかりました。相手の正体にも察しがついてたので、ちょうど確かめたいと思ってたとこだったんです。
九条さんに案内され、玄関まで来た。彼女が段ボール箱を取り出すと、中には死んだネズミが入っていた。しかも結構大きい。
{character:九条璃雨}今回はこれが送られてきたんです。千織様の部屋のベランダのガラス戸の下に置かれていて、千織様の目に入ってはいけないと思い、こちらにしまったんです。全く許し難い行為です!
{character:player}ははーん……九条さん、ベランダを見せてもらえませんか? 不審者を特定する手がかりがあるかもしれないんです。
九条さんはちょっと迷ってから頷いた。
{character:player}あはは、私の推理は正しかったみたいです。ここを見てください。
九条さんの立ち合いのもと、千織の部屋のベランダ周辺を注意深く観察した。すると、ガーリーな装飾のブランコに予想していた通りの「証拠」があるのを見つけた。ブランコのチェーンに、三色の繊維のようなもの……すなわち猫の毛がついている。
{character:九条璃雨}……猫の毛、ですか?
{character:player}そう。猫は狩りで得た獲物を恩人に与える習性があります。毎日九条さんにも気づかれることなく千織を観察し、物音も立てずにベランダのあんな高いところまで登って、あのぞっとするようなプレゼントまで送れるのは、千織がずっとエサやりをしていた野良の母猫くらいでしょう。
{character:九条璃雨}なるほど……。
{character:player}とはいえ、相手はプレゼントのつもりだったとしても、自分にとってはそうは感じられないってこともありますよね。猫からのプレゼントは、恩返しだとしてもちょっと怖いし、引いちゃうし……。九条さんには少し同情します。これからしばらくは、千織へのプレゼントが多少増えるでしょうから。
{character:九条璃雨}わかりました、きっちり対処します。ですが、私に同情する余裕があるなら、あなたが次に何をすべきか考えることをお勧めします。
{character:player}何ですかそれ?
{character:九条璃雨}千織様から、今日あなたが知ってはいけないことをお知りになったとのことで、今夜は必ずあなたをここでお仕置きするよう言いつけられております。
{character:player}ちょっと、迷子の千織を連れて帰って来てあげたのに、そんな恩を仇で返すようなやり方はあんまりじゃないですか?
{character:九条璃雨}それはそれ、これはこれです。お礼として今夜のお夕食をご馳走しますから、その間に許しを請う方法を考えておいてください。
こうなったら仕方ない、お嬢様と過ごせる時間をありがたく享受し、寛大なるお許しをいただけるよう、ポジティブに行くしかないよな。
{character:player}それは、千織の麻雀の腕がどんどん上達しているからだよ。千織と手合わせして、切磋琢磨していきたいなって。私にそのチャンスを与えてくれないかな?
麻雀は千織と私に最も共通している趣味なのだから、これを取っ掛かりにすればいけるはずだ。思った通り、千織は途端に満足げに笑った。
{character:三上千織}ふふっ、何か企んでるようね。千織と対局したい人間は、あんただけじゃないのよ。あんたにその資格があるかどうか、まず一局打って確かめるわよ!
{character:player}望むところだ!
自分に資格があるか証明するため、私は一姫と九条さんを誘って千織と東風戦を打ったが、今日の運勢は平々凡々で二着となり、千織に負けてしまった。
{character:三上千織}ふーん。大したことないし、前回から全然上達もしてないわね。あんたなんかと打ってもしょうがないわ。今日はここまで、次は大負けしないといいわね。
{character:player}え? 待って、千織はもうしないの?
{character:三上千織}今日千織は他に用があるの。璃雨、行くわよ。
{character:九条璃雨}あ、はい。
{character:九条璃雨}……私の見込み違いだったようです。千織様にとって、あなたはそれほど重要な存在ではなかったみたいですね、少なくとも麻雀においては。そういうことなので、先ほどの件はなかったことにいたしましょう。
九条さんは千織を追いかけていき、二人は去っていった。
千織に近づくには、まず麻雀の腕を上げて、彼女に勝たないといけないみたいだ。こうして、私の護衛任務は始まる前に終わってしまった。
私はこのお嬢様に甘い言葉をかけてやることにした。彼女が隠れているところに向かって、柔らかい口調で話しかけた。
{character:player}そこに~隠れているのは~、世界一美しく~可愛く~非の打ち所のない完璧な天才~、千織お嬢様に違いな~~い!
{character:???}……
私の言葉は千織に全く響かず、更に遠ざかってしまった。
それで、私は努力むなしくとぼとぼと引き返すしかなかった。とはいえ、前には出てこないものの、私が進んだぶんだけ後をついて来ているようだったので、その点は助かった。
この法則に気付いた私は、思い切って九条さんに報告を入れ、そのまま千織の家の方へ歩くことにした。門の近くまで来ると、九条さんがすでに待っていた。
九条さんに目で合図すると、シュババという音とともに、人影が猛スピードで目の前を通り過ぎ……
バン!! と音を立ててドアが閉まった。
{character:player}千織?
{character:三上千織}千織じゃないわ! 人違いよ!
あの素早い身のこなしに元気そうな声じゃ、特に問題なさそうだな。九条さんと私は顔を見合わせた。
今日は千織は私には会わないつもりのようで、九条さんに宣告され、モヤモヤしながらその場を後にした。
次の日、私は魂天神社で場を荒らしている千織と付き添いの九条さんに再び会った。そこで、先日の未解決事件のことを思い出し、九条さんにその後の経過をそっと尋ねた。
{character:九条璃雨}あら、まだ覚えていらしたんですか。優しいんですね。
{character:九条璃雨}その件については落着しました。しかし、不審者のことは千織様にはまだ内緒にしていただきたいのです、いいですね?
{character:player}はい、わかってます。口は堅い方なので。
{character:九条璃雨}なら良いのです。
まさか、たった一日で全ての真実を明らかにしてしまうとは……この主人の秘密を堅く守るメイドさん相手じゃ、この件の真相を聞き出すのは到底無理だろう。
{character:???}ニャー。
その時、また遠くから猫の鳴き声がした。私達が一斉に声の方向を見ると、大人の三毛猫がやって来て、私達の足にすり寄り、ニャーニャー鳴くと歩き出した。振り返り、動かずにいる私達を見上げると、焦ったように鳴き出した。
{character:三上千織}この子が母猫。今までは近寄るのすら許してくれなかったし、挨拶もしてくれなかったんだけど……。
{character:player}それなら緊急事態なんじゃないかな、追いかけよう。
猫に連れられて曲がりくねった道を歩いて行くと、公園の外の寂しい道に出た。母猫は干上がった用水路の近くで立ち止まると、ニャーと呼びかけた。すると、弱々しい猫の鳴き声がそれに応えた。
しゃがんで用水路の中を見てみると、いなくなっていた茶トラの子猫がいる。詳しいことはわからないが、この用水路の先にある柵の後ろで身動きが取れずにいた。人間が近づいてくるのがわかると、一際悲痛な鳴き声をあげる。
{character:三上千織}怖くない怖くない、助けに来たよ。{var:player_nickname}、インデックスをお願い。
千織はクマのポーチを私に押し付けると、袖をまくって用水路へと下りていった。
今は使われていないこの用水路はそこまで深くなく、水も流れていないが、その代わりに蜘蛛の巣と埃でいっぱいだった。千織は顔をしかめたが、その動きには全く躊躇う様子はなく、子猫が挟まっている柵の後ろの石を取り除くために手を伸ばした。一歩出遅れた私は、ただ千織の身に危険が及ばないか緊張しながら見守っていた。
先導する三毛猫は、私達が我が子を助けようとしているのだと理解しているようだ。不安そうに私の周りをウロウロしていたが、千織が子猫を救出するまでちょっかいを掛けるようなことはしなかった。
{character:三上千織}よし、これで、大丈夫よ。
{character:player}私は千織から子猫を慎重に受け取ると、千織を用水路から引き上げた。私達は、子猫を母猫の前にそっと下ろした。
{character:三上千織}今度は子供から目を離さないようにね!
しかし猫が人の言葉を理解し、人間に感謝するはずもなく……母猫はこちらを警戒するように睨み、すかさず茶トラの子猫を咥えると、飛ぶように去っていった。
{character:player}……やっぱり、人を警戒するのは猫の習性だよね。
うんうんと頷きつつ千織を見た。母猫の仕打ちにへこむ様子もなく、軽い足取りで振り向き、家へと歩き出した。
{character:三上千織}ふふふ、行くわよ! あんたは役立たずだけど気持ちだけはあるわね。うちでご飯食べて行きなさい。
先ほどのレスキュー活動により、彼女の服の袖やスカートの裾は見てわかるほどに汚れていた。こんなに身だしなみの整っていないお嬢様を見るのは初めてだった。
{character:三上千織}……
突然、私の前を歩いていた千織が急に立ち止まり、くるりとターンして私の後ろへサッと回った。さっき戸惑ったような目をした気がしたんだけど、私の見間違いかな?
{character:player}……どうしたの?
{character:三上千織}あんた、前を歩きなさいよ。
{character:player}え?
{character:三上千織}いいから!
訳がわからないが、とりあえず指示に従った。来る時はあの母猫について歩いていたので、今自分がどのあたりの道にいるのかはっきりとはわからなかったが、記憶を頼りに帰り道を見つけることが出来た。道……待てよ。
ある気付きが頭をよぎった。
{character:player}要するに、千織……
{character:三上千織}あり得ないわ! 千織が帰り道がわからない訳ないじゃない!
{character:player}ぷっ……あはは、千織も墓穴掘ることがあるんだ。これでおあいこだね。
{character:三上千織}……あああ! 卑怯者、ズル、恥知らず、この大悪党!!
嬉しかったので、私はそのワード達を褒め言葉に脳内修正した。「天才麻雀少女はちょこっと方向音痴」という情報は、今回のお供で得た予想外の収穫だった。
{character:三上千織}バッカじゃないの! 千織の記憶力があんたレベルに低い訳ないでしょ? 手分けして探すわよ。
{character:三上千織}そうね、そうするしかないわ。
お嬢様のお遊び
絆LV5で開放
Possible Endings
Scenario Script
Spots 21, Scenes 373, Choices 9, Endings 3
……つまり、ゲームは人生のようなもので、敗北が勝利になることも、勝利が敗北になることもあるってこと。
私はため息をつき、心許ない気持ちになりながら、すっかり軽くなってしまった財布に触れた。
ただいつものように、エテルニテでスイーツをつつきながらオンライン麻雀の友人戦を始めたら、思いがけずツイていて連勝した。そこで、友人兼対面の白石奈々に思い切りおだてられて、「次も勝って白石さんと水泳部員に飲み物を奢る」というフラグをまんまと立ててしまったのだ。
気付いた時には、何もかもが遅かった。
レジで会計する。届いたデリバリーを手にアッハッハと笑う白石さんの姿がはっきり想像出来た。
カランコロン……
うーん、このドアベルの音、やっぱいいよなあ。
……{var:player_nickname}?
少女の驚いた声に意識が向いた。店に入ってきた二人は、なんと千織と九条さんだったのだ。
やぁ奇遇だね、千織、九条さん。しばらく会館で見かけなかったけど、忙しかったの?
