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三上千織 — 三上千織
三上千織 — 契約
三上千織 — クリスマスフェス
三上千織 — ビーチパーティ
三上千織 — すいーとなてぃーたいむ
三上千織 — ダークナイトレイド!
三上千織 — 華衣鵲瑞

三上千織

裕福な家庭に生まれたお嬢様。父親は大学の教授で、母親は外科医師。両親は留守がちなため、いつもはメイドが彼女の面倒を見ている。誕生日プレゼントに両親からもらったクマのリュックはどんな時でも手元に置いて手放したことがない。テレビショッピングで麻雀のことを知ってハマった。「他人の苦痛の上に成り立つような楽しさがあって、麻雀って面白いよね」

Profile

Stature
143cm
Birth
5月23日
Age
14
Blood Type
B
CV
井口裕香
Hobby
クマ

Skins

三上千織の初期衣装

三上千織と契約を結んだ時に入手できる着せ替え衣装

「クリスマスフェス」にて購入できる限定の着せ替え衣装

「夏祭り・のんびりサマーデイ」にて購入できる限定の着せ替え衣装

「カフェ日和」にて購入できるウェイトレステーマの限定着せ替え衣装

「謎ガチャVer.ハロウィン」にて購入できるハロウィンテーマの着せ替え衣装

「春節廟会」にて購入できる、旧正月テーマの着せ替え衣装

Emotes

三上千織 emote 0 三上千織 emote 1 三上千織 emote 2 三上千織 emote 3 三上千織 emote 4 三上千織 emote 5 三上千織 emote 6 三上千織 emote 7 三上千織 emote 8 三上千織 emote 10 三上千織 emote 11 三上千織 emote 12 三上千織 emote 888 三上千織 emote 999 三上千織 emote 994 三上千織 emote 986 三上千織 emote 957 三上千織 emote 943
  • プレゼント・普通

    なになに、くれるの~?ありがとう!

  • プレゼント・好み

    なかなかいいセンスしてるじゃない、でーも、この程度で千織と仲良くなれるなんて、思わないでよね?

  • 絆レベルアップ5

    千織にこんな素敵な服をプレゼントするなんて、ずいぶんと生意気ね!ま...千織は大人だから、細かいことには目をつぶってもらってあげるけどさっ。

  • 絆レベルアップ1

    うふふ、お馬鹿さんって恐れ知らずよね。千織にバクチ勝負だなんて……はぁ!?怖いだなんて、ありえないわ!どんな勝負だって、千織は受けて立つわよ!後悔しても遅いんだからね!フフン……ところで、バクチってなぁに?

  • 絆レベルアップ2

    あんたさぁ、麻雀がヘッポコだーって言われてるでしょ?...ま、救いようのないバカだから、そう言われてて当然なんだけどさ...ちょーっとだけ哀れよね。...仕方ない、この千織さまがあんたのこと特訓してあげるわ!

  • 絆レベルアップ3

    毎日千織さまのご機嫌を取ろうとするの...はっきり言ってウザいんだけど!んまあ...仕方なぁ~く受け取ってあげるけどさ...

  • 絆レベルアップ4

    ふん...だいぶ上達したみたいじゃない?ま、この千織さまとずっと一緒にいるんだから当然なんだけどね。でも、まだまだ私の足下にも及ばないんだから、もっともっと頑張りなさいよね?

  • 隐藏语音 - 新年

    明けましておめでとう!フフン、意外だったでしょ?びっくりしたでしょ?もっと飛び跳ねるぐらい喜んだっていいのよ?千織さまからお祝いしてもらえるなんて、この上ない光栄なんだからね!お祝いしてあげたんだから、新しい一年も熱い心と忠誠心を胸に、きちんと千織さまにご奉仕するのよ。うふふ!

  • 隐藏语音 - 情人节

    チョコをあげるわ。……は?あんたその顔、何か誤解してなぁい?皆にあげてるだけで、あんただけ特別なわけじゃないんだから。だ、だけどね!あんたはヘンタイだし、皆に嫌な思いをさせることになっても困るから、あんたには皆のとは違うチョコを用意してあげたわ。だから……ちゃ、ちゃんと感謝して受け取りなさいよね!そうしないと千織の苦労が水の泡になっちゃうでしょ!

  • メイン1

    こ・の・へ・ん・が...アンパイだと思わなぁい?ふふっ~単純なやつだね

  • メイン2

    なによ、ジロジロ見て、エッチなことでも考えてるの??

  • メイン3

    バカ!変態!アホー!!...え、怒らないの?変な人ね。

  • メイン4

    たとえ千織より麻雀が上手くっても、かわいさでは千織のほうが上だもん、もし千織よりかわいくても...、って、そんな人いるわけないし!

  • メイン5

    ねぇねぇ見て見て!この服とこの服、どっちの方が似合うと思う?

  • メイン6

    あんた、そんなに嫌なやつじゃなさそうね。ま、千織さまは優しいから、一回くらいは、勝たせてあげてもいいかな

  • メイン7

    わぁ~、おしゃれなカフェ♪...あんた、こういう場所に慣れてそうだから、今日は特別に千織をエスコートする役目を与えてあげるわ。さっ、はやく入りましょ♪

  • メイン8

    なに人のプリンをじろじろ見てんのよ!もしかして...食べたいわけ?ふーん、千織の食べかけを食べたいだなんて、変態ね~。...ほら、あーんして。仕方ないから一口だけ分けてあげるわ。

  • ログイン・普通

    え~?なんでまた来たの?

  • ログイン・絆LvMAX

    くるの遅いよ!ふん!ど~せ変なことでもしてたんでしょ!

  • 契約を結ぶ

    み、見ちゃだめ!バクチで勝っても見るのはダメ!バカ!変態!アホー!だ、誰が千織のこの格好を可愛いって評価していいだなんて言った!?千織が可愛いのなんて当たり前でしょ?別にあんたなんかに認めてもらわなくても……なによ?「どうせこの先、千織より可愛い子に出会うことなんてもうないだろうし、今のうちにたくさん見て元は取りたい」って…?…ふん!ち、千織は優しいから、もう少し見せてあげてもいいわ。

  • SP-友人戦部屋に入場する時

    千織が来てあげたわよ!

  • SP-友人戦部屋で準備した時

    さっさと始めよう?

  • 出会い

    ふーん、あんたが新しい雀士なの?...貧相な顔ねぇ、まぁ、せいぜい千織の足を引っ張らないでよね

  • 北抜き

    ぺーするね!

  • チー

    チーしちゃおっと!

  • ダブル立直

    ダブルリーチ!

  • カン

    カーン♪

  • ポン

    それ、ポン!

  • 立直

    リーチ!

  • ロン

    ローン♪

  • ツモ

    ふっふーん、ツモ

  • 白

    ハク

  • 北

    ペー

  • 純全帯幺九

    ジュンちゃん

  • 純正九蓮宝燈

    チューレン9メン待ち

  • 大三元

    ダイサンゲン

  • 大四喜

    大スーシー

  • 地和

    チーホー

  • ダブル立直

    ダブリー

  • 東

    トン

  • ドラ

    ドラ

  • ドラ10

    ドラ10

  • ドラ11

    ドラ11

  • ドラ12

    ドラ12

  • ドラ13以上

    ドラいっぱい

  • ドラ2

    ドラ2

  • ドラ3

    ドラ3

  • ドラ4

    ドラ4

  • ドラ5

    ドラ5

  • ドラ6

    ドラ6

  • ドラ7

    ドラ7

  • ドラ8

    ドラ8

  • ドラ9

    ドラ9

  • ダブル北

    タブペー

  • ダブル東

    ダブトン

  • ダブル南

    ダブナン

  • ダブル西

    タブシャー

  • 断幺九

    タンヤオ

  • 対々和

    トイトイ

  • 二盃口

    リャンペーコー

  • 発

    ハツ

  • 国士無双十三面待ち

    コクシ十三メン待ち

  • 国士無双

    コクシムソウ

  • 海底摸月

    ハイテイ

  • 河底撈魚

    ホウテイ

  • 混老頭

    ホンろーとー

  • 混全帯幺九

    チャンタ

  • 混一色

    ホンイツ

  • 九蓮宝燈

    チューレンポートー

  • 嶺上開花

    リンシャン

  • 立直

    リーチ!

  • 流し満貫

    流しマンガン

  • 緑一色

    リューイーソー

  • 南

    ナン

  • 平和

    ピンフ

  • 槍槓

    チャンカン

  • 七対子

    チートイ

  • 清老頭

    チンロートー

  • 清一色

    チンイツ

  • 三暗刻

    サンアンコー

  • 三槓子

    サンカンツ

  • 三色同刻

    三色ドーコー

  • 三色同順

    三色ドウジュン

  • 四暗刻

    スーアンコウ

  • 四暗刻単騎

    スーアンコウ、タンキ

  • 四槓子

    スーカンツ

  • 天和

    テンホー

  • 西

    シャー

  • 小三元

    ショーサンゲン

  • 小四喜

    小スーシー

  • 一盃口

    イーペーコー

  • 一発

    イッパツ

  • 一気通貫

    イッツー

  • 中

    チュン

  • ツモ

    ツモ

  • 字一色

    ツーイーソー

  • 清算一位

    みんなと麻雀打つのって、楽しいね!

  • 清算一位・高い点数で勝利

    千織に勝てる人なんて、この世に存在しないんだから!

  • 清算一位・ロンで勝利

    あれ?ついロンしちゃった!

  • 倍満

    バイマン

  • 九種九牌

    キュウシュキュウハイ!

  • 数え役満

    数えヤクマン

  • 満貫

    マンガン

  • ノーテン

    ぐぐ...ノーテン

  • 三倍満

    サンバイマン

  • 四風連打

    スーフーレンダね

  • 四槓散了

    スーカン流れね

  • 四家立直

    スーチャリーチね

  • 跳満

    ハネマン

  • 聴牌

    テンパイよ

  • 役満

    ヤクマン

  • ダブル役満

    ダブルヤクマン

  • トリプル役満

    トリプルヤクマン

  • 四倍役満

    四倍ヤクマン

  • 五倍役満

    五倍ヤクマン

  • 六倍役満

    六倍ヤクマン

  • SP - ドラを捨てた時

    チェッ……残念。

  • SP - 倍満/三倍満聴牌

    さすがは千織さまよね!

  • SP - 同じ牌を連続に捨てた時

    むーー!ムカつくぅ!

  • SP - 残り牌が10枚以下の時

    ふっふーん、最後まで全力で!これが千織の作法なんだから

  • 対局開始

    だ~れ~を~ビ~リ~に~し~よ~う~か~な~?

  • SP - 役満聴牌

    ふっふっふ……誰が運を味方にできるか、見てあげようじゃない。

  • 帯幺九

    帯幺九(タイヤオチュウ)

  • 根

    根(ルート)

  • 将対

    将対(ジャントイ)

  • 金勾釣

    金勾釣(キンコウテャオ)

  • 嶺上放銃

    嶺上放銃(リンシャンホウジュウ)

  • 龍七対

    龍七対(ロンチートイ)

  • 清対

    清対(チントイ)

  • 清金勾釣

    清金勾釣(チンキンコウテャオ)

  • 清龍七対

    清龍七対(チンロンチートイ)

  • 清七対

    清七対(チンチートイ)

  • 清十八羅漢

    清十八羅漢(チンジュウハチラカン)

  • 清幺九

    清幺九(チンヤオチュウ)

  • 十八羅漢

    十八羅漢(ジュウハチラカン)

Spot Voices

  • Spot Voice 1

    惊讶

  • Spot Voice 2

    肯定

  • Spot Voice 3

    否定

  • Spot Voice 4

    打招呼-早晨

  • Spot Voice 5

    打招呼-白天

  • Spot Voice 6

    打招呼-夜晚

  • Spot Voice 7

    告别

  • Spot Voice 8

    承接

  • Spot Voice 9

    叹气

  • Spot Voice 10

    高兴

  • Spot Voice 11

    生气

  • Spot Voice 12

    递进

  • Spot Voice 13

    转折

  • Spot Voice 14

    疑惑

ぬいぐるみのお姫様

絆LV1で開放

「ねぇインデックス、おとうさまとおかあさま、きょうかえってくるかなぁ……?」 三上千織はピンク色のクマを抱きかかえ、ベランダに造り付けられているブランコに乗り、足をぶらぶらさせながら星空を見上げた。 「インデックス」とは、今彼女が腕に抱えているクマの名前だ。そのクマは、以前両親が外国から送ってくれた誕生日プレゼントだった。彼女の問いに、インデックスは答えない。いたって普通のぬいぐるみ型手提げバッグなのだから当然である。にも関わらず、インデックスは、大人達によって実現困難な使命を数多く課せられている。例えば、小さな主を一人ぼっちにしないという使命とか。 千織の背後には、ピンク一色のいかにも子どもらしい部屋。部屋の中には、数えきれないほどのぬいぐるみ。ぬいぐるみさえあれば子供は寂しくないだろう、大人達はみなそう思っている。他の子供たちはいつも羨ましそうに千織のことを「ぬいぐるみのお姫様」と呼んでいた。 「ちおりちゃんってすごいね。おうちにぬいぐるみがたくさんあって!」 「わたしもちおりちゃんちみたいに、たっくさんぬいぐるみがほしいな」 「ちおりちゃんのパパとママって、ホントにやさしいよね。こんなにぬいぐるみをかってくれるんだもん」 他の子がそう言いながら千織を取り囲む時、彼女はいつも出来る限りえっへんと胸を張り、他の子達からの羨望の眼差しを享受するのだ。 しかし、大人から向けられる視線は嫌いだった。いくら幼い千織でも、向けられる視線の違いくらいは分かる。彼らにとって「ぬいぐるみのお姫様」という称号は憐みと皮肉の象徴なのだ。 「かわいそうに、ご両親はいったい何を考えているのかしら?」 「本当よね。ぬいぐるみは話し相手にもならないし、このままじゃ性格も暗くなっちゃうんじゃないの?」 「いやいや、よそはよそ、うちはうちってやつでしょ。当のパパママがそれでいいと思ってるんなら、部外者があれこれ言うことじゃないんじゃない」 「あまり一緒に遊ばないように、うちの子に言っておかなきゃ。親が近くで面倒を見てないなんて、どんな性格になるか分かったものじゃないし」 三上千織は近所の人々の会話を思い出し、唇を引き結んでインデックスをぎゅっと抱きしめた。 千織は……平気だもん。

九条璃雨

絆LV2で開放

「まあ、なんてあいらしい方なのでしょう!」 出会いがしらに抱き締め、めちゃくちゃに撫でくり回してきた少女――九条璃雨。母が連れてきた人間ではあるけれども、視野の狭いご近所さん達と大して変わらないように見える。家の中を案内すると、璃雨は凝った内装や調度を褒め讃え、大量のぬいぐるみを目にすると、彼らと同じように驚きと羨望の表情を浮かべた。 どうせこの人も同じだ。近所の子みたいに、すぐに両親から近づくなと言われて引き離されてしまい、二度と自分には会いに来てくれないだろう。 「千織、これからは璃雨ちゃんがお友達になってくれるわ。毎日のことも面倒を見てくれるから、仲良くするのよ」 千織の反発を察したのか、母は彼女の頬を名残惜しそうに繰り返し撫でた。外科医である千織の母は、メスを握ることも多く、他の子の母親に比べて硬い指をしている。指先には薄いタコがあり、頬を撫でられると少し痛いくらいだ。 しかし、千織にとっては何より恋しいスキンシップ。強張っていた心がだんだんと解れていき、気付いた時には、握りしめていた小さな手が母親に導かれ、璃雨の手に重ねられていた。 我に返った千織は慌てて手を引っこめようとしたが、母のものと同じくらい硬い璃雨の手のひらがそれを思いとどまらせた。 千織はまだ幼いが、幼いなりに、医師としての母が重要な人材であろうことはわかっている。母親の手の感触は、子供が最も肌で安心感を感じ取れるものなのだ。 ということは……似た手を持つ璃雨も頼れる人なのではないか……? 「はじめまして、千織様。以後、あなた様の専属メイドとしてお仕えいたします。よろしくお願いしますね!」璃雨はしっかりと千織の手を握り、彼女の戸惑いなどものともせず、はっきりそう告げた。 二人がきちんと挨拶出来たので、千織の母は安心し、また慌ただしく出かけていった。病院には、彼女を待つ患者が大勢いるのだ。 「おかあさまはほんとうにすごいのよ」千織は去り行く母親の背中を目を赤くして見送り、横に立つ璃雨にそう言った。「みんないってたもん。おかあさまは、たくさんのひとをたすけてきた、かみさまみたいなひとなんだって」 「ええ。……それにしても、神様とはどのようなお方なのでしょうね?」 「バカね。みんな、おかあさまのことをかみさまみたいっていってるのよ。かみさまってのは、おかあさまみたいなのにきまってるでしょ!」 「そうですね、千織様!」璃雨はテレビに出てくるメイドの真似をして、スカートのすそを持ち上げて一礼した。しかし、まだ幼い女の子がそんなポーズを取ると、なんだかやけに面白い。 「あはははっ、もうほんとバカなんだから。そんなんじゃ、ちおりのメイドはつとまらないんだからね」 「あら……では、わたくしは不合格ということでしょうか?」 「そうよ、ちおりのメイドになるのなら、ちおりとおなじくらいすごいひとにならなきゃだめなの!」 「すごい人……例えばどのような?」 「ふん! すごいメイドっていうのはね……」千織は、以前見た映画のシーンを思い返した。「まずは、ちゃんとお茶をいれられなくちゃね」 「それなら出来ますよ。少々おまちください」そう言うや否や、璃雨はまるで竜巻のように走っていった。 「もう! なんなの……あんなにあわてて、ちっともゆうがじゃないったら」 しかし、璃雨が入れてくれた紅茶は思いの他美味しかった。千織の大好きなミルクティーにしてくれている。 「こ、これくらいあたりまえよ。これだけじゃ、すごいかどうかきめられないわ! ふん!」 「千織様のお望みとあらば、どんなことでもこなしてみせます!」 「そんなごきげんとり、いってもむだよ。そういうことばはききあきたわ。せんにん……ううん、いちまんにんくらいからきいたもの」 「ごきげん取りだなんて、とんでもございません。わたくしはただ、千織様のことが誰よりも何よりも大好きなだけなのです」 目の前のメイド服姿の少女は、どこまでも真摯な笑顔を見せた。今まで、下心で自分に近づいてきた他の人とはまるで違う。 それに……「何よりも大好き」なんて…… 「ふん! こんなにかわいいちおりさまだもの、す、すきになるのもとーぜんよね! ま、そういうことならしかたないわ。とくべつにちおりのおせわをさせてあげる」 金髪の少女は、目頭を熱くしながらも、強がるように顔をあげた。この千織さまが、会ったばかりのメイドの言葉に、ほんのちょーっとだけでも感動させられるなんて。 でも、あくまでちょっと。このメイドを受け入れたのは、おかあさまに免じてってだけなんだから、友達になんてなるものか。でも、もしも…… もしも、これからもずっとそばにいてくれるのなら、考えてやらないこともないけど。 この出会いがあった時、千織は五歳、璃雨は十歳だった。

麻雀

絆LV3で開放

「一飜市で四象戦の予選が月末に行われると発表されてから、各地の麻雀会館は大勢の人で賑わっています。今回の大会への注目度の高さが伺えますね……」 テレビから、途切れることなく現地の様子を伝えるリポーターの声が流れている。人は皆、なぜこうも集まって騒ぎたがるのか……三上千織にはまるで理解出来ない。そういった人混みを、彼女は常に遠ざけてきた。 しかし、この試合は結構面白そうだ。画面には、これまでの四象戦予選の様子が映し出されている。 千織のために紅茶を淹れつつ、面白そうにテレビを見ている九条璃雨の様子も気になった。 「璃雨、この四象戦っていったい何なの?」 何度か見つめても反応を返さない璃雨に痺れを切らし、千織はついにゲーム機を手放して尋ねた。 「四象戦というのは、麻雀というゲームの大会です」 「それ、楽しいの?」 「そうですね……わたくしも実際に遊んだことはありません」 「じゃあ、どうしてそんなに興味深々なの?」 「それは……」璃雨は千織を見て、真剣な表情を浮かべた。「麻雀は一飜市の伝統的なマインドスポーツで、様々な社交の場でもごく当たり前に口にされる話題だとか。最高のメイドとしては、ぜひとも知識を付けておきたいのです。そうすれば、千織様が恥をかく心配もないかと思いまして」 「あ、そ、そうよね……えっと……ち、千織もそう思ってたとこなの」わずかに声が上擦る千織。「そういうことなら、ニュースを見てるだけじゃ意味ないわよね。璃雨、あんたもその麻雀の大会に出てみなさい」 「へっ?」数秒ほどぽかんとした後、璃雨は力強く頷いた。「分かりました。どれだけやれるかわかりませんが、千織様のお望みとあらばベストを尽くします」 「ふんっ! たかが麻雀じゃない。あんたは、この千織さまのメイドなのよ。絶対優勝するに決まってるわ」 千織は璃雨自身以上に璃雨のことを信頼していた。 「でもそうね……あっ、そういうことなら、千織も一緒にその試合に出てあげる。由緒ある三上家の娘たるもの、メイドだけを戦地に送り出すわけにはいかないでしょ」 「まあ、素晴らしいです! 千織様が直々に出場されるのなら、きっと優勝間違い無しです!」 璃雨もまた、尋常じゃないほど千織を信頼していた。 そんな訳で、お互いへの自信と信頼に満ちた主人とメイドの麻雀道が始まったのだった。 ……結果から言えば、この自信と信頼は全くの大言壮語という訳でもなかったらしい。 大会が始まってすぐ、大会に参加する千織の身の回りの世話をするには身動きが取れた方が良いという理由で、璃雨はみずから試合を棄権した。しかし千織の方は麻雀に対するずば抜けた才能を発揮し、短時間で様々な役を覚えて連勝を収めた。それにより、多くの雀士の注目を集めるようになったのだ。 「璃雨、麻雀ってすごく楽しいね!」 「試合中の相手の表情、見た?」 「他人の苦痛の上に成り立つ喜びを味わわせてくれるゲーム、最高だわ!」 璃雨がこれほどまでに目を輝かせた千織を見るのは初めてのことだった。 「はい、麻雀はとても面白いですね!」 だって、千織様をこんなに楽しませてくれるのですから。 後半は口には出さず、そっと心の中でつぶやいた。

お嬢様の危機

絆LV4で開放

Possible Endings

End1.千織の恩返し
誠実の宝玉 ×1
End2.二人の秘密
コイン ×8000

Scenario Script

Spots 18, Scenes 418, Choices 6, Endings 2

#10001 Spot 1

抜けるような青空をした夏の昼下がり。しかし今、魂天神社の対局室は分厚い雲に覆われているかのように、重苦しい緊張に包まれていた……一姫の「エサやり」に来ていた私は、対局室に入ると、一度深呼吸して、その理由を導き出した。

#10002 Spot 1
player

{character:player}この悪魔でも降臨したかのような重い空気は、最近ここに入り浸っているあの人のせいだろうな。

#10003 Spot 1
三上千織

{character:三上千織}役満!