……本当に奇遇よね。璃雨、まずは{var:player_nickname}から試すわよ。
かしこまりました、千織様。では{var:player_nickname}さんから試します。
二人分の視線が私を射抜き、何となく不安になってきた。
……笑い話でもする? ゲームだと、こういう意味深なNPCとの会話があったら、その先にはあっと驚くような展開が待ち受けてるのってあるあるだよね~。もしかして、そういう系の実験とか?
{var:player_nickname}さん、質問です。
本当にそういうパターンかい! その問題用紙、いったいどこから……というか、どうしていきなりクイズを!?
第一問、千織様の好きなコーヒー豆の品種をお答えください。
まあそれはいったん置いといて、千織の好きなコーヒー豆の品種か……この問題の答え、どこかで見たような。
その問題の答え、前にCatChatで見たような……確かこの辺に……あ、あった!
そうだ、これだ! この礼奈ちゃんの投稿に千織がコメントつけてたんだよな。答えは……マンデリンだ!
……次からスマホ使うの禁止よ!
第二問、千織様の一番好きな動物は?
答えは目の前にあるんじゃない? くまさんだよ、持ってるポーチがくまさんだからね!
三上千織は少し驚いた顔をしたが、九条璃雨は平静を保っている。
やはり二択問題では、あなたには簡単すぎたようですね。では……これならいかがでしょう?
第三問、千織様のくまさんポーチのお名前は!?
九条さんがサラサラと紙にペンを走らせ、五つの選択肢を示した。五択か。どうやら本気で私に正解して欲しくないらしい。
しかし、どれだけ目くらましの選択肢を増やしたところで私の正解は揺らがない。このポーチの名前はもちろん……
……インデックスだ!!
二人の表情を見て、また正解出来たとわかった。
へへっ、千織が毎日のように言ってる名前だよ、間違えたりしないって。 三問正解したんだし、そろそろこんなクイズを出した理由を教えてくれない?
次の問題です!
九条さんは私の申し出を拒み、千織クイズを出題し続けた。
今日は良い知らせと悪い知らせがある。良いニュースは、今日私は確実にツイているということだ。この後の問題も、ほぼ当てずっぽうに答えたにもかかわらず正解した。悪いニュースは、調子に乗った途端に九条さんと千織に脅迫されて、カフェを退去させられたことだ。店長見習いの礼奈ちゃんが持って来てくれた新入荷のコーヒー、一口でいいから味わいたかったな……
純白の窓枠の向こうでは、楚々とした佇まいの木々がさらさらと枝を揺らし、磨き上げられた部屋のフローリングには木漏れ日が惜しみなく差し込んでいる。壁一面に設えた立派な書架には様々な書籍が並び、壁には名の知れた著作や絵画が掛けられている。千織の書斎は、一見すると箱入り娘のように見えるこの少女が、実際は可愛いものという枠にとらわれず幅広い分野を学んでいることを示していていて、とても興味深い。
しかし、九条さんの刺すような視線が、ソファーに座ってきょろきょろ見回す私を制止した。先ほど、千織に「千織は道具を持ってくるから、あんたは璃雨から書斎でこの後の説明を受けておくように」と言われたのだ。
メイド特訓クラス修了試験を控えた今でなければ、こんなチャンスがあなたに回ってくることも無かったのですよ。
……チャンス?
えぇ、この上なく貴重な、千織様のパートナーになれるチャンスです! 詳しく説明しますね、あれは昨日のこと……
おお、よくある回想の言葉……いだっ!
話 を 遮 ら な い で。
九条さんからの鉄拳ボーナスを食らってしまうのって、決まって私の方が九条さんを怒らせるのが原因なんだよな……。私が頭頂部をさすりながら頷くと、九条さんは話を続けた。
新しく追加されたペア対戦用のボードゲームをやってみたいと千織様が仰いましたので、昨日一緒にボードゲームカフェに行って参りました。千織様の知略をもってすれば、この手のボードゲームに勝つなど造作もないかと思われたのですが、その時の対戦相手がそれはもう暑苦しいカップルでして。ゲームの結果は……
千織様、私達の……負け、です。
……ちぇっ、あとちょっとでこいつに追いついたのに!
ははは、お嬢ちゃん、そんなに落ち込まないで。これはパートナーとのチームワークが試されるゲームなんだ。特に、相手への理解と信頼が重要なんだよ。
君はまだ中学生くらいだろう? 隣のメイドさんも、うーん、いかにもウブって感じだし……あぁ、二人とも恋したことがないんだろうな。誰かから告白されたような経験もないのに、ここまで出来るんなら十分すごいよ! なぁ、マイハニー?
そうねぇ、ダーリンの言う通りだわ!
ふん! あんまりいい気にならないでよね、たまたま負けただけなんだから。明後日! 明後日よ! 一日練習する時間をくれれば、あんたたちなんかボコボコに出来るんだから!
うふふ、わかったわ。じゃあ楽しみにしてるわね。
……ということがあったんです。千織様は明日に再戦する約束を取りつけられたのですが、明日はメイド特訓クラスの試験日で、わたくしは千織様とご一緒出来ないのです。そこで、ボードゲームに臨むパートナーを探しているという訳です。
つまり、さっきのカフェでのクイズはボドゲ仲間探しのためだったんですか? 正直、ああいう問題に正解したいんだったら、千織のことをもっと理解しておけばいいだけですし、『チームワーク』はあんまり関係なさそうですよね?
あぁ、あれは運の良さを確かめるのと、千織様の好みを理解し、千織様のご機嫌を良好に保てる方を選出するためのものです。チームワークの方は、千織様がご自分で調教なさると仰っていました。
調……わかった、わかりましたから変な動詞を使わないでくださいよ。
戻ったわ!
話してる間に、千織が紙製の箱を抱えて書斎へ戻って来た。
ここに来た理由についてはわかったかしら?
うん、いきさつはわかったよ。
けどなあ……私は内心少し迷っていた。考えがまとまらずモゴモゴしていると、千織が話を進めてしまった。
よし、璃雨、後は千織に任せてあんたは試験の準備をするといいわ。ふさわしいパートナーをきっちり鍛え上げて、昨日の雪辱を果たすんだから!
えぇ、私は千織様を信じております! 頑張ってください! ではわたくしは自室に戻りますので、何かありましたらお呼びくださいね。
あなたもしっかり頑張ってください。さもないと……
九条さんが拳を掲げつつ警告した。私がコクコクと頷くと、彼女は名残惜しそうに部屋を後にした。
書斎には、私と千織の二人きりになった。千織は先ほど持ってきた紙製の箱を開け、中から小冊子を取り出して私に押しつけた。
はい、特訓の前に、まずはそれを読んで。
箱はボードゲームの箱で、冊子はそのルールブックだった。私は迷っていることを言い出せず、とりあえず先に説明書を細かく読んでみることにした。
これは「ハートマップ」という二人一組で遊ぶボードゲームで、複雑に道のわかれたマップ上を探索し、先に二人同時にゴールに着いたチームが勝ちとなる。仲間とのチームワークが重要で、前進や後退、進む方向や歩数に至るまで、全て道中にある「カードミッション」の結果で決められる。
しかし、これらのミッションはプレイヤー同士のやり取りのためにデザインされている。説明書によれば、これは心理学を取り入れたボードゲームで、恋人や親友との絆を試すゲームのようだ。
やっぱりこういうやつか……千織、確かに私達は親友だよ。でも、相手がすっごく熱々なカップルじゃ、やっぱり勝つのは難しいんじゃないかな?
説明書を読み終え、内心抱いていた懸念を口にしてみたが、意外と千織はあまりその点は心配していないらしい。
別にチームワークがなくても勝てるでしょ?
……お嬢様のご高見を承っても?
一度しか言わないからよく聞きなさい。どんなゲームでも、ルールの本質を理解すれば絶対必勝法が見つかるもんなの! こういう二人で協力するゲームはチームワークが大事なんて言うけど、そんな曖昧なものより気を付けるべきは「行動の一致性」、これだけよ。
行動の一致性?
そう、勝利のカギは、相手をどのくらい理解してるかじゃないわ。思考回路をどのくらい近づけられるかよ!
言いたいことは何となくわかったかも。一飜市の学校に通った人なら誰もが知っている、あの外国語の筆記テストでの選択問題の必勝法……選択肢の語が三つが長くて一つだけ短い場合は短いやつ、三つが短くて一つが長い場合は長いやつを、長さがどれも同じなら全部3を選べってやつ、みたいな……
はぁ? 学校で出るような簡単な問題に、そんなセオリーを必要とする人がいるわけ? その一飜市の学校に通った人って、まさかあんたのこと?
ただのたとえ話だよ……つまり、自分達のルールみたいなものを決めておけば、問題を解く時の思考回路を近いものに出来るってことだよね。
そういう風にも考えられるわね。それにしても、このゲームのルールに合わせて、具体的に決めていくんだから、あんたが言うより事態は複雑になるわね。それじゃ、とりあえず一回遊んでみましょ。このボードゲーム、テーマがたくさんあるの!
んー……
何ボケっとしてんのよ。
ちょっと考えさせて……
今読んでいるボードゲームのルールブックによると、作者はゲームを通じてお互いへの理解を深めてもらいたかったらしい。けれど、千織のやり方はその目的を完全にすっ飛ばしている。
うう、何をするかわかると、千織と特訓するかどうか余計に迷ってきた。
もし千織に従い、ルールの穴を突いてこのチームワークが問われるゲームに取り組んだら、元々の意義や楽しさを感じ取れなくなってしまうだろう。結果として勝てたとしても、精々ハリボテの勝者の肩書きが手に入るくらいで、より豊かなゲーム体験を損なうことになるかもしれない。
千織、ごめん。この特訓には付き合えない。
……え?
私が断るなんて全く予想していなかったのだろう。千織はポカンとして、目をぱちくりさせた。
あ、あんた、よくも千織の要求を拒んだわね。千織のパートナーになれるなんて、滅多にあることじゃないのよ!?
それはそうだと思うけど。さっき説明書を読んだ感じだと、作者はゲームを通じて、プレイヤーにお互いの理解を深めてもらいたいと思ってこのゲームを作ったんだと思うんだ。
あらかじめ策略を練っておくのは違うと思う。面白さが損なわれるだろうし。それより私は、千織と長く続くチームワークを築いていきたい。
私は、千織に真剣な思いが伝わるように、言葉を選びながら気持ちを伝えた。
千織は雷にでも打たれたかのように私を見ていたが、ほどなくして、綺麗な目に悔し涙が滲んだ。
何よ、正論言うだけ言って千織と組んで勝つ気はないなんて、やっぱり{var:player_nickname}は大悪党よ、このバカッ、鼻つまみ者! もうあんたと遊んであげないから!
えぇー!?
千織は怒って後ろを向いてしまった。どんなに弁解しようとしても微動だにしない。
! ……ピンチ! これは千織との関係性における大ピンチだ!
……よし、やっぱり猫は毛流れに沿って撫でないと。私は頭を回転させ、現状を打破出来るかもしれないある方法を思いついた。
どうやらお互い引く気はないみたいだね。だったら、まずは私達で勝負するのはどう?
しないわよそんなの!
……怖いのか? 私に負けるのが……
!
それはあんたの方でしょ。……それで、何で勝負するわけ?
ふぅ、この手が使えて良かった。このお嬢様、やっぱり少しチョロい。
何でもいいよ。一発勝負、負けた方が勝った方の言うことを一つ聞く。どう?
いいわ、勝負よ! どうなっても知らないんだから!
書斎のテーブルには二種類のボードゲーム――「一飜リッチマン」と「ハヤアガリ」が置かれている。千織が先ほど書斎の棚から持ってきたもので、どちらも一飜市の若者の家には常備されているボードゲームだ。
公平性の担保として、どっちにするかはあんたが決めなさい。どっちが勝っても恨みっこなしよ。
どちらも誰でも遊べるゲームだけど、系統は少し違うんだよな。千織に勝つため、よく考えて選ばないと。
「ハヤアガリ」のルールはこうだ。参加者は、順番に様々なフルーツのイラストが描かれたカードを出していく。どれか一種類のフルーツの数が五つになった時、最も早くベルを鳴らした人はテーブルの上のカードを総取り出来る。カードを全て奪った人が、その回の勝者となる。
千織は麻雀では魔王とも言うべき存在だけど、日常生活においては天然気味というか、やや抜けている所をしばしば見せている。反射神経を試す類のゲームなら、私が勝てる可能性も上がるだろう。
「ハヤアガリ」にする!
思った通り、私の選択を聞いた千織は少し不服そうな顔をしている。
……ちぇっ、どうせ千織をしつこくストーカーして弱点を見つけたんでしょ、そうに決まってるわ。
彼を知り己を知れば百戦あやうからず。手加減はしないよ。
ゲームを始めると、予想通り、持ち前のおっちょこちょいが災いして、千織は劣勢に追い込まれた。テーブルをガン見して、並べられたフルーツを数えてはいるが、毎回私に先手を取られてしまう。
チーン!
私は三度目のベルを鳴らし、テーブルに置かれたカードを意気揚々と奪い去った。千織は何も置かれていないテーブルの上を見つめながら目をぱちぱちとさせ、ようやくフルーツが五つ揃っていたのだと理解し、悔しそうに私を見た。
まだ終わりじゃないわ、もう一回よ!
いやー、悪いね。
再びゲームを始めた。私達は集中しつつ、順番にカードを出していった。まもなく、同じフルーツが五つ揃ったことに気付き、ベルを鳴らそうとしたのだが……
あっ、見て見て、あれは何かしら!
突然、千織が驚いて私の背後を指さした。
ん?
……ごめん、手を伸ばすスピードは私の方が速いし、その程度の引っ掛けはさすがにすぐバレるよ。
ちょ、ちょっと見なさいよ! 本当に何かあるの!
私の手がベルに近づくにつれ、千織は懸命にオーバーリアクションで私に嘘を信じさせようとした。焦るあまり、目元から小さな真珠がこぼれそうになっている……控えめに言って死ぬほど可愛い。
まさか、勝利のためにこんな反則手段まで使ってくるとは。まぁいいか、こういう手を使っちゃいけないなんてルールも無いし。
私は迷った。千織のこの可愛さ全開のパフォーマンス、止めた方がいいのだろうか?
「リッチマン」はクラシックな経営ボードゲームだ。一飜市ではほとんどの人が知っているゲームで、当然私も馴染みがある。
プレイヤーは、同額の初期資金を持って同じスタート地点から出発し、順番にサイコロを振って出た目の数だけ進む。運と策略で土地を買ったり、買った土地に建物を建てて家賃収入を得られたりする。一人破産した時点でゲームは終了し、最も大きな額を稼いだプレイヤーが勝者となる。
最近麻雀でもツイてるし、この手の経営ゲームはたっぷり時間を取れるから、じっくり考えながら着実に進めていけば勝てるはず。
「リッチマン」にする!
……ふん、ほんっと愚かな選択をするわよね、あんたって。
千織は私の予想に反して、自信満々に蔑むような笑みを浮かべた。なんとなく嫌な予感がする。
6、6出ろ……
1よ、1……!
柔らかな陽が落ちるテーブルの上、精確に作られたプラスチック製のサイコロがボードの上で軽快な音を立て、私と千織をゲームに引き込んだ。私達はサイコロに念を送って望み通りの結果を出させるべく、大人げなくブツブツと呟いた。
結果私の振ったサイコロはコロコロと転がり……赤い「1」の目で止まった。
やった! 1だわ!
はぁ、仕方ない。一マスだけ進む、と……あれ? おっ、チャンスマスだ! わはは!
……え? ふん! まあいいわ。今日のあんたはちょっとツイてるみたいね。
千織の歓声が止んだタイミングで、私は逆にニッコリした。私は嬉々として「チャンスカード」を引き、書かれていることを読み上げた。
「魂天神社の麻雀大会でトップになったので、プレイヤーを一人指定して願いを一つ聞いてもらう。指定されたプレイヤーは、拒否する場合5万コインを支払う」
はぁ? なんでそんなチートじみたカードがあるわけ!?
はっはっは、これ一枚引いただけでも、今日私がいかにツイてるかわかるね。千織、5万コイン払うのと、私の願いを叶えるの、どっちにする?
うぅ……もうっ。
千織は迷いながら自分の資金を見た。結構な大金になっている。5万コインを選べば、資金の蓄えは危うくなる。迷った末、千織は拳を握りしめながら諦めた。
願いを叶える方にするわ。けど行き過ぎたお願いはなしよ。じゃないとすぐに璃雨を呼ぶから!
わかった、ちょっと考えるね……行き過ぎたものはなし、か……
「メイド召喚」という脅しを考えると、やっぱり千織の親切な忠告を聞き入れて、当たり障りのないお願いにした方がいい……のか?
いや、それは 絶 対 ナ シ だ! こんなチャンス滅多に無いし、湧き上がるアイデアが押さえられない……どんなお願いにしようか?
千織にコーヒーを淹れて欲しいな。
このお願いを口にすると、千織は案の定不快そうな表情を見せた。
えぇー、これは行き過ぎたお願いではないでしょ。前に礼奈ちゃんのところでお手伝いもしてたしさ。
……ふん、わかったわ。今回だけだからね。
ふぅ。千織が階下へ下りていったのを見て、私はホッと息をついた。ゲームのルールは有効、ということらしい。
出来たわよ。
お願いした通り、千織はコーヒーを淹れて持ってきてくれた。綺麗なラテアートに選び抜かれたティーカップ、鼻腔をくすぐる香り……私は身に余る待遇に驚喜せずにはいられなかった。
千織、ありがとう。じゃあ、遠慮なくいただくよ。
コーヒーを一口飲むと、全く身構えていなかった私の口に、コーヒーにあるまじきスパイシーな味が飛び込んできた。
ブーッ!! ゲホゲホッ……ゲホゲホゲホゲホッ……こんなに辛いコーヒーなんてある!?
へへーんだ。あんたの要求は、千織にコーヒーを淹れて欲しい、これだけ。コーヒーの味には何も言わなかったし、チリパウダーを入れちゃダメってルールも無かったわよね?
あまりの辛さに声も出せず、枯れるほどの涙を流した。千織は取り乱す私をホクホクと見つめ、挙句の果てにスマホで写真を撮り出した。
これがルールの穴を突いて巧みに利用する少女……恐ろしすぎる!!!
千織は蔑むような眼差しで私を見ていたが、やがて首を振り、キッチンへと戻っていった。すると、驚くべきことにコーヒーのおかわりを持ってきた。今度のは氷が浮かんでいる。
あんたってほんと何にも使えないわよね。この後もゲームを続けるんだったら、これ飲んでおかないとでしょ。
最早私には、このコーヒーが普通のアイスコーヒーなのか確認できる余裕もなく、カップを受け取るとゴクゴクと飲み干した。
冷たいコーヒーが喉を抜けると、辛みが和らいできた。
ふん! これはちょっとしたお仕置き。今度また調子に乗ってこんな分不相応なお願いをしてみなさい、簡単には許さないんだから。わかった?
私は首がもげそうなほど頷いた。ありがたすぎる。千織の想いが身にしみる。そう思えるのは、少なくとも二杯目のコーヒーが巧妙に仕組まれた二段構えのトラップではなかったからだ。
こうして、罰ゲームともご褒美タイムともつかない時間がようやく終わった。私達は、再び書斎へと戻った。
ゲームを続けるわよ。私の本当の実力を見せてあげる。
それはこっちの台詞だよ!
サイコロを振り上げ、私達はボードの上での熾烈な戦いを再開した。
ところが、ゲームが進むにつれて、運要素の割合が段々と少なくなっていき、それにつれて資源の割当て、売買取引といった商才を試される要素が増えてきた。なんと、千織の立ち回りによって、私の資産はいつの間にか彼女に搾り取られていた。
密かに作戦を練り、麻雀会館でよく放っている「魔王のオーラ」を纏いつつある千織を見て、自分は千織のやり込み具合をかなり見くびっていたのだと気づいた。
ゲームは終盤に突入し、私は千織に勝とうと少しでも多く資産を奪うため策略を巡らせたが、勝利の天秤は次第に傾いていった。最後のサイコロを振ると、またしても千織が資産を配置したマスの上に止まり、わずかにしか残っていないゲームコインと、払えないほどの税金を見て、手を挙げて降参した。
私の負けだよ。千織ほんとすごいよ、私なんかじゃ全然追いつけないくらい。
ふん! バカね。これが千織を見くびった末路よ。
千織は得意げになって立ち上がり、書斎の本棚まで歩いていくと、軽く本棚を押した。すると、ウィーンと機械式スライドレールの駆動音が響き、見掛け上はごく普通の造り付けの本棚が突然奥へと動き始め、左右に開いた。すると、なんと隠し部屋が現れた!
呆気にとられて見ていると、部屋の中には目を見張るほど数多くのボードゲームの箱や、大小様々なボードゲーム用アイテムが並んでいる。ボードゲームが好きな人が見たら天国と言うであろうほどのコレクションルームだ!
驚いた? 千織をその辺の一般プレイヤーなんかと一緒にしないで。この千織様に勝ちたければ、千織みたいにたくさんのボードゲームをやり込んでからにするのね! 今のままじゃ、格が違いすぎるもの。
!
千織は私が思っていたような、軽い思いつきでボードゲームカフェに行く程度の平凡なプレイヤーじゃなくて、プロレベルのボードゲーマーだったのか……。
……あはは! すごいや!
衝撃の後、ごく自然に尊敬の念が湧き上がってきた。このお嬢様は、いつも思いもよらないことをもたらしてくれる。
……はぁ?
私の反応はお気に召さなかったらしい。千織は怪訝そうに私を見つめた。
なに?
あんたって本当に変なヤツよね。ゲームでここまでこてんぱんにされたら、普通しんどくなったり、機嫌悪くなったり、怒ったりするもんでしょ? 例えばあの……あいつらみたいに……
私の脳内に、ある光景が浮かんだ。千織が言いたいのは、「まるであの、会館やボードゲームカフェでよく見る、自分にボコボコにされて泣きながら逃げ去っていく対戦相手のように」ってことだろう。
私は笑いながら首を振った。
負けたは負けたけど、千織と忘れられないような午後のひと時を過ごせたことは、貴重な体験だったからね。不機嫌になるわけないよ。
夕陽が書斎を照らす。テーブルの上には、広げたままのボードや道具たち。一つのコマがそよ風に吹かれて倒れ、秩序立っていたボード上の世界に小さな波紋が広がった。
千織は何か考えている様子で、まつ毛を震わせ、そっぽを向いて何事か呟いた。それから、顔を上げて私を見た。
明日のことはもういいわ。トレーニングも終わりにする。
え? やめちゃうの? どうして?