#10004 Spot 1

声がした方を見ると、思った通り、金髪の少女――三上千織が意気揚々と対局していた。彼女の真っ赤なカチューシャは、まるで「近づくと痛い目見るぞ!」と警告しているかのようだ。

#10005 Spot 1

卓をちらと見ると、点棒の数的に、今終わったばかりの局は千織の一人勝ち、まさしく圧勝だったらしい。

#10006 Spot 1
三上千織

{character:三上千織}ふん! 大口叩いてた割に大したことないわね。この千織様に目に物見せてやるとか言ってたのは誰だったかしらぁ~?

#10007 Spot 1

野次馬が千織への歓声を上げた。一方同卓した雀士はというと、引きつった笑みを浮かべ、悔しそうに立ち上がった。

#10008 Spot 1
雀士A

{character:雀士A}オイ! 俺たちゃガキ相手だってんで、わざと負けてやったんだからな! じゃないとつまんなくなっちまうだろ!

#10009 Spot 1
雀士B&雀士C

{character:雀士B&雀士C}そうだそうだ!

#10010 Spot 1

それを聞いて、他の二人の雀士も決まりが悪いこの状況を打開出来るぞとばかりに頷く。すると、三上千織の顔が一瞬でくもった。

#10011 Spot 1
三上千織

{character:三上千織}はぁ!? わざとですって? あんたたち「ガラスおじさん」のくせに?

#10012 Spot 1
雀士C

{character:雀士C}ガラス……?

#10013 Spot 1
三上千織

{character:三上千織}そうよ。あんたたちって考えてることも手牌もまるでガラス張り、丸見えなのよね。

#10014 Spot 1
雀士B

{character:雀士B}あ……ハハハ、今のは冗談だ。ったく、真に受けちゃって、嬢ちゃんは~。

#10015 Spot 1
三上千織

{character:三上千織}お互い様でしょ? 今のおじさんたちの言い訳、さっきの麻雀よりマジだったものね。

#10016 Spot 1

容赦なく言い返す千織。野次馬の声が次第に大きくなってきた。どうやら三人の雀士の発言に対するブーイングのようだ。彼らはますます小さくなり、顔を赤くしたり青くしたりして、おどおどと俯いてしまった。

#10017 Spot 1
雀士A

{character:雀士A}悪かったよ、俺たちの負けだ。

#10018 Spot 1
三上千織

{character:三上千織}謝るくらいなら、もっと練習して来ることね。実力もないくせに、口ばっかりで全然行動に移さない雀士はもう見飽きたわ。

#10019 Spot 1

ブーイングが止まない中、三人の雀士は顔を真っ赤にして足早に去っていった。一部始終を見ていた私は――

#10020 Spot 1
こんな傲慢な態度で、いつか手痛い返り討ちに遭わないといいけど。 → Spot 2
腕をまた上げたね。さすがは天才少女こと千織。 → Spot 7
#10021 Spot 2
player

{character:player}こんな不遜な態度で、いつか報復に遭わないといいけど。

#10022 Spot 2

一飜市はいたって平和な所だが、一飜市だからこそ、麻雀の怨みを甘く見てはいけないのだ。

#10023 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}報復しようとでも思っているのですか?

#10024 Spot 2
player

{character:player}九条さん、いつの間に!?

#10025 Spot 2

いつの間にか横に立っていた少女は、千織の専属メイドの九条璃雨さん。主従関係ではあるが、実態としては姉妹のようなものだ。

#10026 Spot 2

九条さんは腕も立つ。お嬢様を不当に扱ったり、何か害を加えようとする者は誰であろうと滅殺する。私も、千織に冗談を言ったときに何度かその鉄拳を喰らったことがある。

#10027 Spot 2

……ちょっと待て。今自分の口から言葉がポロッと……嫌な予感がする。

#10028 Spot 2
player

{character:player}九条さん、さっき言ったことなんですけど、まだ弁解のチャンスはありますでしょうか?

#10029 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}さあ、どうでしょうね……?

#10030 Spot 2

九条璃雨は薄笑いを浮かべながら、私の肩をガシッと掴んだ。

#10031 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}しかし、今はそれより重要なお話があるのです。

#10032 Spot 2

「ううう、今に見てろ。いつか誰かがお前をボコボコにする日が来るんだからなー!」

#10033 Spot 2

九条さんが「相談したいことがある」と言った時、またしても付近の卓からあがった悲壮な叫びが神社一帯に響き渡り、聞く者を恐怖に陥れた。

#10034 Spot 2

また一人、卓についていた雀士が千織に完膚なきまでに負かされ、号泣しながら逃げて行った。全ての元凶である傲慢な大魔王の高笑いが響く中、険しい表情の九条さんを見つめた。

#10035 Spot 2
player

{character:player}ほら、感情が高ぶると思わず過激なことを口走ってしまうものなんですよ。信じて、さっき言ったことはほんの冗談なんだって。報復なんて絶対しませんから!

#10036 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}しっ、もう少しお静かに。わたくしのようなか弱い少女が、あなたに何かするとでも?

#10037 Spot 2
player

{character:player}もしかして、「か弱い」って単語の定義変えました?

#10038 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}ああ、急に強い風が。……何か言いましたか?

#10039 Spot 2
player

{character:player}いや、何も。

#10040 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}なら良いです。では、本題に入りましょうか。わたくしの悩みを聞いてもらえますか?

#10041 Spot 2
player

{character:player}えっ? 私でよければ聞きますけど。

#10042 Spot 2

完全無欠の九条さんが「悩み」なんて言葉を口にするとは珍しい。これはきっとかなりの難題だろう。

#10043 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}……不審者です。それもかなり危険な。

#10044 Spot 2
player

{character:player}え、不審者!? そんなのがいるの?

#10045 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}何ですか? 千織様のように輝いているお方なら、不審者に目をつけられてもおかしくありません!

#10046 Spot 2
player

{character:player}そうじゃなくて……落ち着いてください、あなたなら守れるでしょう?

#10047 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}そうです、千織様の視界に入るゴミ共を一掃するのがメイドとしての存在意義なのですから、当然でしょう。

#10048 Spot 2

長年のテコンドー修行で培った構えを崩さない九条さんを見れば、あの不審者たちがどのように片付けられたのか、容易に想像がついた。

#10049 Spot 2
player

{character:player}わかってますよ。それにしても、その口ぶり……今回はいつもと違うみたいですね。

#10050 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}そうなんです。ちょうど一週間前の夜のことでした。夕食の準備を終えて、千織様をお呼びしようとしたところ、不可解なことがあったのです。

#10051 Spot 2

九条さんは、その日あったことを語り始めた。

#10052 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}千織様、お食事の支度が整いました……千織様?

#10053 Spot 2

驚いたことに、千織の部屋には誰もいなかった。

#10054 Spot 2

他の場所を探しに行こうとすると、突如ベランダから「キイ……」という音が聞こえてきた。よく確認すると、ベランダに続くガラス戸が開いていて、夏の暑い空気が室内まで入ってきていた。

#10055 Spot 2

今の音は、ブランコが揺れた音らしい。

#10056 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}こんな暑い日に、どうしてベランダなんかへ……? 千織様? あら?

#10057 Spot 2

主人の居場所を掴んだと思っていたのだが、ベランダまで出て驚いた。そこに千織の姿はなく、ブランコが揺れているだけだったからだ。空気はよく乾燥していて、風も全くなかった。椅子に触れると、温もりがまだ残っていた。

#10058 Spot 2

ブランコのそばにはクマのぬいぐるみが落ちていて、それを拾い上げた九条さんは顔をしかめた。

#10059 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}やったわ! 大勝利よ! 千織がホームで負けるなんてありえないわ! 璃雨ー!

#10060 Spot 2

そのとき、千織の声が部屋の外から聞こえ、彼女は隣の小さな書斎にいたのだとわかった。

#10061 Spot 2

ハッと我に返った九条さんは、急いでぬいぐるみをブランコに置き直すと、千織の呼びかけに応じるべく部屋を飛び出した。

#10062 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}はい、ここに。

#10063 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}今半荘が終わったとこなの、お腹が空いたわ。今なら一姫より食べられそう。

#10064 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}フフ、かしこまりました。今夜はビーフピザにエビチリ、デザートはマンゴーミルフィーユでございます。足りなければ、パスタもご用意します。

#10065 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}あら、それってもしかして、この前お店で食べたおいしいエビチリ? レシピを覚えたの?

#10066 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}思い出の味の通りになれば良いのですが。

#10067 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}自信もちなさいよ。璃雨の料理の方がおいしいんだから!

#10068 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}千織様がそうおっしゃるなら、店以上の味になっているはずですね!

#10069 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}……大変光栄なことに、あの日のエビチリは千織様が全てペロリと召し上がられました。

#10070 Spot 2
player

{character:player}ゴクッ。おいしかっただろうな……って、今は不審者の話ですよね。

#10071 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}そうでした。とにかく不審者の存在を知ったのは、その時が初めてでした。それからというもの、千織様と出かけるたび、物陰から何者かに見られているかのような感覚が何度かありました。しかし相手は勘が鋭く、いつも追いつく前に逃げられてしまうのです。

#10072 Spot 2
player

{character:player}それは手強そうですね。

#10073 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}最新のメイド養成合宿に参加し、アンチ尾行スキルを磨きましたが、それでも完璧に千織様の安全を保証するレベルには達していなくて。

#10074 Spot 2
player

{character:player}九条さんはよくやってると思いますよ、いつも千織をしっかり守ってるじゃないですか。……状況はわかりました、それで、私は何をすれば?

#10075 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}わたくしと一緒に千織様の警護にあたっていただきたいのです。他者の助力があれば、不審者をよりスムーズに捕まえられるかもしれませんから!

#10076 Spot 2
player

{character:player}それは構いませんけど、何故私に頼もうと思ったんですか?

#10077 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}わたくしが決めたというより、千織様のお気持ちがあなたを選んだ……と言った方が適切でしょう。

#10078 Spot 2
player

{character:player}どういう意味ですか……?

#10079 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}千織様は人を簡単に信用しません。しかし、あなたのことは嫌っているように見えても、有事の際は知らず知らずのうちにあなたを頼っているように感じます。

#10080 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}恐らく千織様ご自身も、いつからそうなったかはわからないと思いますが。

#10081 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}ですから、他の誰かよりあなたをお傍にお付けした方が、千織様は受け入れてくださるのではと判断しました。

#10082 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}とはいえ、ご心配なく。千織様に部外者への依存心を芽生えさせてしまったのは、メイドたるわたくしの落ち度です。必ずこの過ちを正し、千織様をあなたから取り戻してみせます!

#10083 Spot 2

最後の一言に、思わず背筋が寒くなった。

#10084 Spot 2
player

{character:player}アハハ……そこまで深刻に考えなくても、いや冗談抜きで。

#10085 Spot 2
player

{character:player}それはともかく、ストーカーなのか、もっと別の目的があるのか知らないけど、一刻も早く見つけ出した方がいいですよね。

#10086 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}しーっ、お静かに。千織様はまだこのことをご存知ないのですから。

#10087 Spot 2
player

{character:player}そうなんですか?

#10088 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}もし千織様のお耳に入ろうものなら、あまりの恐怖にお食事も喉をお通りにならなくなったり、眠れなくなってしまうに違いありません。それに、わたくしの知る千織様は何としてもご自身で不審者を捕まえようとなさるお方。もしそんなことになればあまりに危険すぎます。

#10089 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}という訳なので、あなたが私達に同行する理由を考えておかねばなりませんね。

#10090 Spot 2
player

{character:player}そうですね……一緒に遊ぶというのは?

#10091 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}一緒に遊ぶ? なんで千織が平民の{var:player_nickname}と遊ばなくちゃいけないのよ?

#10092 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}ふん! 嫌よ、ぜーったい嫌!

#10093 Spot 2
player

{character:player}……

#10094 Spot 2

わかり切っていた。千織の性格なら、こうなるのは当然だ。横で見ていた九条さんが、今にも崩壊しそうなボディーガード計画に助け舟を出した。

#10095 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}千織様は以前、いつか{var:player_nickname}と一緒に遊びたいと仰ってましたよね?

#10096 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}はぁ!? バカ璃雨! ち、千織がそんなこと言うわけないじゃない!

#10097 Spot 2
九条璃雨

{character:九条璃雨}そうでした、私の記憶違いでした。千織様が{var:player_nickname}さんと遊びたがるなんてあり得ませんよね。

#10098 Spot 2

私は九条さんに疑惑の眼差しを向けていた。私達は共闘関係だったはずでは……!?

#10099 Spot 2
仕方ない

{character:player}やれやれ。千織を守るためには、私が一肌脱ぐしかないみたいだな。

#10100 Spot 2
player

{character:player}千織は何で私と遊びたくないの?

#10101 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}嫌なものは嫌なのよ。理由なんてないわ!

#10102 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}というか、{var:player_nickname}って、そんなにこの千織と一緒に遊びたいの? まさか、遊ぶ友達がいないとかぁ~?

#10103 Spot 2
player

{character:player}違うよ。友達の誘いを断ってでも、千織に会いに来たかったんだよ!

#10104 Spot 2
三上千織

{character:三上千織}……ふん、千織のことを簡単に騙せるとでも思ってるのかしら? 友達がいない訳じゃないのなら、何か別の目的があるんでしょ、正直に言いなさいよ!

#10105 Spot 2

どうやら千織に信じてもらうには、もっと周到な口実を考えなければならないらしいな。……そうだ、こうしよう。

#10106 Spot 2
千織のことが好きだから、千織のことをもっと知りたいんだ。 → Spot 3
千織の麻雀は凄いから、千織と手合わせがしたいんだ。 → Spot 13
#10107 Spot 3
player

{character:player}千織のことが好きだから、千織のことをもっと知りたいんだ。私にチャンスをくれないかな?

#10108 Spot 3

そう言うと、千織は目でもわかるほど顔を真っ赤にした。

#10109 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}……す、好き? そんなの、今まで飽きるほど聞いたわ。全然珍しくも何ともないんだから!

#10110 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}……でも、あんたのポンコツ脳じゃこれ以上上手いこと言えるとも思えないし、とりあえず嘘もついてなさそうだし、一緒に来ることを許してあげてもいいわ。でも、あんまり近くに寄らないでよね!

#10111 Spot 3
player

{character:player}うん、オッケー!

#10112 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}行くわよ、ふふふ。

#10113 Spot 3

千織は言い方こそ渋々といった感じだったが、軽くスキップし、鼻歌を口ずさみながら歩き出した。

#10114 Spot 3

思った通り、直球こそ最強の対ツンデレ兵器……! 九条さんが通り過ぎざまに無言で親指を立て、すぐにぐっと拳を握ってみせた。私は九条さんの言わんとすることを理解し、黙ってうなずいた。

#10115 Spot 3

ルンルンの千織に、私の気持ちも軽くなり、すぐに彼女達の後を追った。

#10116 Spot 3

遊ぶのが目的だったが、すでに時刻は夕方に差し掛かっている。午後の時間を対局に費やした私達は、神社から直接千織の家へと向かうことにした。

#10117 Spot 3

移動中は特に変わったこともなく、九条さんの言う不審者とやらも現れなかった。家の近くの公園まで来ると、千織は急に足を止めた。

#10118 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}公園を散歩してくるから、璃雨は先に帰って夕食を作っておいて。食べる量もわからないやつにも出さなきゃいけないんじゃ、時間もかかるでしょ。

#10119 Spot 3
九条璃雨

{character:九条璃雨}あの、千織様? 今日のところは先に戻られたらいかがでしょう? こんな時間に公園に行っては危険ですし。

#10120 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}はぁ? 璃雨ってば何言ってんのよ。公園のどこが危険なの?

#10121 Spot 3
九条璃雨

{character:九条璃雨}そ、その……

#10122 Spot 3
player

{character:player}あの、今日は私がいるので、千織と一緒にいるようにしますよ。

#10123 Spot 3

密かにメールの送信ボタンをタップしつつ二人の会話に割り込んだ。ポケットの振動を感じ取った九条さんがスマホを取り出すと、私はあくまでいつも通りに笑ってみせた。

#10124 Spot 3
player

{character:player}九条さんは、早く帰らないと夕食の時間に間に合わなくなりますよね。

#10125 Spot 3
九条璃雨

{character:九条璃雨}……そうですね。あなたはともかく、千織様を空腹のままお待たせする訳にはいきません。

#10126 Spot 3
九条璃雨

{character:九条璃雨}では、先に帰ります。まもなく夕食の時間ですので、千織様達も早めにお帰り下さいね。

#10127 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}わかってるわよ。璃雨は心配性なんだから。

#10128 Spot 3

私が九条さんに送ったメールの内容は、「千織から片時も離れない、本当に危ない時は真っ先に彼女を連れて戻ってくる」というものだった。

#10129 Spot 3

ここが家からほど近いことも手伝って、九条さんはついに「妥協」した。

#10130 Spot 3

「千織様をお守りしなかったら、責任を取っていただきますからね」返ってきたメールには警告文が記されていた。

#10131 Spot 3
player

{character:player}じゃあ、公園に行こうか! ……なんでそんな目で私を見るの?

#10132 Spot 3

心配そうな様子の九条さんに別れを告げる。隣にいる千織が、「すべてお見通しよ!」という目で私を見ていた。

#10133 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}やっぱりバカと一緒にいるとバカがうつるのかしら、璃雨でさえやられるなんて。そろいもそろって後ろめたそうなカオして、あんた達が何を企んでるかなんて興味ないわ。言いなさい、こそこそと何をやり取りしてるわけ?

#10134 Spot 3

……気づいてたのか!?

#10135 Spot 3
player

{character:player}そ、それは考え過ぎだよ。私は……私はただ、九条さんに千織と二人きりになるチャンスをくれって頼んだだけだよ!

#10136 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}……本当かしら?

#10137 Spot 3
player

{character:player}そうそう!

#10138 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}……フン、そ、そういうこと。行くわよ、楽しい所に連れて行ってあげるわ。

#10139 Spot 3
player

{character:player}よし来た!

#10140 Spot 3

夕暮れの都市型公園に、のんびりと響く蝉の声。雲の向こうからやってきた鳥達が、木陰に羽を休めに来ている。人はまばらで、時折子供達がはしゃぎながら私達の前を通り過ぎ、遠くから戻ってきてと呼ぶ保護者の声が聞こえた。

#10141 Spot 3

千織に案内されて子供たちの遊び場に向かうと、遊んでいる子はおらず、様々な遊具だけが取り残されていた。そう言えば、千織はああいう子供達と同じぐらいの年頃だったよな。わざわざみんなが帰るタイミングを見計らって遊びに来たってこと?

#10142 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}ここよ。

#10143 Spot 3
player

{character:player}?

#10144 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}幼稚な考えね。千織はもうそういう遊びはしないわ。

#10145 Spot 3
player

{character:player}……これもお見通しってわけ?

#10146 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}はぁ、わかりやすいカマかけに引っかかってんじゃないわよ、しかも本当にそんな風に思ってたなんて!!

#10147 Spot 3
player

{character:player}こりゃやられたな。

#10148 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}ふん! 来なさい。

#10149 Spot 3

千織は手招きした。私は好奇心をそそられ、ウキウキと子供用の遊具エリアを横切り、茂みを踏み越え、さらにいくつかの小道を抜け、公園の奥へと向かった。

#10150 Spot 3
三上千織

{character:三上千織}ゴホン……あんた、耳をふさぎなさい。

#10151 Spot 3

この年の割に頭のよく回るお嬢様は一体何をしたいのだろう。言うことを聞いた方がいいのだろうか?

#10152 Spot 3
耳をふさぐ → Spot 4
耳をふさぐふりをする → Spot 5
#10153 Spot 4

私は大人しく耳をふさいだ。すると、千織が向こう側へ何か呼びかけた。そして、茂みが揺れたかと思うと、色とりどりの毛玉がいくつか出て来た。

#10154 Spot 5

虎穴に入らずんば虎子を得ず……私は初めから、千織の有難い助言を聞き入れる気はなかった。千織が背中を向けた瞬間、私はこっそり耳を塞いでいた手を離した。

#10155 Spot 5
三上千織

{character:三上千織}……ニャニャ? ニャーニャー、ニャー。

#10156 Spot 5

夕陽が少女の髪を柔らかな金色に染め上げている。猫の鳴き真似をしてみせる千織の柔らかな声に、私はすっかり魅入られてしまった。

#10157 Spot 5
三上千織

{character:三上千織}千織が来たよ、おいしいものを持ってきたの。ちびちゃんたち、出ておいで。

#10158 Spot 5

千織のこんな声を聞くのは初めてだった。相手が猫じゃなくて自分だったら瞬殺だろうな、などと想像していると、不意に茂みがガサガサと動き、中から、色とりどりの毛玉が複数出てきた。

#10159 Spot 6

子猫達はニャーニャー鳴いて千織にすり寄っているが、初めて見る私には警戒していて、近寄る素振りも見せない。

#10160 Spot 6

千織はバッグから、元々用意していたのであろうキャットフードと猫用おやつを取り出した。袋を開けてみせると、警戒心の薄れた子猫達が私達の足元に群がってきた。すると、猫用おやつの袋がサッと視界に入ってきたので、私は耳をふさいでいた手を離し、袋を受け取った。

#10161 Spot 6
三上千織

{character:三上千織}……一緒にエサをあげるわよ。そうすればあんたにも懐くわ。

#10162 Spot 6
player

{character:player}あはは、ありがとう。

#10163 Spot 6
三上千織

{character:三上千織}あ、あんたのためじゃないんだからね、この子たちに怖い思いをさせながら食べさせる訳にもいかないでしょ。

#10164 Spot 6
player

{character:player}うんうん、そうだよね。千織が言ってた用事って、ここで野良猫たちにエサをあげることだったんだね。九条さんにはこのこと言ってないの?

#10165 Spot 6
三上千織

{character:三上千織}千織は子供じゃないのよ。何でも璃雨にやってもらう必要なんてないんだから!

#10166 Spot 6

なるほど、それもそうだ。九条さんは本当に千織の面倒見が良い。千織にとって大した手間にはならないことであっても、一度彼女の耳に入れば、即刻自分の日課に組み込んで、きっちりこなしてしまうんだろうな。「ご主人様のため、公園の子猫一家の面倒を見る」といった感じで。

#10167 Spot 6
player

{character:player}そうだね、千織は一人でもちゃんと出来るもんね。

#10168 Spot 6
三上千織

{character:三上千織}……当然よっ。

#10169 Spot 6

{character:三上千織}千織はそっぽを向いてしまった。エサをあげるのに集中することにしたようだが、真っ赤になった耳の先だけは隠しきれない彼女の本心を示している。自分の秘密基地に友達を連れて来れたことが嬉しいんだろう。

#10170 Spot 6

しかし、子供が遊ぶような公園でもない、こんな辺鄙な所でよく子猫を見つけたよな。どうやって……? ふと疑問が沸いたが、この温かい雰囲気を壊さないためにも話題に出すのはやめておくことにした。

#10171 Spot 6
三上千織

{character:三上千織}えっ!?

#10172 Spot 6
player

{character:player}ど、どうしたの?

#10173 Spot 6

{character:三上千織}突然千織が上げた声に、私はまたしても自分の思考が読まれたのではと思ってビクッとした。

#10174 Spot 6
三上千織

{character:三上千織}……数が合わない、一匹足りないわ。

#10175 Spot 6
三上千織

{character:三上千織}前に来たときは子猫が五匹いたんだけど、茶トラの子がいないのよ。

#10176 Spot 6
記憶違いかも? → Spot 18
手分けして探す? → Spot 19
#10177 Spot 7
player

{character:player}さすが天才少女千織、進歩めざましいね。

#10178 Spot 7

そう言うと、麻雀卓を離れた千織が私を見た。声の主が私だとわかると、「やっぱりあんたか」と言わんばかりに私の方へと歩いてきた。

#10179 Spot 7
三上千織

{character:三上千織}そんなこと、あんたに言われなくてもわかってるわよ。あいにく今日は時間がないから、次会った時にとことんイジメてあげるわ。行くわよ、璃雨。

#10180 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}はい、千織様。

#10181 Spot 7
player

{character:player}……九条さん? いつの間に?

#10182 Spot 7

いつの間にか横に立っていた少女は、千織の専属メイドの九条璃雨さん。主従関係ではあるが、実態としては姉妹のようなものだ。

#10183 Spot 7

九条さんは腕も立つ。お嬢様を不当に扱ったり、何か害を加えようとする者は誰であろうと滅殺する。私も、千織に冗談を言ったときに何度かその鉄拳を喰らったことがある。

#10184 Spot 7

幸い、アレなことを口走らなかったので命拾いした。

#10185 Spot 7

そのまま、千織と九条さんが神社を出て行くのを見送った。振り向くと、一姫が深く考え込んでいる様子でこちらを見つめていた。

#10186 Spot 7
一姫

{character:一姫}……ニオうにゃ。

#10187 Spot 7
player

{character:player}何が?

#10188 Spot 7
一姫

{character:一姫}璃雨、ご主人に何か言いたげだったのに、結局何も言わなかったにゃ。

#10189 Spot 7
player

{character:player}九条さんが?

#10190 Spot 7
一姫

{character:ikki}きっとご主人のお土産がなんなのか聞こうとしたのにゃ、いい匂いだにゃ~!

#10191 Spot 7
player

{character:player}それ、自分が聞きたいだけでしょ……わかったわかった、後であげるから、みんなの前で嗅がないで……手を出すのはもっとだめ!!!

#10192 Spot 7

猫を飼うのは忍耐だ、とつくづく思う。一姫にエサをやり、一緒に何半荘か打ち、神社を出る頃には日が傾いていた。夕暮れ時の空気は心地よく、今日の対局について復習しながら歩いているうちに、いつの間にか千織の家の近くまで来ていた。

#10193 Spot 7

定石もへったくれもない一姫の直感的な打牌より、千織の対局を通しで見たかったな。より戦略的な打ち方とかそういうものを学べるだろうし。

#10194 Spot 7

などと考えていると、スマホが震えた。なんと九条さんからの着信だった。

#10195 Spot 7
player

{character:player}もしもし、九条さん?

#10196 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}{var:player_nickname}さん、千織様を見かけませんでしたか?

#10197 Spot 7
player

{character:player}一緒に帰ったんじゃなかったんですか?

#10198 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}そうなんですが……その後、近くの公園に遊びに行くと仰って出かけたきり、まだお戻りになっていないのです。私は先ほどまで千織様のお食事の支度にかかりきりだったもので……。

#10199 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}あなたと一緒ではありませんか?

#10200 Spot 7
player

{character:player}残念ですが来てないですね。ただ、三上家の近くの公園ってことなら、今ちょうどその辺りにいますよ。

#10201 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}えっ、そうなんですか? それは良かったです! では、一緒に探していただけませんか? 私もすぐにそちらに向かいます!

#10202 Spot 7
player

{character:player}もちろん協力します。けどちょっと落ち着いてください。先に、いつ千織が家を出たのか確認してもいいですか?

#10203 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}17時31分です。三十分したらお戻りになると言われて、出かけられました。

#10204 Spot 7
player

{character:player}すっごく時間が正確ですね、しかも即答とは……これもプロのメイドの能力なんですか? というか、今がちょうど18時だから、厳密にはまだ三十分経ってないですよね。

#10205 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}私の目の届く範囲にいらっしゃらない上、あと一分きっかりでお帰りになるとも思えませんし、それにスマホをお持ちではないので、本当に心配で心配で……!

#10206 Spot 7
player

{character:player}心配性だなぁ。それに、三十分くらい連絡がつかなくても、理由はいろいろだと思いますよ。一飜市は治安も良いし、事故や失踪でもなさそうですし、もう少し様子を見ては?

#10207 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}ダメです! 何かあってからじゃ遅いんですよ!!!

#10208 Spot 7
player

{character:player}……九条さん、いつもより余計に張り詰めてませんか? どうしたんです?

#10209 Spot 7
九条璃雨

{character:三上千織}……

#10210 Spot 7

沈黙の後、電話越しに深く息を吸う音が聞こえてきた。荒ぶっていた声も、いつもの落ち着きを取り戻したようだ。

#10211 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}あの、失礼しました。最近、千織様の身に危険が迫っているもので、とても緊張しておりまして。

#10212 Spot 7
player

{character:player}なんて?

#10213 Spot 7

すると九条さんは、私がこれまで知り得なかった三上家の事情について話し出した。

#10214 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}ちょうど一週間前の夜のことでした。夕食の準備を終えて、千織様をお呼びしようとしたところ、不可解なことがあったのです……

#10215 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}千織様、お食事の支度が整いました……千織様?

#10216 Spot 7

驚いたことに、千織の部屋には誰もいなかった。

#10217 Spot 7

他の場所を探しに行こうとすると、突如ベランダから「キイ……」という音が聞こえてきた。よく確認すると、ベランダに続くガラス戸が開いていて、夏の暑い空気が室内まで入ってきていた。

#10218 Spot 7

今の音は、ブランコが揺れた音らしい。

#10219 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}こんな暑い日に、どうしてベランダなんかへ……? 千織様? あら?

#10220 Spot 7

主人の居場所を掴んだと思っていたのだが、ベランダまで出て驚いた。そこに千織の姿はなく、ブランコが揺れているだけだったからだ。空気はよく乾燥していて、風も全くなかった。椅子に触れると、温もりがまだ残っていた。

#10221 Spot 7

ブランコのそばにはクマのぬいぐるみが落ちていて、それを拾い上げた九条さんは顔をしかめた。

#10222 Spot 7
三上千織

{character:三上千織}やったわ! 大勝利よ! 千織がホームで負けるなんてありえないわ! 璃雨ー!

#10223 Spot 7

そのとき、千織の声が部屋の外から聞こえ、彼女は隣の小さな書斎にいたのだとわかった。

#10224 Spot 7

ハッと我に返った九条さんは、急いでぬいぐるみをブランコに置き直すと、千織の呼びかけに応じるべく部屋を飛び出した。

#10225 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}はい、ここに。

#10226 Spot 7
三上千織

{character:三上千織}今半荘が終わったとこなの、お腹が空いたわ。今なら一姫より食べられそう。

#10227 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}フフ、かしこまりました。今夜はビーフピザにエビチリ、デザートはマンゴーミルフィーユでございます。足りなければ、パスタもご用意します。

#10228 Spot 7
三上千織

{character:三上千織}あら、それってもしかして、この前お店で食べたおいしいエビチリ? レシピを覚えたの?

#10229 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}思い出の味の通りになれば良いのですが。

#10230 Spot 7
三上千織

{character:三上千織}自信もちなさいよ。璃雨の料理の方がおいしいんだから!

#10231 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}千織様がそうおっしゃるなら、店以上の味になっているはずですね!

#10232 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}不審者の存在を知ったのは、その時が初めてでした。それからというもの、千織様と出かけるたび、物陰から何者かに見られているかのような感覚が何度かありました。

#10233 Spot 7
player

{character:player}千織はこのことを知っているんですか?

#10234 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}いいえ、無闇に怖がらせてもいけませんので。はぁ、ひとえに私の能力不足です。アンチ尾行スキルを磨くための、最新メイド特訓クラスにはとうに申し込み済みです!

#10235 Spot 7
player

{character:player}九条さんは十分よくやっていると思いますよ。大体の状況はわかりました。公園に行くって言ってたんですよね? それなら、そこから探してみます。

#10236 Spot 7
九条璃雨

{character:九条璃雨}ありがとうございます!

#10237 Spot 7

夕飯時なので、公園には人があまりいなかった。広場のステージや、道沿いの麻雀卓、子供の遊び場周辺といった場所を探したが、どこにも千織はいなかった。公園の周辺まで範囲を広げて、捜索を続けることにした。

#10238 Spot 7

三十分もかからないであろう行動範囲に、スマホも持たず向かったのだから、そう遠くには行ってないはずだ。見つからないのはさすがに心配だけど……ん? 何か変だな。

#10239 Spot 7

あたりを一瞥すると、薄気味悪さの原因がわかった。ここには私しかいないはずなのに、誰かに見られているような気がしたのだ。

#10240 Spot 7

私はふと、さっき九条さんから聞いた奇妙な状況について思い出した……まさか、例の不審者だろうか? だとしても、尾行される理由なんてないはずだけど……

#10241 Spot 7

鳥肌がおさまった所で、視線を感じる方へ爆走した。

#10242 Spot 7
player

{character:player}誰だ! 出て来い!

#10243 Spot 7

人影が現れたかと思うと、スタタ……と別の場所へ走っていった。はっきり誰かまではわからなかったが、茂みの奥からはみ出た赤いカチューシャ、やけに見覚えがあるんだよなあ……

#10244 Spot 7
player

{character:player}……千織? そこにいるの?

#10245 Spot 7

相手は固まっていたが、急に手を伸ばして赤いカチューシャの耳を隠した。

#10246 Spot 7
player

{character:player}……

#10247 Spot 7

逆にバレバレだよ!!!!

#10248 Spot 7

人影へじりじりと歩み寄ると、ガサガサという音とともに千織らしき人物が飛び出し、遠くへ走り去ってしまった。

#10249 Spot 7
player

{character:player}……かくれんぼでもしてるの? 出てこないのはどうして? 九条さんから千織を探してくれって頼まれて来たんだよ。

#10250 Spot 7
???

{character:???}……

#10251 Spot 7
???

{character:???}……ニャー。

#10252 Spot 7

無視するに飽き足らず、猫の鳴き真似までしてきた。

#10253 Spot 7

人間性の崩壊か、道徳教育の敗北か。なぜ千織は、猫のふりというコテコテな手法を使ってまで身を隠そうとしているのだろう。私に顔を見せようとすらしないなんて、どう考えても異常だ。

#10254 Spot 7

この異様な状況下において、迂闊な行動は取れない。とりあえず、千織の方から出てきてもらうようにしなければ。

#10255 Spot 7
優しい言葉でなだめる → Spot 15
彼女を挑発する → Spot 8
#10256 Spot 8

私は、挑発することでこの不審者を誘き出すことにした。

#10257 Spot 8
player

{character:player}そういえば、千織の麻雀の腕前ってまだまだだよな~!

#10258 Spot 8
???

{character:???}……

#10259 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}はぁ!? 庶民の分際で。そんなに腕に自信があるなら、今すぐ受けて立つわ!

#10260 Spot 8

茂みから飛び出してきた少女は、いかにも負けん気の強い子といった感じで仁王立ちをしている。よし、やっぱり千織だったな。

#10261 Spot 8
player

{character:player}ははは、やっと出て来たね。

#10262 Spot 8

私の勝利宣言に、千織の目元が悔しそうに光る。

#10263 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}……あああ! 卑怯者、ズル、恥知らず、この大悪党!!!

#10264 Spot 8
player

{character:player}こそこそと私の後をつけておきながら、見つかったら隠れるし、正体がバレたら猫のふりをするなんて、どういうつもり?

#10265 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}何のことかしら? あんたこそ、庶民の分際で千織の周りをウロチョロして、目的も読めないし、千織のことボコボコにしようと企んでるかもと思ったから隠れてただけよ!

#10266 Spot 8
player

{character:player}逆ギレすんな!

#10267 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}あんたこそ良からぬこと企んでるんでしょ!

#10268 Spot 8
player

{character:player}正直に言うんだ!

#10269 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}あんたには関係ないわ!

#10270 Spot 8
player

{character:player}あ~あ、後ろめたい事なんてないと言ってたくせに、もう馬脚をあらわしちゃったかなー?

#10271 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}何よその言い方、それに傲慢な態度! 帰ったら璃雨に全部言いつけてやるんだから。

#10272 Spot 8
player

{character:player}……はぁ、悪かったよ、お嬢様。

#10273 Spot 8

私は両手をあげて降参し、休戦を宣言した。物事にはタイミングが重要だ。挑発は有効だけどやり過ぎてもいけないし、自分にメリットがないことはわざわざしなくてもいい。

#10274 Spot 8

とにかく千織を見つけたんだから、九条さんに心配いらないと連絡するのが先だ。

#10275 Spot 8

九条さんにメッセージを送る。

#10276 Spot 8
九条璃雨

{character:九条璃雨}(ショートメール)見つかったんですか? よかったです。どちらにいらっしゃるのでしょう?

#10277 Spot 8
player

{character:player}(ショートメール)この近くです

#10278 Spot 8
九条璃雨

{character:九条璃雨}(ショートメール)場所を教えてください。そちらの安全度を確認する必要があります。

#10279 Spot 8
player

{character:player}えっと、今いるところは……

#10280 Spot 8

周りを見渡してみるが、目印になりそうな物は見当たらなかった。少なくとも、千織の家の近くであることは間違いないだろうけど……。

#10281 Spot 8
player

{character:player}千織? 千織、……千織~?

#10282 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}あんたみたいな、バカの一つ覚えみたいに同じことしか言わない奴と口なんか利きたくないわ!

#10283 Spot 8
player

{character:player}プクク……あのさ、ここはどこなの? 九条さんが千織の居場所を知りたいって。

#10284 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}……ここ……ここは……千織の家の近くの道よ。

#10285 Spot 8
player

{character:player}え?そんなんでわかるかな…?もっと具体的に教えてくれない?

#10286 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}……家の近くのあんまり広くない道よ!

#10287 Spot 8
player

{character:player}ねえ、やけにならないでよ。そういうことじゃなくて、方角とか、道の名前とかさ……あ、もしかして。

#10288 Spot 8

ばつの悪い顔をした千織を見て、瞬時に理解した。

#10289 Spot 8
player

{character:player}つまり、迷子になったから、こっそり私の後をつけて来たの?

#10290 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}……

#10291 Spot 8
三上千織

{character:三上千織}何バカなことを言ってるのよ! この! 千織様が! 迷うなんてあり得ないわ!!!

#10292 Spot 8

耳をつんざく勢いの声量で否定してみせるが、一気に真っ赤になった顔からしてこれは噓だろう。

#10293 Spot 8

彼女はそんなに離れてないのに道に迷ったことを認めたくないから、自分で助けを求めるより、近くに現れた知りあいの後をつける方を選んだ、というのが実情だろう。私に言えることは――

#10294 Spot 8
さすがは千織様だね。 → Spot 9
さすが私。 → Spot 10
#10295 Spot 9
player

さすがは千織様だね。

#10296 Spot 9
三上千織

{character:三上千織}……{var:player_nickname}、あんたね……

#10297 Spot 9
player

{character:player}待って! 落ち着いて! 状況に応じて臨機応変に切り抜ける千織が凄いって意味だから!

#10298 Spot 9
三上千織

{character:三上千織}……ふん! どうせバカにしてるんでしょ。でも、この千織様はバカなんて相手にしないの! さぁ、それを渡しなさい!

#10299 Spot 10
player

{character:player}さすが私、なかなか冴えてるよなぁ。

#10300 Spot 10
三上千織

{character:三上千織}あんたが? 冴えてる!? 渡しなさいってば!

#10301 Spot 11

千織がプリプリ怒りながら歩いてきたので、これは殴られるなと覚悟を決めた。しかし千織は予想に反して私のスマホを奪った。千織はそのまま何枚かの写真を撮り、九条さんに送信した。

#10302 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}やっぱりバカはバカね。こうした方が効率的ってわからなかったのかしら?

#10303 Spot 11
九条璃雨

{character:九条璃雨}(メッセージ)かしこまりました。

#10304 Spot 11
player

{character:player}……そうだね。

#10305 Spot 11

千織が怒ってスマホを放り投げてきた。近くで見ると、様子がおかしいことに気づいた。髪は少し乱れているし、日頃は綺麗に整えてあるスカートの裾や袖が見るからに汚れている。ずっとあそこにいたとしたら、これほどの汚れや泥はつかないはずだ。

#10306 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}何見てるのよ! あっち向いてなさいよ!

#10307 Spot 11

私の視線に気づいた千織は、困ったように両手を後ろに回した。この少し汚れた姿も、私に姿を見せたがらなかった理由の一つらしい。それにしても、彼女に何があったのだろう。「不審者」と関係があるのだろうか?

#10308 Spot 11
player

{character:player}千織、どこに行ってたか教えてくれる? どうして迷子になったの?

#10309 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}お黙り! 千織は言わないし、千織のことをバカにもさせないんだから!

#10310 Spot 11
player

{character:player}千織をバカにするために聞いてるんじゃなくて、心配だからだよ。千織の無事が一番大切だからこそ、それを確認したかった。だから、たとえ千織を怒らせたとしても、自分から出てきてもらうしかないと思ったんだ。

#10311 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}……本当に口だけは上手いんだから!

#10312 Spot 11

私の真剣な言葉に、千織は口をとがらせた。なんとか怒りはおさまったらしい。

#10313 Spot 11
player

{character:player}話してくれる?

#10314 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}……ふん! あんたのその情けない顔、これ以上言わなかったら、次の麻雀じゃ振り込みマシーンになること必至よね。ただでさえ脆弱な庶民が、そのせいで人生に絶望してしまったら、この千織様の手をさらに煩わせることになるわ。

#10315 Spot 11
player

{character:player}そう、その通りです。だから……話してくれる?

#10316 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}……千織、子猫を助けてたの。

#10317 Spot 11
player

{character:player}子猫?

#10318 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}公園に野良の三毛猫が一匹いるの。すごく警戒心が強くて触らせてもくれないけど、子猫を産んで大変だから、時間があるときにエサをあげに来てた。今日も、いつものようにエサをあげようと思ったら、一匹いなくなってて……それで、母猫に子猫が閉じ込められてる場所まで案内してもらって、助けたってわけ。

#10319 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}それだけよ。

#10320 Spot 11
player

{character:player}え?

#10321 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}わからなかったからもう一回話してなんて言ったら殺すわよ?

#10322 Spot 11
player

{character:player}わかった、わかってるから!

#10323 Spot 11
player

{character:player}あはは、そういうことだったんだ。千織は優しいね。九条さんはこのことを知ってるの?

#10324 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}千織はもう子供じゃないのよ。何でも璃雨にやってもらう必要なんてないわよ!

#10325 Spot 11

なるほど、それもそうだ。九条さんは本当に千織の面倒見が良い。千織にとって大した手間にはならないことであっても、一度彼女の耳に入れば、即刻自分の日課に組み込んで、きっちりこなしてしまうんだろうな。「ご主人様のため、公園の子猫一家の面倒を見る」といった感じで。

#10326 Spot 11
player

{character:player}うんうん、千織はよく頑張ってるね。ところで、助けた子猫はどうしたの?

#10327 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}助けたら、すぐ母猫が連れて行っちゃったわ。

#10328 Spot 11
player

{character:player}あはは、手厳しいね。

#10329 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}猫ってそういうものよ。警戒心が強いの。小動物とは言え、みんながみんな、千織みたいに優しくて可愛いわけじゃないんだから!

#10330 Spot 11
player

{character:player}そうだねぇ、千織の言うとおりだよ。これで九条さんも私も安心出来る……

#10331 Spot 11

私は、今回の千織の迷子事件と、九条さんの言う「不審者」について、私なりの推理を九条さんに報告することにした。

#10332 Spot 11
三上千織

{character:三上千織}さあこれで全部話したわよ、いつまで立たせておくつもりよ! は、や、く、案内しなさい! 千織もインデックスも早くお風呂に入りたいの!

#10333 Spot 11

千織は薄汚れたクマのポーチを胸に抱えながら、ビシバシと私に命令した。

#10334 Spot 11
player

{character:player}はいはい、すぐに!

#10335 Spot 12

無事に千織を連れて家まで戻った。千織がお風呂に行っている間に、私は九条さんに今日の出来事について報告した。

#10336 Spot 12
九条璃雨

{character:九条璃雨}ふんふん……そういうことがあったんですね……とにかく、本日は本当にありがとうございました。

#10337 Spot 12
player

{character:player}いえいえ、大したことじゃありませんから。

#10338 Spot 12
九条璃雨

{character:九条璃雨}そういえば、不審者の件なのですが、新しい手掛かりが残されていましたので、ついて来てください。

#10339 Spot 12
player

{character:player}わかりました。相手の正体にも察しがついてたので、ちょうど確かめたいと思ってたとこだったんです。

#10340 Spot 12

九条さんに案内され、玄関まで来た。彼女が段ボール箱を取り出すと、中には死んだネズミが入っていた。しかも結構大きい。

#10341 Spot 12
九条璃雨

{character:九条璃雨}今回はこれが送られてきたんです。千織様の部屋のベランダのガラス戸の下に置かれていて、千織様の目に入ってはいけないと思い、こちらにしまったんです。全く許し難い行為です!

#10342 Spot 12
player

{character:player}ははーん……九条さん、ベランダを見せてもらえませんか? 不審者を特定する手がかりがあるかもしれないんです。

#10343 Spot 12

九条さんはちょっと迷ってから頷いた。

#10344 Spot 12
player

{character:player}あはは、私の推理は正しかったみたいです。ここを見てください。

#10345 Spot 12

九条さんの立ち合いのもと、千織の部屋のベランダ周辺を注意深く観察した。すると、ガーリーな装飾のブランコに予想していた通りの「証拠」があるのを見つけた。ブランコのチェーンに、三色の繊維のようなもの……すなわち猫の毛がついている。

#10346 Spot 12
九条璃雨

{character:九条璃雨}……猫の毛、ですか?