バカね、午後はずっとこればかりやっちゃったし、これからトレーニングしても間に合わないわよ。明日あのカップルに挑戦した所でまた負けるだけ。それに……
それに、思ったの。千織と{var:player_nickname}って、「何をもって勝利とするか」がこんなに違うでしょ。二人で協力するゲームである以上、千織が勝ったと思っても、それは本当の勝利とは言えないと思うの。
……つまり、千織が私の気持ちを尊重してくれた……ってこと?
ち、違うわよ! パートナーっていう立場から考えてあげただけ!
そっか~。
私はニコニコと同意した。だって、千織が頬を赤らめて照れてるところを拝めてラッキーだったから。彼女の言い訳が少々苦しいものに聞こえても、当然許すというものだ。
「二人で勝つ」ために、これから本当のチーム練習をすればいいのよ。
はは、つまりゲームで1位を獲るだけでなく、チームワークでも真の満点を勝ち取るってこと? 最初のよりも難しそうな目標だね。
そうよ、だから少しの気の緩みも許されないわ。今日から特訓開始よ!
はーい、じゃあそういうことで。
こうして、私と千織はこの誓いを立てることになった。そして、千織のボードゲームコレクションを隅々まで眺め、ふと興味が沸いてある質問をした。
そういえば、千織はいつからボードゲームで遊ぶようになったの?
うんと小さい頃からよ。でも、麻雀を打つようになってからは、他のボードゲームはほとんど遊ばなくなったわね。
どうしてボードゲームが好きなの?
ルールを利用して相手を痛めつけられるのよ、面白いに決まってるでしょ? そんなこともわからないの?
え?
まあいいわ、あんたもいつかこの楽しみを理解出来る日が来るでしょ。これからチームワークを築く方法はまだた~くさんあるんだから。
……頭イカレてんの?
私のお願いに、千織は全く理解出来ないという表情をし、スマホを素早く操作した。光の速さでドアがバン!と音を立てて開き、怒りに燃えた九条さんが突入してきた。
……は? ぎゃっ! もっと手心を……!
私の「しつけ」を完遂した九条さんは、千織の命令により、再び書斎を去っていった。
もう一度チャンスをあげる、何をお願いするのかよーく考えなさい。
未ださめやらぬ恐怖に震えながら、私は弱弱しく手を挙げた。
千織のような尊大なお嬢様が進んで私程度の奴に媚びを売るなんて、よっぽど勝つために必死なんだなあ。こんな時は全力で乗っからないとね!
心優しい私は千織の演技に合わせ、騙されたフリをして指し示している方を見た。
なになに?
チーン。思った通り、千織はこの隙に乗じてベルを鳴らした。
えー、引っ掛け~?
うふふ! 嘘も戦術のうちよ!
よーし、今度は集中するぞー!
そう言ったものの、二度あることは三度あるものだ。その後も、私は千織の騙し討ちを止められなかった。
あ、そうだ。この前の子猫のこと、覚えてる? あの後、璃雨にボランティアに連絡させて、引き取ってもらったんだけど……シロちゃん、クロちゃん、茶トラちゃんがいたわよね。あと二匹はどんな色と柄だったかしら?
え? えーっと……
チーン。またしても千織に隙を突かれてしまった。
あー、お腹空いた。何か食べたいものはあるかしら? 今日は千織が何でもご馳走してあげるわよ!
何でもいいのか~……ごくっ。
チーン。また隙を突かれた。
チーン、チーン、チチチチーン。甘い言葉に猫なで声、バリエーションに富んだキュートなトラップの裏には、ベルを鳴らされっぱなしになるという状況と、じわじわ枚数を減らしていく私のカードという残酷な現実が潜んでいたのだった……
最後のベルが鳴り、私のカードが全て取られてしまった。完敗だ……。
恐れていた通りに何も無くなったテーブルの上を眺めながら、にっちもさっちもいかなくなった私は両手を挙げて降参した。
はいはい、私の負け。千織の策略はすごいなぁ。今回のトレーニング、受けるしかないみたいだね。
ところが、千織は思っていたほど喜ばなかった。それどころか、千織が手に入れたカードの山を私の前へと押しやってくる。
この対決は無効よ。
え?
千織だってバカじゃないもん。今の対決、{var:player_nickname}はずっと、わざとベルを譲ってた。そうでしょ?
虚を突かれ、私はやや気まずい気分で顔を掻いた。
えーと……全部じゃないよ。大半は千織の可愛さに気を取られたせいだし。
……ふん、口だけは上手いんだから。まあいいわ、明日は来なくていいわよ。トレーニングも中止。
え? どうして?
……バカ。あんたは千織が傷つかないようにって、わざと譲ってくれたんでしょ。だったら、真っ当な心の持ち主たる千織様もあんたの立場に立って考えてあげるのが当然でしょ!
「何をもって勝利とするか」がこんなに違うんじゃ、千織のやり方で勝ってもあんたは嬉しくないでしょ。
うーん……つまり千織は私を思いやってくれているって考えていいの?
……か、勘違いしないでよね! 二人でやるゲームなんだから、二人で勝たなきゃ勝ったうちに入らないでしょってこと! そういう意味だから!
そっか~。
私はニコニコと同意した。だって、千織が頬を赤らめて照れてるところを拝めてラッキーだったから。彼女の言い訳が少々苦しいものに聞こえても、当然許すというものだ。
だから……二人で勝つために、明日の再戦は一旦中止して、これから真の意味でのチームワークを鍛えるトレーニングをすればいいのよ。
……真の意味でのチームワーク……?
私がその意味を飲み込めていないのを察して、千織はスッと立ち上がり、本棚の何かを押した。
次の瞬間、ウィーンという音とともに機械式スライドレールが動き、一見ごく普通の造り付け本棚が左右に開いて向こう側へと押し込まれていった。すると、なんとその先に隠し部屋が現れた。
呆気にとられて見ていると、部屋の中には目を見張るほど数多くのボードゲームの箱や、大小様々なボードゲーム用アイテムが並んでいる。ボードゲームが好きな人が見たら天国と言うであろうほどのコレクションルームだ!
驚いた? 千織はそんじょそこらのプレイヤーとは違うの。千織と協力プレイをしたければ、まず千織と同じようにたくさんのボードゲームをやり込むことね。それで、早く千織のレベルまで追い付きなさい。
!
千織は私が思っていたような、軽い思いつきでボードゲームカフェに行く程度の平凡なプレイヤーじゃなくて、プロレベルのボードゲーマーだったのか……。
このお嬢様は、いつも思いもよらないことをもたらしてくれる。
こうして、私と千織は、「チームワークを深めるために、色々なボードゲームを一緒にたくさん遊ぶ」という約束をした。
コレクションルームをじっくり見渡し、ふと気になって千織に尋ねてみた。
そういえば、千織はいつからボードゲームで遊ぶようになったの?
うんと小さい頃からよ。でも、麻雀を打つようになってからは、他のボードゲームはほとんど遊ばなくなったわね。
どうしてボードゲームが好きなの?
ルールを利用して相手を痛めつけられるのよ、面白いに決まってるでしょ? そんなこともわからないの?
え?
まあいいわ、あんたもいつかこの楽しみを理解出来る日が来るでしょ。これからチームワークを築く方法はまだた~くさんあるんだから。
……お嬢様の大変愛らしい笑顔を見てると、期待と恐れが同時に沸き上がってきた。
わかった、千織の勝利のためならこのくらいお安い御用だ! よし来い!
殊勝なことだわ。まずはボードのレイアウトを研究するわよ!
私と千織は、真面目に明日戦うボードゲームのルールの詳細な研究を始めた。
あっちゃー……負けたー。
ありがとうございました。
私達は約束通りボードゲームカフェに赴き、例のカップルと再戦した。前日のトレーニングが功を奏し、私と千織の「チームワーク」は大幅に向上していた。相手のカップルもチームワークは相当高かったが、私達のほぼ完璧と言っていいチームワークに比べるとやっぱり見劣りするように感じた。
最高の週末の過ごし方と言えば当然家で麻雀だろ! まだ俺のことわかってくれてなかったのか? なんでここに来たんだよ!
バカじゃないの? 今やってるシナリオでは、私達が森の迷宮に閉じ込められた理由がまだ判明してないのよ。そんな時に週末のことなんて考えてられると思う? 当然急いで出口を探すことを選ぶわよね!
あー、そうなったら運命に身を任せるしかないさ。ネットは生きてるって言ってたよな? てことは、まだそこまで危険じゃないってことだよ。ネット麻雀でもすれば、見ず知らずのフレンドがヒントをくれるかもな!
はぁ、あなたの思考回路がここまでぶっ飛んでたなんて、知らなかったわ……。だったらあなたが選んでよ!
こんな調子で、カップルは噛み合わない選択が続き、担当するキャラクターで先に進めなくなってしまったり、どの選択肢を選ぶかで口論をになってタイムロスをしたりして、何度もゲームの難所をスキップするチャンスを逃した。
そのまま、私達はあっさりと勝利を収めた。ハートマップの迷宮を先行して脱出し、ゴールへと辿り着いたのだ。
ようやく勝てたということで、千織はとても嬉しそうだ。興奮もそのままに感想戦をしている千織を横目に、私は喉が渇いたと仰せのお嬢様のために飲み物を買いに行くことにした。
ドリンクバーの前を曲がると、先ほど私達と試合をしたあのカップルとばったり行き遭った。彼らは私の姿を認めると、ずんずんこちらへ向かってきた。
あなたですね? さっきはありがとうございました。
え?
負けたのに、お礼?
負けちゃったけど、最高のゲームだったよ! だって、間違えるなら現実よりゲームの中の方がよっぽどマシだからね。そうだろ、ハニー?
えぇ、たまには負けるのもいいわ、ダーリン。
困惑の色がはっきり顔に出ていたのだろう。二人はより噛み砕いて言わんとするところを説明してくれた。
今回負けたおかげで、俺達も色々と新しいインスピレーションを得られたからさ。
そうそう。あのゲームは真心のやり取りが問われるものでしょう。ハートマップの分岐点、あれって実際に恋人が出来るとよく直面することなのよね~。外からの刺激が無かったら、お互いの間にどれだけすり合わせが必要な所があるかとか、こうも違った見方があったことも、知らないままだったわ。
あはは、なるほど……
勝利と敗北の相対関係か……彼らの話を聞きながら、昨日千織と言い争いをした時に伝えたことは、ひょっとすると自分でも気付いていなかったような重大な意味を持っていたのかもしれないな、と感じた。
アツアツの「敗者」に手を振って、冷たい飲み物を二杯持って千織のもとへと向かった。
ふふふ……
千織は上機嫌でスマホを取り出し、勝利の証であるボードの写真をCatChatにアップしようとしていた。私は先ほどのカップルの話を思い出し、探るように尋ねた。
千織、この「ハートマップ」、好き?