#10347 Spot 12
player

{character:player}そう。猫は狩りで得た獲物を恩人に与える習性があります。毎日九条さんにも気づかれることなく千織を観察し、物音も立てずにベランダのあんな高いところまで登って、あのぞっとするようなプレゼントまで送れるのは、千織がずっとエサやりをしていた野良の母猫くらいでしょう。

#10348 Spot 12
九条璃雨

{character:九条璃雨}なるほど……。

#10349 Spot 12
player

{character:player}とはいえ、相手はプレゼントのつもりだったとしても、自分にとってはそうは感じられないってこともありますよね。猫からのプレゼントは、恩返しだとしてもちょっと怖いし、引いちゃうし……。九条さんには少し同情します。これからしばらくは、千織へのプレゼントが多少増えるでしょうから。

#10350 Spot 12
九条璃雨

{character:九条璃雨}わかりました、きっちり対処します。ですが、私に同情する余裕があるなら、あなたが次に何をすべきか考えることをお勧めします。

#10351 Spot 12
player

{character:player}何ですかそれ?

#10352 Spot 12
九条璃雨

{character:九条璃雨}千織様から、今日あなたが知ってはいけないことをお知りになったとのことで、今夜は必ずあなたをここでお仕置きするよう言いつけられております。

#10353 Spot 12
player

{character:player}ちょっと、迷子の千織を連れて帰って来てあげたのに、そんな恩を仇で返すようなやり方はあんまりじゃないですか?

#10354 Spot 12
九条璃雨

{character:九条璃雨}それはそれ、これはこれです。お礼として今夜のお夕食をご馳走しますから、その間に許しを請う方法を考えておいてください。

#10355 Spot 12End

こうなったら仕方ない、お嬢様と過ごせる時間をありがたく享受し、寛大なるお許しをいただけるよう、ポジティブに行くしかないよな。

#10356 Spot 13
player

{character:player}それは、千織の麻雀の腕がどんどん上達しているからだよ。千織と手合わせして、切磋琢磨していきたいなって。私にそのチャンスを与えてくれないかな?

#10357 Spot 13

麻雀は千織と私に最も共通している趣味なのだから、これを取っ掛かりにすればいけるはずだ。思った通り、千織は途端に満足げに笑った。

#10358 Spot 13
三上千織

{character:三上千織}ふふっ、何か企んでるようね。千織と対局したい人間は、あんただけじゃないのよ。あんたにその資格があるかどうか、まず一局打って確かめるわよ!

#10359 Spot 13
player

{character:player}望むところだ!

#10360 Spot 13

自分に資格があるか証明するため、私は一姫と九条さんを誘って千織と東風戦を打ったが、今日の運勢は平々凡々で二着となり、千織に負けてしまった。

#10361 Spot 13
三上千織

{character:三上千織}ふーん。大したことないし、前回から全然上達もしてないわね。あんたなんかと打ってもしょうがないわ。今日はここまで、次は大負けしないといいわね。

#10362 Spot 13
player

{character:player}え? 待って、千織はもうしないの?

#10363 Spot 13
三上千織

{character:三上千織}今日千織は他に用があるの。璃雨、行くわよ。

#10364 Spot 13
九条璃雨

{character:九条璃雨}あ、はい。

#10365 Spot 13
九条璃雨

{character:九条璃雨}……私の見込み違いだったようです。千織様にとって、あなたはそれほど重要な存在ではなかったみたいですね、少なくとも麻雀においては。そういうことなので、先ほどの件はなかったことにいたしましょう。

#10366 Spot 13

九条さんは千織を追いかけていき、二人は去っていった。

#10367 Spot 13

千織に近づくには、まず麻雀の腕を上げて、彼女に勝たないといけないみたいだ。こうして、私の護衛任務は始まる前に終わってしまった。

#10368 Spot 15

私はこのお嬢様に甘い言葉をかけてやることにした。彼女が隠れているところに向かって、柔らかい口調で話しかけた。

#10369 Spot 15
player

{character:player}そこに~隠れているのは~、世界一美しく~可愛く~非の打ち所のない完璧な天才~、千織お嬢様に違いな~~い!

#10370 Spot 15
???

{character:???}……

#10371 Spot 15

私の言葉は千織に全く響かず、更に遠ざかってしまった。

#10372 Spot 15

それで、私は努力むなしくとぼとぼと引き返すしかなかった。とはいえ、前には出てこないものの、私が進んだぶんだけ後をついて来ているようだったので、その点は助かった。

#10373 Spot 15

この法則に気付いた私は、思い切って九条さんに報告を入れ、そのまま千織の家の方へ歩くことにした。門の近くまで来ると、九条さんがすでに待っていた。

#10374 Spot 15

九条さんに目で合図すると、シュババという音とともに、人影が猛スピードで目の前を通り過ぎ……

#10375 Spot 15

バン!! と音を立ててドアが閉まった。

#10376 Spot 15
player

{character:player}千織?

#10377 Spot 15
三上千織

{character:三上千織}千織じゃないわ! 人違いよ!

#10378 Spot 15

あの素早い身のこなしに元気そうな声じゃ、特に問題なさそうだな。九条さんと私は顔を見合わせた。

#10379 Spot 15

今日は千織は私には会わないつもりのようで、九条さんに宣告され、モヤモヤしながらその場を後にした。

#10380 Spot 16

次の日、私は魂天神社で場を荒らしている千織と付き添いの九条さんに再び会った。そこで、先日の未解決事件のことを思い出し、九条さんにその後の経過をそっと尋ねた。

#10381 Spot 16
九条璃雨

{character:九条璃雨}あら、まだ覚えていらしたんですか。優しいんですね。

#10382 Spot 16
九条璃雨

{character:九条璃雨}その件については落着しました。しかし、不審者のことは千織様にはまだ内緒にしていただきたいのです、いいですね?

#10383 Spot 16
player

{character:player}はい、わかってます。口は堅い方なので。

#10384 Spot 16
九条璃雨

{character:九条璃雨}なら良いのです。

#10385 Spot 16End

まさか、たった一日で全ての真実を明らかにしてしまうとは……この主人の秘密を堅く守るメイドさん相手じゃ、この件の真相を聞き出すのは到底無理だろう。

#10386 Spot 17
???

{character:???}ニャー。

#10387 Spot 17

その時、また遠くから猫の鳴き声がした。私達が一斉に声の方向を見ると、大人の三毛猫がやって来て、私達の足にすり寄り、ニャーニャー鳴くと歩き出した。振り返り、動かずにいる私達を見上げると、焦ったように鳴き出した。

#10388 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}この子が母猫。今までは近寄るのすら許してくれなかったし、挨拶もしてくれなかったんだけど……。

#10389 Spot 17
player

{character:player}それなら緊急事態なんじゃないかな、追いかけよう。

#10390 Spot 17

猫に連れられて曲がりくねった道を歩いて行くと、公園の外の寂しい道に出た。母猫は干上がった用水路の近くで立ち止まると、ニャーと呼びかけた。すると、弱々しい猫の鳴き声がそれに応えた。

#10391 Spot 17

しゃがんで用水路の中を見てみると、いなくなっていた茶トラの子猫がいる。詳しいことはわからないが、この用水路の先にある柵の後ろで身動きが取れずにいた。人間が近づいてくるのがわかると、一際悲痛な鳴き声をあげる。

#10392 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}怖くない怖くない、助けに来たよ。{var:player_nickname}、インデックスをお願い。

#10393 Spot 17

千織はクマのポーチを私に押し付けると、袖をまくって用水路へと下りていった。

#10394 Spot 17

今は使われていないこの用水路はそこまで深くなく、水も流れていないが、その代わりに蜘蛛の巣と埃でいっぱいだった。千織は顔をしかめたが、その動きには全く躊躇う様子はなく、子猫が挟まっている柵の後ろの石を取り除くために手を伸ばした。一歩出遅れた私は、ただ千織の身に危険が及ばないか緊張しながら見守っていた。

#10395 Spot 17

先導する三毛猫は、私達が我が子を助けようとしているのだと理解しているようだ。不安そうに私の周りをウロウロしていたが、千織が子猫を救出するまでちょっかいを掛けるようなことはしなかった。

#10396 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}よし、これで、大丈夫よ。

#10397 Spot 17

{character:player}私は千織から子猫を慎重に受け取ると、千織を用水路から引き上げた。私達は、子猫を母猫の前にそっと下ろした。

#10398 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}今度は子供から目を離さないようにね!

#10399 Spot 17

しかし猫が人の言葉を理解し、人間に感謝するはずもなく……母猫はこちらを警戒するように睨み、すかさず茶トラの子猫を咥えると、飛ぶように去っていった。

#10400 Spot 17
player

{character:player}……やっぱり、人を警戒するのは猫の習性だよね。

#10401 Spot 17

うんうんと頷きつつ千織を見た。母猫の仕打ちにへこむ様子もなく、軽い足取りで振り向き、家へと歩き出した。

#10402 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}ふふふ、行くわよ! あんたは役立たずだけど気持ちだけはあるわね。うちでご飯食べて行きなさい。

#10403 Spot 17

先ほどのレスキュー活動により、彼女の服の袖やスカートの裾は見てわかるほどに汚れていた。こんなに身だしなみの整っていないお嬢様を見るのは初めてだった。

#10404 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}……

#10405 Spot 17

突然、私の前を歩いていた千織が急に立ち止まり、くるりとターンして私の後ろへサッと回った。さっき戸惑ったような目をした気がしたんだけど、私の見間違いかな?

#10406 Spot 17
player

{character:player}……どうしたの?

#10407 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}あんた、前を歩きなさいよ。

#10408 Spot 17
player

{character:player}え?

#10409 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}いいから!

#10410 Spot 17

訳がわからないが、とりあえず指示に従った。来る時はあの母猫について歩いていたので、今自分がどのあたりの道にいるのかはっきりとはわからなかったが、記憶を頼りに帰り道を見つけることが出来た。道……待てよ。

#10411 Spot 17

ある気付きが頭をよぎった。

#10412 Spot 17
player

{character:player}要するに、千織……

#10413 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}あり得ないわ! 千織が帰り道がわからない訳ないじゃない!

#10414 Spot 17
player

{character:player}ぷっ……あはは、千織も墓穴掘ることがあるんだ。これでおあいこだね。

#10415 Spot 17
三上千織

{character:三上千織}……あああ! 卑怯者、ズル、恥知らず、この大悪党!!

#10416 Spot 17

嬉しかったので、私はそのワード達を褒め言葉に脳内修正した。「天才麻雀少女はちょこっと方向音痴」という情報は、今回のお供で得た予想外の収穫だった。

#10417 Spot 18
三上千織

{character:三上千織}バッカじゃないの! 千織の記憶力があんたレベルに低い訳ないでしょ? 手分けして探すわよ。

#10418 Spot 19
三上千織

{character:三上千織}そうね、そうするしかないわ。

お嬢様のお遊び

絆LV5で開放

Possible Endings

End3.まだ始まったばかり
月光の福袋 ×1
End4.開始即終了
純真の宝玉 ×1
End5.参加資格なし
コイン ×12000

Scenario Script

Spots 21, Scenes 373, Choices 9, Endings 3

#10001 Spot 0

……つまり、ゲームは人生のようなもので、敗北が勝利になることも、勝利が敗北になることもあるってこと。

#10002 Spot 0

私はため息をつき、心許ない気持ちになりながら、すっかり軽くなってしまった財布に触れた。

#10003 Spot 0

ただいつものように、エテルニテでスイーツをつつきながらオンライン麻雀の友人戦を始めたら、思いがけずツイていて連勝した。そこで、友人兼対面の白石奈々に思い切りおだてられて、「次も勝って白石さんと水泳部員に飲み物を奢る」というフラグをまんまと立ててしまったのだ。

#10004 Spot 0

気付いた時には、何もかもが遅かった。

#10005 Spot 0

レジで会計する。届いたデリバリーを手にアッハッハと笑う白石さんの姿がはっきり想像出来た。

#10006 Spot 0

カランコロン……

#10007 Spot 0

うーん、このドアベルの音、やっぱいいよなあ。

#10008 Spot 0
三上千織

……{var:player_nickname}?

#10009 Spot 0

少女の驚いた声に意識が向いた。店に入ってきた二人は、なんと千織と九条さんだったのだ。

#10010 Spot 0
player

やぁ奇遇だね、千織、九条さん。しばらく会館で見かけなかったけど、忙しかったの?

#10011 Spot 0
三上千織

……本当に奇遇よね。璃雨、まずは{var:player_nickname}から試すわよ。

#10012 Spot 0
九条璃雨

かしこまりました、千織様。では{var:player_nickname}さんから試します。

#10013 Spot 0

二人分の視線が私を射抜き、何となく不安になってきた。

#10014 Spot 0
player

……笑い話でもする? ゲームだと、こういう意味深なNPCとの会話があったら、その先にはあっと驚くような展開が待ち受けてるのってあるあるだよね~。もしかして、そういう系の実験とか?

#10015 Spot 0
九条璃雨

{var:player_nickname}さん、質問です。

#10016 Spot 0
player

本当にそういうパターンかい! その問題用紙、いったいどこから……というか、どうしていきなりクイズを!?

#10017 Spot 0
九条璃雨

第一問、千織様の好きなコーヒー豆の品種をお答えください。

#10018 Spot 0

まあそれはいったん置いといて、千織の好きなコーヒー豆の品種か……この問題の答え、どこかで見たような。

#10019 Spot 0
マンデリン → Spot 2
ゲイシャ → Spot 15
#10020 Spot 2
player

その問題の答え、前にCatChatで見たような……確かこの辺に……あ、あった!

#10021 Spot 2
player

そうだ、これだ! この礼奈ちゃんの投稿に千織がコメントつけてたんだよな。答えは……マンデリンだ!

#10022 Spot 2
三上千織

……次からスマホ使うの禁止よ!

#10023 Spot 2
九条璃雨

第二問、千織様の一番好きな動物は?

#10024 Spot 2
子猫 → Spot 16
くまさん → Spot 3
#10025 Spot 3
player

答えは目の前にあるんじゃない? くまさんだよ、持ってるポーチがくまさんだからね!

#10026 Spot 3

三上千織は少し驚いた顔をしたが、九条璃雨は平静を保っている。

#10027 Spot 3
九条璃雨

やはり二択問題では、あなたには簡単すぎたようですね。では……これならいかがでしょう?

#10028 Spot 3
九条璃雨

第三問、千織様のくまさんポーチのお名前は!?

#10029 Spot 3

九条さんがサラサラと紙にペンを走らせ、五つの選択肢を示した。五択か。どうやら本気で私に正解して欲しくないらしい。

#10030 Spot 3
インデックス → Spot 4
クリスティーン → Spot 17
インデカス → Spot 17
インタレスティング → Spot 17
ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン → Spot 18
#10031 Spot 4

しかし、どれだけ目くらましの選択肢を増やしたところで私の正解は揺らがない。このポーチの名前はもちろん……

#10032 Spot 4
player

……インデックスだ!!

#10033 Spot 4

二人の表情を見て、また正解出来たとわかった。

#10034 Spot 4
player

へへっ、千織が毎日のように言ってる名前だよ、間違えたりしないって。 三問正解したんだし、そろそろこんなクイズを出した理由を教えてくれない?

#10035 Spot 4
九条璃雨

次の問題です!

#10036 Spot 4

九条さんは私の申し出を拒み、千織クイズを出題し続けた。

#10037 Spot 4

今日は良い知らせと悪い知らせがある。良いニュースは、今日私は確実にツイているということだ。この後の問題も、ほぼ当てずっぽうに答えたにもかかわらず正解した。悪いニュースは、調子に乗った途端に九条さんと千織に脅迫されて、カフェを退去させられたことだ。店長見習いの礼奈ちゃんが持って来てくれた新入荷のコーヒー、一口でいいから味わいたかったな……

#10038 Spot 4

純白の窓枠の向こうでは、楚々とした佇まいの木々がさらさらと枝を揺らし、磨き上げられた部屋のフローリングには木漏れ日が惜しみなく差し込んでいる。壁一面に設えた立派な書架には様々な書籍が並び、壁には名の知れた著作や絵画が掛けられている。千織の書斎は、一見すると箱入り娘のように見えるこの少女が、実際は可愛いものという枠にとらわれず幅広い分野を学んでいることを示していていて、とても興味深い。

#10039 Spot 4

しかし、九条さんの刺すような視線が、ソファーに座ってきょろきょろ見回す私を制止した。先ほど、千織に「千織は道具を持ってくるから、あんたは璃雨から書斎でこの後の説明を受けておくように」と言われたのだ。

#10040 Spot 4
九条璃雨

メイド特訓クラス修了試験を控えた今でなければ、こんなチャンスがあなたに回ってくることも無かったのですよ。

#10041 Spot 4
player

……チャンス?

#10042 Spot 4
九条璃雨

えぇ、この上なく貴重な、千織様のパートナーになれるチャンスです! 詳しく説明しますね、あれは昨日のこと……

#10043 Spot 4
player

おお、よくある回想の言葉……いだっ!

#10044 Spot 4
九条璃雨

話 を 遮 ら な い で。

#10045 Spot 4

九条さんからの鉄拳ボーナスを食らってしまうのって、決まって私の方が九条さんを怒らせるのが原因なんだよな……。私が頭頂部をさすりながら頷くと、九条さんは話を続けた。

#10046 Spot 4
九条璃雨

新しく追加されたペア対戦用のボードゲームをやってみたいと千織様が仰いましたので、昨日一緒にボードゲームカフェに行って参りました。千織様の知略をもってすれば、この手のボードゲームに勝つなど造作もないかと思われたのですが、その時の対戦相手がそれはもう暑苦しいカップルでして。ゲームの結果は……

#10047 Spot 4
九条璃雨

千織様、私達の……負け、です。

#10048 Spot 4
三上千織

……ちぇっ、あとちょっとでこいつに追いついたのに!

#10049 Spot 4
相手のカップルA

ははは、お嬢ちゃん、そんなに落ち込まないで。これはパートナーとのチームワークが試されるゲームなんだ。特に、相手への理解と信頼が重要なんだよ。

#10050 Spot 4
相手のカップルA

君はまだ中学生くらいだろう? 隣のメイドさんも、うーん、いかにもウブって感じだし……あぁ、二人とも恋したことがないんだろうな。誰かから告白されたような経験もないのに、ここまで出来るんなら十分すごいよ! なぁ、マイハニー?

#10051 Spot 4
相手のカップルB

そうねぇ、ダーリンの言う通りだわ!

#10052 Spot 4
三上千織

ふん! あんまりいい気にならないでよね、たまたま負けただけなんだから。明後日! 明後日よ! 一日練習する時間をくれれば、あんたたちなんかボコボコに出来るんだから!

#10053 Spot 4
相手のカップルB

うふふ、わかったわ。じゃあ楽しみにしてるわね。

#10054 Spot 4
九条璃雨

……ということがあったんです。千織様は明日に再戦する約束を取りつけられたのですが、明日はメイド特訓クラスの試験日で、わたくしは千織様とご一緒出来ないのです。そこで、ボードゲームに臨むパートナーを探しているという訳です。

#10055 Spot 4
player

つまり、さっきのカフェでのクイズはボドゲ仲間探しのためだったんですか? 正直、ああいう問題に正解したいんだったら、千織のことをもっと理解しておけばいいだけですし、『チームワーク』はあんまり関係なさそうですよね?

#10056 Spot 4
九条璃雨

あぁ、あれは運の良さを確かめるのと、千織様の好みを理解し、千織様のご機嫌を良好に保てる方を選出するためのものです。チームワークの方は、千織様がご自分で調教なさると仰っていました。

#10057 Spot 4
player

調……わかった、わかりましたから変な動詞を使わないでくださいよ。

#10058 Spot 4
三上千織

戻ったわ!

#10059 Spot 4

話してる間に、千織が紙製の箱を抱えて書斎へ戻って来た。

#10060 Spot 4
三上千織

ここに来た理由についてはわかったかしら?

#10061 Spot 4
player

うん、いきさつはわかったよ。

#10062 Spot 4

けどなあ……私は内心少し迷っていた。考えがまとまらずモゴモゴしていると、千織が話を進めてしまった。

#10063 Spot 4
三上千織

よし、璃雨、後は千織に任せてあんたは試験の準備をするといいわ。ふさわしいパートナーをきっちり鍛え上げて、昨日の雪辱を果たすんだから!

#10064 Spot 4
九条璃雨

えぇ、私は千織様を信じております! 頑張ってください! ではわたくしは自室に戻りますので、何かありましたらお呼びくださいね。

#10065 Spot 4
九条璃雨

あなたもしっかり頑張ってください。さもないと……

#10066 Spot 4

九条さんが拳を掲げつつ警告した。私がコクコクと頷くと、彼女は名残惜しそうに部屋を後にした。

#10067 Spot 4

書斎には、私と千織の二人きりになった。千織は先ほど持ってきた紙製の箱を開け、中から小冊子を取り出して私に押しつけた。

#10068 Spot 4
三上千織

はい、特訓の前に、まずはそれを読んで。

#10069 Spot 4

箱はボードゲームの箱で、冊子はそのルールブックだった。私は迷っていることを言い出せず、とりあえず先に説明書を細かく読んでみることにした。

#10070 Spot 4

これは「ハートマップ」という二人一組で遊ぶボードゲームで、複雑に道のわかれたマップ上を探索し、先に二人同時にゴールに着いたチームが勝ちとなる。仲間とのチームワークが重要で、前進や後退、進む方向や歩数に至るまで、全て道中にある「カードミッション」の結果で決められる。

#10071 Spot 4

しかし、これらのミッションはプレイヤー同士のやり取りのためにデザインされている。説明書によれば、これは心理学を取り入れたボードゲームで、恋人や親友との絆を試すゲームのようだ。

#10072 Spot 4
player

やっぱりこういうやつか……千織、確かに私達は親友だよ。でも、相手がすっごく熱々なカップルじゃ、やっぱり勝つのは難しいんじゃないかな?

#10073 Spot 4

説明書を読み終え、内心抱いていた懸念を口にしてみたが、意外と千織はあまりその点は心配していないらしい。

#10074 Spot 4
三上千織

別にチームワークがなくても勝てるでしょ?

#10075 Spot 4
player

……お嬢様のご高見を承っても?

#10076 Spot 4
三上千織

一度しか言わないからよく聞きなさい。どんなゲームでも、ルールの本質を理解すれば絶対必勝法が見つかるもんなの! こういう二人で協力するゲームはチームワークが大事なんて言うけど、そんな曖昧なものより気を付けるべきは「行動の一致性」、これだけよ。

#10077 Spot 4
player

行動の一致性?

#10078 Spot 4
三上千織

そう、勝利のカギは、相手をどのくらい理解してるかじゃないわ。思考回路をどのくらい近づけられるかよ!

#10079 Spot 4
player

言いたいことは何となくわかったかも。一飜市の学校に通った人なら誰もが知っている、あの外国語の筆記テストでの選択問題の必勝法……選択肢の語が三つが長くて一つだけ短い場合は短いやつ、三つが短くて一つが長い場合は長いやつを、長さがどれも同じなら全部3を選べってやつ、みたいな……

#10080 Spot 4
三上千織

はぁ? 学校で出るような簡単な問題に、そんなセオリーを必要とする人がいるわけ? その一飜市の学校に通った人って、まさかあんたのこと?

#10081 Spot 4
player

ただのたとえ話だよ……つまり、自分達のルールみたいなものを決めておけば、問題を解く時の思考回路を近いものに出来るってことだよね。

#10082 Spot 4
三上千織

そういう風にも考えられるわね。それにしても、このゲームのルールに合わせて、具体的に決めていくんだから、あんたが言うより事態は複雑になるわね。それじゃ、とりあえず一回遊んでみましょ。このボードゲーム、テーマがたくさんあるの!

#10083 Spot 4
player

んー……

#10084 Spot 4
三上千織

何ボケっとしてんのよ。

#10085 Spot 4
player

ちょっと考えさせて……

#10086 Spot 4

今読んでいるボードゲームのルールブックによると、作者はゲームを通じてお互いへの理解を深めてもらいたかったらしい。けれど、千織のやり方はその目的を完全にすっ飛ばしている。

#10087 Spot 4

うう、何をするかわかると、千織と特訓するかどうか余計に迷ってきた。

#10088 Spot 4
トレーニングを受ける → Spot 12
トレーニングを断る → Spot 5
#10089 Spot 5

もし千織に従い、ルールの穴を突いてこのチームワークが問われるゲームに取り組んだら、元々の意義や楽しさを感じ取れなくなってしまうだろう。結果として勝てたとしても、精々ハリボテの勝者の肩書きが手に入るくらいで、より豊かなゲーム体験を損なうことになるかもしれない。

#10090 Spot 5
player

千織、ごめん。この特訓には付き合えない。

#10091 Spot 5
三上千織

……え?

#10092 Spot 5

私が断るなんて全く予想していなかったのだろう。千織はポカンとして、目をぱちくりさせた。

#10093 Spot 5
三上千織

あ、あんた、よくも千織の要求を拒んだわね。千織のパートナーになれるなんて、滅多にあることじゃないのよ!?

#10094 Spot 5
player

それはそうだと思うけど。さっき説明書を読んだ感じだと、作者はゲームを通じて、プレイヤーにお互いの理解を深めてもらいたいと思ってこのゲームを作ったんだと思うんだ。

#10095 Spot 5
player

あらかじめ策略を練っておくのは違うと思う。面白さが損なわれるだろうし。それより私は、千織と長く続くチームワークを築いていきたい。

#10096 Spot 5

私は、千織に真剣な思いが伝わるように、言葉を選びながら気持ちを伝えた。

#10097 Spot 5

千織は雷にでも打たれたかのように私を見ていたが、ほどなくして、綺麗な目に悔し涙が滲んだ。

#10098 Spot 5
三上千織

何よ、正論言うだけ言って千織と組んで勝つ気はないなんて、やっぱり{var:player_nickname}は大悪党よ、このバカッ、鼻つまみ者! もうあんたと遊んであげないから!

#10099 Spot 5
player

えぇー!?

#10100 Spot 5

千織は怒って後ろを向いてしまった。どんなに弁解しようとしても微動だにしない。

#10101 Spot 5

! ……ピンチ! これは千織との関係性における大ピンチだ!

#10102 Spot 5

……よし、やっぱり猫は毛流れに沿って撫でないと。私は頭を回転させ、現状を打破出来るかもしれないある方法を思いついた。

#10103 Spot 5
player

どうやらお互い引く気はないみたいだね。だったら、まずは私達で勝負するのはどう?

#10104 Spot 5
三上千織

しないわよそんなの!

#10105 Spot 5
player

……怖いのか? 私に負けるのが……

#10106 Spot 5
三上千織

!

#10107 Spot 5
三上千織

それはあんたの方でしょ。……それで、何で勝負するわけ?

#10108 Spot 5

ふぅ、この手が使えて良かった。このお嬢様、やっぱり少しチョロい。

#10109 Spot 5
player

何でもいいよ。一発勝負、負けた方が勝った方の言うことを一つ聞く。どう?

#10110 Spot 5
三上千織

いいわ、勝負よ! どうなっても知らないんだから!

#10111 Spot 5

書斎のテーブルには二種類のボードゲーム――「一飜リッチマン」と「ハヤアガリ」が置かれている。千織が先ほど書斎の棚から持ってきたもので、どちらも一飜市の若者の家には常備されているボードゲームだ。

#10112 Spot 5
三上千織

公平性の担保として、どっちにするかはあんたが決めなさい。どっちが勝っても恨みっこなしよ。

#10113 Spot 5

どちらも誰でも遊べるゲームだけど、系統は少し違うんだよな。千織に勝つため、よく考えて選ばないと。

#10114 Spot 5
反射神経を競うゲーム「ハヤアガリ」 → Spot 6
経営系ゲーム「リッチマン」 → Spot 7
#10115 Spot 6

「ハヤアガリ」のルールはこうだ。参加者は、順番に様々なフルーツのイラストが描かれたカードを出していく。どれか一種類のフルーツの数が五つになった時、最も早くベルを鳴らした人はテーブルの上のカードを総取り出来る。カードを全て奪った人が、その回の勝者となる。

#10116 Spot 6

千織は麻雀では魔王とも言うべき存在だけど、日常生活においては天然気味というか、やや抜けている所をしばしば見せている。反射神経を試す類のゲームなら、私が勝てる可能性も上がるだろう。

#10117 Spot 6
player

「ハヤアガリ」にする!

#10118 Spot 6

思った通り、私の選択を聞いた千織は少し不服そうな顔をしている。

#10119 Spot 6
三上千織

……ちぇっ、どうせ千織をしつこくストーカーして弱点を見つけたんでしょ、そうに決まってるわ。

#10120 Spot 6
player

彼を知り己を知れば百戦あやうからず。手加減はしないよ。

#10121 Spot 6

ゲームを始めると、予想通り、持ち前のおっちょこちょいが災いして、千織は劣勢に追い込まれた。テーブルをガン見して、並べられたフルーツを数えてはいるが、毎回私に先手を取られてしまう。

#10122 Spot 6

チーン!

#10123 Spot 6

私は三度目のベルを鳴らし、テーブルに置かれたカードを意気揚々と奪い去った。千織は何も置かれていないテーブルの上を見つめながら目をぱちぱちとさせ、ようやくフルーツが五つ揃っていたのだと理解し、悔しそうに私を見た。

#10124 Spot 6
三上千織

まだ終わりじゃないわ、もう一回よ!

#10125 Spot 6
player

いやー、悪いね。

#10126 Spot 6

再びゲームを始めた。私達は集中しつつ、順番にカードを出していった。まもなく、同じフルーツが五つ揃ったことに気付き、ベルを鳴らそうとしたのだが……

#10127 Spot 6
三上千織

あっ、見て見て、あれは何かしら!

#10128 Spot 6

突然、千織が驚いて私の背後を指さした。

#10129 Spot 6
player

ん?

#10130 Spot 6

……ごめん、手を伸ばすスピードは私の方が速いし、その程度の引っ掛けはさすがにすぐバレるよ。

#10131 Spot 6
三上千織

ちょ、ちょっと見なさいよ! 本当に何かあるの!

#10132 Spot 6

私の手がベルに近づくにつれ、千織は懸命にオーバーリアクションで私に嘘を信じさせようとした。焦るあまり、目元から小さな真珠がこぼれそうになっている……控えめに言って死ぬほど可愛い。

#10133 Spot 6

まさか、勝利のためにこんな反則手段まで使ってくるとは。まぁいいか、こういう手を使っちゃいけないなんてルールも無いし。

#10134 Spot 6

私は迷った。千織のこの可愛さ全開のパフォーマンス、止めた方がいいのだろうか?

#10135 Spot 6
止めないで、彼女に乗っかろう → Spot 10
止めよう、私の勝利に可愛さは不要だ → Spot 13
#10136 Spot 7

「リッチマン」はクラシックな経営ボードゲームだ。一飜市ではほとんどの人が知っているゲームで、当然私も馴染みがある。

#10137 Spot 7

プレイヤーは、同額の初期資金を持って同じスタート地点から出発し、順番にサイコロを振って出た目の数だけ進む。運と策略で土地を買ったり、買った土地に建物を建てて家賃収入を得られたりする。一人破産した時点でゲームは終了し、最も大きな額を稼いだプレイヤーが勝者となる。

#10138 Spot 7

最近麻雀でもツイてるし、この手の経営ゲームはたっぷり時間を取れるから、じっくり考えながら着実に進めていけば勝てるはず。

#10139 Spot 7
player

「リッチマン」にする!

#10140 Spot 7
三上千織

……ふん、ほんっと愚かな選択をするわよね、あんたって。

#10141 Spot 7

千織は私の予想に反して、自信満々に蔑むような笑みを浮かべた。なんとなく嫌な予感がする。

#10142 Spot 7
player

6、6出ろ……

#10143 Spot 7
三上千織

1よ、1……!

#10144 Spot 7

柔らかな陽が落ちるテーブルの上、精確に作られたプラスチック製のサイコロがボードの上で軽快な音を立て、私と千織をゲームに引き込んだ。私達はサイコロに念を送って望み通りの結果を出させるべく、大人げなくブツブツと呟いた。

#10145 Spot 7

結果私の振ったサイコロはコロコロと転がり……赤い「1」の目で止まった。

#10146 Spot 7
三上千織

やった! 1だわ!

#10147 Spot 7
player

はぁ、仕方ない。一マスだけ進む、と……あれ? おっ、チャンスマスだ! わはは!

#10148 Spot 7
三上千織

……え? ふん! まあいいわ。今日のあんたはちょっとツイてるみたいね。

#10149 Spot 7

千織の歓声が止んだタイミングで、私は逆にニッコリした。私は嬉々として「チャンスカード」を引き、書かれていることを読み上げた。

#10150 Spot 7
player

「魂天神社の麻雀大会でトップになったので、プレイヤーを一人指定して願いを一つ聞いてもらう。指定されたプレイヤーは、拒否する場合5万コインを支払う」

#10151 Spot 7
三上千織

はぁ? なんでそんなチートじみたカードがあるわけ!?

#10152 Spot 7
player

はっはっは、これ一枚引いただけでも、今日私がいかにツイてるかわかるね。千織、5万コイン払うのと、私の願いを叶えるの、どっちにする?

#10153 Spot 7
三上千織

うぅ……もうっ。

#10154 Spot 7

千織は迷いながら自分の資金を見た。結構な大金になっている。5万コインを選べば、資金の蓄えは危うくなる。迷った末、千織は拳を握りしめながら諦めた。

#10155 Spot 7
三上千織

願いを叶える方にするわ。けど行き過ぎたお願いはなしよ。じゃないとすぐに璃雨を呼ぶから!

#10156 Spot 7
player

わかった、ちょっと考えるね……行き過ぎたものはなし、か……

#10157 Spot 7

「メイド召喚」という脅しを考えると、やっぱり千織の親切な忠告を聞き入れて、当たり障りのないお願いにした方がいい……のか?

#10158 Spot 7

いや、それは 絶 対 ナ シ だ! こんなチャンス滅多に無いし、湧き上がるアイデアが押さえられない……どんなお願いにしようか?

#10159 Spot 7
千織にコーヒーを淹れさせる → Spot 8
千織に肩を揉ませる → Spot 9
千織に「ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン」をイメージして歌って踊らせる → Spot 9
千織に猫の鳴きまねをさせる → Spot 9
#10160 Spot 8
player

千織にコーヒーを淹れて欲しいな。

#10161 Spot 8

このお願いを口にすると、千織は案の定不快そうな表情を見せた。

#10162 Spot 8
player

えぇー、これは行き過ぎたお願いではないでしょ。前に礼奈ちゃんのところでお手伝いもしてたしさ。

#10163 Spot 8
三上千織

……ふん、わかったわ。今回だけだからね。

#10164 Spot 8

ふぅ。千織が階下へ下りていったのを見て、私はホッと息をついた。ゲームのルールは有効、ということらしい。

#10165 Spot 8
三上千織

出来たわよ。

#10166 Spot 8

お願いした通り、千織はコーヒーを淹れて持ってきてくれた。綺麗なラテアートに選び抜かれたティーカップ、鼻腔をくすぐる香り……私は身に余る待遇に驚喜せずにはいられなかった。

#10167 Spot 8
player

千織、ありがとう。じゃあ、遠慮なくいただくよ。

#10168 Spot 8

コーヒーを一口飲むと、全く身構えていなかった私の口に、コーヒーにあるまじきスパイシーな味が飛び込んできた。

#10169 Spot 8
player

ブーッ!! ゲホゲホッ……ゲホゲホゲホゲホッ……こんなに辛いコーヒーなんてある!?

#10170 Spot 8
三上千織

へへーんだ。あんたの要求は、千織にコーヒーを淹れて欲しい、これだけ。コーヒーの味には何も言わなかったし、チリパウダーを入れちゃダメってルールも無かったわよね?

#10171 Spot 8

あまりの辛さに声も出せず、枯れるほどの涙を流した。千織は取り乱す私をホクホクと見つめ、挙句の果てにスマホで写真を撮り出した。

#10172 Spot 8

これがルールの穴を突いて巧みに利用する少女……恐ろしすぎる!!!

#10173 Spot 8

千織は蔑むような眼差しで私を見ていたが、やがて首を振り、キッチンへと戻っていった。すると、驚くべきことにコーヒーのおかわりを持ってきた。今度のは氷が浮かんでいる。

#10174 Spot 8
三上千織

あんたってほんと何にも使えないわよね。この後もゲームを続けるんだったら、これ飲んでおかないとでしょ。

#10175 Spot 8

最早私には、このコーヒーが普通のアイスコーヒーなのか確認できる余裕もなく、カップを受け取るとゴクゴクと飲み干した。

#10176 Spot 8

冷たいコーヒーが喉を抜けると、辛みが和らいできた。

#10177 Spot 8
三上千織

ふん! これはちょっとしたお仕置き。今度また調子に乗ってこんな分不相応なお願いをしてみなさい、簡単には許さないんだから。わかった?

#10178 Spot 8

私は首がもげそうなほど頷いた。ありがたすぎる。千織の想いが身にしみる。そう思えるのは、少なくとも二杯目のコーヒーが巧妙に仕組まれた二段構えのトラップではなかったからだ。

#10179 Spot 8

こうして、罰ゲームともご褒美タイムともつかない時間がようやく終わった。私達は、再び書斎へと戻った。

#10180 Spot 8
三上千織

ゲームを続けるわよ。私の本当の実力を見せてあげる。

#10181 Spot 8
player

それはこっちの台詞だよ!

#10182 Spot 8

サイコロを振り上げ、私達はボードの上での熾烈な戦いを再開した。

#10183 Spot 8

ところが、ゲームが進むにつれて、運要素の割合が段々と少なくなっていき、それにつれて資源の割当て、売買取引といった商才を試される要素が増えてきた。なんと、千織の立ち回りによって、私の資産はいつの間にか彼女に搾り取られていた。

#10184 Spot 8

密かに作戦を練り、麻雀会館でよく放っている「魔王のオーラ」を纏いつつある千織を見て、自分は千織のやり込み具合をかなり見くびっていたのだと気づいた。

#10185 Spot 8

ゲームは終盤に突入し、私は千織に勝とうと少しでも多く資産を奪うため策略を巡らせたが、勝利の天秤は次第に傾いていった。最後のサイコロを振ると、またしても千織が資産を配置したマスの上に止まり、わずかにしか残っていないゲームコインと、払えないほどの税金を見て、手を挙げて降参した。

#10186 Spot 8
player

私の負けだよ。千織ほんとすごいよ、私なんかじゃ全然追いつけないくらい。

#10187 Spot 8
三上千織

ふん! バカね。これが千織を見くびった末路よ。

#10188 Spot 8

千織は得意げになって立ち上がり、書斎の本棚まで歩いていくと、軽く本棚を押した。すると、ウィーンと機械式スライドレールの駆動音が響き、見掛け上はごく普通の造り付けの本棚が突然奥へと動き始め、左右に開いた。すると、なんと隠し部屋が現れた!

#10189 Spot 8

呆気にとられて見ていると、部屋の中には目を見張るほど数多くのボードゲームの箱や、大小様々なボードゲーム用アイテムが並んでいる。ボードゲームが好きな人が見たら天国と言うであろうほどのコレクションルームだ!

#10190 Spot 8
三上千織

驚いた? 千織をその辺の一般プレイヤーなんかと一緒にしないで。この千織様に勝ちたければ、千織みたいにたくさんのボードゲームをやり込んでからにするのね! 今のままじゃ、格が違いすぎるもの。

#10191 Spot 8
player

!

#10192 Spot 8

千織は私が思っていたような、軽い思いつきでボードゲームカフェに行く程度の平凡なプレイヤーじゃなくて、プロレベルのボードゲーマーだったのか……。

#10193 Spot 8
player

……あはは! すごいや!

#10194 Spot 8

衝撃の後、ごく自然に尊敬の念が湧き上がってきた。このお嬢様は、いつも思いもよらないことをもたらしてくれる。

#10195 Spot 8
三上千織

……はぁ?

#10196 Spot 8

私の反応はお気に召さなかったらしい。千織は怪訝そうに私を見つめた。

#10197 Spot 8
player

なに?

#10198 Spot 8
三上千織

あんたって本当に変なヤツよね。ゲームでここまでこてんぱんにされたら、普通しんどくなったり、機嫌悪くなったり、怒ったりするもんでしょ? 例えばあの……あいつらみたいに……

#10199 Spot 8

私の脳内に、ある光景が浮かんだ。千織が言いたいのは、「まるであの、会館やボードゲームカフェでよく見る、自分にボコボコにされて泣きながら逃げ去っていく対戦相手のように」ってことだろう。

#10200 Spot 8

私は笑いながら首を振った。

#10201 Spot 8
player

負けたは負けたけど、千織と忘れられないような午後のひと時を過ごせたことは、貴重な体験だったからね。不機嫌になるわけないよ。

#10202 Spot 8

夕陽が書斎を照らす。テーブルの上には、広げたままのボードや道具たち。一つのコマがそよ風に吹かれて倒れ、秩序立っていたボード上の世界に小さな波紋が広がった。

#10203 Spot 8

千織は何か考えている様子で、まつ毛を震わせ、そっぽを向いて何事か呟いた。それから、顔を上げて私を見た。

#10204 Spot 8
三上千織

明日のことはもういいわ。トレーニングも終わりにする。

#10205 Spot 8
player

え? やめちゃうの? どうして?

#10206 Spot 8
三上千織

バカね、午後はずっとこればかりやっちゃったし、これからトレーニングしても間に合わないわよ。明日あのカップルに挑戦した所でまた負けるだけ。それに……

#10207 Spot 8
三上千織

それに、思ったの。千織と{var:player_nickname}って、「何をもって勝利とするか」がこんなに違うでしょ。二人で協力するゲームである以上、千織が勝ったと思っても、それは本当の勝利とは言えないと思うの。

#10208 Spot 8
player

……つまり、千織が私の気持ちを尊重してくれた……ってこと?

#10209 Spot 8
三上千織

ち、違うわよ! パートナーっていう立場から考えてあげただけ!

#10210 Spot 8
player

そっか~。

#10211 Spot 8

私はニコニコと同意した。だって、千織が頬を赤らめて照れてるところを拝めてラッキーだったから。彼女の言い訳が少々苦しいものに聞こえても、当然許すというものだ。

#10212 Spot 8
三上千織

「二人で勝つ」ために、これから本当のチーム練習をすればいいのよ。

#10213 Spot 8
player

はは、つまりゲームで1位を獲るだけでなく、チームワークでも真の満点を勝ち取るってこと? 最初のよりも難しそうな目標だね。

#10214 Spot 8
三上千織

そうよ、だから少しの気の緩みも許されないわ。今日から特訓開始よ!

#10215 Spot 8
player

はーい、じゃあそういうことで。

#10216 Spot 8

こうして、私と千織はこの誓いを立てることになった。そして、千織のボードゲームコレクションを隅々まで眺め、ふと興味が沸いてある質問をした。

#10217 Spot 8
player

そういえば、千織はいつからボードゲームで遊ぶようになったの?

#10218 Spot 8
三上千織

うんと小さい頃からよ。でも、麻雀を打つようになってからは、他のボードゲームはほとんど遊ばなくなったわね。

#10219 Spot 8
player

どうしてボードゲームが好きなの?

#10220 Spot 8
三上千織

ルールを利用して相手を痛めつけられるのよ、面白いに決まってるでしょ? そんなこともわからないの?

#10221 Spot 8
player

え?

#10222 Spot 8
三上千織

まあいいわ、あんたもいつかこの楽しみを理解出来る日が来るでしょ。これからチームワークを築く方法はまだた~くさんあるんだから。

#10223 Spot 9
三上千織

……頭イカレてんの?

#10224 Spot 9

私のお願いに、千織は全く理解出来ないという表情をし、スマホを素早く操作した。光の速さでドアがバン!と音を立てて開き、怒りに燃えた九条さんが突入してきた。

#10225 Spot 9
player

……は? ぎゃっ! もっと手心を……!

#10226 Spot 9

私の「しつけ」を完遂した九条さんは、千織の命令により、再び書斎を去っていった。

#10227 Spot 9
三上千織

もう一度チャンスをあげる、何をお願いするのかよーく考えなさい。

#10228 Spot 9

未ださめやらぬ恐怖に震えながら、私は弱弱しく手を挙げた。

#10229 Spot 10

千織のような尊大なお嬢様が進んで私程度の奴に媚びを売るなんて、よっぽど勝つために必死なんだなあ。こんな時は全力で乗っからないとね!

#10230 Spot 10

心優しい私は千織の演技に合わせ、騙されたフリをして指し示している方を見た。

#10231 Spot 10
player

なになに?

#10232 Spot 10

チーン。思った通り、千織はこの隙に乗じてベルを鳴らした。

#10233 Spot 10
player

えー、引っ掛け~?

#10234 Spot 10
三上千織

うふふ! 嘘も戦術のうちよ!

#10235 Spot 10
player

よーし、今度は集中するぞー!

#10236 Spot 10

そう言ったものの、二度あることは三度あるものだ。その後も、私は千織の騙し討ちを止められなかった。

#10237 Spot 10
三上千織

あ、そうだ。この前の子猫のこと、覚えてる? あの後、璃雨にボランティアに連絡させて、引き取ってもらったんだけど……シロちゃん、クロちゃん、茶トラちゃんがいたわよね。あと二匹はどんな色と柄だったかしら?

#10238 Spot 10
player

え? えーっと……

#10239 Spot 10

チーン。またしても千織に隙を突かれてしまった。

#10240 Spot 10
三上千織

あー、お腹空いた。何か食べたいものはあるかしら? 今日は千織が何でもご馳走してあげるわよ!