え? 好きかどうか? そうね……可もなく不可もなく、かしら。人気のゲームだっていうから二回遊んだけど、大したことなかったわね。
やっぱり十四歳の千織には、敗北という名の勝利、勝利という名の敗北とかいうものは少し難しいんだろうな。
千織は、むしろ私の肩を叩いてくれた。
でも、今回はよくやったと思うわ、{var:player_nickname}。ボードゲームにはまだまだ面白いものがたくさんあるの。次はもっと難しいゲームにするわよ!
うん、大丈夫。
いや、私の目標はあくまで勝利! 私は心を鬼にして、千織のキュートな誘惑を封じた。
チーン。私は一切ためらわずにベルを鳴らし、ポカンと口の開いた千織の表情を見て、腰に手を当てて大笑いした。
わはは、フェイントのつもり? そうはいかないよ。
キーッ! あんたねえ!
恨めしさと恥ずかしさで怒っても、それは無駄なあがきというもの……無慈悲な私はどっしり構えて、無事にゲームに勝利した。
ふふん、私の勝ちだね。約束通り、千織には言うことを聞いてもらおう。
千織は悔しそうな表情を見せる。
ふん、わかったわ。まさかあんたがここまでやるなんて……でも今回だけよ! 次は負けたりしないんだから! ちょっと時間があれば、このゲームも千織が勝つんだから!
ぷぷ……わかった、楽しみにしてるよ。
はぁ、明日の復讐計画を諦めて、私に勝つことを新たな目標にしたと? 千織の負けず嫌いは相変わらずだなぁ。まあ何にせよ、今回の目的は果たせた訳だし、それに時間はこれからもたっぷりある。数多くの正論は、今後より良いやり方でゆっくり聞いてもらうとしよう。
今日のことは、たちまち何気ない日常の中の一コマとなったらしい。後に私がこのことを話題に出しても、千織の印象にはあまり残っていない様子だった。
ゲイシャかな?
はっ、千織の好きなコーヒー豆すら覚えてないなんてね。前はっきり言ったはずよ。
おめでとうございます、不正解です。お帰りいただいて結構ですよ。
え? もう終わり?
突然始まったクイズ大会がいきなり終了してしまい、私はたちまち蚊帳の外に追いやられた。
次の日、スマホで千織が投稿した最新のCatChatを見た。
どうやら、彼女と九条さんはあるボードゲームで勝利すべくタッグを組んだらしい。はっきりとは書かれていないが、昨日のことと何か関係がある気がする。
千織が一番好きなのは猫だよね?
千織は彼女のくまさんのポーチを抱えながら私を見て、失望を露わにした。
確かに猫は可愛いと思うけど、千織が一番好きなのはくまさんよ。そんなこともわからないの?
おめでとうございます、不正解です。どうぞお帰りください。
突如としてクイズ大会が終了し、私は一気に蚊帳の外に追いやられてしまった。
次の日、スマホで千織が投稿した最新のCatChatを見た。
どうやら、彼女と九条さんはあるボードゲームで勝利すべくタッグを組んだらしい。はっきりとは書かれていないが、昨日のことと何か関係がある気がする。
私は思い描いた答えを口にして、期待を込めた眼差しで千織を見た。
バカ、そんな訳ないでしょ! インデックスって単語すら覚えられないなんて、何度も言ってるはずなのに!
おめでとうございます、不正解です。どうぞお帰りください。
突如としてクイズ大会が終了し、私は一気に蚊帳の外に追いやられてしまった。
次の日、スマホで千織が投稿した最新のCatChatを見た。
どうやら、彼女と九条さんはあるボードゲームで勝利すべくタッグを組んだらしい。はっきりとは書かれていないが、昨日のことと何か関係がある気がする。
思わず選択肢を二度見してしまう。こうなってしまうと、正解か不正解ということはもはや重要ではなかった。何故なら、その選択肢をひと息で正確に読めさえすれば、私はたちまちごく一握りの人しか成し得ない栄光を手に出来るのだから。
深く息を吸い込み……
……ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン!
よし、噛まずに言えたぞ!
……まさか本当にそれを選ぶ奴がいるなんてね。
正解?
正解かどうかは置いといて、とりあえずあんたにご褒美をあげるわ。
有無を言わさず九条さんにつまみ出され、たっぷりと「ご褒美」を食らった。
頭をさすりながら再び元いた席に座ると、千織は微笑みながらこちらを見た。
改めてあんたの答えを教えてもらうわ。
それで、千織のくまさんのポーチの名前は?
私の頭は再びフル回転を始めた。どう考えてもこれだと思うんだけどな。さっきのはきっと私を試したんだ、そうに違いない!
……ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン!
あなたは実に度胸ある方ですね。ではこちらへ。
九条さんにカフェの外へ連れ出され、「ご褒美」を食らった。再び席に戻ると、千織はにっこりとした表情を崩さず私を見つめた。
もう一度聞くわよ、千織のポーチの名前は?
なんだ、もう一度チャンスがあったのか……私は痛む頭をさすりながら、改めて五つの選択肢を見た。
「初心忘るべからず」ということわざがあるよな。
……ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン!
ハキハキと回答した。三度もやると、口も完璧に回るようになるなあ。練習の成果が出てる。
璃雨。
はい。
ぐえっ!
自分の耳をつんざくような短い叫び声、千織の冷たい眼差し、顔面に飛び込んでくる九条さんの倍威力の鉄拳……この光景を最後に、私の意識は途切れた。
気がついた時には、既に翌日になっていた。家まで運ばれたのか? 一体誰が……。
頭をさすりながら最初にしたことは、……いつも通り、スマホチェックだった。
友人達からのオンライン麻雀の誘いをざっと確認し、次に千織が投稿したCatChatを見た。
どうやら、彼女と九条さんはあるボードゲームで勝利すべくタッグを組んだらしい。はっきりとは書かれていないが、昨日のことと何か関係がある気がする。
しかし、投稿は明らかに私とは関係ない内容のものだった。千織ともっと仲良くなりたければ、もっと正しい方向に努力する必要があるようだ。
お嬢様の願い
契約を結ぶことで開放
Possible Endings
Scenario Script
Spots 1, Scenes 401, Choices 2, Endings 2
みんな、こんにちは。絶好の麻雀日和だね!
にこやかでフレンドリーな笑顔、ハキハキとした挨拶。朗らかなオーラとともに、魂天神社の対局室に足を踏み入れた。たっぷり惰眠を貪った後は、猫や犬をモフりながら麻雀をし、個性的な雀士達と交友を深める……という充実した一日を送るつもりだった。
ところが、風が吹いてそうな卓につき、同卓の三人に挨拶すると、なんだか少し変な空気だ。仲間達は示し合わせたかのように手を止めた。
そうだ、宿題やんねーと。ごめん、行くわ。
ちょ、一緒にやろーぜ。ごめんけどオレもこれで……
ふぅ……それじゃ僕も。
ちょ、ちょっと三人とも! 待って、そんなスタスタ行っちゃうことある? いい歳して思春期ど真ん中の中学生みたいにさあ!!!
三人はいなくなってしまった。
仕方なく、周囲のまだ席が空いている卓に目を向けた。周りの雀士達は、さっきまでこちらを興味津々に眺めていたくせに、いざ私と目が合うと揃って下を向いてしまう。牌山を見つめてじっと考え込む様は、担任から指されるのを恐れる生徒のようだった。
ご主人、哀れにゃ。誰にも相手してもらえないのにゃ。ワン次郎、何かいいアイデア出せにゃ!
「今日は正真正銘三上千織と一緒じゃありません」とデコにでも書いとけばどうだワン。
ご主人、どうにゃ?
ハイハイ、使えないアドバイスどうも。この感じだと、ふたりに付き合ってもらうのが良さそうだな……
……って、ちょっと! ワンちゃん!? ネコちゃん!?
犬と猫の軍師コンビが速攻で消えた。
はぁ……まぁ、彼らを責めることは出来ない。今日こんな調子になっているのは、このところ私にべったりなあるお嬢様のせいなのだから。
先日千織と仲良くなってから、千織の私を見る目は次第に「庶民」から「面白いおもちゃ」を見るそれへと変わっていった。はっきりそう言われた訳じゃないけど、態度が物語ってる、間違いない!!!
それからというもの、ボードゲームや麻雀、ごく普通の大富豪に至るまで、私が何かゲームをしている所には必ず千織が現れるようになった。それに従い、彼女の目標は「スマートにゲームに勝つ」から「相手、特に{var:player_nickname}を出来る限り痛めつける」というものに変わったようだ。
そうこうしているうちに、巷では「私がいる所には、金髪のお嬢様が現れて格下をいたぶる」という噂が囁かれるようになった。そのせいで、私は高頻度で対局相手を捕まえられない事態に見舞われるようになってしまったのだ。
私は再び三方向の空席を見つめた……まあいいさ、千織が来るのを待ちながら、他の相手を探そう。他じゃともかく、一飜市じゃ友達は多い方だしね。
……
……
……
どんな感じ?
私はスマホを置いて首を横に振り、二人に悪いなあと思いつつ誰も座っていない対面を見た。
同卓者三人のうち二人は早々に捕まえられたが、今日に限って千織がまだ来ない。
普段ならもう来てる時間なのに、九条さんまで連絡がつかないなんて、変だなあ。
いつも一緒の二人が今日は別々なんて、意外ね、うふふ。
うーん……正直私も意外に思ってる。
後輩クン、もしかしたら、知らないうちに怒らせるようなことしちゃったんじゃない?
そんなことしてない……多分。
とは言ったものの、最近よく理由もなく千織に蹴られていることを考えると、ないとも言い切れないような。
ふふ、顔に心配だって書いてあるわよ。あなた、私達のことはいいから、今日のところは様子を見に行ってみたら?
え? でも二階堂さんも白石さんもせっかく待っててくれたのに……
そうね、だから、まずは千織ちゃんのご機嫌を取って、それから私への埋め合わせをどうするか考えてちょうだい。しっかり「誠意」を見せてくれなきゃ、ただじゃおかないわよ。
あははっ、ウチはへーきだよ。またウチと友達に飲み物奢ってくれればオッケー! 安心して、ちゃんと人数が多い部活の助っ人する日を選ぶから。後輩クンは現場でお金払ってネ!
あ、あはは、……はぁ。わかった。じゃあ今日は悪いけどこれで、また今度誘うから!
これでまた約束が一つ増えた。一飜市に住んでると、ほんっとスケジュールがすぐギチギチになるんだよな。それはともかく、心配の種を除く意味でも、やっぱり千織に会いに行こう。
千織の家は、一飜市内の風光明媚な高級別荘地にあった。ここへ来るのは初めてではないが、来る度にセレブな雰囲気に圧倒されてしまう。例えば、千織の家の近くには私の動きに合わせて動くカメラがある、とか。先日の不審者騒動で、セキュリティシステムが更に強化されたようだ。
この状況で、何か起きることはないはずだけど……まさか、本当に知らないうちに怒らせるようなことしちゃったのかな?
私は千織の家の玄関前まで行き、インターホンを鳴らして大人しく待った。
程なくして、インターホンの付属カメラのランプが緑に点灯した。誰かが来客を確認しに来たってことだ。しかし妙なことに、相手はインターホンに出ておきながらずっと無言でいる。
変だなと思いながら、カメラに向かって手を振ってみた。
千織? 九条さん?