#10241 Spot 10
player

何でもいいのか~……ごくっ。

#10242 Spot 10

チーン。また隙を突かれた。

#10243 Spot 10

チーン、チーン、チチチチーン。甘い言葉に猫なで声、バリエーションに富んだキュートなトラップの裏には、ベルを鳴らされっぱなしになるという状況と、じわじわ枚数を減らしていく私のカードという残酷な現実が潜んでいたのだった……

#10244 Spot 10

最後のベルが鳴り、私のカードが全て取られてしまった。完敗だ……。

#10245 Spot 10

恐れていた通りに何も無くなったテーブルの上を眺めながら、にっちもさっちもいかなくなった私は両手を挙げて降参した。

#10246 Spot 10
player

はいはい、私の負け。千織の策略はすごいなぁ。今回のトレーニング、受けるしかないみたいだね。

#10247 Spot 10

ところが、千織は思っていたほど喜ばなかった。それどころか、千織が手に入れたカードの山を私の前へと押しやってくる。

#10248 Spot 10
三上千織

この対決は無効よ。

#10249 Spot 10
player

え?

#10250 Spot 10
三上千織

千織だってバカじゃないもん。今の対決、{var:player_nickname}はずっと、わざとベルを譲ってた。そうでしょ?

#10251 Spot 10

虚を突かれ、私はやや気まずい気分で顔を掻いた。

#10252 Spot 10
player

えーと……全部じゃないよ。大半は千織の可愛さに気を取られたせいだし。

#10253 Spot 10
三上千織

……ふん、口だけは上手いんだから。まあいいわ、明日は来なくていいわよ。トレーニングも中止。

#10254 Spot 10
player

え? どうして?

#10255 Spot 10
三上千織

……バカ。あんたは千織が傷つかないようにって、わざと譲ってくれたんでしょ。だったら、真っ当な心の持ち主たる千織様もあんたの立場に立って考えてあげるのが当然でしょ!

#10256 Spot 10
三上千織

「何をもって勝利とするか」がこんなに違うんじゃ、千織のやり方で勝ってもあんたは嬉しくないでしょ。

#10257 Spot 10
player

うーん……つまり千織は私を思いやってくれているって考えていいの?

#10258 Spot 10
三上千織

……か、勘違いしないでよね! 二人でやるゲームなんだから、二人で勝たなきゃ勝ったうちに入らないでしょってこと! そういう意味だから!

#10259 Spot 10
player

そっか~。

#10260 Spot 10

私はニコニコと同意した。だって、千織が頬を赤らめて照れてるところを拝めてラッキーだったから。彼女の言い訳が少々苦しいものに聞こえても、当然許すというものだ。

#10261 Spot 10
三上千織

だから……二人で勝つために、明日の再戦は一旦中止して、これから真の意味でのチームワークを鍛えるトレーニングをすればいいのよ。

#10262 Spot 10
player

……真の意味でのチームワーク……?

#10263 Spot 10

私がその意味を飲み込めていないのを察して、千織はスッと立ち上がり、本棚の何かを押した。

#10264 Spot 10

次の瞬間、ウィーンという音とともに機械式スライドレールが動き、一見ごく普通の造り付け本棚が左右に開いて向こう側へと押し込まれていった。すると、なんとその先に隠し部屋が現れた。

#10265 Spot 10

呆気にとられて見ていると、部屋の中には目を見張るほど数多くのボードゲームの箱や、大小様々なボードゲーム用アイテムが並んでいる。ボードゲームが好きな人が見たら天国と言うであろうほどのコレクションルームだ!

#10266 Spot 10
三上千織

驚いた? 千織はそんじょそこらのプレイヤーとは違うの。千織と協力プレイをしたければ、まず千織と同じようにたくさんのボードゲームをやり込むことね。それで、早く千織のレベルまで追い付きなさい。

#10267 Spot 10
player

!

#10268 Spot 10

千織は私が思っていたような、軽い思いつきでボードゲームカフェに行く程度の平凡なプレイヤーじゃなくて、プロレベルのボードゲーマーだったのか……。

#10269 Spot 10

このお嬢様は、いつも思いもよらないことをもたらしてくれる。

#10270 Spot 10

こうして、私と千織は、「チームワークを深めるために、色々なボードゲームを一緒にたくさん遊ぶ」という約束をした。

#10271 Spot 10

コレクションルームをじっくり見渡し、ふと気になって千織に尋ねてみた。

#10272 Spot 10
player

そういえば、千織はいつからボードゲームで遊ぶようになったの?

#10273 Spot 10
三上千織

うんと小さい頃からよ。でも、麻雀を打つようになってからは、他のボードゲームはほとんど遊ばなくなったわね。

#10274 Spot 10
player

どうしてボードゲームが好きなの?

#10275 Spot 10
三上千織

ルールを利用して相手を痛めつけられるのよ、面白いに決まってるでしょ? そんなこともわからないの?

#10276 Spot 10
player

え?

#10277 Spot 10
三上千織

まあいいわ、あんたもいつかこの楽しみを理解出来る日が来るでしょ。これからチームワークを築く方法はまだた~くさんあるんだから。

#10278 Spot 11End

……お嬢様の大変愛らしい笑顔を見てると、期待と恐れが同時に沸き上がってきた。

End3.まだ始まったばかり — 月光の福袋 ×1
#10279 Spot 12
player

わかった、千織の勝利のためならこのくらいお安い御用だ! よし来い!

#10280 Spot 12
三上千織

殊勝なことだわ。まずはボードのレイアウトを研究するわよ!

#10281 Spot 12

私と千織は、真面目に明日戦うボードゲームのルールの詳細な研究を始めた。

#10282 Spot 12
相手のカップル

あっちゃー……負けたー。

#10283 Spot 12
player

ありがとうございました。

#10284 Spot 12

私達は約束通りボードゲームカフェに赴き、例のカップルと再戦した。前日のトレーニングが功を奏し、私と千織の「チームワーク」は大幅に向上していた。相手のカップルもチームワークは相当高かったが、私達のほぼ完璧と言っていいチームワークに比べるとやっぱり見劣りするように感じた。

#10285 Spot 12
相手のカップルA

最高の週末の過ごし方と言えば当然家で麻雀だろ! まだ俺のことわかってくれてなかったのか? なんでここに来たんだよ!

#10286 Spot 12
相手のカップルB

バカじゃないの? 今やってるシナリオでは、私達が森の迷宮に閉じ込められた理由がまだ判明してないのよ。そんな時に週末のことなんて考えてられると思う? 当然急いで出口を探すことを選ぶわよね!

#10287 Spot 12
相手のカップルA

あー、そうなったら運命に身を任せるしかないさ。ネットは生きてるって言ってたよな? てことは、まだそこまで危険じゃないってことだよ。ネット麻雀でもすれば、見ず知らずのフレンドがヒントをくれるかもな!

#10288 Spot 12
相手のカップルB

はぁ、あなたの思考回路がここまでぶっ飛んでたなんて、知らなかったわ……。だったらあなたが選んでよ!

#10289 Spot 12

こんな調子で、カップルは噛み合わない選択が続き、担当するキャラクターで先に進めなくなってしまったり、どの選択肢を選ぶかで口論をになってタイムロスをしたりして、何度もゲームの難所をスキップするチャンスを逃した。

#10290 Spot 12

そのまま、私達はあっさりと勝利を収めた。ハートマップの迷宮を先行して脱出し、ゴールへと辿り着いたのだ。

#10291 Spot 12

ようやく勝てたということで、千織はとても嬉しそうだ。興奮もそのままに感想戦をしている千織を横目に、私は喉が渇いたと仰せのお嬢様のために飲み物を買いに行くことにした。

#10292 Spot 12

ドリンクバーの前を曲がると、先ほど私達と試合をしたあのカップルとばったり行き遭った。彼らは私の姿を認めると、ずんずんこちらへ向かってきた。

#10293 Spot 12
相手のカップルA

あなたですね? さっきはありがとうございました。

#10294 Spot 12
player

え?

#10295 Spot 12

負けたのに、お礼?

#10296 Spot 12
相手のカップルA

負けちゃったけど、最高のゲームだったよ! だって、間違えるなら現実よりゲームの中の方がよっぽどマシだからね。そうだろ、ハニー?

#10297 Spot 12
相手のカップルB

えぇ、たまには負けるのもいいわ、ダーリン。

#10298 Spot 12

困惑の色がはっきり顔に出ていたのだろう。二人はより噛み砕いて言わんとするところを説明してくれた。

#10299 Spot 12
相手のカップルA

今回負けたおかげで、俺達も色々と新しいインスピレーションを得られたからさ。

#10300 Spot 12
相手のカップルB

そうそう。あのゲームは真心のやり取りが問われるものでしょう。ハートマップの分岐点、あれって実際に恋人が出来るとよく直面することなのよね~。外からの刺激が無かったら、お互いの間にどれだけすり合わせが必要な所があるかとか、こうも違った見方があったことも、知らないままだったわ。

#10301 Spot 12
player

あはは、なるほど……

#10302 Spot 12

勝利と敗北の相対関係か……彼らの話を聞きながら、昨日千織と言い争いをした時に伝えたことは、ひょっとすると自分でも気付いていなかったような重大な意味を持っていたのかもしれないな、と感じた。

#10303 Spot 12

アツアツの「敗者」に手を振って、冷たい飲み物を二杯持って千織のもとへと向かった。

#10304 Spot 12
三上千織

ふふふ……

#10305 Spot 12

千織は上機嫌でスマホを取り出し、勝利の証であるボードの写真をCatChatにアップしようとしていた。私は先ほどのカップルの話を思い出し、探るように尋ねた。

#10306 Spot 12
player

千織、この「ハートマップ」、好き?

#10307 Spot 12
三上千織

え? 好きかどうか? そうね……可もなく不可もなく、かしら。人気のゲームだっていうから二回遊んだけど、大したことなかったわね。

#10308 Spot 12

やっぱり十四歳の千織には、敗北という名の勝利、勝利という名の敗北とかいうものは少し難しいんだろうな。

#10309 Spot 12

千織は、むしろ私の肩を叩いてくれた。

#10310 Spot 12
三上千織

でも、今回はよくやったと思うわ、{var:player_nickname}。ボードゲームにはまだまだ面白いものがたくさんあるの。次はもっと難しいゲームにするわよ!

#10311 Spot 12
player

うん、大丈夫。

#10312 Spot 13

いや、私の目標はあくまで勝利! 私は心を鬼にして、千織のキュートな誘惑を封じた。

#10313 Spot 13

チーン。私は一切ためらわずにベルを鳴らし、ポカンと口の開いた千織の表情を見て、腰に手を当てて大笑いした。

#10314 Spot 13
player

わはは、フェイントのつもり? そうはいかないよ。

#10315 Spot 13
三上千織

キーッ! あんたねえ!

#10316 Spot 13

恨めしさと恥ずかしさで怒っても、それは無駄なあがきというもの……無慈悲な私はどっしり構えて、無事にゲームに勝利した。

#10317 Spot 13
player

ふふん、私の勝ちだね。約束通り、千織には言うことを聞いてもらおう。

#10318 Spot 13

千織は悔しそうな表情を見せる。

#10319 Spot 13
三上千織

ふん、わかったわ。まさかあんたがここまでやるなんて……でも今回だけよ! 次は負けたりしないんだから! ちょっと時間があれば、このゲームも千織が勝つんだから!

#10320 Spot 13
player

ぷぷ……わかった、楽しみにしてるよ。

#10321 Spot 13

はぁ、明日の復讐計画を諦めて、私に勝つことを新たな目標にしたと? 千織の負けず嫌いは相変わらずだなぁ。まあ何にせよ、今回の目的は果たせた訳だし、それに時間はこれからもたっぷりある。数多くの正論は、今後より良いやり方でゆっくり聞いてもらうとしよう。

#10322 Spot 14End

今日のことは、たちまち何気ない日常の中の一コマとなったらしい。後に私がこのことを話題に出しても、千織の印象にはあまり残っていない様子だった。

End4.開始即終了 — 純真の宝玉 ×1
#10323 Spot 15
player

ゲイシャかな?

#10324 Spot 15
三上千織

はっ、千織の好きなコーヒー豆すら覚えてないなんてね。前はっきり言ったはずよ。

#10325 Spot 15
九条璃雨

おめでとうございます、不正解です。お帰りいただいて結構ですよ。

#10326 Spot 15
player

え? もう終わり?

#10327 Spot 15

突然始まったクイズ大会がいきなり終了してしまい、私はたちまち蚊帳の外に追いやられた。

#10328 Spot 15

次の日、スマホで千織が投稿した最新のCatChatを見た。

#10329 Spot 15

どうやら、彼女と九条さんはあるボードゲームで勝利すべくタッグを組んだらしい。はっきりとは書かれていないが、昨日のことと何か関係がある気がする。

#10330 Spot 16
player

千織が一番好きなのは猫だよね?

#10331 Spot 16

千織は彼女のくまさんのポーチを抱えながら私を見て、失望を露わにした。

#10332 Spot 16
三上千織

確かに猫は可愛いと思うけど、千織が一番好きなのはくまさんよ。そんなこともわからないの?

#10333 Spot 16
九条璃雨

おめでとうございます、不正解です。どうぞお帰りください。

#10334 Spot 16

突如としてクイズ大会が終了し、私は一気に蚊帳の外に追いやられてしまった。

#10335 Spot 16

次の日、スマホで千織が投稿した最新のCatChatを見た。

#10336 Spot 16

どうやら、彼女と九条さんはあるボードゲームで勝利すべくタッグを組んだらしい。はっきりとは書かれていないが、昨日のことと何か関係がある気がする。

#10337 Spot 17

私は思い描いた答えを口にして、期待を込めた眼差しで千織を見た。

#10338 Spot 17
三上千織

バカ、そんな訳ないでしょ! インデックスって単語すら覚えられないなんて、何度も言ってるはずなのに!

#10339 Spot 17
九条璃雨

おめでとうございます、不正解です。どうぞお帰りください。

#10340 Spot 17

突如としてクイズ大会が終了し、私は一気に蚊帳の外に追いやられてしまった。

#10341 Spot 17

次の日、スマホで千織が投稿した最新のCatChatを見た。

#10342 Spot 17

どうやら、彼女と九条さんはあるボードゲームで勝利すべくタッグを組んだらしい。はっきりとは書かれていないが、昨日のことと何か関係がある気がする。

#10343 Spot 18

思わず選択肢を二度見してしまう。こうなってしまうと、正解か不正解ということはもはや重要ではなかった。何故なら、その選択肢をひと息で正確に読めさえすれば、私はたちまちごく一握りの人しか成し得ない栄光を手に出来るのだから。

#10344 Spot 18

深く息を吸い込み……

#10345 Spot 18
player

……ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン!

#10346 Spot 18

よし、噛まずに言えたぞ!

#10347 Spot 18
三上千織

……まさか本当にそれを選ぶ奴がいるなんてね。

#10348 Spot 18
player

正解?

#10349 Spot 18
三上千織

正解かどうかは置いといて、とりあえずあんたにご褒美をあげるわ。

#10350 Spot 18

有無を言わさず九条さんにつまみ出され、たっぷりと「ご褒美」を食らった。

#10351 Spot 18

頭をさすりながら再び元いた席に座ると、千織は微笑みながらこちらを見た。

#10352 Spot 18
三上千織

改めてあんたの答えを教えてもらうわ。

#10353 Spot 18

それで、千織のくまさんのポーチの名前は?

#10354 Spot 18
インデックス → Spot 4
クリスティーン → Spot 17
インデカス → Spot 17
インタレスティング → Spot 17
ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン → Spot 19
#10355 Spot 19

私の頭は再びフル回転を始めた。どう考えてもこれだと思うんだけどな。さっきのはきっと私を試したんだ、そうに違いない!

#10356 Spot 19
player

……ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン!

#10357 Spot 19
九条璃雨

あなたは実に度胸ある方ですね。ではこちらへ。

#10358 Spot 19

九条さんにカフェの外へ連れ出され、「ご褒美」を食らった。再び席に戻ると、千織はにっこりとした表情を崩さず私を見つめた。

#10359 Spot 19
三上千織

もう一度聞くわよ、千織のポーチの名前は?

#10360 Spot 19

なんだ、もう一度チャンスがあったのか……私は痛む頭をさすりながら、改めて五つの選択肢を見た。

#10361 Spot 19
インデックス → Spot 4
クリスティーン → Spot 17
インデカス → Spot 17
インタレスティング → Spot 17
ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン → Spot 20
#10362 Spot 20

「初心忘るべからず」ということわざがあるよな。

#10363 Spot 20
player

……ダルイーゼ・ポン・ドラドラ・ヴァイマーン!

#10364 Spot 20

ハキハキと回答した。三度もやると、口も完璧に回るようになるなあ。練習の成果が出てる。

#10365 Spot 20
三上千織

璃雨。

#10366 Spot 20
九条璃雨

はい。

#10367 Spot 20
player

ぐえっ!

#10368 Spot 20

自分の耳をつんざくような短い叫び声、千織の冷たい眼差し、顔面に飛び込んでくる九条さんの倍威力の鉄拳……この光景を最後に、私の意識は途切れた。

#10369 Spot 20

気がついた時には、既に翌日になっていた。家まで運ばれたのか? 一体誰が……。

#10370 Spot 20

頭をさすりながら最初にしたことは、……いつも通り、スマホチェックだった。

#10371 Spot 20

友人達からのオンライン麻雀の誘いをざっと確認し、次に千織が投稿したCatChatを見た。

#10372 Spot 20

どうやら、彼女と九条さんはあるボードゲームで勝利すべくタッグを組んだらしい。はっきりとは書かれていないが、昨日のことと何か関係がある気がする。

#10373 Spot 21End

しかし、投稿は明らかに私とは関係ない内容のものだった。千織ともっと仲良くなりたければ、もっと正しい方向に努力する必要があるようだ。

End5.参加資格なし — コイン ×12000

お嬢様の願い

契約を結ぶことで開放

Possible Endings

End6.大人になる前の約束
祈願の巻物 ×1
End7.いつもの日常へ
日光の福袋 ×1

Scenario Script

Spots 1, Scenes 401, Choices 2, Endings 2

#10000 Spot 0
player

みんな、こんにちは。絶好の麻雀日和だね!

#10002 Spot 0

にこやかでフレンドリーな笑顔、ハキハキとした挨拶。朗らかなオーラとともに、魂天神社の対局室に足を踏み入れた。たっぷり惰眠を貪った後は、猫や犬をモフりながら麻雀をし、個性的な雀士達と交友を深める……という充実した一日を送るつもりだった。

#10003 Spot 0

ところが、風が吹いてそうな卓につき、同卓の三人に挨拶すると、なんだか少し変な空気だ。仲間達は示し合わせたかのように手を止めた。

#10004 Spot 0
雀士A

そうだ、宿題やんねーと。ごめん、行くわ。

#10005 Spot 0
雀士B

ちょ、一緒にやろーぜ。ごめんけどオレもこれで……

#10006 Spot 0
雀士C

ふぅ……それじゃ僕も。

#10007 Spot 0
player

ちょ、ちょっと三人とも! 待って、そんなスタスタ行っちゃうことある? いい歳して思春期ど真ん中の中学生みたいにさあ!!!

#10008 Spot 0

三人はいなくなってしまった。

#10009 Spot 0

仕方なく、周囲のまだ席が空いている卓に目を向けた。周りの雀士達は、さっきまでこちらを興味津々に眺めていたくせに、いざ私と目が合うと揃って下を向いてしまう。牌山を見つめてじっと考え込む様は、担任から指されるのを恐れる生徒のようだった。

#10010 Spot 0
一姫

ご主人、哀れにゃ。誰にも相手してもらえないのにゃ。ワン次郎、何かいいアイデア出せにゃ!

#10011 Spot 0
ワン次郎

「今日は正真正銘三上千織と一緒じゃありません」とデコにでも書いとけばどうだワン。

#10012 Spot 0
一姫

ご主人、どうにゃ?

#10013 Spot 0
player

ハイハイ、使えないアドバイスどうも。この感じだと、ふたりに付き合ってもらうのが良さそうだな……

#10014 Spot 0
player

……って、ちょっと! ワンちゃん!? ネコちゃん!?

#10015 Spot 0

犬と猫の軍師コンビが速攻で消えた。

#10016 Spot 0

はぁ……まぁ、彼らを責めることは出来ない。今日こんな調子になっているのは、このところ私にべったりなあるお嬢様のせいなのだから。

#10017 Spot 0

先日千織と仲良くなってから、千織の私を見る目は次第に「庶民」から「面白いおもちゃ」を見るそれへと変わっていった。はっきりそう言われた訳じゃないけど、態度が物語ってる、間違いない!!!

#10018 Spot 0

それからというもの、ボードゲームや麻雀、ごく普通の大富豪に至るまで、私が何かゲームをしている所には必ず千織が現れるようになった。それに従い、彼女の目標は「スマートにゲームに勝つ」から「相手、特に{var:player_nickname}を出来る限り痛めつける」というものに変わったようだ。

#10019 Spot 0

そうこうしているうちに、巷では「私がいる所には、金髪のお嬢様が現れて格下をいたぶる」という噂が囁かれるようになった。そのせいで、私は高頻度で対局相手を捕まえられない事態に見舞われるようになってしまったのだ。

#10020 Spot 0

私は再び三方向の空席を見つめた……まあいいさ、千織が来るのを待ちながら、他の相手を探そう。他じゃともかく、一飜市じゃ友達は多い方だしね。

#10021 Spot 0
二階堂美樹

……

#10023 Spot 0
白石奈々

……

#10024 Spot 0
player

……

#10025 Spot 0
白石奈々

どんな感じ?

#10026 Spot 0

私はスマホを置いて首を横に振り、二人に悪いなあと思いつつ誰も座っていない対面を見た。

#10027 Spot 0

同卓者三人のうち二人は早々に捕まえられたが、今日に限って千織がまだ来ない。

#10028 Spot 0
player

普段ならもう来てる時間なのに、九条さんまで連絡がつかないなんて、変だなあ。

#10029 Spot 0
二階堂美樹

いつも一緒の二人が今日は別々なんて、意外ね、うふふ。

#10030 Spot 0
player

うーん……正直私も意外に思ってる。

#10031 Spot 0
白石奈々

後輩クン、もしかしたら、知らないうちに怒らせるようなことしちゃったんじゃない?

#10032 Spot 0
player

そんなことしてない……多分。

#10033 Spot 0

とは言ったものの、最近よく理由もなく千織に蹴られていることを考えると、ないとも言い切れないような。

#10034 Spot 0
二階堂美樹

ふふ、顔に心配だって書いてあるわよ。あなた、私達のことはいいから、今日のところは様子を見に行ってみたら?

#10035 Spot 0
player

え? でも二階堂さんも白石さんもせっかく待っててくれたのに……

#10036 Spot 0
二階堂美樹

そうね、だから、まずは千織ちゃんのご機嫌を取って、それから私への埋め合わせをどうするか考えてちょうだい。しっかり「誠意」を見せてくれなきゃ、ただじゃおかないわよ。

#10037 Spot 0
白石奈々

あははっ、ウチはへーきだよ。またウチと友達に飲み物奢ってくれればオッケー! 安心して、ちゃんと人数が多い部活の助っ人する日を選ぶから。後輩クンは現場でお金払ってネ!