「プツッ」
問いかけに応じたのは、インターホンが切れる音だった。
???
まさか……本当に何かあったのか?
高級住宅街の大きな別荘に、両親が常に家を空けているせいで一人暮らし状態のお嬢様と、そのお嬢様のお世話をしているただ一人のメイド。もしこういう設定のコンビがあのダークヒーローが活躍するゴッパー・シティにいたら、とっくにあらゆる犯罪組織から狙われていただろう。様々な犯罪行為が頭をよぎり、通報しようかと考えた。
その時、ガチャッとドアが開いた。
……
{var:player_nickname}、こんにちは。千織に何かご用?
……
ドアの奥から出て来た千織は元気そうに見える。しかし……千織のこの明るさ、昼に私が同卓者を引き留めるために明るく振る舞った時とそっくりで……なんだか妙だぞ!
千織、大丈夫?
え? 自分の家で何か起きるわけないでしょ? あはは、{var:player_nickname}は本当に冗談が好きね。
……
遊びに来たんなら、悪いけど今日は都合が悪いの。また今度でもいい?
変だ、お行儀が良すぎる。何もないようには見えないな。
……ほら、か・え・っ・て?
千織は少し焦った様子で私に詰め寄り、低い声でそう言った。普段私をいたぶる時のあの表情で、九条さんのように拳を掲げている。
おぉ、いつもの千織だ! 安心した~。どうやら、本当に私に言えない何かで忙しいみたいだ。
そっか、何もないならよかった。じゃあね。
うん、またね、{var:player_nickname}。気をつけるのよ。
去ろうとしたその時、聞き覚えのない大人の女性の声が中から聞こえてきた。
千織、お友達?
私はまさかと思って振り返った。千織の頭越しに、部屋から顔を出した品のある服装の女性が見えた。
女性の髪は、千織と同じ輝く金色をしているが、肩で切り揃えて耳にかけている。その髪型もあって、落ち着いた知的な女性という印象を受けた。
こんにちは、はじめまして。千織の母です。
……はっ、こんにちは!
繊細なスイーツと淹れたてのコーヒーが並んだ見事な装飾のトレーを、千織自ら私の席まで運んでくれた。
どうぞ。お砂糖、ミルクはカップの横よ、好みに合わせて入れてね。
ンンッ……千織、ありがとう。
ドウイタシマシテ。
少女のやや固い笑顔と甘い声とは裏腹な、人を殺しかねない眼差しを受け流し、千織が私のために丁重なおもてなしをしてくれたシーンを写真に収めたい衝動にかられた。……隣に千織のお母様が座っていなければ、恐らくそうしていただろう。
私は気持ちかしこまってソファーに腰かけ、これまで千織から聞いていた母親に関する情報を脳内で素早く整理した。一年中世界を股にかけて活躍する優秀な外科医で、物理学教授の夫、つまり千織の父と同じく多忙のため、やむをえず娘をメイドに預けているキャリアウーマン……
そんな彼女が、まさか今日家に帰って来ていたとは。どうりで千織が現れないわけだ。
あなたは千織と仲のいいお友達のようね。なんとお呼びすればよろしいかしら?
お母様の質問に、私は慌てて背筋を伸ばした。簡単な自己紹介の後、今日家を訪ねた理由について説明した。
そうだったの。千織のことを心配してくれてありがとう。今日、千織はあまりスマホを見なかったし、璃雨ちゃんもメイド特訓クラスの追試があるとかで、私も連絡が取れないし、会えてもいないのよ。
そうだったんですか……これですっきりしました。
心配かけた上に、わざわざ足を運んでいただいちゃって……。
いえいえ、友達として当然のことです。こちらこそ、急に押しかけて、親子水入らずの時間を邪魔しちゃったみたいで……。
ふふ、いいのよ。千織のお友達と会えて嬉しいわ。実はね、前に帰ってきた時は璃雨ちゃんとばかり一緒にいたのに、こんなに仲のいいお友達が出来たとわかって、正直驚いたのよ。千織、どうしてお母さんに教えてくれなかったの?
……べ、別に言う必要なかったし、特に仲がいいわけでもないし、ただの……
へ……?
へ……?
……ただの仲良しの友達なの。でも毎日一緒にいなきゃいけない関係じゃないわ、そこは絶対違うから!
千織母はあらあらといった感じで私と千織を交互に見た。にこやかな表情ではあったが、彼女の視線に身体の奥まで見透かされたような錯覚に陥った。
ふーん……つまり、「いなきゃいけない」ってルールはないけど、結局は毎日一緒にいるってことね?
……
……
間違ってはいないけど、その言い方だと何か語弊があるような。私と千織はぐっと押し黙り、そわそわしながら千織母を見た。
ふふ、そう緊張しないで。千織に新しいお友達ができて嬉しいのよ。でもね、千織とお友達がどんなことをして過ごしてるのか、なかなか知る機会が少なくて。{var:player_nickname}さん、よければ教えてくださらない?
えっ?
もちろん、話せる範囲でいいわよ。全てが二人だけの秘密って訳でもないでしょう?
あ、も、もちろんです……
話の調子を合わせながら、何を話すべきか考えていると、不意に千織母のスマホが鳴り出した。
ごめんなさい、電話に出るわね。
千織母は立ち上がり、隣のダイニングに向かった。静かになったリビングに、彼女の話し声が聞こえてくる。
もしもし……今日は休みです。うん……うん……無理です。休暇中ですので……
ソファーに納まった千織の視線が、電話中の母を追っている。電話の内容を聞いてとりあえず仕事に戻ることはなさそうだとわかり、少し安心したようだ。こちらを向くと、小声ながらツンツンした声で真剣に忠告してきた。
お母様に何か聞かれた時、バカなこと言ったら許さないから!
チクられるのが怖いの? 普段あんな所業しといて?
私もホッとひと安心し、小声で反撃した。
千織が何か言いかけた時、千織母が戻ってきた。再び席につき、わくわくといった感じで私の話を待っている。
その隣には、警告するような眼差しで私を見る千織。どうやって話そうかな?
後のことを考えると、本当のことは言えないよな……。
千織のことを気にせず、お母さんのイメージを壊しかねない恥ずかしいことや悪質な行為をバラしてみろ。私の生活は「終わり」だぞ。
えーと、千織さんと知り合ってからの思い出はたくさんありますけど……とにかく、千織さんはとびきり優しくて、可愛くて、人に愛される女の子ですね。
千織が安堵のため息をついているのがわかった。
……家にお邪魔すると、千織さんはいつも今日のようにコーヒーを淹れて、お菓子を用意してくれるんです。
へ……?
それから、千織さんは賢くて、ゲームをする時もすごいんです。いつも辛抱強く私に教えてくれるんですよ。私が疲れた時は、九条さんに千織さん専用メニューのマッサージをするよう頼んでくれるんです。
ああ、前に一度、九条さんがいなかった時に千織さん自らマッサージをしてくれたことがありましたね。それから、一緒に公園に行って猫にご飯をあげた時、私がうっかり迷子になっちゃった時があって……その時も辛抱強く私を探し、このお家まで連れて行ってくれて、美味しい夕食を作ってくれたこともありましたね……
ペラペラと話していると、緩んでいた千織の頬が徐々に強張っていった。
私の話がどんどん無茶苦茶な方向に転び出すと、彼女は母親の後ろから「よくもやったわね」と口パクで言ってきた。それから、突然眉をひそめて頬を覆った。
いっ……たた!
千織母の意識はすぐさま娘へと向いてしまい、私の講談は見事に打ち切られた。
どうしたの? また歯が痛くなったの?
千織は辛そうに頷いた。
明日の危機は明日考えよう。今を生き、楽しむこと、それが一番大事。
私は千織の無言の警告を無視し、千織との様々なエピソードを母上殿にご報告申し上げることにした。
そうですねぇ、千織さんと知り合ってからというもの、印象深い出来事がたくさんありました。初めて会った時から、私はずっと、千織さんの可愛さや聡明さ、美しさに驚かされてきました。
千織ははっきりと安堵のため息をついたが、すぐに顔色が変わった。話の雲行きが怪しくなって来たからだ。
しかし、千織さんのことを深く知っていくにつれて、その可憐な見た目からは想像出来ないことに気付いたんです。それは……
いっ……たた!
話の核心に入りかかった時、彼女は母親の後ろから「よくもやったわね」と口パクで言うと、突然眉をひそめて頬を覆った。
千織母の意識はすぐさま娘へと向いてしまい、私の暴露話は見事に打ち切られた。
どうしたの? また歯が痛くなったの?
千織は辛そうに頷いた。
千織母は名残惜しそうにしながらも、腕時計を見た。
あら、そろそろ歯医者さんに行く時間ね。出かける支度をしましょう。
……歯医者さん?
千織は昔から虫歯になりやすくてね、定期的に健診を受けないといけないのよ。ちょうど検査の日に帰れたから、この機会に私も一緒に行こうと思って。歯医者さんからこの子の歯の状態も聞けるしね。
なるほど、それじゃあ……
「じゃあこれで失礼します」と言おうとした矢先、千織母のスマホが再び鳴り出した。
ごめんなさい。
千織母が電話に出たことにより、私のお暇もまた中断されてしまった。
もしもし……申し訳ないけど、休暇中だと言ったはずです。他の方を……院長?
やや驚いたような声をあげ、少し立ち止まって千織をちらりと見た。そして立ち上がると、バタバタと向こうへ行ってしまった。
……状態は……そうですか……
千織は「平気だもん」と言わんばかりに母と胸に抱えた抱き枕を交互に見つめていたが、段々とへの字になっていく口元が彼女の本心を物語っていた。
午後ですか? けど娘が……
断片的な会話がかすかに耳に入ってくる。相手が何を言っているかまではわからなかったが、千織母は説得に応じつつあるらしい。最初の毅然とした口ぶりは次第に妥協の色を見せ始め、最終的にはため息をついた。
はぁ、わかりました。ただし飛行機は……
どうやら、千織母は緊急の出張を命じられたようだ。となると、一緒に行くはずだった歯医者は……あれこれ考えを巡らせていると、横にいた千織が抱き枕をバフっと放り、何も言わないまま、重い足音を響かせながら二階へ行ってしまった。
その様子を見ていた千織母は、スマホのマイクを手で押さえ、申し訳なさそうに私を見た。
様子を見に行ってくれないかしら?
ああ、いいですよ。
私も心配だなと思っていた所だったので、快く応じた。
二階に行くと、ちょうど千織がインデックスを持って部屋から出てきたところだった。上がってきた私を見て、千織は立ち止まった。
千織、大丈夫?
なんで上がってきたの?
さっき、怒ってるみたいだったから。お母さんがまた出張することになったから?
ふん……もう子どもじゃないんだから、よくある事でいちいち怒ったりしないわよ。
じゃあどうして急に上に行っちゃったの? しかもインデックスまで持って……
千織はお馴染みのくまさんのポーチを抱きしめていた。母親からの誕生日プレゼントなのだと、何度も自慢していたぬいぐるみ型バッグだ。
バカね、出かける支度をしてるのよ。歯医者に行く時間だって、お母様が言ってたでしょ?
でも、お母さんは……
ふん、{var:player_nickname}は大バカね。お母様がお仕事じゃ、千織は一人で歯医者さんにも行けないだろうって?
三上千織はインデックスをきつく抱きしめ、私を押しのけて階段を下りていった。私も慌てて後を追う。
一階では、ちょうど千織母が電話を終えた所だった。千織母は、階段をかけ下りてきた千織に声をかけた。
千織、定期健診だけど……
一人で行けるわ、お母様。
へ……?
お母様はお仕事なのでしょう? 歯医者なら一人でも行けるわ。
千織母は眉間に皴を寄せ、不本意そうにしている。
さっき病院と話をつけて、ちょっと遅めの便にしてもらったの。そうすれば一緒に歯医者さんに行って、直接空港に向かえるわ。だから……
お母様、本当にいいの。
千織は頑なな態度で首を横に振り、インデックスをぎゅっと抱きしめた。顔には笑みが浮かんでいた。
今朝帰ってきたばかりだし、あちこち出かけたらきっと疲れてしまうわ。千織は本当に大丈夫だから、お母様は少し休んで。それにいつもは璃雨と一緒に行ってるし、慣れてるから心配いらないわよ。
でも、今日は璃雨ちゃんがいないんだし、あなた一人じゃ……
私の知っている千織は、こういう時ここまで寛容で冷静な態度は取らない。にもかかわらず、千織母は言いくるめられてしまったらしい。私は言葉を飲み込んだ。この親子、今まで接する時間が本当に短かったんだろうなあ。
あっそうだ、それでもお母様が心配なら、{var:player_nickname}を連れて行けばいいよね。{var:player_nickname}ならきっと喜んで引き受けてくれるはず、でしょ?
三上千織は私の服の袖を引き、上目遣いで私を見つめた。ここまではっきり助けを求めてきたのは初めてだ。私は驚いて、千織と手を繋いだ。
はい、私が一緒に行くので、ご安心ください。
千織母は、ぎゅっと繋がれた私と千織の手をしばらく見つめていた。徐々に眼差しから迷いの色が消えていくのがわかった。
わかったわ、ではお願いしますね、{var:player_nickname}さん。
千織母と連絡先を交換すると、私は千織と共に歯科医院へと向かった。
さっさと済ませよう。そうすればお母さんの出発に間に合うかもだし。
うるさいわね……ふわぁ~、眠いわ。
千織?
タクシーの窓から千織母が見えなくなると、すぐに千織の顔から笑顔が消えた。そして、体を縮こまらせて寝たふりをし、これ以上の会話を拒んだ。一気に冷え込む車内の空気。ぎゅっとつむったまぶたの上、長いまつ毛がかすかに震えているのをただ見ていることしか出来ない私は、密かにため息をついた。
千織、今回は本当に堪えたみたいだな。
一言も話さないまま、歯科医院に到着した。呼出状況を確認すると、私達は次の次に呼ばれるみたいだ。受付のお姉さんから指示を受け、待合室で待つことになった。
ここの歯医者は静かで、消毒液の匂いが充満している。待っている間、彼女はずっとある一点を見つめていた。視線の先、はす向かいのソファーには若い親子が座っていて、お母さんにだっこされている四歳ほどの子が、左の頬を手で押さえながら甘えている。
ママー、いたいよぉ。
はいはい、診てもらったら痛くなくなるからね。
いたくなくなったら、ここにこなくていい?
そうよ。
じゃあここじゃなくて、ゆうえんちにいけるようになる?
……フン。
少女は小さく鼻を鳴らし、羨ましそうに眺めている。この子があの各地の麻雀会館に君臨する傲岸不遜な魔王・三上千織だと誰が想像できるだろう。
今は、母親に対してすねているただの子供だ。
千織、大丈夫……?
その台詞、三回目よ。耳にタコを作らせたいの?
あっ、大丈夫ってことなら……飴ちゃんでも食べる?
三上千織は軽蔑しきった顔で私を一瞥し、耳を塞いで無視した。
虫歯の子の機嫌を飴で取ろうとするなんて、やっぱり愚策でしかないよね。何か話題を替えて仕切り直そうとした時、急に近くで言い争う声が聞こえた。
そもそもそっちのミスが原因なのに、なんでまた待たされなきゃいけないんですか?
私は声がする方を見た。
話しているのは、ちょうど先ほど見た子どもを抱っこしていた母親で、責められているのは、診察室から出てきた医師だった。下がりきった眉から無力感が感じられる。
はい、ですがもう何度も来ていただいてて、するべき検診も治療も済んでいますし、お子さんには何の問題も見つからないんです。別の先生に診せれば別の結果になるかもしれません。次の予約をお取りいただくか、紹介状を書きますので……
そんな無責任な話あります!? 私は子どもをここに連れてくるためにもう何度も休みを取ってるんですよ! 今回のことは責任取ってもらいます! 無駄になった給料も負担してもらいますから!
問題の中心である男の子は、怯えて母親の足にしがみついている。段々と張り詰める空気。
お医者さんと患者さんが揉めてるみたいだね。あまり気にせず……千織?
意外なことに、千織は席を立つと、彼らのもとへ歩いて行った。そして、医者と母親にこう言った。
あの、とりあえずやり方を変えてみたらいいんじゃないかしら。
えっ?
おお、千織ちゃん。
この医者は千織を知っているようだ。彼は身をかがめて千織に何事か耳打ちし、次に母親と小声で話をした。
男の子は椅子に座り、心配そうに唇を噛んで母親を見ていた。
じゃあ、初めからもう一度検査してみましょう。
わかりました。
話がまとまったようだ。母親は、息子に診察室に行くよう手振りで示した。
興味が沸いた私は、どさくさに紛れて千織とともに入り込んだ。追い出されるかと思ったが、私達を見ても誰も何も言わない。ますます気になる。
ゆうちゃん、どこが痛いかお医者さんに言ってごらん。
……うん。
医師は、男の子を椅子に座らせて大きく口を開けさせ、ライトで口内を照らしてから、顔の右側を指さした。
前に、ここはちゃんと治したと思うんだけど……本当にここが痛いのかい?
あれ、さっき痛いと言って押さえてたのは左側だったよな。
ところが、ゆうちゃんは少しためらってから頷いた。
……うん。
これで全員が理解した。ゆうちゃんは嘘をついている。
ゆう、ママはすっごく忙しいのよ、変なこと言わないで! 歯が痛いのは嘘だったの? バカなことして!
うぅ……あうぅ……
嘘がバレて、男の子は口をモゴモゴさせた。目にはみるみる涙が溜まっていく。
うぅ……ママ、ごめんなさい。
ぼくはただ、ママにあそんでほしくて……。
ずっと歯が痛ければ、もっとママといっしょにいてくれるかなって。
全くもう……バカな子ね。今度からはまずママにお話してね……。
……
親子は落ち着きを取り戻し、揃って医師に謝った。それから、千織に何度もお礼を言った。
事態がひと段落し、親子を見送って、私は千織に向かって親指を立てた。
フン。
千織はつんけんした態度で顔を背けた。今のは照れ隠しだな。人助けをしたことで、心が軽くなったみたいだ。
診察室を片付け、備品を交換するということで、今しばらく待つことになった。この機会に、先ほどから聞きたくてうずうずしていたことを聞いた。
あの子の気持ちをあそこまで正確に読み取るなんて……もしかして、千織も前にああいう手を使ったことがあるの?
はぁ?
今日はあんたに優しくし過ぎたかしら? 千織にそんなデタラメ言うなんて! 千織はあんなバカな子じゃなかったわよ!
いや……千織のお母さん、よく家を空けてたんでしょ? お母さんが恋しくなかったのかなって。
……うっさいわね。バカと話をする気はないわ。
教えてよ。千織の気持ちが知りたいんだ。
千織のお母様はすごいお医者さんなの。人々の健康を守るためにお仕事してて、病気を抱えた人達に必要とされてる。だから、千織はあんなやり方でお母様の時間を無駄にしたりしないわ。
病気の人達だけじゃない、君だってお母さんを必要としてるでしょ。千織は、お母さんにとって一番大事な娘だよ。だから、千織も勇気を出して自分の気持ちを伝えなきゃ。
……そんなことわかってるわよ。でも千織は、今日みたいにたまにお母様と会えればそれでいいの。
本当に? さっきはお母さんに怒ってたじゃないか。
千織はハッとした。
お母さんが約束通りついて来てくれなかったから、いじけてるんでしょ? 心の奥底にしまい込んでるだけでさ。
……
三上さん、三上千織さん、どうぞー。お待たせしました。検診を始めましょう。
名前が呼ばれて助かったと思ったのか、千織はインデックスを私に押しつけ、逃げるように検診に向かった。診察室に入る直前、彼女は何か思いついたように振り返り、猛烈な勢いで怒鳴った。
……だ、誰が勝手に千織の気持ちを探っていいって言ったの? {var:player_nickname}のバカバカバーカ!
涙目と赤い耳のせいで、全く迫力はなかったけど。
私はため息をついた。押し付けられたインデックスは、ご主人様と同じく偉そうな笑みを浮かべている。
ねえ、君。君ってすごい奴だよね。相当苦労してるんじゃない?
その後、千織の検診は何事もなく終了した。
(ショートメール)虫歯を一本治療したくらいで、他はすべて異常なしでした。ご安心ください。
歯科医院を出て、タクシーに乗り込んだ。そのタイミングで、千織母に報告メールを送った。予想より早い時間だ。私はちょっと思いついたことがあって、千織に話しかけた。
あっ、千織、この時間なら、空港に直行すればお母さんと話せるかもよ。どう?
……いいの、それより近くの麻雀会館に行きましょう。最近全然行ってないし、すごい新顔が出て来たかチェックしなくちゃ!
麻雀会館にはいつでも行けるよ。お母さんともっと一緒にいたくないの? せっかく帰ってきたのに……次はいつ帰ってこられるかわからないんだよ。
いいってば。空港に行ったところで、会って話せるのはせいぜい一、二時間くらいよ。それに、お母様とのことは千織の問題だわ、あんたに勝手に決められる筋合いはないの!
私の提案に、千織はかなり反発している。どうしよう……
わかった、会館に行こう。
激しい反発を受け、私は妥協することにした。
オーラスの最後のツモ番。両隣の雀士は緊張した面持ちで、千織の手を見つめている。
ない、ない、それは絶対あり得ない……
チャッ。
三萬! ハイテイ! きゃははっ、また千織の勝ちね!
あぁぁぁ、悪魔だ、正真正銘の悪魔だ!
高らかな千織の笑い声が響き渡り、新たに二人の罪なき雀士のトラウマが生まれてしまったのだ。
こういう展開にすっかり慣れた私は、ただ首を横に振り、千織が笑顔で楽しく過ごせればそれでいいんだ……と自分に言い聞かせた。
でも……千織、本当に楽しめてるかなぁ?