#10038 Spot 0
player

あ、あはは、……はぁ。わかった。じゃあ今日は悪いけどこれで、また今度誘うから!

#10039 Spot 0

これでまた約束が一つ増えた。一飜市に住んでると、ほんっとスケジュールがすぐギチギチになるんだよな。それはともかく、心配の種を除く意味でも、やっぱり千織に会いに行こう。

#10040 Spot 0

千織の家は、一飜市内の風光明媚な高級別荘地にあった。ここへ来るのは初めてではないが、来る度にセレブな雰囲気に圧倒されてしまう。例えば、千織の家の近くには私の動きに合わせて動くカメラがある、とか。先日の不審者騒動で、セキュリティシステムが更に強化されたようだ。

#10042 Spot 0

この状況で、何か起きることはないはずだけど……まさか、本当に知らないうちに怒らせるようなことしちゃったのかな?

#10043 Spot 0

私は千織の家の玄関前まで行き、インターホンを鳴らして大人しく待った。

#10044 Spot 0

程なくして、インターホンの付属カメラのランプが緑に点灯した。誰かが来客を確認しに来たってことだ。しかし妙なことに、相手はインターホンに出ておきながらずっと無言でいる。

#10045 Spot 0

変だなと思いながら、カメラに向かって手を振ってみた。

#10046 Spot 0
player

千織? 九条さん?

#10047 Spot 0

「プツッ」

#10048 Spot 0

問いかけに応じたのは、インターホンが切れる音だった。

#10049 Spot 0
player

???

#10050 Spot 0

まさか……本当に何かあったのか?

#10051 Spot 0

高級住宅街の大きな別荘に、両親が常に家を空けているせいで一人暮らし状態のお嬢様と、そのお嬢様のお世話をしているただ一人のメイド。もしこういう設定のコンビがあのダークヒーローが活躍するゴッパー・シティにいたら、とっくにあらゆる犯罪組織から狙われていただろう。様々な犯罪行為が頭をよぎり、通報しようかと考えた。

#10052 Spot 0

その時、ガチャッとドアが開いた。

#10053 Spot 0

……

#10054 Spot 0
三上千織

{var:player_nickname}、こんにちは。千織に何かご用?

#10055 Spot 0
player

……

#10056 Spot 0

ドアの奥から出て来た千織は元気そうに見える。しかし……千織のこの明るさ、昼に私が同卓者を引き留めるために明るく振る舞った時とそっくりで……なんだか妙だぞ!

#10057 Spot 0
player

千織、大丈夫?

#10058 Spot 0
三上千織

え? 自分の家で何か起きるわけないでしょ? あはは、{var:player_nickname}は本当に冗談が好きね。

#10059 Spot 0
player

……

#10060 Spot 0
三上千織

遊びに来たんなら、悪いけど今日は都合が悪いの。また今度でもいい?

#10061 Spot 0
player

変だ、お行儀が良すぎる。何もないようには見えないな。

#10062 Spot 0
三上千織

……ほら、か・え・っ・て?

#10063 Spot 0

千織は少し焦った様子で私に詰め寄り、低い声でそう言った。普段私をいたぶる時のあの表情で、九条さんのように拳を掲げている。

#10064 Spot 0

おぉ、いつもの千織だ! 安心した~。どうやら、本当に私に言えない何かで忙しいみたいだ。

#10065 Spot 0
player

そっか、何もないならよかった。じゃあね。

#10066 Spot 0
三上千織

うん、またね、{var:player_nickname}。気をつけるのよ。

#10067 Spot 0

去ろうとしたその時、聞き覚えのない大人の女性の声が中から聞こえてきた。

#10068 Spot 0
???

千織、お友達?

#10069 Spot 0

私はまさかと思って振り返った。千織の頭越しに、部屋から顔を出した品のある服装の女性が見えた。

#10070 Spot 0

女性の髪は、千織と同じ輝く金色をしているが、肩で切り揃えて耳にかけている。その髪型もあって、落ち着いた知的な女性という印象を受けた。

#10071 Spot 0
???

こんにちは、はじめまして。千織の母です。

#10072 Spot 0
player

……はっ、こんにちは!

#10073 Spot 0

繊細なスイーツと淹れたてのコーヒーが並んだ見事な装飾のトレーを、千織自ら私の席まで運んでくれた。

#10075 Spot 0
三上千織

どうぞ。お砂糖、ミルクはカップの横よ、好みに合わせて入れてね。

#10076 Spot 0
player

ンンッ……千織、ありがとう。

#10077 Spot 0
三上千織

ドウイタシマシテ。

#10078 Spot 0

少女のやや固い笑顔と甘い声とは裏腹な、人を殺しかねない眼差しを受け流し、千織が私のために丁重なおもてなしをしてくれたシーンを写真に収めたい衝動にかられた。……隣に千織のお母様が座っていなければ、恐らくそうしていただろう。

#10079 Spot 0

私は気持ちかしこまってソファーに腰かけ、これまで千織から聞いていた母親に関する情報を脳内で素早く整理した。一年中世界を股にかけて活躍する優秀な外科医で、物理学教授の夫、つまり千織の父と同じく多忙のため、やむをえず娘をメイドに預けているキャリアウーマン……

#10080 Spot 0

そんな彼女が、まさか今日家に帰って来ていたとは。どうりで千織が現れないわけだ。

#10081 Spot 0
三上夫人

あなたは千織と仲のいいお友達のようね。なんとお呼びすればよろしいかしら?

#10082 Spot 0

お母様の質問に、私は慌てて背筋を伸ばした。簡単な自己紹介の後、今日家を訪ねた理由について説明した。

#10083 Spot 0
三上夫人

そうだったの。千織のことを心配してくれてありがとう。今日、千織はあまりスマホを見なかったし、璃雨ちゃんもメイド特訓クラスの追試があるとかで、私も連絡が取れないし、会えてもいないのよ。

#10084 Spot 0
player

そうだったんですか……これですっきりしました。

#10085 Spot 0
三上夫人

心配かけた上に、わざわざ足を運んでいただいちゃって……。

#10086 Spot 0
player

いえいえ、友達として当然のことです。こちらこそ、急に押しかけて、親子水入らずの時間を邪魔しちゃったみたいで……。

#10087 Spot 0
三上夫人

ふふ、いいのよ。千織のお友達と会えて嬉しいわ。実はね、前に帰ってきた時は璃雨ちゃんとばかり一緒にいたのに、こんなに仲のいいお友達が出来たとわかって、正直驚いたのよ。千織、どうしてお母さんに教えてくれなかったの?

#10088 Spot 0
三上千織

……べ、別に言う必要なかったし、特に仲がいいわけでもないし、ただの……

#10089 Spot 0
三上夫人

へ……?

#10090 Spot 0
player

へ……?

#10091 Spot 0
三上千織

……ただの仲良しの友達なの。でも毎日一緒にいなきゃいけない関係じゃないわ、そこは絶対違うから!

#10092 Spot 0

千織母はあらあらといった感じで私と千織を交互に見た。にこやかな表情ではあったが、彼女の視線に身体の奥まで見透かされたような錯覚に陥った。

#10093 Spot 0
三上夫人

ふーん……つまり、「いなきゃいけない」ってルールはないけど、結局は毎日一緒にいるってことね?

#10094 Spot 0
三上千織

……

#10095 Spot 0
player

……

#10096 Spot 0

間違ってはいないけど、その言い方だと何か語弊があるような。私と千織はぐっと押し黙り、そわそわしながら千織母を見た。

#10097 Spot 0
三上夫人

ふふ、そう緊張しないで。千織に新しいお友達ができて嬉しいのよ。でもね、千織とお友達がどんなことをして過ごしてるのか、なかなか知る機会が少なくて。{var:player_nickname}さん、よければ教えてくださらない?

#10098 Spot 0
三上千織

えっ?

#10099 Spot 0
三上夫人

もちろん、話せる範囲でいいわよ。全てが二人だけの秘密って訳でもないでしょう?

#10100 Spot 0
player

あ、も、もちろんです……

#10101 Spot 0

話の調子を合わせながら、何を話すべきか考えていると、不意に千織母のスマホが鳴り出した。

#10102 Spot 0
三上夫人

ごめんなさい、電話に出るわね。

#10103 Spot 0

千織母は立ち上がり、隣のダイニングに向かった。静かになったリビングに、彼女の話し声が聞こえてくる。

#10104 Spot 0
三上夫人

もしもし……今日は休みです。うん……うん……無理です。休暇中ですので……

#10105 Spot 0

ソファーに納まった千織の視線が、電話中の母を追っている。電話の内容を聞いてとりあえず仕事に戻ることはなさそうだとわかり、少し安心したようだ。こちらを向くと、小声ながらツンツンした声で真剣に忠告してきた。

#10106 Spot 0
三上千織

お母様に何か聞かれた時、バカなこと言ったら許さないから!

#10107 Spot 0
player

チクられるのが怖いの? 普段あんな所業しといて?

#10108 Spot 0

私もホッとひと安心し、小声で反撃した。

#10109 Spot 0

千織が何か言いかけた時、千織母が戻ってきた。再び席につき、わくわくといった感じで私の話を待っている。

#10110 Spot 0

その隣には、警告するような眼差しで私を見る千織。どうやって話そうかな?

#10111 Spot 0
当たり障りなく話す → Spot 10112
包み隠さず話す → Spot 10127
#10112 Spot 0

後のことを考えると、本当のことは言えないよな……。

#10113 Spot 0

千織のことを気にせず、お母さんのイメージを壊しかねない恥ずかしいことや悪質な行為をバラしてみろ。私の生活は「終わり」だぞ。

#10114 Spot 0
player

えーと、千織さんと知り合ってからの思い出はたくさんありますけど……とにかく、千織さんはとびきり優しくて、可愛くて、人に愛される女の子ですね。

#10115 Spot 0

千織が安堵のため息をついているのがわかった。

#10116 Spot 0
player

……家にお邪魔すると、千織さんはいつも今日のようにコーヒーを淹れて、お菓子を用意してくれるんです。

#10117 Spot 0
三上千織

へ……?

#10118 Spot 0
player

それから、千織さんは賢くて、ゲームをする時もすごいんです。いつも辛抱強く私に教えてくれるんですよ。私が疲れた時は、九条さんに千織さん専用メニューのマッサージをするよう頼んでくれるんです。

#10119 Spot 0
player

ああ、前に一度、九条さんがいなかった時に千織さん自らマッサージをしてくれたことがありましたね。それから、一緒に公園に行って猫にご飯をあげた時、私がうっかり迷子になっちゃった時があって……その時も辛抱強く私を探し、このお家まで連れて行ってくれて、美味しい夕食を作ってくれたこともありましたね……

#10120 Spot 0

ペラペラと話していると、緩んでいた千織の頬が徐々に強張っていった。

#10121 Spot 0

私の話がどんどん無茶苦茶な方向に転び出すと、彼女は母親の後ろから「よくもやったわね」と口パクで言ってきた。それから、突然眉をひそめて頬を覆った。

#10122 Spot 0
三上千織

いっ……たた!

#10123 Spot 0

千織母の意識はすぐさま娘へと向いてしまい、私の講談は見事に打ち切られた。

#10124 Spot 0
三上夫人

どうしたの? また歯が痛くなったの?

#10125 Spot 0

千織は辛そうに頷いた。

#10127 Spot 0

明日の危機は明日考えよう。今を生き、楽しむこと、それが一番大事。

#10128 Spot 0

私は千織の無言の警告を無視し、千織との様々なエピソードを母上殿にご報告申し上げることにした。

#10129 Spot 0
player

そうですねぇ、千織さんと知り合ってからというもの、印象深い出来事がたくさんありました。初めて会った時から、私はずっと、千織さんの可愛さや聡明さ、美しさに驚かされてきました。

#10130 Spot 0

千織ははっきりと安堵のため息をついたが、すぐに顔色が変わった。話の雲行きが怪しくなって来たからだ。

#10131 Spot 0
player

しかし、千織さんのことを深く知っていくにつれて、その可憐な見た目からは想像出来ないことに気付いたんです。それは……

#10132 Spot 0
三上千織

いっ……たた!

#10133 Spot 0

話の核心に入りかかった時、彼女は母親の後ろから「よくもやったわね」と口パクで言うと、突然眉をひそめて頬を覆った。

#10134 Spot 0

千織母の意識はすぐさま娘へと向いてしまい、私の暴露話は見事に打ち切られた。

#10135 Spot 0
三上夫人

どうしたの? また歯が痛くなったの?

#10136 Spot 0

千織は辛そうに頷いた。

#10137 Spot 0

千織母は名残惜しそうにしながらも、腕時計を見た。

#10138 Spot 0
三上夫人

あら、そろそろ歯医者さんに行く時間ね。出かける支度をしましょう。

#10139 Spot 0
player

……歯医者さん?

#10140 Spot 0
三上夫人

千織は昔から虫歯になりやすくてね、定期的に健診を受けないといけないのよ。ちょうど検査の日に帰れたから、この機会に私も一緒に行こうと思って。歯医者さんからこの子の歯の状態も聞けるしね。

#10141 Spot 0
player

なるほど、それじゃあ……

#10142 Spot 0

「じゃあこれで失礼します」と言おうとした矢先、千織母のスマホが再び鳴り出した。

#10143 Spot 0
三上夫人

ごめんなさい。

#10144 Spot 0

千織母が電話に出たことにより、私のお暇もまた中断されてしまった。

#10145 Spot 0
三上夫人

もしもし……申し訳ないけど、休暇中だと言ったはずです。他の方を……院長?

#10146 Spot 0

やや驚いたような声をあげ、少し立ち止まって千織をちらりと見た。そして立ち上がると、バタバタと向こうへ行ってしまった。

#10147 Spot 0
三上夫人

……状態は……そうですか……

#10148 Spot 0

千織は「平気だもん」と言わんばかりに母と胸に抱えた抱き枕を交互に見つめていたが、段々とへの字になっていく口元が彼女の本心を物語っていた。

#10149 Spot 0
三上夫人

午後ですか? けど娘が……

#10150 Spot 0

断片的な会話がかすかに耳に入ってくる。相手が何を言っているかまではわからなかったが、千織母は説得に応じつつあるらしい。最初の毅然とした口ぶりは次第に妥協の色を見せ始め、最終的にはため息をついた。

#10151 Spot 0
三上夫人

はぁ、わかりました。ただし飛行機は……

#10152 Spot 0

どうやら、千織母は緊急の出張を命じられたようだ。となると、一緒に行くはずだった歯医者は……あれこれ考えを巡らせていると、横にいた千織が抱き枕をバフっと放り、何も言わないまま、重い足音を響かせながら二階へ行ってしまった。

#10153 Spot 0

その様子を見ていた千織母は、スマホのマイクを手で押さえ、申し訳なさそうに私を見た。

#10154 Spot 0
三上夫人

様子を見に行ってくれないかしら?

#10155 Spot 0
player

ああ、いいですよ。

#10156 Spot 0

私も心配だなと思っていた所だったので、快く応じた。

#10157 Spot 0

二階に行くと、ちょうど千織がインデックスを持って部屋から出てきたところだった。上がってきた私を見て、千織は立ち止まった。

#10159 Spot 0
player

千織、大丈夫?

#10160 Spot 0
三上千織

なんで上がってきたの?

#10161 Spot 0
player

さっき、怒ってるみたいだったから。お母さんがまた出張することになったから?

#10162 Spot 0
三上千織

ふん……もう子どもじゃないんだから、よくある事でいちいち怒ったりしないわよ。

#10163 Spot 0
player

じゃあどうして急に上に行っちゃったの? しかもインデックスまで持って……

#10164 Spot 0

千織はお馴染みのくまさんのポーチを抱きしめていた。母親からの誕生日プレゼントなのだと、何度も自慢していたぬいぐるみ型バッグだ。

#10165 Spot 0
三上千織

バカね、出かける支度をしてるのよ。歯医者に行く時間だって、お母様が言ってたでしょ?

#10166 Spot 0
player

でも、お母さんは……

#10167 Spot 0
三上千織

ふん、{var:player_nickname}は大バカね。お母様がお仕事じゃ、千織は一人で歯医者さんにも行けないだろうって?

#10168 Spot 0

三上千織はインデックスをきつく抱きしめ、私を押しのけて階段を下りていった。私も慌てて後を追う。

#10169 Spot 0

一階では、ちょうど千織母が電話を終えた所だった。千織母は、階段をかけ下りてきた千織に声をかけた。

#10171 Spot 0
三上夫人

千織、定期健診だけど……

#10172 Spot 0
三上千織

一人で行けるわ、お母様。

#10173 Spot 0
三上夫人

へ……?

#10174 Spot 0
三上千織

お母様はお仕事なのでしょう? 歯医者なら一人でも行けるわ。

#10175 Spot 0

千織母は眉間に皴を寄せ、不本意そうにしている。

#10176 Spot 0
三上夫人

さっき病院と話をつけて、ちょっと遅めの便にしてもらったの。そうすれば一緒に歯医者さんに行って、直接空港に向かえるわ。だから……

#10177 Spot 0
三上千織

お母様、本当にいいの。

#10178 Spot 0

千織は頑なな態度で首を横に振り、インデックスをぎゅっと抱きしめた。顔には笑みが浮かんでいた。

#10179 Spot 0
三上千織

今朝帰ってきたばかりだし、あちこち出かけたらきっと疲れてしまうわ。千織は本当に大丈夫だから、お母様は少し休んで。それにいつもは璃雨と一緒に行ってるし、慣れてるから心配いらないわよ。

#10180 Spot 0
三上夫人

でも、今日は璃雨ちゃんがいないんだし、あなた一人じゃ……

#10181 Spot 0

私の知っている千織は、こういう時ここまで寛容で冷静な態度は取らない。にもかかわらず、千織母は言いくるめられてしまったらしい。私は言葉を飲み込んだ。この親子、今まで接する時間が本当に短かったんだろうなあ。

#10182 Spot 0
三上千織

あっそうだ、それでもお母様が心配なら、{var:player_nickname}を連れて行けばいいよね。{var:player_nickname}ならきっと喜んで引き受けてくれるはず、でしょ?

#10183 Spot 0

三上千織は私の服の袖を引き、上目遣いで私を見つめた。ここまではっきり助けを求めてきたのは初めてだ。私は驚いて、千織と手を繋いだ。

#10184 Spot 0
player

はい、私が一緒に行くので、ご安心ください。

#10185 Spot 0

千織母は、ぎゅっと繋がれた私と千織の手をしばらく見つめていた。徐々に眼差しから迷いの色が消えていくのがわかった。

#10186 Spot 0
三上夫人

わかったわ、ではお願いしますね、{var:player_nickname}さん。

#10187 Spot 0

千織母と連絡先を交換すると、私は千織と共に歯科医院へと向かった。

#10189 Spot 0
player

さっさと済ませよう。そうすればお母さんの出発に間に合うかもだし。

#10190 Spot 0
三上千織

うるさいわね……ふわぁ~、眠いわ。

#10191 Spot 0
player

千織?

#10192 Spot 0

タクシーの窓から千織母が見えなくなると、すぐに千織の顔から笑顔が消えた。そして、体を縮こまらせて寝たふりをし、これ以上の会話を拒んだ。一気に冷え込む車内の空気。ぎゅっとつむったまぶたの上、長いまつ毛がかすかに震えているのをただ見ていることしか出来ない私は、密かにため息をついた。

#10193 Spot 0

千織、今回は本当に堪えたみたいだな。

#10194 Spot 0

一言も話さないまま、歯科医院に到着した。呼出状況を確認すると、私達は次の次に呼ばれるみたいだ。受付のお姉さんから指示を受け、待合室で待つことになった。

#10196 Spot 0

ここの歯医者は静かで、消毒液の匂いが充満している。待っている間、彼女はずっとある一点を見つめていた。視線の先、はす向かいのソファーには若い親子が座っていて、お母さんにだっこされている四歳ほどの子が、左の頬を手で押さえながら甘えている。

#10197 Spot 0
男の子

ママー、いたいよぉ。

#10198 Spot 0
若い母親

はいはい、診てもらったら痛くなくなるからね。

#10199 Spot 0
男の子

いたくなくなったら、ここにこなくていい?

#10200 Spot 0
若い母親

そうよ。

#10201 Spot 0
男の子

じゃあここじゃなくて、ゆうえんちにいけるようになる?

#10202 Spot 0
三上千織

……フン。

#10203 Spot 0

少女は小さく鼻を鳴らし、羨ましそうに眺めている。この子があの各地の麻雀会館に君臨する傲岸不遜な魔王・三上千織だと誰が想像できるだろう。

#10204 Spot 0

今は、母親に対してすねているただの子供だ。

#10205 Spot 0
player

千織、大丈夫……?

#10206 Spot 0
三上千織

その台詞、三回目よ。耳にタコを作らせたいの?

#10207 Spot 0
player

あっ、大丈夫ってことなら……飴ちゃんでも食べる?

#10208 Spot 0

三上千織は軽蔑しきった顔で私を一瞥し、耳を塞いで無視した。

#10209 Spot 0

虫歯の子の機嫌を飴で取ろうとするなんて、やっぱり愚策でしかないよね。何か話題を替えて仕切り直そうとした時、急に近くで言い争う声が聞こえた。

#10210 Spot 0
若い母親

そもそもそっちのミスが原因なのに、なんでまた待たされなきゃいけないんですか?

#10211 Spot 0

私は声がする方を見た。

#10212 Spot 0

話しているのは、ちょうど先ほど見た子どもを抱っこしていた母親で、責められているのは、診察室から出てきた医師だった。下がりきった眉から無力感が感じられる。

#10213 Spot 0
医者

はい、ですがもう何度も来ていただいてて、するべき検診も治療も済んでいますし、お子さんには何の問題も見つからないんです。別の先生に診せれば別の結果になるかもしれません。次の予約をお取りいただくか、紹介状を書きますので……

#10214 Spot 0
若い母親

そんな無責任な話あります!? 私は子どもをここに連れてくるためにもう何度も休みを取ってるんですよ! 今回のことは責任取ってもらいます! 無駄になった給料も負担してもらいますから!

#10215 Spot 0

問題の中心である男の子は、怯えて母親の足にしがみついている。段々と張り詰める空気。

#10216 Spot 0
player

お医者さんと患者さんが揉めてるみたいだね。あまり気にせず……千織?

#10217 Spot 0

意外なことに、千織は席を立つと、彼らのもとへ歩いて行った。そして、医者と母親にこう言った。

#10218 Spot 0
三上千織

あの、とりあえずやり方を変えてみたらいいんじゃないかしら。

#10219 Spot 0
若い母親

えっ?