ヴーッ……
スマホの振動に気付き、画面を見ると千織母からショートメールが届いていた。
会館に向かう道すがら、何度も悩んだ末、歯医者で千織がもめ事を解決したことと、これから一緒に麻雀会館へ遊びに行くことを千織母に伝えていたのだ。
(ショートメール)わかりました、教えてくれてありがとう。おかげで、自分の娘のことをわかってなかったと思い知りました。千織は昔から自立した子のように振舞ってて、そういうところに困らされてた時期もあったの。
(ショートメール)時間を見つけてちゃんと話をしないと。今度帰った時は、もっとゆっくりあなたをおもてなし出来たらいいのだけど。もっとあの子やあなた達のことについて聞きたいから。
どうやら、私の思いは伝わったようだ。少し心が軽くなった。
その後も、千織と麻雀会館で午後を過ごした。
家まで戻ると、広いお屋敷には既に誰もいなかった。いつものように。
千織といえば、一飜市中のツンデレ女子のお手本とも言うべき存在だ。「嫌」と言う時は、決まって別の気持ちを隠している。
こういう重度のツンデレ患者に対処するためには、こちらも手段を選んではいられない……
わかった、じゃあ麻雀しに行きなよ。私、この辺には詳しいんだけど、二回角を左に曲がると会館があるよ。なかなかいい所で雀士も強い。それじゃ、行ってらっしゃい。
……
突然私が引き下がったことで、狙い通り、千織は警戒し出した。
どういうつもり?
どうって、ただ、麻雀しに行く千織を見送ったら、一人で空港に行こうかなって思ってるだけだけど。千織のお母さん、私と千織の話をもっと聞きたがってたし、きっと私が空港まで見送りに来るのを楽しみにしてると思うんだ。
!
言っとくけど、あくまで行かないって言ったのは千織であって、私はちゃんと誘ったからね。このこと、お母さんにうっかり言っちゃわないようにしないとな~……うわっ! そこは殴っちゃダメだって!
質量を感じるほどの怨念が千織の体から発せられた。タクシーの運転手が、バックミラー越しに興味深そうに私達を見た。
お嬢さん、一旦落ち着きましょう。飛行機はいつ出発ですか?
いいの、ゆっくり運転して。遅ければ遅いほどいい、なんなら永遠に着かなくていいわ。
ははは……冗談がお上手で。
運転手は一息つくと、一気にアクセルを踏んだ。どうやら本気を出したようで、猛スピードで飛ばしている。
私は、揺れと遠心力に抵抗しながら千織母にショートメールを送った。
数分後に返信があった。内容を読み、ホッと息をつく。
それから、隣でムキになってオンライン麻雀をしている千織を見た。よし、何もかも計画通りだ。
う~……
う~……
タクシーの運転手は意気揚々と土ぼこりを上げながら去っていき、残された私達は、車酔いで回る視界が落ち着くまで空港の柱にしがみ付かざるを得なかった。
油断した。私はショートメール、千織は麻雀、それぞれの目的でスマホの画面を見続けていたせいで、揃って車酔いしてしまったのだ。
ほ、ほんとに使えないわね。千織は麻雀してたせいとして、なんであんたまで酔ってんのよ。
私は……
あなたのお母さんとこっそりやり取りしてました、なんて言えない。
大したことじゃないよ。とりあえずお母さんに連絡して、どこにいるか聞いてみよう。
はぁ? まだお母様に連絡してないの? もう空港に着いてるのに!
それは……あれ、お母さんに会いたくないんだよね? どうしてそんな細かいことが気になるのかな~?
ち、違うわ。けど来ちゃったからには……あーっもう、早くしなさいよ! すぐにお母様に電話しなさい!
はいはい。
十五分ほどで、空港のフードコートに千織母がいるのを見つけた。
よかった、飛行機が一時間遅れて、どうやって時間を潰すか考えてたとこだったのよ。二人が来てくれるなんて思わなかったわ。
千織、何も言わなかったわよね。サプライズしようと思ってくれたの?
ま、間に合うか分からなかったからよ。お母様に余計な負担をかけたくなかったの。
そんなことないわよ、見送りに来てくれることが負担になる訳ないじゃない! とっても嬉しいわ!
そ、そう……?
家で会った時よりだいぶテンションが上がっているらしい千織母。千織もその様子に驚いていたものの、すごく安心出来たみたいだ。
何か食べたいものがあったら、向こうで頼んできなさい。私と{var:player_nickname}さんの分も頼むわね。
うん、千織に任せて。
千織はてきぱきとカウンターで料理を注文した。軽い足取りからは、母親に会えて舞い上がっているのが見て取れる。そんな少女の様子を見て、千織母と私はチームプレーを称える視線を交わした。
{var:player_nickname}さん、連絡いただいて助かりました。
いえいえ、当然のことをしたまでですよ。
そう、私はタクシーで空港に向かっている間に、歯医者で千織が子供の嘘を鋭く見抜いた件を千織母に報告していたのだ。
千織母は本当に聡明な人だ。私といる時の千織がどんな風に過ごしているのかもっと知りたい、自分のすべきことに気付けた、空港で待っています、とすぐに返信をくれた。
千織の席にお行儀よく座るインデックスを見つめる母の眼差しは、より柔らかいものへと変わっていた。
私も主人も、仕事柄なかなかあの子の傍にいられなくてね。空いてしまう時間をこういうプレゼントで埋め合わせるしかなかったの。千織は昔からすごくしっかりしてたから、私達は驚きつつも誇らしく思ってたわ。
私達もね、千織にもっと一緒にいる時間を増やそうかって言ったことがあるのよ。でも、千織はいつもしなくていいと言って、私達に仕事をさせてくれたわ。そうこうしているうちに璃雨ちゃんとも仲良くなって、いつの間にか、本当に気ままな一人暮らしに慣れたんだろうと思っちゃったのよ。
それが全部、あの子の強がりだったなんて……外の人から娘の本当の気持ちを教えてもらうなんて、母親として本当に恥ずかしいわ。
そうだったんですか。どうか自分を責めないでください。お母さんも知ってると思いますけど、千織は本心を隠す時はすごく強情になりますし。
慰めてくれてありがとう。名ばかりの「母親」ではやはりいけませんね。これからは私も、あなたみたいにあの子にとって信頼出来る友人にならなくては。
あはは、いいですね。きっと千織も喜びますよ。
とはいえ、これまでずっと娘とのコミュニケーションを後回しにしてきたのだから、なかなかすぐには変われないよね……。
フードコートで、私たち三人は黙々とハンバーガーとポテトを頬張っていた。
注文を済ませた千織が戻ってくると、千織母は話題を探していたが、すぐに何を話せばいいかわからなくなってしまったらしい。気まずい空気を打ち破るべく、私はある提案をした。
あの、これから三人で麻雀をしませんか?
三人麻雀……?
このバカ! ノンデリ!
いやいや、麻雀面白いじゃん。千織も楽しく遊んでるよね?
黙りなさい!
……ええ、やりましょう。
お、お母様?
流行りのおもちゃやゲームには疎いけど、麻雀なら、私が小さい頃から人気だったし、今でもルールはわかるわ。でも、どうやって? ここには牌も卓もないわ。
千織母の言葉で我に返ったらしく、千織は私をきっと睨んだ。
千織がゲームをインストールしてあげる。スマホで遊べるんだよ。
あぁ、なるほどね。
初めこそ少しおぼつかなかったが、操作に慣れてくると、千織母は本来の強さを見せるようになってきた。
ペーするね!
ペーするね!
私は、一度に二人の千織と戦っている錯覚に襲われた。
ツモ!
今回の三人麻雀は、千織の勝利で終わった。千織母は、余韻冷めやらぬ様子でスマホを置いた。
ふふ、面白かった。千織は子どもの頃の私よりずっと強いわね。
お母様、千織はそこらの大人より強いのよ!
あら、そうなの? それなら私はもっと練習しなくてはね。大人の意地ってものを見せてあげるわよ。
えっ? これからも麻雀してくれるの?
えぇ、このオンライン麻雀、面白いもの。一局あたりの時間もそこまで長くないし。お父さんにもダウンロードしてもらいましょうよ、そうすれば別々のところにいても一緒に遊べるし、何気ないおしゃべりも出来るでしょう。どうかしら……?
千織母はおずおずと手を伸ばし、千織の顔を撫でた。
お母さんとお父さんも、千織の、……お友達になりたいの。いいかしら?
……うんっ!
千織は、心からの笑みを見せ……
その笑顔に、私と千織母もつられて笑った。
そのタイミングで、優しく礼儀正しい雰囲気の女性の声で、まもなく千織母の乗る便が搭乗手続きに入るとアナウンスが流れてきた。
千織母を乗せた飛行機が離陸した。私と千織は、飛行機が雲の上へと飛び去って行くのを見送った。
千織に話しかけてみた。
どう? 私と一緒に空港に来てみたら、会館に行くよりずっと面白いことがあったでしょ?
千織は私を睨んだ。
いい気にならないでよね。お母様がとびきり素敵だったおかげだから。
そう言うと、千織はつま先立ちになって、飛行機が飛んでいった方に向かって力いっぱい手を振った。
……大丈夫、きっとお母さんはすぐ帰ってくるよ。
千織は別に平気よ。
それは強がり?
違うわよ。
つらいことなんて何もない。千織のお父様とお母様は優秀だから、いつも忙しいの。千織もいつか、お父様とお母様みたいなすごい大人になってみせる。
そして世界中を飛び回って、困ってる人をたくさん助けるの。その時には、千織もお父様達みたいに忙しくしてるはずよ。
虫歯の治療を終えたばかりでまだ違和感があるのか、彼女は話しながら口をモゴモゴさせていた。少しおかしな感じが、かえって可愛らしい。
ふふん……そうなったら、千織と遊びたくなった時は、ずーーっと先の日に約束を取り付けないといけなくなるからね、わかった?
このお嬢様、私といる時はいよいよ猫を被らなくなってきてるな。これって、もしかしたら喜ぶべきことなのかも。
わかった、めっっっっちゃくちゃ前もって約束を取り付ける。ところで、千織は将来どんな大人になりたいの? お母さんみたいなお医者さん?
そうね……お医者さんは、お母さんみたいに毎日白衣を着なきゃなのよね、それは嫌だわ。
あ、じゃあお父さんみたいに、物理学を研究するとか?
それだと髪の毛がなくなっちゃう! 失うものがあまりにも大きすぎるわ!
あははっ。
うーん……うーん……何をしようかなあ……
私は、懸命に考える彼女の頭を撫でた。
焦らなくていいんだよ。少しずつ成長していけば、いつか目標を見つけられるよ。でさ、その前に一つ約束してくれないかな?
フン、また身の丈に合わないヘンテコなお願いをしてくるつもり? 言っとくけど、あんたを守ってくれるお母様はもうここにはいないのよ。
身の丈に合ってるかはわからないけど、少なくとも冗談じゃないよ。
へ……?
千織が大人になって、もっと広い世界に行くまで、もう少し私と一緒にいてくれる?
夜風が優しく吹き抜けていき、少女の長い金髪を撫でた。千織は目をぱちくりさせたかと思うと、不意に顔を背けた。上がった口角、私じゃなきゃ見逃してたね。
フン! よくそんなお願いが出来るわね!
でも……でも……お母様もそこそこあんたを気に入ってるみたいだし、お母様を悲しませないために、一日くらいはそのお願いを聞いてあげる。
一日?
当然よ! こんなお願い、簡単に受けられるわけないでしょ。言っとくけど、そこから先はあんたの行動次第だから。もしイマイチなことがあったら、いつでもあんたを切るからね、フン!
はは、わかったよ。一日ね、一日。
それじゃ、とりあえず家まで送りなさい。
はいはい、お嬢様の仰せのままに。