#10220 Spot 0
医者

おお、千織ちゃん。

#10221 Spot 0

この医者は千織を知っているようだ。彼は身をかがめて千織に何事か耳打ちし、次に母親と小声で話をした。

#10222 Spot 0
牙医

男の子は椅子に座り、心配そうに唇を噛んで母親を見ていた。

#10223 Spot 0
医者

じゃあ、初めからもう一度検査してみましょう。

#10224 Spot 0
若い母親

わかりました。

#10225 Spot 0
若い母親

話がまとまったようだ。母親は、息子に診察室に行くよう手振りで示した。

#10226 Spot 0

興味が沸いた私は、どさくさに紛れて千織とともに入り込んだ。追い出されるかと思ったが、私達を見ても誰も何も言わない。ますます気になる。

#10227 Spot 0
若い母親

ゆうちゃん、どこが痛いかお医者さんに言ってごらん。

#10228 Spot 0
佑志

……うん。

#10229 Spot 0

医師は、男の子を椅子に座らせて大きく口を開けさせ、ライトで口内を照らしてから、顔の右側を指さした。

#10230 Spot 0
医者

前に、ここはちゃんと治したと思うんだけど……本当にここが痛いのかい?

#10231 Spot 0
医者

あれ、さっき痛いと言って押さえてたのは左側だったよな。

#10232 Spot 0

ところが、ゆうちゃんは少しためらってから頷いた。

#10233 Spot 0
佑志

……うん。

#10234 Spot 0

これで全員が理解した。ゆうちゃんは嘘をついている。

#10235 Spot 0
若い母親

ゆう、ママはすっごく忙しいのよ、変なこと言わないで! 歯が痛いのは嘘だったの? バカなことして!

#10236 Spot 0
佑志

うぅ……あうぅ……

#10237 Spot 0

嘘がバレて、男の子は口をモゴモゴさせた。目にはみるみる涙が溜まっていく。

#10238 Spot 0
佑志

うぅ……ママ、ごめんなさい。

#10239 Spot 0
佑志

ぼくはただ、ママにあそんでほしくて……。

#10240 Spot 0
佑志

ずっと歯が痛ければ、もっとママといっしょにいてくれるかなって。

#10241 Spot 0
若い母親

全くもう……バカな子ね。今度からはまずママにお話してね……。

#10242 Spot 0
若い母親

……

#10243 Spot 0

親子は落ち着きを取り戻し、揃って医師に謝った。それから、千織に何度もお礼を言った。

#10244 Spot 0

事態がひと段落し、親子を見送って、私は千織に向かって親指を立てた。

#10245 Spot 0
三上千織

フン。

#10246 Spot 0

千織はつんけんした態度で顔を背けた。今のは照れ隠しだな。人助けをしたことで、心が軽くなったみたいだ。

#10247 Spot 0

診察室を片付け、備品を交換するということで、今しばらく待つことになった。この機会に、先ほどから聞きたくてうずうずしていたことを聞いた。

#10248 Spot 0
player

あの子の気持ちをあそこまで正確に読み取るなんて……もしかして、千織も前にああいう手を使ったことがあるの?

#10249 Spot 0
三上千織

はぁ?

#10250 Spot 0
三上千織

今日はあんたに優しくし過ぎたかしら? 千織にそんなデタラメ言うなんて! 千織はあんなバカな子じゃなかったわよ!

#10251 Spot 0
player

いや……千織のお母さん、よく家を空けてたんでしょ? お母さんが恋しくなかったのかなって。

#10252 Spot 0
三上千織

……うっさいわね。バカと話をする気はないわ。

#10253 Spot 0
player

教えてよ。千織の気持ちが知りたいんだ。

#10254 Spot 0
三上千織

千織のお母様はすごいお医者さんなの。人々の健康を守るためにお仕事してて、病気を抱えた人達に必要とされてる。だから、千織はあんなやり方でお母様の時間を無駄にしたりしないわ。

#10255 Spot 0
player

病気の人達だけじゃない、君だってお母さんを必要としてるでしょ。千織は、お母さんにとって一番大事な娘だよ。だから、千織も勇気を出して自分の気持ちを伝えなきゃ。

#10256 Spot 0
三上千織

……そんなことわかってるわよ。でも千織は、今日みたいにたまにお母様と会えればそれでいいの。

#10257 Spot 0
player

本当に? さっきはお母さんに怒ってたじゃないか。

#10258 Spot 0

千織はハッとした。

#10259 Spot 0
player

お母さんが約束通りついて来てくれなかったから、いじけてるんでしょ? 心の奥底にしまい込んでるだけでさ。

#10260 Spot 0
三上千織

……

#10261 Spot 0
医者

三上さん、三上千織さん、どうぞー。お待たせしました。検診を始めましょう。

#10262 Spot 0

名前が呼ばれて助かったと思ったのか、千織はインデックスを私に押しつけ、逃げるように検診に向かった。診察室に入る直前、彼女は何か思いついたように振り返り、猛烈な勢いで怒鳴った。

#10263 Spot 0
三上千織

……だ、誰が勝手に千織の気持ちを探っていいって言ったの? {var:player_nickname}のバカバカバーカ!

#10264 Spot 0

涙目と赤い耳のせいで、全く迫力はなかったけど。

#10265 Spot 0

私はため息をついた。押し付けられたインデックスは、ご主人様と同じく偉そうな笑みを浮かべている。

#10266 Spot 0
player

ねえ、君。君ってすごい奴だよね。相当苦労してるんじゃない?

#10267 Spot 0

その後、千織の検診は何事もなく終了した。

#10269 Spot 0
player

(ショートメール)虫歯を一本治療したくらいで、他はすべて異常なしでした。ご安心ください。

#10270 Spot 0

歯科医院を出て、タクシーに乗り込んだ。そのタイミングで、千織母に報告メールを送った。予想より早い時間だ。私はちょっと思いついたことがあって、千織に話しかけた。

#10271 Spot 0
player

あっ、千織、この時間なら、空港に直行すればお母さんと話せるかもよ。どう?

#10272 Spot 0
三上千織

……いいの、それより近くの麻雀会館に行きましょう。最近全然行ってないし、すごい新顔が出て来たかチェックしなくちゃ!

#10273 Spot 0
player

麻雀会館にはいつでも行けるよ。お母さんともっと一緒にいたくないの? せっかく帰ってきたのに……次はいつ帰ってこられるかわからないんだよ。

#10274 Spot 0
三上千織

いいってば。空港に行ったところで、会って話せるのはせいぜい一、二時間くらいよ。それに、お母様とのことは千織の問題だわ、あんたに勝手に決められる筋合いはないの!

#10275 Spot 0

私の提案に、千織はかなり反発している。どうしよう……

#10276 Spot 0
千織の気持ちを尊重して、麻雀しに行こう。 → Spot 10277
何とかして、空港へ行く気にさせよう。 → Spot 10297
#10277 Spot 0
player

わかった、会館に行こう。

#10278 Spot 0

激しい反発を受け、私は妥協することにした。

#10280 Spot 0

オーラスの最後のツモ番。両隣の雀士は緊張した面持ちで、千織の手を見つめている。

#10281 Spot 0
雀士A

ない、ない、それは絶対あり得ない……

#10282 Spot 0

チャッ。

#10283 Spot 0
三上千織

三萬! ハイテイ! きゃははっ、また千織の勝ちね!

#10284 Spot 0
雀士B

あぁぁぁ、悪魔だ、正真正銘の悪魔だ!

#10285 Spot 0

高らかな千織の笑い声が響き渡り、新たに二人の罪なき雀士のトラウマが生まれてしまったのだ。

#10286 Spot 0

こういう展開にすっかり慣れた私は、ただ首を横に振り、千織が笑顔で楽しく過ごせればそれでいいんだ……と自分に言い聞かせた。

#10287 Spot 0

でも……千織、本当に楽しめてるかなぁ?

#10288 Spot 0

ヴーッ……

#10289 Spot 0

スマホの振動に気付き、画面を見ると千織母からショートメールが届いていた。

#10290 Spot 0

会館に向かう道すがら、何度も悩んだ末、歯医者で千織がもめ事を解決したことと、これから一緒に麻雀会館へ遊びに行くことを千織母に伝えていたのだ。

#10291 Spot 0
三上夫人

(ショートメール)わかりました、教えてくれてありがとう。おかげで、自分の娘のことをわかってなかったと思い知りました。千織は昔から自立した子のように振舞ってて、そういうところに困らされてた時期もあったの。

#10292 Spot 0
三上夫人

(ショートメール)時間を見つけてちゃんと話をしないと。今度帰った時は、もっとゆっくりあなたをおもてなし出来たらいいのだけど。もっとあの子やあなた達のことについて聞きたいから。

#10293 Spot 0

どうやら、私の思いは伝わったようだ。少し心が軽くなった。

#10294 Spot 0

その後も、千織と麻雀会館で午後を過ごした。

#10295 Spot 0End

家まで戻ると、広いお屋敷には既に誰もいなかった。いつものように。

#10297 Spot 0

千織といえば、一飜市中のツンデレ女子のお手本とも言うべき存在だ。「嫌」と言う時は、決まって別の気持ちを隠している。

#10298 Spot 0

こういう重度のツンデレ患者に対処するためには、こちらも手段を選んではいられない……

#10299 Spot 0
player

わかった、じゃあ麻雀しに行きなよ。私、この辺には詳しいんだけど、二回角を左に曲がると会館があるよ。なかなかいい所で雀士も強い。それじゃ、行ってらっしゃい。

#10300 Spot 0
三上千織

……

#10301 Spot 0

突然私が引き下がったことで、狙い通り、千織は警戒し出した。

#10302 Spot 0
三上千織

どういうつもり?

#10303 Spot 0
player

どうって、ただ、麻雀しに行く千織を見送ったら、一人で空港に行こうかなって思ってるだけだけど。千織のお母さん、私と千織の話をもっと聞きたがってたし、きっと私が空港まで見送りに来るのを楽しみにしてると思うんだ。

#10304 Spot 0
三上千織

!

#10305 Spot 0
player

言っとくけど、あくまで行かないって言ったのは千織であって、私はちゃんと誘ったからね。このこと、お母さんにうっかり言っちゃわないようにしないとな~……うわっ! そこは殴っちゃダメだって!

#10307 Spot 0

質量を感じるほどの怨念が千織の体から発せられた。タクシーの運転手が、バックミラー越しに興味深そうに私達を見た。

#10308 Spot 0
運転手

お嬢さん、一旦落ち着きましょう。飛行機はいつ出発ですか?

#10309 Spot 0
三上千織

いいの、ゆっくり運転して。遅ければ遅いほどいい、なんなら永遠に着かなくていいわ。

#10310 Spot 0
運転手

ははは……冗談がお上手で。

#10311 Spot 0

運転手は一息つくと、一気にアクセルを踏んだ。どうやら本気を出したようで、猛スピードで飛ばしている。

#10312 Spot 0

私は、揺れと遠心力に抵抗しながら千織母にショートメールを送った。

#10313 Spot 0

数分後に返信があった。内容を読み、ホッと息をつく。

#10314 Spot 0

それから、隣でムキになってオンライン麻雀をしている千織を見た。よし、何もかも計画通りだ。

#10316 Spot 0
player

う~……

#10317 Spot 0
三上千織

う~……

#10318 Spot 0

タクシーの運転手は意気揚々と土ぼこりを上げながら去っていき、残された私達は、車酔いで回る視界が落ち着くまで空港の柱にしがみ付かざるを得なかった。

#10319 Spot 0

油断した。私はショートメール、千織は麻雀、それぞれの目的でスマホの画面を見続けていたせいで、揃って車酔いしてしまったのだ。

#10320 Spot 0
三上千織

ほ、ほんとに使えないわね。千織は麻雀してたせいとして、なんであんたまで酔ってんのよ。

#10321 Spot 0
player

私は……

#10322 Spot 0

あなたのお母さんとこっそりやり取りしてました、なんて言えない。

#10323 Spot 0
player

大したことじゃないよ。とりあえずお母さんに連絡して、どこにいるか聞いてみよう。

#10324 Spot 0
三上千織

はぁ? まだお母様に連絡してないの? もう空港に着いてるのに!

#10325 Spot 0
player

それは……あれ、お母さんに会いたくないんだよね? どうしてそんな細かいことが気になるのかな~?

#10326 Spot 0
三上千織

ち、違うわ。けど来ちゃったからには……あーっもう、早くしなさいよ! すぐにお母様に電話しなさい!

#10327 Spot 0
player

はいはい。

#10418 Spot 0

十五分ほどで、空港のフードコートに千織母がいるのを見つけた。

#10329 Spot 0
三上夫人

よかった、飛行機が一時間遅れて、どうやって時間を潰すか考えてたとこだったのよ。二人が来てくれるなんて思わなかったわ。

#10330 Spot 0
三上夫人

千織、何も言わなかったわよね。サプライズしようと思ってくれたの?

#10331 Spot 0
三上千織

ま、間に合うか分からなかったからよ。お母様に余計な負担をかけたくなかったの。

#10332 Spot 0
三上夫人

そんなことないわよ、見送りに来てくれることが負担になる訳ないじゃない! とっても嬉しいわ!

#10333 Spot 0
三上千織

そ、そう……?

#10334 Spot 0

家で会った時よりだいぶテンションが上がっているらしい千織母。千織もその様子に驚いていたものの、すごく安心出来たみたいだ。

#10335 Spot 0
三上夫人

何か食べたいものがあったら、向こうで頼んできなさい。私と{var:player_nickname}さんの分も頼むわね。

#10336 Spot 0
三上千織

うん、千織に任せて。

#10337 Spot 0

千織はてきぱきとカウンターで料理を注文した。軽い足取りからは、母親に会えて舞い上がっているのが見て取れる。そんな少女の様子を見て、千織母と私はチームプレーを称える視線を交わした。

#10338 Spot 0
三上夫人

{var:player_nickname}さん、連絡いただいて助かりました。

#10339 Spot 0
player

いえいえ、当然のことをしたまでですよ。

#10340 Spot 0

そう、私はタクシーで空港に向かっている間に、歯医者で千織が子供の嘘を鋭く見抜いた件を千織母に報告していたのだ。

#10341 Spot 0

千織母は本当に聡明な人だ。私といる時の千織がどんな風に過ごしているのかもっと知りたい、自分のすべきことに気付けた、空港で待っています、とすぐに返信をくれた。

#10342 Spot 0

千織の席にお行儀よく座るインデックスを見つめる母の眼差しは、より柔らかいものへと変わっていた。

#10343 Spot 0
三上夫人

私も主人も、仕事柄なかなかあの子の傍にいられなくてね。空いてしまう時間をこういうプレゼントで埋め合わせるしかなかったの。千織は昔からすごくしっかりしてたから、私達は驚きつつも誇らしく思ってたわ。

#10344 Spot 0
三上夫人

私達もね、千織にもっと一緒にいる時間を増やそうかって言ったことがあるのよ。でも、千織はいつもしなくていいと言って、私達に仕事をさせてくれたわ。そうこうしているうちに璃雨ちゃんとも仲良くなって、いつの間にか、本当に気ままな一人暮らしに慣れたんだろうと思っちゃったのよ。

#10345 Spot 0
三上夫人

それが全部、あの子の強がりだったなんて……外の人から娘の本当の気持ちを教えてもらうなんて、母親として本当に恥ずかしいわ。

#10346 Spot 0
player

そうだったんですか。どうか自分を責めないでください。お母さんも知ってると思いますけど、千織は本心を隠す時はすごく強情になりますし。

#10347 Spot 0
三上夫人

慰めてくれてありがとう。名ばかりの「母親」ではやはりいけませんね。これからは私も、あなたみたいにあの子にとって信頼出来る友人にならなくては。

#10348 Spot 0
player

あはは、いいですね。きっと千織も喜びますよ。

#10350 Spot 0

とはいえ、これまでずっと娘とのコミュニケーションを後回しにしてきたのだから、なかなかすぐには変われないよね……。

#10351 Spot 0

フードコートで、私たち三人は黙々とハンバーガーとポテトを頬張っていた。

#10352 Spot 0

注文を済ませた千織が戻ってくると、千織母は話題を探していたが、すぐに何を話せばいいかわからなくなってしまったらしい。気まずい空気を打ち破るべく、私はある提案をした。

#10353 Spot 0
player

あの、これから三人で麻雀をしませんか?

#10354 Spot 0
三上夫人

三人麻雀……?

#10355 Spot 0
三上千織

このバカ! ノンデリ!

#10356 Spot 0
player

いやいや、麻雀面白いじゃん。千織も楽しく遊んでるよね?

#10357 Spot 0
三上千織

黙りなさい!

#10358 Spot 0
三上夫人

……ええ、やりましょう。

#10359 Spot 0
三上千織

お、お母様?

#10360 Spot 0
三上夫人

流行りのおもちゃやゲームには疎いけど、麻雀なら、私が小さい頃から人気だったし、今でもルールはわかるわ。でも、どうやって? ここには牌も卓もないわ。

#10361 Spot 0

千織母の言葉で我に返ったらしく、千織は私をきっと睨んだ。

#10362 Spot 0
三上千織

千織がゲームをインストールしてあげる。スマホで遊べるんだよ。

#10363 Spot 0
三上夫人

あぁ、なるほどね。

#10364 Spot 0

初めこそ少しおぼつかなかったが、操作に慣れてくると、千織母は本来の強さを見せるようになってきた。

#10365 Spot 0
三上夫人

ペーするね!

#10366 Spot 0
三上千織

ペーするね!

#10367 Spot 0

私は、一度に二人の千織と戦っている錯覚に襲われた。

#10368 Spot 0
三上千織

ツモ!

#10369 Spot 0

今回の三人麻雀は、千織の勝利で終わった。千織母は、余韻冷めやらぬ様子でスマホを置いた。

#10370 Spot 0
三上夫人

ふふ、面白かった。千織は子どもの頃の私よりずっと強いわね。

#10371 Spot 0
三上千織

お母様、千織はそこらの大人より強いのよ!

#10372 Spot 0
三上夫人

あら、そうなの? それなら私はもっと練習しなくてはね。大人の意地ってものを見せてあげるわよ。

#10373 Spot 0
三上千織

えっ? これからも麻雀してくれるの?

#10374 Spot 0
三上夫人

えぇ、このオンライン麻雀、面白いもの。一局あたりの時間もそこまで長くないし。お父さんにもダウンロードしてもらいましょうよ、そうすれば別々のところにいても一緒に遊べるし、何気ないおしゃべりも出来るでしょう。どうかしら……?

#10375 Spot 0

千織母はおずおずと手を伸ばし、千織の顔を撫でた。

#10376 Spot 0
三上夫人

お母さんとお父さんも、千織の、……お友達になりたいの。いいかしら?

#10377 Spot 0
三上千織

……うんっ!

#10378 Spot 0

千織は、心からの笑みを見せ……

#10379 Spot 0

その笑顔に、私と千織母もつられて笑った。

#10380 Spot 0

そのタイミングで、優しく礼儀正しい雰囲気の女性の声で、まもなく千織母の乗る便が搭乗手続きに入るとアナウンスが流れてきた。

#10382 Spot 0

千織母を乗せた飛行機が離陸した。私と千織は、飛行機が雲の上へと飛び去って行くのを見送った。

#10383 Spot 0

千織に話しかけてみた。

#10384 Spot 0
player

どう? 私と一緒に空港に来てみたら、会館に行くよりずっと面白いことがあったでしょ?

#10385 Spot 0

千織は私を睨んだ。

#10386 Spot 0
三上千織

いい気にならないでよね。お母様がとびきり素敵だったおかげだから。

#10387 Spot 0

そう言うと、千織はつま先立ちになって、飛行機が飛んでいった方に向かって力いっぱい手を振った。

#10388 Spot 0
player

……大丈夫、きっとお母さんはすぐ帰ってくるよ。

#10389 Spot 0
三上千織

千織は別に平気よ。

#10390 Spot 0
player

それは強がり?

#10391 Spot 0
三上千織

違うわよ。

#10393 Spot 0
三上千織

つらいことなんて何もない。千織のお父様とお母様は優秀だから、いつも忙しいの。千織もいつか、お父様とお母様みたいなすごい大人になってみせる。

#10394 Spot 0
三上千織

そして世界中を飛び回って、困ってる人をたくさん助けるの。その時には、千織もお父様達みたいに忙しくしてるはずよ。

#10395 Spot 0

虫歯の治療を終えたばかりでまだ違和感があるのか、彼女は話しながら口をモゴモゴさせていた。少しおかしな感じが、かえって可愛らしい。

#10396 Spot 0
三上千織

ふふん……そうなったら、千織と遊びたくなった時は、ずーーっと先の日に約束を取り付けないといけなくなるからね、わかった?

#10397 Spot 0

このお嬢様、私といる時はいよいよ猫を被らなくなってきてるな。これって、もしかしたら喜ぶべきことなのかも。

#10398 Spot 0
player

わかった、めっっっっちゃくちゃ前もって約束を取り付ける。ところで、千織は将来どんな大人になりたいの? お母さんみたいなお医者さん?

#10399 Spot 0
三上千織

そうね……お医者さんは、お母さんみたいに毎日白衣を着なきゃなのよね、それは嫌だわ。

#10400 Spot 0
player

あ、じゃあお父さんみたいに、物理学を研究するとか?

#10401 Spot 0
三上千織

それだと髪の毛がなくなっちゃう! 失うものがあまりにも大きすぎるわ!

#10402 Spot 0
player

あははっ。

#10403 Spot 0
三上千織

うーん……うーん……何をしようかなあ……

#10404 Spot 0

私は、懸命に考える彼女の頭を撫でた。

#10405 Spot 0
player

焦らなくていいんだよ。少しずつ成長していけば、いつか目標を見つけられるよ。でさ、その前に一つ約束してくれないかな?

#10406 Spot 0
三上千織

フン、また身の丈に合わないヘンテコなお願いをしてくるつもり? 言っとくけど、あんたを守ってくれるお母様はもうここにはいないのよ。

#10407 Spot 0
player

身の丈に合ってるかはわからないけど、少なくとも冗談じゃないよ。

#10408 Spot 0
三上千織

へ……?

#10409 Spot 0
player

千織が大人になって、もっと広い世界に行くまで、もう少し私と一緒にいてくれる?

#10410 Spot 0

夜風が優しく吹き抜けていき、少女の長い金髪を撫でた。千織は目をぱちくりさせたかと思うと、不意に顔を背けた。上がった口角、私じゃなきゃ見逃してたね。

#10411 Spot 0
三上千織

フン! よくそんなお願いが出来るわね!

#10412 Spot 0
三上千織

でも……でも……お母様もそこそこあんたを気に入ってるみたいだし、お母様を悲しませないために、一日くらいはそのお願いを聞いてあげる。

#10413 Spot 0
player

一日?

#10414 Spot 0
三上千織

当然よ! こんなお願い、簡単に受けられるわけないでしょ。言っとくけど、そこから先はあんたの行動次第だから。もしイマイチなことがあったら、いつでもあんたを切るからね、フン!

#10415 Spot 0
player

はは、わかったよ。一日ね、一日。

#10416 Spot 0
三上千織

それじゃ、とりあえず家まで送りなさい。

#10417 Spot 0End
player

はいはい、お嬢様の仰せのままに。